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【CEDEC 2017】『Fate/Grand Order』開発チームが語る、面白いゲームを創り続ける秘訣

パシフィコ横浜にて開催されているゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2017」にて、8月30日、人気スマートフォンゲーム『Fate/Grand Order』を開発するディライトワークスの主要スタッフによるセッションが行われました。

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パシフィコ横浜にて開催されているゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2017」にて、8月30日、人気スマートフォンゲーム『Fate/Grand Order』を開発するディライトワークスの主要スタッフによるセッション「ただ純粋に、面白いゲームを創り続ける・Fate/ Grand Orderチームのすべて」が行われました。

『FGO』は国内で絶大な支持を集めているタイトルということもあり、セッションは立ち見や入場できない来場者も出るほど。そんな注目されたセッションに登壇したのは、ディライトワークスでTYPE-MOONとともに『FGO』を開発しているプロジェクト・マネージャーの芦田夏希氏、プランナーの早坂貴志氏、デザイナーの増川浩介氏、エンジニアの田村裕樹氏。

◆開発をスムーズに進めるための進行管理術




まず、芦田氏が登壇し、『FGO』開発におけるプロジェクトマネージャー(PM)の役割について説明しました。PMはゲーム開発の進行管理が役割となり、タスクの管理、情報の共有、対外折衝、プロジェクト改善の作業を主に行っています。

タスク管理ではアトラシアンのJIRAを用いて、リリースするすべての工程をチーム全員と共有、問題が発生した場合はリーダーとともに早急に調整できる体制にしているのだそうです。新たなイベントが決まるとリリース当日までの段取りを行い、時間ごとの状況も記載して現状を把握しやすくしています。そうすることによってタスク漏れのチェックや予定通りいかなかった場合のフローの調整をしやすくしています。

チームや外部との情報共有にはチャットツールであるChatworksが使われています。共有するグループを細分化しつつ、セキュリティレベルに合わせて情報も制限することでトラブルも未然に防いでいるとのこと。直接顔を合わせるミーティングも一部のメンバーと定期的に行われます。

PMの仕事は、開発の流れを管理して情報を整理することでプロジェクトを牽引することですが、同時にクリエイターにクリエイティブに避ける時間を増やすことができるのだそうです。結果として、クリエイティブな時間が増えるほどゲームの質は上がり、ユーザーにより面白いゲームを届けることが可能になるのだと芦田氏は述べました。

◆プランナーはいろいろな作業に関わる必要がある




エレクトロニック・アーツの『ウルティマオンライン』やSCE(現SIE)の「トルネ」などに関わり、現在は『FGO』のプランナーである早坂氏。3年前より『FGO』チームに合流した同氏は、自身のプランナーとしての役割を紹介。

ゲームの「クオリティ」のためには「得意なことを突き詰める」必要があり、そのために「作業を分解」する、という3つのサイクルをうまく回すことが面白いゲームを作り続ける上で大事なのだといいます。『FGO』の開発では、TYPE-MOONとディライトワークスだけで補える部分が多くなってきたもの協力会社と連携して行う作業も未だ多く、プランナーが協力会社の選定や発注、外注時のクオリティコントロールやメディアミックスなども担当するのだそうです。初期のCMに至っては、どの画面を使用するかの選別も行っていたとのこと。


プランナーはなんでもやる必要がありますが、なぜそれをやらないといけないのかという目的を分解することも重要であると早坂氏。『Fate』という題材をスマートフォンゲームでどう実現するか考えた際にカードバトルというデザインが決まったという『FGO』ですが、時には目的と手段を入れ替え、なぜそれが必要なのか、目的は何かを見つめ直すということが、ゲームを創っていく上で大事な考えかたであるとしています。

◆デザインは進化する




タイトーなどでゲーム開発に携わり、現在は『FGO』のデザイナーである増川氏は、TYPE-MOONがユーザーへ届けたい「こだわり」を形にすることが自分の仕事であると語ります。

リリースから2年が経過し、さまざまな要素が大きく進化している『FGO』。例えば、バトルキャラは攻撃/宝具モーション・2Dキャラクターのパーツなどはリリース当初と比べると倍以上となり、パーツやテクスチャの作業が大幅に増えています。そういった新しい演出を作り上げる際には、TYPE-MOONと直接ミーティングを行い、事前にイメージのすり合わせを行っているのだそうです。


クエストマップに関しては、シナリオの進行に合った要素を追加しています。2016年のハロウィンイベントでは、ちびキャラが横スクロールのドット画面を移動するというギミック、2017年の水着イベントでは10のマップが用意され、スポットアイコンが動くといったギミックが用意されていました。これらマップやギミックは、シナリオの解析震度によって制作内容に変更が発生しても柔軟に対応できるよう、すべて自社スタッフで制作しているとのこと。


サーヴァントのグラフィックについても、初期の頭身テンプレをやめて設定に近いものに変えています。新しいキャラクターと古いキャラクターではグラフィックの整合性が取れなくなるため、古いものは新規モーションとともにイラストを全リニューアルしています。すでに、22体のサーヴァントが改修されており、その内14体はテクスチャレベルでの全改修が行われています。

本来は開発の「慣れ」とともに短縮されるはずの制作期間が、逆にクオリティアアプのために増加してしまっているというのが現状であるとのことですが、増川氏は「TYPE-MOONのこだわり」「ユーザーを楽しませるため」「ただ純粋に面白いゲームを創り続けるため」に挑戦し続けているのだと語りました。

◆間違った組織の最適化がゲームをつまらなくする




ユーザーのために「面白い」を実現する最適な技術を選択するのがエンジニアの仕事だと語る田村氏。開発・Q&A・本番反映というサイクルを回すゲーム開発において、「素早く届ける」ことと「安定して動かす」という相反する2つをどう実現するかが重要なのだそうです。

田村氏は、単純に開発スタッフを増やすだけでは、コミュニケーションコストが増して逆に作業が遅くなると説明。開発速度を速めるためには、可視化、自動化、仕組化を考える必要があるとしています。チーム全員が説明会で意図やゴールを共有しないと、間違いに気づくことすらできないからです。


同時に、開発する自分自身もユーザー目線で遊ぶことが大事だと説明します。仕様書通りに作ったゲームが実際に遊んでみるとあまり面白くないということもあるため、ユーザーの気持ちになって意図を飲み込む必要があるのだそうです。

田村氏の言葉で印象的だったのは、「安定と速度の両立のために最適化を頑張ってはいけない」ということ。常にアップデートを行う『FGO』のようなゲームには到達点はないため、効率化を突き詰め現状を最適化した組織構造にしてしまうと、変動する面白さに対応できず、陳腐化が起こってしまうとしています。

田村氏自身の経験から、間違った最適化は、組織の硬直化と組織に最適化した人材を生み出してしまうと指摘。量産と維持が目的となってしまうと市場の変化に耐えられなくなるため、現状の『FGO』を超え続けることが今後の『FGO』に必要なのだと説明しました。

最後に、これまでのすべてが「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう」へつながっていくのだと述べられ、本セッションは終了しました。

《Daisuke Sato》
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