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和楽器で『逆転裁判』『大神』『聖剣伝説3』など多数のゲーム音楽を演奏!『ファミ箏』第三回演奏会レポート

ファミ箏とは、生田流箏曲の演奏家で作曲家の沖政一志氏が中心となって結成された、和楽器(箏、尺八、三味線など)でゲーム音楽を演奏するグループです。

その他 音楽
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会場・江東区文化センター

2014年12月28日、東京都江東区の江東区文化センターにて、ファミ箏「第三回演奏会」が開催されました。

ファミ箏とは、生田流箏曲の演奏家で作曲家の沖政一志氏が中心となって結成された、和楽器(箏、尺八、三味線など)でゲーム音楽を演奏するグループです。三回目の単独公演となる今回は、カプコン特集として、『ストリートファイターII』、『ロックマン』、『逆転裁判』、『大神』などの楽曲が和楽器の演奏で披露されました。


また、さまざまな種類の三味線演奏を堪能しながら、楽しく三味線の歴史を知ることができた『ゲーム音楽で知る三味線の歴史』コーナーや、作曲家の岩垂徳行氏を迎えてのコーナー、『聖剣伝説3』メドレーなど、盛り沢山の内容となりました。本稿では、伝統ある和楽器で多数のゲーム音楽が奏でられた、この演奏会の模様をお届けいたします。

◆ファミ箏


■出演者(敬称略)
筝・十七絃:沖政一志、芦垣雪衣、神谷舞、小池摩美、中嶋ひかる
三味線:田辺明、浅野藍
尺八:神永大輔、田野村聡、吉岡龍之介、大賀悠司
薩摩琵琶:逢坂誉士
三線:530(ゴサマル)
津軽三味線:寂空

■プログラム
●カプコン特集
『ストリートファイターII』より(エドモンド本田ステージ、リュウステージ)
『戦場の狼』より(スタートデモ、BGM1、砦、ステージクリアデモ)
『魔界村』より(1stBGM)
『ロックマン』より(STAGE SELECT、GAME START、CUTMAN STAGE)
『逆転裁判』より(逆転裁判・開廷、尋問~モデラート2001、追求~追いつめられて、成歩堂龍一~異議あり!2001、真実は告げる 2001)
『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』より(Dr.WILY STAGE 1)
『大神』より(太陽は昇る)

●ゲーム音楽で知る三味線の歴史
[琵琶]『逆転裁判5』より(怪奇!天魔太郎伝説)
[三線]『ときめきメモリアル』より(南国島唄~あれは何だ!?~痛い目見るゼ~勝利)
[地歌三味線]『逆転裁判5』より(九尾村~妖怪たちのふるさと)
[津軽三味線]『ニンジャウォーリアーズ』より(Daddy Mulk)

●岩垂徳行氏をお招きして
『逆転裁判3』より(美柳ちなみ~遠い面影)
『城姫クエスト』メドレー

●『聖剣伝説3』メドレー
Not Awaken、Where Angel Fear To Tread、Sacrifice Part One、Sacrifice Part Two、Sacrifice Part Three、Breezin

●アンコール
『ライブ・ア・ライブ』より(密命、殺陣!)
『がんばれゴエモン2』より(江戸城BGM、またね)

多くの観客が来場し、大にぎわいでした

物販コーナーも大盛況

年の瀬の開催にもかかわらず、会場の江東区文化センターは多くの観客でにぎわいを見せていました。

ファミ箏代表・沖政一志氏

開演時間近くになると、まずファミ箏代表の沖政氏による挨拶が。「僕らの演奏は、必ず礼をして始まり、礼をして終わります。その礼から礼までが演奏となります」と和楽器の演奏について説明しました。



開演時間になると、沖政氏によって打たれる拍子木の軽快な音色とともに幕が開きます。ステージには、凛とした和装に身を包んだファミ箏のメンバーと、じつに雅で鮮やかな金屏風。会場は一気に“和”の空気に満たされます。

◆カプコンの名曲群を次々に披露!


