KADOKAWAとはてなが共同で開発したWeb小説サイト「カクヨム」にて発表された、「The video game with no name」が注目を集めています。誰でも自由に物語を「書ける」「読める」というこのサイトには、正式オープン以来さまざまな作品が集い、またそれらの作品を読むべく、更に多くの読者が「カクヨム」を利用しています。そんな同サイトにて4月24日より連載が開始された小説「The video game with no name」が実に個性的で、ネット上の一部で話題を呼んでいます。タイトルだけ見ると小説らしからぬ感じも受けますが、タイトル通りその中身も、レトロゲームのレビューになっています。「それは、単なるゲームのレビューなのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれないので、大きなネタバレにならない範囲で説明すると、本作の時代はなんと2115年。今から100年ほど未来の世界の人物が、ゲームのレビューを綴っているのです。しかも本作でレビューの対象になるのは、2022年にリリースされた『キミにキュン!人工ヒメゴコロ』や2073年発売のアンドロイド「Acacia」などです。2016年を生きる私たちからすればいずれも未来のゲームですが、2115年の視点から見ると間違いなく「レトロゲーム」の範疇でしょう。つまり、「未来(2115年)から過去(2022年など)を見る」という近未来小説、それが「レトロゲームレビューサイト開設しました!」なのです。内容は徹底して、架空のレトロゲーム(未来のレトロゲームと言うべきかもしれません)を題材に、まじめにレビューするというもの。2016年時点では存在しないはずのゲームを、まるで本当にあったかのように描写し、更に社会に与えた影響なども綴ります。その徹底ぶりからは、リアリティという名のエンターテインメントが生まれ、読者は得難い面白さを味わうことができるのです。また、2016年までに生まれた技術や流行などを、歴史の1ペーシのように紹介するのも味わい深いところです。「まとめブログ(2010年代頃に流行った低質なバイラルメディア)」など、未来の人からすればこう受け取るのだろうかと納得してしまう解釈と演出も、楽しさに拍車をかけてくれます。これ以上の紹介は野暮になるだけなので、興味が湧いた方は直接目を通してみてはいかがでしょうか。現在4話まで公開されているので、ゴールデンウィークの合間に一読してみるのもお薦めです。よければ、こちらからご覧ください。■カクヨム web小説「The video game with no name」URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054880928816