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「Flyers' Lab #2 世界観編」聴講レポート「自分が持つ新しいビジョンを示す仕事はいいな」とヨコオタロウ氏が語る、世界観構築術に迫る

ゲームビジネス 開発

「Flyers' Lab #2 世界観編」聴講レポート「自分が持つ新しいビジョンを示す仕事はいいな」とヨコオタロウ氏が語る、世界観構築術に迫る
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11月13日、グリー株式会社は同社のアプリ開発スタジオ・Wright Flyer Studiosが主催する業界交流セミナー「Flyers' Lab #2 世界観編」を開催しました。本稿ではそのレポートをお届けします。

今回の登壇者は、『SINoALICE(シノアリス)』を手がけた株式会社ブッコロのヨコオタロウ氏と、『アナザーエデン 時空を超える猫』を手がけたグリーの加藤正人氏。お二人の紡ぐ世界観が、どのようにして生まれ、ゲームとして構築されていくかにせまります。


左からグリーの下田翔大氏、ブッコロのヨコオタロウ氏、グリーの加藤正人氏

◆座談会第一部:ゲームの世界観について


下田翔大氏がモデレーターを務めるなか、ゲームの世界観に関する3つの議題について、ヨコオ氏と加藤氏が語り合いました。

■世界観の着想はどこから得るのか? アイディアの源泉は?
加藤氏:これまでの自分のすべてからです。モノ作りは、その人がそれまでの人生で、見て、感じて得た“スープ”をぐつぐつと煮込むようなもの。何かからヒントを得て……とか、いわゆるネタ帳のようなものは、僕にはありません。それまでの自分をそのまま出すだけです。

ヨコオ氏:大学生時代、ただ“働きたくないな”とだけ思っていたのですが、そんな時に読んだ「ハイブリッド・チャイルド」が本当におもしろくて、自分が持つ新しいビジョンを示す仕事はいいなと強く思いました。……トイレの中でお腹を壊しながら(笑)。

■ゲームの世界観は自身にとってどんなものか?
加藤氏:世界観やキャラクターはあまり考えません。どれだけおもしろいゲームができるか、そのためにはどういうルールがいいか、そちらを優先します。ただ、バイオリンの曲を聴いたことがない人にバイオリン用の曲を作ってと言っても無理なように、構想やアイディアをアウトプットするには、普段どれだけインプットしておけるかが大切です。無から何かを生み出せる人はいないんですよ。


思いついたものはこまめにアウトプットするという加藤氏

ヨコオ氏:自分が目指す感情のゴールに向かううえで、必要がない設定は極力入れません。たとえば、“OLが不倫する”物語であれば、その世界の政治や社会情勢を丁寧に描くのはあまり意味がありませんよね。自分が伝えたいことの役に立つ設定なら何でも用意しますが、逆に、役に立たないならとことんまで省きます。“架空の地名をわざわざ覚えてもらう”というコストをみなさんにかけてしまっていいのか? というのは常に考えています。

■クリエイターとして何を大切にしているか?
ヨコオ氏:『ドラッグオンドラグーン』の一作目を制作しているとき、プロデューサーから世界観を構築してほしいと言われました。でも、僕は言いたいことを伝えるうえで、細かい設定が必要だとは思わなかったので、ずっと現実の地名を仮称として使っていた。プレイヤーのみなさんのコスト(≒手間)を、そこに割いてもらうのがイヤだったんです。最終的には、森の国や海の国といった、シンプルな国名が使われている世界という設定にしました。イヤなことをイヤと言い続けるのは大切ではないかと思っています。

加藤氏:僕は、自分で作りたいもの、ほしいものを提示するのが作り手の使命だと思っています。そして、制作チームのみんなには、僕が描いたものより数段すごいものを出してほしいと思っています。こちらは全力を出すから、そちらも全力を見せてくれと。

あるとき、僕が出したイラストに対し、グラフィッカーの女の子から僕の予想を超えるグラフィックが上がってきたことがありました。それを見せられたとき「やられた!」と思いましたよ。「すごいものを持っているんじゃないか!」と同じクリエイターとして嬉しくなっちゃいますよね。


加藤氏による原案イラストと、それがグラフィックに起こされたものの一例

◆座談会第二部:世界観がゲームに宿るまで


第二部では、『SINoALICE』のプロデューサーを務める株式会社ポケラボの前田翔悟氏と、『アナザーエデン』でディレクターを務めるグリーの古屋海斗氏も登壇。ヨコオ、加藤両氏の描く世界観が、ゲームに宿るまでの制作過程を振り返りました。

前田氏:弊社はずっとソーシャルゲームを手がけています。ソーシャルゲームはリリース後に運営をする関係上、ゲーム制作はシステム面から入ることが多いです。コンシューマーゲームは必ずしもそうではないので、ヨコオさんとお仕事をさせていただくうえでは、そうしたところでギャップが生じたりもしました。