左から小池摩美氏、芦垣雪衣氏、神谷舞氏、中嶋ひかる氏

まずはカプコン特集ということで、カプコン作品の名曲の数々が披露されました。はじめは『ストリートファイターII』から、エドモンド本田ステージとリュウステージ。たおやかに奏でられる箏と三味線が、じつに雅な音色。うなる尺八も渋くて素敵でした。エドモンド本田とリュウはどちらも日本人のキャラクターですが、この2人のイメージを和楽器でさらに昇華させての演奏が繰り広げられました。

ここで沖政氏のトークが入ります。沖政氏は、ファミ箏は地方在住の人でも来場しやすい日程で開催したいと思い、コミックマーケット(コミケ)の開催にあわせて今回の公演日を決めたようです。しかし例年と違い、今年はコミケの開催日が1日早まったことで、コミケと重なってしまったとのこと。「ちょっと落ち込んじゃいました(苦笑)。そんな暗さを吹き飛ばすような行進曲風の曲をお送りしましょう!」ということで演奏されたのは、1985年にリリースされたアーケードゲーム『戦場の狼』。テンポの早いキレがある演奏に加えて、原曲で途中に入るパーカッションの音を、箏の裏を手で叩く(!)ことで表現。主人公の兵士がひとりで敵と戦う躍動感が、存分に演奏で表現されていました。

左から)神永大輔氏、田野村聡氏、吉岡龍之介氏、大賀悠司氏

続いては『魔界村』。尺八がメロディを奏でます。原作は中世ヨーロッパ風の世界観ですが、ゾンビではなく妖怪や幽霊が現れそうなほどの、和の雰囲気たっぷりな演奏でした。次は『ロックマン』。まず演奏されたのはステージ選択画面「STAGE SELECT」。ステージ開始ジングルである「GAME START」が入り、「CUTMAN STAGE」。あの特徴的なイントロが、箏と三味線の早弾きで見事に表現されます。原曲で時折入る「ピピッ」という音までもを、きちんと再現していたのがお見事でした! さらに、回復アイテムを取って体力が回復する音を、尺八をピロピロピロと演奏することで再現していたのも感心しました。芸が細かいです。

田辺明氏

浅野藍氏

『逆転裁判』からは、ゲーム中の法廷シーンで流れる楽曲がメドレーで披露されました。「逆転裁判・開廷」でゆっくりと厳かに演奏開始。「尋問~モデラート2001」では、静かに響く箏と三味線の1音1音が、少しずつ証人を追いつめていく緊張感を引き立てます。「成歩堂龍一~異議あり!2001」は、逆境に決して屈せずに戦う主人公・成歩堂龍一の熱さを表すかのように、堂々とした演奏が繰り広げられます。哀しみを帯びた「真実は告げる 2001」と続き、ラストは「追求~追いつめられて」! ハイテンポで掻き鳴らされる箏と三味線、伸びやかな尺八の音色。成歩堂の逆転劇が鮮明に浮かぶほどの、爽快感あふれる名演でした。



『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』からは、「Dr.ワイリーステージ1」が、リズミカルかつ軽快に演奏されます。そして最後に披露されたのは、『大神』のラストバトル曲「太陽は昇る」。『大神』の主人公・アマテラスの威風堂々としたたたずまいを思わせる、高貴かつ雅な演奏が、会場いっぱいに響きます。なお、尺八の大賀氏は、この曲では笛を担当。高く響きわたる笛の音は、吹き抜ける一陣の風のように爽やかでした。ちなみに沖政氏によると、「『大神』はやってみたい曲がたくさんあるのですが、『大神』をテーマにしてしまうとそれだけで演奏会が終わっちゃいますね(笑)。今回はカプコン特集ですが、いずれまた、『大神』に焦点を当てた演奏会をやってみたいです」とのことです。『大神』特集の演奏会もぜひ期待したいですね!

◆楽しく学べる!三味線の歴史コーナー


続いて行われたのは、「ゲーム音楽で知る三味線の歴史」のコーナーです。ゲーム音楽の演奏を織り交ぜながら、沖政氏の解説によって、三味線の歴史が紹介されていきました。「三味線の歴史、と銘打っていますが、三味線から始まりません。三味線の前に、日本には琵琶(びわ)という楽器がありました」と沖政氏。

逢坂誉士氏

沖政氏に紹介され登場したのは、薩摩琵琶奏者の逢坂誉士氏。「琵琶がかっこいい曲なんです」(沖政氏)ということで演奏されたのは、『逆転裁判5』から「怪奇!天魔太郎伝説」。じわじわと恐怖をあおるような、琵琶の奥深い音色がホールに響きわたりました。

