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国内インディー金字塔がPS Vitaに!『LA-MULANA EX』ピグミーとNIGOROにインタビュー

ソニー PSV

2011年にWiiウェア、2012年にPCでリリースされ、日本のインディーゲームの代名詞として評価されてきたハードコア2Dアクションゲーム『『LA-MULANA』。12月17日に『LA-MULANA EX』として新たにPS Vitaから発売されます。

寺田克也氏描きおろしの新アートワーク。


今回は、移植を手がけたピグミースタジオの小清水史氏と共に開発者NIGOROのメンバーが全員揃って編集部まで来ていただけました。新しく生まれ変わった『LA-MULANA EX』のレポートと共にインタビューをお届けします。

◆まったく違和感のない操作性と画面


PS Vita実機で触れてみた『LA-MULANA EX』は、PC版をプレイしたことがある筆者でも何の違和感もなく入っていけました。画面比率は4:3と変わりませんが、美しいドット絵は原作通りに再現され、むしろ最初から携帯機のゲームとして存在していたような印象を受けました。

操作性に関しても極めて良好。方向キーでもアナログコントローラーでもすぐに遊べます。NIGOROによれば、もともとWiiウェア版をリメイクするときに様々なコントローラーで快適に遊べるように念入りにチューニングしたそうです。そのため、今回のPS Vita版でも違和感のない操作性が実現されています。



また新しいフィーチャーとして「キャラクター図鑑」が付け加わりました。キャラクターに話しかけたり、敵を倒したりするとアンロックされる図鑑となっており、ゲーム内のメニューから見れます。図鑑にはドット絵だけではなく、描きおろしのイラストとテキストが掲載。NIGOROのならむら氏によれば、現在制作中の『LA-MULANA 2』につながるような設定も含められているそうです。

難易度などは当然、据え置き。これまでどおり凶悪なトラップが立ちはだかるハードコアな2Dアクションゲームです。ただ多くの点で調整を見直し、これまで以上に遊びやすい内容になっているそうです。このあたりについてはインタビューでじっくりとお聞きしました。

◆PS Vitaへの移植の経緯



――本日はわざわざありがとうございます。NIGOROのならむら氏、duplex氏、サミエル氏の3人が揃っているのは珍しいことなのでじっくりとお話を聞かせてもらいます。まずは今回の移植の経緯を教えていただけますか?

小清水:
『LA-MULANA』を知ったのは、5年前です。その時に既に移植したかったのですが、PS Vitaがまだ普及していなかったので見送りました。それから2、3年後にまたお話する機会がありました。当時はスマートフォンのソーシャルゲームが大流行していたので、あえてガチなアクションゲームを出したいなと思っていました。コントローラーで遊ぶゲームよりもタッチして遊ぶゲームに流れているところに、アナログコントローラーでガチャガチャ遊べるようなものを出してみたい。そういうタイミングで決まりました。

ならむら:
最初は5年前ですからWiiウェア版がリリースしていない時でしたね。当時はまだプレイステーションがインディーをプッシュするという動きもありませんでしたし、その時はWiiウェア版の移植で大変でした。でも今回は完全にピグミースタジオさんに任せる形でリリースできて良かったと思います。内容もPS Vita版の『LA-MULANA』として独立したものにしたいということで、『LA-MULANA EX』と名前を変えた専用バージョンになりました。

――以前からピグミーさんはインディーゲームのPS Vitaへの移植をしていますよね。その流れもあったのですか?

小清水:
プレイステーションのプラットフォームでインディーゲームをリリースしていく動きは、かなり昔からソニーさんと話し合っていました。当然、『LA-MULANA』は日本を代表するインディーゲームであるので、これは世に広めようと思っていました。今ではソニーさんはインディーゲームを積極的に売り出していまし、私たちのインディーゲームもこれで4作目になります。ラインナップが揃ってきたところで、『LA-MULANA』のような大作をリリースできて良かったです。

――ボリューム的にも大作ですからね。

小清水:
私はこのゲームはロックだと思っています(笑)。信念を貫いて、2Dのアクションゲームにこだわって作っている。なので、このゲームを遊んでもらうことで、今のゲームはどうなのかということを見つめなおしてもらいたい

◆最終調整が加えられたリマスター版



――今回のPS Vita版で力を入れた点はどこですか?

ならむら:
最初はドットが滲んでしまうかもと心配しましたが、しっかり見えましたね。UI部分はライフバーを大きくするなど多少の調整はしています。PC版は長い間、調整してきて、これ以上いじるとこはないと思っていましたが、PS Vitaのためにもう一度見なおしました。

――具体的に調整した部分はどういったところですか?

