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【オールゲームニッポン】自然と抱く感情の先に神様は住んでいる(第10回)

その他 全般



毎週土曜日0時よりお届けしている「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」。今回は前回に引き続いて宗教についての話題でスタートします。後半では、ゲームとも直結する生死感についての話にも膨れていきます。それでは。

平林
 
前回、安田さんから神道と仏教が共存できた理由についてお話してもらいました。

安田
 
神道は地域コミュニティの宗教、仏教は個人や家族のための宗教として役割分担してきた。そんな話でしたね。

平林
 
で、あれから自分なりに考えまして。神道は仏教と共存しているだけではなくて、他の宗教とも争うことがないですよね。

安田
 
はい。

平林
 
その理由のひとつに、時間差もあると思ったんです。神道というのは、世界の宗教の常識でラベルを貼ってみると原始宗教に属する。そういう分類でいいんでしょうか?

安田
 
そうですね。生物やモノや土地や、すべてのものに霊が宿っているという考え方は、西洋ではアニミズム(animism)とひとくくりにすることがあります。そして、アニミズムは原始文化のひとつととらえられていて、こう言っては語弊があるかもしれませんが、近代主義に比べて遅れているというのが、一般的な解釈じゃないですかね。

平林
 
ですよね。神道というのは、たぶん原始宗教の一種で、他の国にあったなら淘汰されているような古い考え方ともいえます。歴史の中で、いつ役割を終えてもおかしくなかった。けれども日本では奇跡的に現代まで残ってしまった、残ることができた。それが神道だと思うんです。

安田
 
なるほど。

平林
 
で、他の宗教はというと。キリスト教やイスラム教は時代的にはかなりあとになってできた宗教で。神道とは時間差があるんですね。でき上がった世代が違います。だから争うことがないのだ、と考えるようになったんです。強引にゲーム機戦争にたとえますが、キリスト教とイスラム教はプレイステーションとセガ・サターンの戦いだとします。このふたつは時に争います。けれども神道はそれよりも世代が古くて、ファミコンみたいなものだから、争うことはないんじゃないかなと。

安田
 
神道のような自然宗教に対して、啓示宗教という考え方がありますよね。

平林
 
あ、ありましたね。そういう分類。キリスト教の受胎告知のように神の啓示が言い伝えられた宗教のことでしたっけ?

安田
 
人間をこえた存在からの教えに基礎をおく宗教、という意味ですね。三大啓示宗教などと言って、特にキリスト教、ユダヤ教、イスラム教を指すことが多いですね。で、啓示宗教というのはおしなべて指示的になりがちなんです。神や預言者の教えを信者は守らなくてはいけません。そのために縛りが必要になってきます。教えを聖典などで明文化して、してはいけないこと=戒律を細かく定めるようになります。

平林
 
じつは神道には聖典や戒律が存在しないことについて、その理由がきちんと説明できなかったんですが、「啓示宗教ではないから」……これで一気に腑に落ちたような気がします。

安田
 
あと、啓示宗教というのは、絶対的に正しい神がそれぞれの宗教に存在するので、争いが起きやすいんでしょう。歴史上、世界の各地で宗教戦争がありましたが、これらは「啓示宗教だから」で説明がつくのかもしれません。

平林
 
啓示宗教に対して、原始宗教的な神道ですが、「神道は自然宗教だ」という言い方もありますよね。

安田
 
ありますね。

平林
 
この自然というのは、海や山の自然なのか、それとも自然な感情のほうの自然なのか、これは気になって調べてみたんです。

安田
 
どっちですか?

平林
 
自然宗教と書いた場合は、人間が自然と抱く感情を指すみたいですね。海や山を拝むのは自然崇拝といいます。英語で書くと、自然宗教はNatural religion、自然崇拝はNature religionでした。で、改めて思ったのですが、宗教観は現在の国民性を映し出しているというか。もっと具体的に言うと、ゲームにあらわれていますよね。

安田
 
物語とか、映像の好みとか、いろいろなところにあらわれると思いますけど、やはり死生観というか、死に対する考え方はかなり違うんじゃないですか。日本のゲームは死を厳粛に扱っていると思います。俗な言い方をすると、血が出るゲームは日本ではウケないじゃないですか。

平林
 
あ、それはもう昔からの伝統ですね。遊ぶ側の人が血を嫌うのとあわせて、作る側の人も気を使ってきたんだと思います。古くは70年代のアーケードゲームの時代から、ゲームに死を連想する場面はつきものでした。この業界の先達たちは工夫しました。有名な例ですが、ドラクエの断末魔の叫びは「ぐふっ」とか。個人的にはパックマンがしおれるように死んでいく映像エフェクトとジングルが大好きでしたね。

安田
 
私もゲームプロデューサーとして、開発中のゲームにいろいろと注文をつけるときがありますけど、敵でも主人公でも、死を意味する場面で「もっと残虐にしよう」なんて思ったことがないですね。開発スタッフはプロデューサーやディレクターから特に指示がなくても、ゲームの中の死はできるかぎり抑制しなくてはいけないと、まさに自然と感じ取ってくれているようです。

平林
 
いきなり具体名を出しますけど、初期の『モータルコンバット』をはじめて見たときは、ぶったまげました。格闘ゲームなのですが、戦闘中に血や肉片が飛んだりします。生理的に受けつけなかったですね。このソフトのおかげで、今の日本のCEROのような北米のレーティング審査機関(ESRB)が設立されたとも言われていて、そういうかなり特殊なゲームでしたが、日本とアメリカの価値観の違いについて身を持って感じたゲームでした。


(つづく)

■パーソナリティの紹介


安田善巳 (やすだ よしみ)
角川ゲームス代表取締役社長、フロム・ソフトウェア代表取締役会長。日本興業銀行、テクモを経て、2009年に角川ゲームスの設立に参画。経営者でありながら、現役のゲームプロデューサーとして『ロリポップチェーンソー』『デモンゲイズ』などを手掛け、現在は『Projectcode -堕 天-』『Projectcode -月 読-』の開発に取り組む。



平林久和(ひらばやし ひさかず)
インターラクト代表取締役社長。ゲーム黎明期の頃から専門誌編集者として従事。日本で唯一のゲームアナリストとしてゲーム評論、ゲーム産業分析、商品企画などの多方面で活躍してきた。著書に『ゲームの時事問題』『ゲームの大學』(共著)など。「今のゲームを知るためには、まず日本を知ることから」が最近の持論。

《平林久和》

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