ヨコオ氏:こういうのもなんですが、僕はソーシャルゲームを遊んでいて一回も課金をしたことがないし、シナリオもほとんど読みません。だから、僕自身も多くを書きたいとは思わない。タップですぐにスキップできる、ポエム程度のものならあってもいいかも――それが『SINoALICE』のスタートでした。

前田氏:弊社としては不安に思うところもありましたが、それ以前にヨコオさんにお任せするのが大前提でしたので、その辺は信頼してお任せしました。うまく役割分担ができたのはよかったと思います。

ヨコオ氏:あと、僕はインターフェース周りにもかなり口を出しますよというのは最初にお伝えしました。今振り返れば、ヤダヤダと言ってるだけでしたね(笑)。

古屋氏:『アナザーエデン』の制作は、最初に加藤さんがシナリオの大枠を出してくださったところから始まりました。僕らがそれを超えたものをお返ししないとお客さんは驚いてくれないだろうと思い、そこからは日々僕らと加藤さんの“勝負”の繰り返しです。加藤さんは、これはスーパーファミコン時代の作り方に近いとおっしゃいます。


『アナザーエデン』制作エピソードを語る古屋氏(写真右)と加藤氏

加藤氏:いい制作チームがよく回るのは、誰かが全力疾走していて、全員が同じ方向を向いてそれについていっているとき。僕もいち企画で、いちプランナー。チーム内で権威を振りかざすとか、そういうことは決してしません。僕自身、日々多くのダメ出しをされていますよ。

ヨコオ氏:僕は20代のときにままならないことがたくさんあって、それは当時の会社の上層部との意見の食い違いがほとんどでした。そして今は、自分がその世代になっている。そう思うと、自分さえいなければ、若手がもっと生き生きとゲームを作れるのだろうなというのは、いつも考えています。

◆世界観構築でこだわるべきことは? 来場者からの質疑応答


最後に行われた質疑応答では、以下のような質問と回答が挙がりました。

Q.ヨコオ氏の作品では、モノクロを用いた演出が見られることがあります。この演出に込めた意図は?

ヨコオ氏:たとえば『ニーアオートマタ』のバンカーでは、お葬式をイメージしてもらいたくて、そういう隠喩で用いています。とはいえ、大体は色を入れなくていい理由を探しているだけです。僕がカラフルなのが嫌いなので(笑)。

Q.最近はアーケードゲーム業界が苦境ですが、ゲームセンターの今後に対して思うことは?

ヨコオ氏:昔ナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)に在籍していたときは、アーケードゲームの筐体がある部署にいました。ゲームの最先端が、アーケードゲームだった時代ですね。やがて時代が変わり、技術が向上し、僕もアーケードゲームだけにはこだわらなくなりました。一番大事なのは今ゲームで遊んでいるみなさんの気持ちであって、それがどこであるかはあまり大事ではないです。

加藤氏:僕はいわゆる“インベーダー世代”ですが、実はほとんど遊びませんでした。なんだか時間を吸い取られるようで、当時はむしろゲーム嫌いだったんです(笑)。でも、その後に初めてRPGを遊んで、ガツンと衝撃を受けましたね。

Q.世界観や設定を構築するうえで、一番こだわるべきところは?

ヨコオ氏:ケースバイケースですが、いつも心がけるのは“なるべく考えない(設定を固めない)”こと。たとえば、ソーシャルゲームで主人公が三兄弟であるという設定を最初に決めてしまうと、サービスが続くうちに「もっと兄弟が多い方がよかった」となってしまう可能性もあります。設定を固めれば、柔軟性はそれだけ薄れます。だから僕は、いつも作品をよりよくしてくれる設定だけを考えます。

加藤氏:僕もあまりこだわらないです。大きな岩を少しずつノミで削って形を整えて、最後になってようやく「自分はこういうのが作りたかったんだ」というのが出てきます。始めるときは自由に。そして、おもしろければなんでもアリ。基本的には、世界観を固めることよりも、いかに新しいゲーム、おもしろいゲームを作るかにこだわってもらえたらいいなと思います。



◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

ゲームを楽しむ一助となる世界設定はいかにして構築され、ゲームに落とし込まれるのか? ヨコオ氏と加藤氏からは対象的な答えも多く飛び出し、その時ならではの正解を探していくしかないという難しさと、やりがいが強く感じられるセミナーとなりました。

次回の開催は12月18日。「Flyers' Lab #3 運営編」では、株式会社f4samuraiの佐藤允紀氏、株式会社ディー・エヌ・エーの香城卓氏を招き、ゲームの運営について語り合うとのことです。
《蚩尤》

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