530(ゴサマル) 氏

次に登場したのは、三線演奏家の530(ゴサマル)氏。演奏されたのは、『ときめきメモリアル』(以下『ときメモ』)より「南国島唄」。修学旅行で沖縄に行った際に聴くことができる曲です。ゆったりした三線の旋律が、沖縄の空気感を醸し出します。しかし一転して不穏なジングル「あれは何だ!?」が奏でられ、次に演奏されたのは戦闘曲「痛い目見るゼ」。『ときメモ』では、修学旅行中に、敵が現れて某大作RPG風の戦闘画面になるのです(沖縄ではハブと戦います)。ゆったりした「南国島唄」とは一転して、テンポの早い緊張感あふれる演奏が繰り広げられました。最後は、同じく某大作RPGのファンファーレ風の「勝利」で締めとなります。

ちなみに沖政氏によると、実はゲーム音楽で三線を使った曲がなかなか見つからず、困っていたとのこと。しかしある日、『ときメモ』に三線の曲があることに気づいてホッとしたそうです。「切羽詰まった時に、大事なゲームに救われるんですね。『ときメモ』が好きでよかったです(笑)」(沖政氏)



「琵琶、三線ときて、やっとここで三味線が出てきます」と沖政氏。三線が沖縄から船に乗って、大坂の港町・堺に伝わったのが戦国時代のころ。琵琶の演奏家のもとに三線が渡って、そこから三味線が生まれました。三味線のバチの形は、琵琶のバチからきており、三味線の楽器の形は、三線からきているとのことです。「琵琶と三線は、三味線の両親のような存在ですね」(沖政氏)

次に、ファミ箏のメンバー・浅野氏によって三味線で演奏されたのは、『逆転裁判5』から「九尾村~妖怪たちのふるさと」。演奏はゆったりした穏やかなもので、のどかな九尾村の雰囲気がよく出ていました。沖政氏によると、箏・尺八・三味線の3つをセットにして演奏しだしたのは江戸時代とのこと。この3つがそろった形式は“三曲合奏”と言い、これが江戸時代の室内楽のスタンダードだったそうです。このあと三味線は非常にたくさん枝分かれしていき、多くの三味線が生まれるとのこと。その中でも、三味線の形態として一番進化した形だという津軽三味線が紹介されます。

津軽三味線奏者・寂空(Jack)氏

ここで、津軽三味線奏者の寂空(Jack)氏が登場。沖政氏によると、三味線は犬や猫の皮を使用しているとのこと。「残酷かもしれませんが、僕らは決して虐待をしたくてやっているわけではありません。これも昔から伝わる伝統で、大切に育まれた文化になりますので、それはそれで知っていただきたいと思っています」と沖政氏は真剣な表情で語りました。近年の三味線は、日本産の犬や猫ではなく、インド産の犬や猫の皮を使用して生産されているとのこと。両国には三味線の皮になった犬や猫のお墓があり、大切にとむらっているそうです。(なお、お墓は三味線のバチの形をしているとのことです)



「津軽三味線はバチが小さくなっていて、激しく早い曲にも対応できるようになっているんです」(沖政氏)ということで紹介されたのは、1987年にタイトーからリリースされたアーケードゲーム『ニンジャウォーリアーズ』のステージ1の曲、「Daddy Mulk」。沖政氏のもとには、ゲーム音楽好きの知人10人ほどから「Daddy Mulk」やって!というリクエストがあったそうです。しかし「Daddy Mulk」で使われている三味線は20世紀になってから生まれた津軽三味線をモチーフにしており、沖政氏が演奏している三味線とは技術的に違う部分があるため、ちょっと困ってしまったとのこと。

「ただ、「Daddy Mulk」は演奏できません、だと格好悪いですからね。じゃあ「Daddy Mulk」をファミ箏でやってやろう!と思って。さて、どうやったら格好いいだろう?……と考えた結果、この壮大な前フリになったというわけです(笑)」と沖政氏は茶目っ気たっぷりに語っていました。



そして演奏された「Daddy Mulk」。寂空氏によって掻き鳴らされる津軽三味線のソロが、素晴らしく熱い演奏でした!

尺八のソロ演奏を披露する神永氏

演奏の中盤には尺八の神永氏が舞台袖から走ってきて、情熱的なソロ演奏を披露。観客からは拍手が巻き起こりました。「Daddy Mulk」の原曲には、ソロパート終了後に「わぁぁぁぁ!」という歓声が入るのですが、会場もそれと重なるほど大盛り上がり!