ならむら:
例えば、Wiiウェア版ではプレイヤーの導入として「メール」という機能を入れました。今回もゲームプレイでつまりやすいところを、プレイ動画を見て洗いだしました。さすがにボスまで一本道にするとか、お金がたまりやすいとかそういうことはしたくない。難しくするとか優しくするとかではなく、迷いやすかったところを親切にした。具体的には妖精を呼び出して謎を解く「鍵妖精」という要素がありました。ただゲーム中に反応するところは5、6個しかないんですね。妖精が何のためにあるのかわからない人もいたので、今回は壊してない壁があるとそこで反応するようにしました。

難しくしたところもあります。プレイ動画でみんな謎解きせずに力技で進んでいるところなんかは手順を踏まないと解けないように作り直しました。既存のファンの方はフリーゲームの時に遊びつくして、Wiiウェアでも遊んでPCでも遊んでいただいています。そういう方にはPC版の残っているバグをつぶすと、RTAの記録とかが変わってきますよね。なので、PC版のバグは残していますが、PS Vitaでは取り除きましたインチキなショートカットはできなくした分、ボスまでの道のりは短くしている部分もあります。

――調整のためにプレイ動画をかなり参考にしているんですね。

ならむら:
とても参考にしています。大手のタイトルの場合、1本のゲームをリリースした後、2、3年も付き合っていくことはないと思います。だからプレイ動画を利用したこういった調整の仕方もインディーだからこそできたことですね

――デジタルリマスター版という感じですね。新しいハードに合わせてチューニングした。

サミエル:
そうです。録音技術が上がったので、もう一回マスタリングをした感じです。

ならむら:
既存のファンの方はずっと遊んでいたいという意見が多いんです。例えばPC版だとOSのバージョンが上がると遊べなくなる。でもPS Vitaならずっとどこでも遊べる。

duplex:
あとはトロフィー対応とかもしましたね。

ならむら:
タイムアタックステージもネットワークランキングに登録できます。

サミエル:
新しく追加したキャラクター図鑑は、既存プレイヤーには楽しんでもらえるかなと。設定資料の文章がむちゃくちゃ酷くて(笑)。



ならむら:
無駄なものに真面目な説明書いているという感じです。文章は基本的にWeb担当の方に頼みました。分業にした結果、テキストとか設定が絵とズレていたりするんですが、それもそのままにしてあります。ズレているのは、昔のゲームにありましたよね。パッケージアートに惹かれて買ったらぜんぜん違ったとか、ああいうの大好きなんで(笑)。

――サウンドなどはどうですか?

サミエル:
ちょっとだけ音質が上がっています。耳が良い人は区別が付くかも。

ならむら:
PC版は開発環境の音そのまま録音していますが、その後、サントラを作るときに実は手を入れています。今回はその音を利用しました。

あとはライフバーを画面の外側に配置しようかとも考えたのですが、ちょっと余裕がなかったんです。結局、この画面比率ですべてをデザインしたので、ひとつ変えると大変になる。そこで時間を食うよりも、違う部分の調整に力を入れた方がいいかなと。そこ例えば、体力回復するこの温泉なんかは広くなって看板が付きました。結果、非常にわかりやすくなっています。スタート地点も遺跡の方向を示す看板付けました。スタートしたらどっちにいくのもプレイヤーに自由なゲームだったのですが、遺跡に入ることすらできな人もいるんですよ。

――僕も最初にプレイしたときひたすら左にいっていましたよ(笑)。

ならむら:
そういうところで迷ってもらいたくはない。だからといって画面に矢印でピコンピコンと出すのは無粋。『LA-MULANA』の世界観に合うようにドット絵の看板を入れたのです。斬新な変化はなく、山のような些細な修正だらけです。

◆新たにパッケージされたジェネシス版!?



――海外でのリリースはどうですか?

小清水:
日本は12月17日ですが、海外は1月中旬を予定しています。海外はRising Star Gamesがパブリッシングします。ソニーのアメリカの方にかなり力を入れていただいています。このゲームでPS Vitaを普及させると意気込んでいるくらいです。

――海外のPS Vitaはインディーゲームのプラットフォームになりつつありますね。

小清水:
海外は既に熱心なファンがついています。東京ゲームショウでも海外からの反響は大きかった。他方、日本は実況プレイヤーの方にイベントでプレイしてもらっています。

ならむら:
今までプロモーショは自分たちでやってきたんですが、今回は完全にピグミーさん任せです。なのでプロモーションも我々が思いつかなかった新しい要素がいろいろとあります。

小清水:
今回のイメージビジュアルを特別に作りました。



サミエル:
寺田克也さんに書いてもらったんですよ。

――これ描きおろしじゃないですか!?

