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CEDEC、DiGRA JAPAN、IGDA日本・・・世代交替を通して成熟する業界三団体の現状と新たな連携の可能性

かつて「コミュニティ不毛地帯」で「産学連携氷河地帯」と呼ばれた日本のゲーム業界。しかし、今では大小様々な開発者コミュニティが活動し、産学連携も進みつつあります。

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重複する点・けじめをつける点


──IGDAはGlobalGameJamの母体にもなりましたね。

髙橋勝輝:
もともとGlobalGameJamはIGDAの教育SIGが立ち上げたゲーム開発イベントで、2009年にスタートしました。毎年1月末の週末に地球規模で開催されるもので、今年は10周年の節目にもあたり、全世界で8606本のゲームが作成されましたね。現在は国際非営利団体のGlobalGameJamに運営が移管されています。IGDA日本では毎年、開催支援ユニットを立ち上げて、各会場を巡回したり、動画共有サイトで状況を発信したりしています。他にIGDA日本では2011年から毎年8月に、震災復興を目的とした福島GameJamも開催しています。台湾やチリのIGDAチャプターも参加する国際的なゲームジャムに成長しました。

──IGDAは地域に根ざしているので、福島GameJamはIGDAらしい活動だと思います。DiGRA JAPANは大学、CEDECは産業に、それぞれ根ざしていますね。ただ、それぞれの立ち位置が明確になり、組織が成熟していく中で、良くも悪くも以前のような「ムラ意識」は減ってきたようにも思うのですが・・・?

中村彰憲:
たしかに、DiGRA JAPANの研究者はCEDECでも発表することが多いんですよね。私も過去数年間、中国ゲーム業界をテーマに公募講演させていただきました。他に副会長の遠藤先生や、編集委員長をされている三上先生もペラコンを継続されています。ただ、表だってDiGRA JAPANの名前は出されていません。ちょっともったいない気もしますね。

──それぞれの団体でコアなメンバーは重複していますが、お互いにけじめをつけているところがあるかもしれませんね。

中村彰憲:
昔は東京大学でDiGRA JAPAN側が場所をセッティングし、IGDA日本がセミナーを主催したり、お互いに共同開催をしたりといった連携もありました。ただ、自分もお二方にお会いして、じっくり話をするのは、これが初めての機会なのも事実です。

中村樹之:
CEDECでは、昔は各々の団体に講演をお願いしていたものが、公募制に舵を切りました。それによって運営もフォーマルな形になりましたし、より健全になったとは思います。

──それぞれが組織として成熟し、健全化したことで、誰も意図していない中で自然に変わってきたのかもしれません。実際、6年前の鼎談も自分が司会をしましたが、もっとざっくばらんだった気がします。

中村樹之:
出席者が斎藤直宏さん、遠藤雅伸さん、小野憲史さんでしたからね。お互いに良く知っている間柄だったでしょうし。

高橋勝輝:
これを機会に、できることはどんどんやっていきたいですね。


ゲームと社会、そして今後の展望


──三団体に留まらず、広く「ゲームと社会」との関係性構築も重要になっていますね。社会がデジタル化したことで、ゲームがもたらす波及効果が、良くも悪くも大きくなりました。ソーシャルゲームもそうですし、最近ではe-Sportsも注目を集めています。

中村樹之:
CEDECでは基調講演をはじめ、さまざまな団体とのコラボセッションや、招待セッションも行っています。基調講演では伝統的に「ゲームの内側・外側・中間」の講演者をセレクトしてきました。近年では基調講演が2名になりましたが、「ゲーム業界の人と、それ以外の人」という選定は続いています。これまで業界外からは、ウェアラブルコンピュータの塚本先生、アンドロイドの石黒先生、はやぶさのイオンエンジンを開発された國中さんなどに講演をいただきました。ゲーム開発者に普段の業務では得られない刺激を受けて、視野を広げて欲しいんです。

中村彰憲:
逆にDiGRA JAPANでは学際的であることを意識しています。研究者は皆、ふだんは自分の専門分野でゲーム研究をしています。それが年次大会などで一堂に集まり、さまざまな議論が行われます。産業界の参加者も多くみられます。許容度が重要で、固定概念に囚われないことが大切です。自分たちが普段所属しているオーソドックスな学会では、発言がはばかられるような内容の発表をして、そこから意見をもらうくらいの姿勢が大切だと思っています。

──ゲーム研究がみとめられるのは時間がかかりますね。

中村彰憲:
そういえば、ゲーム研究センターが2011年に設立された時も、学内で「ゲームセンター」と勘違いされたことがありました。いまだに浮いているところがあるかもしれませんね。

中村樹之:
今後e-Sportsが社会的に認知されてきたら、また状況も変わってくるかもしれませんね。

中村彰憲:
まさに、これからDiGRA JAPANとしても力を入れていくべき研究分野ですね。心理学もあるし、マーケティングもあるし、いろいろな研究が可能です。

髙橋勝輝:
IGDA日本としては、地域コミュニティとのかかわりを深めていきます。中山隼雄財団や足立区ギャラクシティでの取り組みはその一つです。父兄の方に見学をいただくことで、ゲーム作りには数学や国語をはじめ、学校の授業が重要になると気づいていただくキッカケにもなっています。皆さんゲーム世代なので、「こんなに手軽にゲームが作れるんですね」と驚かれることもありますね。

中村樹之:
小学生でプログラミング教育が必修化されるなど、追い風もありますね。すぐにゲームエンジンやツールなどを使って、我々が思いも寄らないような物を作るといった状況が生まれそうです。僕らが子どものころに比べると夢のような話ですね。

──それでは最後に、三団体の連携を通してどのような未来を作っていくのかについて、お考えをお聴かせください。

高橋勝輝:
ゲームを作ること、ゲームを遊ぶことが誇らしくなる社会をめざしたいですね。こそこそと隠れて遊ぶのではなく、かっこいい、すごい、最先端といったイメージです。そうした社会になるように、IGDA日本も活動していきたいと思います。

中村彰憲:
ゲームの価値を社会に還元していく点ではDiGRA JAPANも同じですね。その上で基礎研究を進めながら、産業界とコラボレーションをしつつ、各々の知見を体系化していくかが求められていると思っています。たとえば最近、日本でもオープンワールドのゲームが本格的に登場して、世界的にも高い評価を受けるようになりましたよね。ただ、オープンワールドの系譜自体は、昔から日本のゲームにもありました。こうした系譜や、企業や開発者の中に埋もれている暗黙知をつまびらかにし、アカデミック側が体系化していくことで、ブレイクスルーがおこせるのではないかと思います。

中村樹之:
CEDECは開発者の交流とコミュニティの形成が主ミッションです。そのためCEDECをハブにして、さまざまな団体が交流したり、ゲームと他業界とがうまく融合していければと思います。CEDECの場を皆さんにうまく活用してもらいたいですね。

──ありがとうございました。



《小野憲史》
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