わぁぁぁぁ!

ソロをやりきった神永氏は満足そうな表情で沖政氏のもとへ走っていき、嬉しそうにハイタッチしていました。

◆岩垂徳行氏を迎えてのコーナー


休憩をはさんで、次は『逆転裁判3』『逆転裁判5』など多数のゲーム音楽を手掛ける作曲家・岩垂徳行氏を迎えてのコーナーです。まずは『逆転裁判3』より「美柳ちなみ~遠い面影」が演奏されます。沖政氏は、この曲で笙(しょう。雅楽などで使用する管楽器)の演奏を披露。涼やかな笙の音色が、艶やかに響く箏の演奏と重なり、しっとり美しいハーモニーが堪能できました。

岩垂徳行氏(左)

続いて、岩垂徳行氏が登場。まず沖政氏は、岩垂氏との関係について語ります。沖政氏が『逆転裁判5』をプレイした際に、九尾村の曲で鳴る三味線がとても綺麗だと思ったとのこと。さらに沖政氏の三味線の生徒も『逆転裁判5』が好きだとのことで、その生徒の練習曲に九尾村の曲を使用させてください、と岩垂氏に直接連絡し、快諾を受けたのだそうです。

岩垂氏はファミ箏の演奏について、「まさか、天魔太郎の曲まで聴けるとは思わなかったなぁ。本当に、ファミ箏は予想を上回る演奏ですね」と絶賛。また岩垂氏は、ファミ箏の良さについて、「日本人でさえ普段あまり見る機会のない和楽器の演奏を生で見る楽しさ、これに尽きるのではないだろうかと思います。と語りました。

「せっかくの機会なので、岩垂氏の新しい作品にも挑戦したいと思います」(沖政氏)ということで、2014年に岩垂氏が音楽を担当したアプリゲーム『城姫クエスト』の楽曲8曲が組曲形式で演奏されました。純和風のゆったり美しい曲から始まり、テンポの早いバトル曲など、尺八、箏、三味線が織りなす雅なハーモニーが会場を包み込みました。

『城姫クエスト』は、日本中のお城を美少女に擬人化したゲームとのことです。沖政氏によると「岩垂さんの曲がとても格好いいので、皆さんもプレイしてみるといいですよ。お城を制圧すると、ちょっとエッチなイラストを見られたりします(笑)」とのことなので、ご興味をお持ちの方はプレイしてみてはいかがでしょうか。

◆和楽器の今に挑む! 『聖剣伝説3』メドレー


演奏会のラストを飾るのは、『聖剣伝説3』メドレーです。沖政氏によると「僕はSacrifice Part Threeがどうしても弾きたかったんです」とのこと。「でも、Sacrifice Part Threeだけ弾くのは“逃げ”じゃないか?と、僕の中の何かが問いかけてきて……。どうせなら全部演奏しようとしたんですが、Saclifice Part Twoをどうするか、すごく悩みました」と明かします。

「今回の『聖剣伝説3』メドレーでは、楽器のあらゆる可能性を試す、現代音楽や前衛音楽の手法を取り入れて“和楽器の今”に挑みます。Saclifice Part Oneから始まり、前衛音楽の技を駆使してSaclifice Part Twoに挑み、Sacrifice Part Threeに到達してクリアして、“和楽器の今”を表現したいと思います」と、沖政氏は並々ならぬ思いを語りました。

幻想的な緑に染まるファミ箏メンバー

そして演奏がはじまります。深い森を思わせる、幻想的な緑色の光で照らされるファミ箏メンバー。ゲーム起動時の際のジングル「Not Awaken」から始まり、オープニングの「Where Angel Fear To Tread」の旋律が、尺八と箏でしっとり奏でられます。後半は一転してテンポが速まり盛り上がりを見せ、疾走感あふれる流麗な演奏が繰り広げられました。



いよいよ始まるラストバトル。バトル直前のイベントで流れる楽曲「Saclifice Part One」は、ゆっくりした尺八の旋律をメインにしたスローテンポな演奏で、決戦前の不穏な緊張感が、じわりじわりと醸し出されます。十七絃の端の、普段弾くことがない部分を弾いて出していた「ヒョロロロ……」という音も、より恐怖感を引き立てていました。



