全米オーケストラリーグ( The League of American Orchestras)によると、米国内のクラシックコンサートチケットの売り上げは1991年から2011年までに29%も落ちていたのだそうです。2010年には米国の複数の都市で、オーケストラが解体や規模縮小を余儀なくされました。
そんな状況に、ペンシルバニア州フィラデルフィアにある芸術施設マン・センターのCEOキャサリン・カーヒル氏は、オーケストラ側が観客が何を求めているのか見極める必要があったと語っています。
カーヒル氏によると、『ゼルダの伝説』や『ポケモン』のコンサートは多くの観客と収益をもたらしており、クラシック音楽のコンサートとは対照的に最高で6000人を集客することもあったことのこと。そのため、現代の観客が素晴らしいオーケストラで聴きたいと思うことがあれば、それはベートーベンやモーツァルトではなく、ビデオゲームの音楽なのだという考えに至ったとしています。
カーヒル氏の考えた通り、現在行われている「ゼルダの伝説シンフォニー」世界ツアーは、多くの会場でチケットが売り切れるほどの人気となっており、オーケストラの活性化に大きく貢献しています。さらに、プロデューサーのジェイソン・ポール氏によると、会場の売店では3000人にも及ぶ来場者がそれぞれ最低10ドルのグッズを購入しているというデータもあるのだそうで、大きな経済効果をもたらしています。
このゲーム音楽とオーケストラのコラボレーションが人気を呼ぶ現象、米国だけのものではありません。最近では英国のクラシック音楽専門ラジオ局で、リスナーの投票により、植松伸夫氏の『ファイナルファンタジー』が殿堂入りを果たしています。この要因も、もともとRPGのサウンドトラックはオーケストラの音楽と親和性が高いため、そこから若い世代がオーケストラによるクラシック音楽に興味を持って行ったことにあると同ラジオ局の代表が分析しています。
これまでクラシック音楽に触れたことがない観客、特に若い世代を劇場まで足を運ばせ、低迷していたオーケストラに新しい風を吹んでいるゲーム音楽。「ゼルダの伝説シンフォニー」ワールドツアー音楽監督エミー・アンダーソン氏は、ゲーム音楽は音楽を通した物語で、形は違えど物語を伝え、心に触れる面ではマーラーの交響曲第2番となんら変わりはないとし、今後50年は残るものだろう、と語っています。
記事提供元: Game*Spark
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