その日、終わらない夏が始まる『夏空のモノローグ』
舞台は「ツリー」と呼ばれる正体不明の超高層建造物がある、海にほど近い田舎町。高校2年生の主人公は1年前、原因不明の記憶喪失に陥って以来、他人と交流できなくなり孤立してしまいます。そんな主人公ですが、とあるきっかけで入部した「科学部」になじめ、以来この部活動を心の拠り所にしていました。
ですが、「科学部」はある事情により廃部してしまいます。廃部前日の7月29日、部員たちは「ツリー」観測へ赴きます。観測も終わり、それぞれ家に帰り主人公は眠ります。しかし次の日、朝目覚めると7月30日ではなく、昨日と同じ7月29日だったのです。
マイナーではありますが、根強い人気のある本作。日常パートは明るい雰囲気ですが本編ストーリーはシリアスで、ルートによっては泣ける話もあるシナリオが魅力です。廃部することを残念に思っていた主人公は、ループが起こって廃部する事実が遠のくことを喜びます。しかし、部員たちはそれぞれループすることに様々な思いを抱えており、物語を進めていくと切ない気持ちに胸がいっぱいになります。
また、『夏空のモノローグ』は文章が素敵で、個別ルートに入ってからの主人公と攻略キャラの心情描写が丁寧です。特にそれぞれのルートのクライマックスは涙腺を刺激されてしまうこと間違いなし。伏線などが随所にあり、ネタバレ厳禁の作品なので、ぜひとも事前情報なしでやってみて欲しい作品です。本作はiOS/Androidでも配信されているので、気になる方はプレイしてみてくださいね。
女子高生が戦国時代にタイムスリップ『二世の契り』
『二世の契り』は、女子高生の主人公が戦国時代にタイムスリップして戦乱の世に巻き込まれてしまう話です。過去に渡った主人公は「上杉謙信」に出会い、興味を持った彼によって「毘沙門天の使い」として歓迎されます。そこで、謙信の直属の忍び“軒猿衆”を紹介され、彼らに警護されながら過ごしていきます。
乙女ゲームとしては王道の歴史ものですが、攻略対象キャラクターは有名武将ではない作品です。このゲームの特筆すべき点は、攻略キャラの年齢幅の広さです！正確な年齢は分かりませんが、最年長の攻略キャラは年齢が50歳以上なのは確実で、主人公が女子高生であることを考えると、とんでもない年齢差です……。大塚明夫さんやてらそままさきさんのキャラクターを攻略できる乙女ゲームは『二世の契り』ぐらいでしょう。
内容として恋愛としての甘い展開は少なめ。普段は主人公と他愛なく過ごしていますが、戦闘の時は守ってくれてかっこいいのはさすが忍びといったところです。発売してから10年経っているので、これを機に新しい展開に期待したい作品ですね。筆者としては、ファンディスクと合わせたバージョンをリリースして欲しいと願っています。
100キロからダイエット！？『乙女的恋革命 ラブレボ!!』
こちらは恋愛とダイエットを題材にした斬新な作品。主人公は幼い頃、美少女コンテストでは必ず優勝するほどの美貌でした。しかし、油断してお菓子ばかりを食べていたので、高校生にして体重がなんと100キロにまでになってしまいます。
そんなある日、父親が建てた新築マンションに何人かの学生が引っ越してきます。やってきたのは個性豊かなイケメンたち！仲良くなろうと主人公は話しかけますが、返ってくるのは冷たい反応ばかり……。
学校では同じマンションに住んでいるということで、妬むクラスメイトの嫌がらせもされてショックを受けます。そんな時、熱血な兄に焚きつけられ、主人公はついにダイエットを決意します。
本作には、シミュレーションパートとアドベンチャーパートがあり、それぞれ行動を選択してゲームを進めていきます。攻略キャラはタイプの違うイケメンたち9人で性格も多種多様です。
体重100キロというインパクト大の主人公は何事にも一生懸命で、ポジティブな性格が面白いキャラクターです。ストーリーでは彼女の行動やツッコミについつい笑ってしまうことでしょう。パラメータ管理が大変ですが、痩せていくと攻略キャラから評価してもらえるのでモチベーションになります。全体的にコミカルで少女漫画のような、王道の展開を楽しめる明るい作品です。
忍び、惑わせ、乱世を翔る『下天の華』
時は戦国時代。忍びの住む伊賀の里のくのいちである主人公のもとに依頼が来ます。安土城にて依頼主として待っていたのは、「明智光秀」。光秀は主人公を雇い入れ、自分の妹姫と偽り城に滞在させます。そして主人公は密命をこなしながら、安土の武将たちと縁を深めていくという物語です。