続いては「Saclifice Part Two」。沖政氏の「前衛音楽の技法を駆使します」という宣言通り、尺八は底の部分を手で叩き、箏は手を下から入れて底の部分を叩き、和楽器をパーカッションのように使って演奏されます。呪術の儀式を思わせるような妖しくも魅惑的な音世界に、観客はグイグイと惹き込まれていきました。そして辿り着いた「Sacrifice Part Three」。掻き鳴らされる箏と三味線、伸びやかな尺八が一体となって創りだされる壮麗なハーモニーは、神々しささえ覚えるほどの美しさでした。



最後は「Breezin」。『聖剣伝説』シリーズの象徴的な音楽と言える、『聖剣伝説2』の「天使の怖れ」のメロディも入り、やさしく穏やかな旋律が静かに奏でられます。演奏が終了した瞬間、観客からは万雷の拍手が送られました。ファミ箏メンバーはそれに応えて深々と一礼。拍手に包まれながら、幕を閉じます。しかし、拍手は鳴りやまずに続きます。

◆アンコールは、『ライブ・ア・ライブ』と『ゴエモン』!


拍手に応えて再び幕が開き、アンコールとして披露されたのは『ライブ・ア・ライブ』の幕末編で流れる2曲、「密命」と「殺陣!」です。幕末編は、主人公の1人である若き忍者「おぼろ丸」が、密命を受けて尾手城(おでじょう)に忍び込むというシナリオ。原作でも和楽器が印象的な曲でしたので、この選曲には「オッ!」と思った方も多いのではないでしょうか。沖政氏によると、2014年は『ライブ・ア・ライブ』の発売20周年ということで、演奏の機会をこっそりずっと狙っていたのだそうです。「だから、ツイッターで“ラブライブもいいけど、ライブアライブもいいよね”と言い続けていました」と笑う沖政氏。

続いて演奏されたのは、ファミコン版『がんばれゴエモン2』より「江戸城BGM」。ゲーム終盤の日本橋までたどり着いたところで流れる曲です(『がんばれゴエモン! からくり道中』のステージ1でおなじみの楽曲がアレンジされたものです)。下町情緒あふれるメロディが、軽快に奏でられました。最後に、あたたかくも寂しさをまとう旋律が演奏されはじめます。

「またね!」

沖政氏が「本日はありがとうございました。多くの皆様にご来場いただき、本当に嬉しく思っております」と観客に感謝の言葉を述べます。続いて沖政氏は、「この曲は、“またね”という曲です」と曲名を紹介し、「またね~!」と明るく手を振ります。ファミ箏メンバー全員が手を振り、あたたかい拍手に包まれながら、演奏会は幕を閉じたのでした。

◆おわりに


“異議あり”ポーズで記念撮影!

というわけで終演したファミ箏は、和楽器の雅な演奏を存分に堪能できた楽しい演奏会でした。伝統ある和楽器で、日本生まれのゲーム音楽を演奏する……。これぞ、ひとつの純粋な“日本の音楽”の姿だと言えるのではないでしょうか。特に、『聖剣伝説3』メドレーでは前衛音楽の手法を取り入れるなど、従来の和楽器という枠に囚われず、非常に挑戦的な演奏だったのが印象的です。古来より伝わる伝統文化を大切にしながらも、新しい挑戦を続ける姿勢が素晴らしいと思います。「和楽器ってこういう音も出せるんだ」と純粋に驚いたと同時に、和楽器のさらなる可能性を感じました。ファミ箏のいちファンである筆者としては、次はどんなことをやってくれるのか、次回の公演が楽しみです。

なお、ファミ箏は、株式会社2083と公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団が主催する4年に1度のゲーム音楽フェス『4starオーケストラ2015』にも出演が決定したとのことです。『4starオーケストラ2015』は、2015年の5月3日から5日にかけて、東京都八王子市で開催されます。演奏曲などの情報は、これから2083の公式サイトで随時公開される予定ですので、ご興味をお持ちの方はぜひチェックのうえ、足を運んでみてください。

http://www.2083.jp/4star2015/

■ファミ箏 CD情報
ファミ箏の演奏を収録したCD「初弾」が、2083オンラインショップで発売中です!

●収録曲:
MOTHER EARTH、POLLYANNA、EIGHT MELODIES /『MOTHER』より
ザナルカンドにて /『ファイナルファンタジーX』より 

Photo by Yutaka Nakamura
《hide/永芳英敬》
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