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【今から遊ぶ不朽のRPG】第9回 SFC『新桃太郎伝説』(1993)

今回紹介するのはSFCの『新桃太郎伝説』。1993年にハドソンから発売された本作は、前作の6年後を描いた正式な続編であり、2011年に同社がコナミの子会社となるまで続いたシリーズを代表する本格RPGです。

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今回紹介するのはSFCのRPG『新桃太郎伝説』。1993年にハドソンから発売された本作は、前作『桃太郎伝説』の6年後の世界を描いた正式な続編であり、2011年に同社がコナミの子会社となるまで続いたシリーズを代表する本格RPGです。




PCエンジンで発売された『桃太郎伝説II』を大幅にリメイクする形で制作された本作。過去シリーズに登場したキャラクターが勢ぞろいしているほか、『桃太郎電鉄』のようなソフト路線とは対照的にシリアスな作風が特徴です。

* * * * *


◆今手に入れるなら



SFC本体の発売から2年後のタイトルでありながら、中古市場にはいまだ相当数のカートリッジが出回っており比較的容易に入手できます。価格は状態にもよりますが、筆者が訪ねた都内のレトロゲームショップでは箱無しで概ね1500~2000円程度、箱有りで3000~6000円程度での購入が可能です。

◆ゆるふわな世界観と辛辣なシナリオ描写



原作はさくまあきら、キャラクターデザインを土居孝幸が手掛ける『桃太郎伝説』シリーズは、おとぎ話をテーマにしていることからもソフトな作風でおなじみ。本作もその例にもれないビジュアルで描かれており、ドット絵のキュートな登場人物たちが画面上を走り回ります。そんな見た目の印象とは対照的に、シナリオはシリアス路線を地で行く硬派な作品に仕上がっています。

同シリーズでは、たとえ鬼であっても命を奪わないという建前から「倒す」のではなく「こらしめる」という表記が用いられ、キャラクターが死亡する際もこれまではダイレクトな描写を避けてきました。しかし、本作では人間や鬼に関わらず登場人物の死亡シーンが含まれており、他の作品と比べてよりリアリズムに傾倒。そのほか、子供向けらしからぬ陰惨なイベントが用意されているなど、ソフトな世界観とは裏腹にシナリオは重厚感を帯びています。

◆ゲームシステム


戦闘インターフェイスでメッセージウインドウではなく背景に直接情報を表示するスーパーインポーズ

本作は一般的なターン制バトルを採用したオーソドックスなRPGですが、原作者さくまあきらが考案した5つのゲームシステム、タクティカル・ウェザー・バトル、ヴァリアブル・メッセージ、ベベルビュウ・マップ、アクティブ・ウォーキング、スーパーインポーズが最大の特徴です。

中でも特筆すべきは、戦闘毎に一定の確率で天候が変化するタクティカル・ウェザー・バトル。天気が日照り、日本晴れ、晴れ、雨、雷雨、雪、時化の7種類に変動し、屋外の戦闘のみ影響を受けます。各キャラクターにはそれぞれ得意・不得意が設定されており、好条件下ではステータス上昇のほか、体力の自然回復や消費技数の減少といった恩恵を受けられます。


フィールドを斜め上から俯瞰で見下ろすベベルビュウ・マップ

苦手な天候下ではその真逆に働き、キャラクターによっては行動不能になることも。さらに、雷雨下では稲妻の術が強化されるなど、ダメージ補正にも大いに影響を与えます。天候は特定のアイテム使用で任意に操ることが可能なほか、種類によって能力が上下する敵も存在するため、戦闘を有利に進める上では欠かせない要素の1つです。

ヴァリアブル・メッセージは同行しているパーティーメンバーによってストーリー上での台詞が変化するシステム。総勢19人の仲間キャラクターごとにユニークな会話が用意されており、データ容量が技術的に厳しく制限されていた当時のゲームとしては比較的豊富なテキストボリュームでした。


仲間キャラクターが主人公の後ろに列をなさず自由に動き回るアクティブ・ウォーキング

加えて、フィールドを斜め上から俯瞰で見下ろすベベルビュウ・マップや、仲間キャラクターが主人公の後ろに列をなさず自由に動き回るアクティブ・ウォーキング、戦闘インターフェイスでメッセージウインドウではなく背景に直接情報を表示するスーパーインポーズも当時は一般的な概念ではなく、90年代初頭のSFC黎明期を支えた斬新なゲーム要素といえるでしょう。

そのほか、一定の確率でキャラクターが強くなる絶好調システムや買い物が安くなる人気度システムも本作のユニークな特徴。絶好調のキャラクターは能力値が一時的に上昇するほか、敵の攻撃を防いだり高確率でクリティカルヒットを繰り出せたりと、戦闘において大活躍します。また、強敵の打倒といった勇敢な行動や人助けといった善行をこなすことで主人公の人気度が上昇。高ければ高いほど割引価格で買い物ができますが、戦闘から逃げ続けるチキンプレイやヒーローらしからぬ下衆な言動で減少します。



余談ですが、戦闘中に術やアイテムで体力を回復させる際、行動前に戦闘不能に陥る負のスパイラルを防ぐためにキャラクターのはやさが1.5倍になる本作の仕様は、『大貝獣物語』『天外魔境ZERO』といった同社の他作品に継承されています。また、前述の絶好調システムや本編に収録されたミニゲームのいくつかが『桃太郎電鉄』シリーズの一部で再び登場しているように、ハドソンブランドの元ネタとなった要素が少なくないのも本作の特徴です。

◆仏教思想に基づくテーマと黎明期の開発事情



本作の世界観は仏教思想をモチーフにしており、物語のテーマは救済と解放。釈迦の教えを厳格に実行することで自己の救済を追求する上座部仏教と、利他行の精神をもって一切衆生の救済により自身の成仏を目指す大乗仏教の対比を、厳格な実力主義社会で生きる鬼たちと人助けを重んじる桃太郎一行の対立によって描いています。必ずしも勧善懲悪としてではなく、等しく苦悩する生きとし生けるものとして、鬼と人が手を取り合って共存の道を探っていく物語です。

しかし、作中に登場する「しょうけら」や「きなこぼう」といった一部の敵は、倒すことで体力や技の数を回復したり呪いを解いたりでき、利他行を重んじる大乗仏教の精神に矛盾します。攻略本「桃太郎伝説 速攻本」によると、これは本作の制作期間が実質4か月しかなかったために、適切な難易度の調整のため設けざるを得なかった仕様であるとのこと。家庭用ゲームが大衆化されていくSFC黎明期に開発者が抱えていた苦悩も等しく垣間見える部分です。

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数多のSFCタイトルが世に放たれた90年代初頭、わずかな時間で開発されたにも関わらず高い完成度と斬新な作風でシリーズの歴史にその名を刻んだ本作は、まさにSFCの黄金時代を飾るにふさわしい代表作の1つ。『桃太郎伝説』シリーズやその他のハドソンブランドのみならず、当時のゲーム業界を牽引した国産タイトルを語る上では欠かせない、不朽のRPGといえるでしょう。

記事提供元: Game*Spark
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