最近、『遙かなる時空の中で7』が発売されたばかりの「ルビー・パーティー」の「ネオロマンス」。同シリーズのゲームといえば育成要素が特徴のひとつですが、『下天の華』では複雑なシステムがないので入門作品としてオススメです。
主人公は姿を変えられる「変化の術」を駆使して情報を集めたり、危機を乗り越えていきます。シナリオはテンポよく進み、心の変化も丁寧に描かれており、それぞれ違った魅力を感じられます。また、『下天の華』はPS Vitaで愛蔵版が出ており、追加された“罪の華エンド”にて主人公と武将の愛憎が語られるため、プレイヤーを何とも言い難い感情にさせられます。
世界で一番美しい言葉を探す旅に出る『死神と少女』
作家の兄を持つ主人公は、いつも新作の話を聞くのを楽しみにしています。兄が語るのは、死神と少女が蒼色の空の下で出会い、世界で一番美しい言葉を探す旅に出るという物語。主人公はいつか完成するであろう作品を楽しみに待っていました。そんなある日、蒼色の空の下、時計塔を見上げている主人公に青年が話しかけてきます。彼は記憶がなく、唯一覚えているのは、自分が「死神」であるということでした。
『死神と少女』は乙女ゲームでは珍しい、主人公にもボイスが付いている作品です。話の構成やシナリオの内容は、乙女ゲームというよりも小説のようなストーリー展開なので、人を選ぶゲームではあります。
章仕立てでそれぞれが完結するオムニバス形式で話が進行し、1章にひとつずつ童話のような物語が挟まれています。全体的に落ち着いた雰囲気でストーリーは進行。主人公の身の回りに様々なことが起こり、それらを解決していきます。
筆者は真相に辿り着き終えた後、1本の映画を見終えたような達成感を感じました。どのルートもどこか幻想的で美しく、とあるキャラクターのルートではどうしようもなくて切なくなります。死神と少女がどのような結末を迎えるのかぜひ、確かめてみてください。
殺伐とした世界の中で一筋の光を見付ける『月影の鎖』
本土から遠く離れた小さな島にある街「紅霞市」。そこでは温泉と華やかな花柳街で賑わう温泉観光地として賑わっていました。しかし、それも過去の話。大正末期の情勢不安か、はたまた島を襲った災害のせいか、客足は遠のき財政破綻の危機に陥ります。
そんな中、市長が呼び寄せた男が街の復興案として「駐屯地誘致案」を提唱します。男の方策に街は混迷していきます。もちろん、小料理屋を営む主人公も男の方策に翻弄されることに……。彼女は島を巡る騒動に巻き込まれていくことになります。
話の題材が重たく、全体的に暗いストーリーの本作。抑圧された暮らし、閉鎖された空間での異常な団結力、無知ゆえの責任放棄や手のひら返し。人間の汚い部分がよく描かれていて、考えさせられるシナリオです。
また、主人公が住民に嫌がらせを受けるなどの惨い展開があるため、プレイする際にはご注意ください。タイトルにもある“鎖”ですが、特に物語において深い意味で登場する「神楽坂」と「榛名」ルートは、最後の方に攻略するのをオススメします。
ときめく高校生活『ときめきメモリアル Girl's Side 3rd Story』
続編も決まった大人気シリーズ。はばたき市にある「はばたき学園」に入学する主人公が、恋や勉強にスポーツと自分を磨きながら学園生活を過ごします。
根強い人気がある『ときメモGS』シリーズは、最新作となる4の発売も予定されており、ファンの間では盛り上がっています。その前作である今作は、1、2にはない新要素が色々追加されました。それは、特定のキャラと仲良くなると発生する「三角関係」モードと、3人でデートした帰りに発生する「W大接近」モードです。
男性キャラクターの嫉妬や、主人公とのイチャイチャが楽しめる一風変わったシステムが面白いですよね。育成できるパラメータも多く、育て方を変えるだけで異なるイベントを見られます。また、デートで彼の家に招待されたりすることもあり、周回プレイで同じキャラを選んでも違う一面が見られるため、何度やっても新鮮で飽きません！新作がどの機種で発売されるか決まってはいませんが、ぜひとも3や4もニンテンドースイッチでプレイしたいですね！
ということで、筆者が厳選した乙女ゲーム7本を紹介しました。どれも名作ですので、プレイ環境がある人はぜひともプレイしてみてください。もちろん、紹介しなかった他の乙女ゲームにも素敵な作品はたくさんあります。ニンテンドースイッチの乙女ゲームのソフトのラインナップも増えてきましたので、新作はもちろん、こうした移植作品もたくさんリリースして欲しいですね！