ならむら:
我々からは絶対に頼まない人ですね。

小清水:
これは僕の方からロックな感じでお願いしますと頼んだのです。

――すごくかっこいいですね。ぱっと見、『LA-MULANA』ってわからないじゃないんですか(笑)。

サミエル:
この絵の長老のイメージで始めたら、ゲームに出てこないってなりますよね(笑)。

――海外の人も大喜びですね。

ならむら:
僕としてはムーブルクがこんなに美人だったら困るんです。遺跡の中で眠っていた少女がそんなに美人なんて納得いかない(笑)。

小清水:
寺田克也先生にはいつものタッチではなく、ちょっとアメコミ調で描いてもらいました。サイトデザインもゲームという感じではなく、ちょっと凝ったデザインです。これもロックなんです(笑)。実際にロックのアートワークを手がけたデザイナーの方にお願いしているんです。ロゴも新しいのを作りました。

ならむら:
僕としてはアメリカいくとパッケージが変化するのを味わえたらいいなと思っています。『ロックマン』が『Mega Man』になるみたいな。

サミエル:
パッケージでいうとメガドライブに対するジェネシス版ですよね!

ならむら:
ジェネシス版をアメリカのトイザらスで買ってきたぞってね。

◆クラウドファンディングで開発中の『LA-MULANA 2』に向けての



――PC版をリリースして2年以上経ちましたが、これまでを振り返るとどうですか?

サミエル:
正直、今回もテストで通しプレイをして、いい加減やりたくない(笑)。何回クリアしているんだって感じです。俺は特に謎解きとかではなく、ボス戦のチューニングをやっていたので、しばらくやらないと下手になっているんです。死ぬわけがないところ死ぬ。その状態を何度も繰り返しているのに、『LA-MULANA 2』もやらなきゃいけない。もう新しいプレイヤーがどう感じるか全然わからない。

duplex:
言いたいことはほぼ全員言われましたね(笑)。自分はVita版をほとんど触っていないから言えることもないです。ずっと新作の方にかかりきりだった。

ならむら:
確かに普及しきったとも感じますが、コンシューマではまだまだ未プレイの人はいると思います。実は今回のVita版で初めて『LA-MULANA』を通しプレイでクリアしたんですよ。これまではデバッグモード使ってやっていたんですが、今回は初めて。まあ無敵モードにしましたが(笑)。自分で手を入れるものとしては、最後というつもりで仕上げました。総決算というわけではないが、最終調整版といえるものです。早く違うものを作りたいんですけど(笑)。次は『LA-MULANA 2』でもう勘弁してくれよっていう感じ。

duplex:
自分で作るって言うたんですよ!

ならむら:
続編の間に他のものも作りたかったんです。でもKickstarterで資金を集めた以上、『LA-MULANA 2』を作らなきゃいけない。作り始めるとそれ以外のネタがボンボンと思い浮かぶ。ただこうした形でリリースできるものがあって良かったです。続編を作り始めると1、2年は沈黙してしまいますから。

――この前のコミックマーケットでは同人ゲームの『ファタモルガーナの館』とコラボレーションしていましたよね。

ならむら:
あの企画も向こうから声をかけられました。僕ら主体で何かやるのはちょっと無理なんですよね。お金集めちゃった手前、早く『LA-MULANA2』を作れって言われますから。

――それで揉めているプロジェクトはいくらでもありますからね(笑)。

サミエル:
ありますよね。「なんで集めたお金で別のゲーム作ってるんだ!」という(笑)。

ならむら:
かといってKickstarterのBackerにクローズドな情報ばかりだしていると周りから活動が見えない。

――確かにその辺はクラウドファンディングの難しいところですね。『LA-MULANA 2』で支援者のフィードバックを取り入れているんですか?

ならむら:
アルファ版のプレイ動画は公開OKになっています。というのは、プレイ動画を見てフィードバックを得るはとても有効な手段だと思うんですよ。謎解き系のゲームでこんな事する人はいないと思うんですが、バランスが悪い点などはリリース前に治せます。

――プレイ動画やKickstarterといったものが登場した結果、ゲームデザイナーとしてのならむらさんの考え方は変わってきたのですか?

ならむら:
そうですね。取材や講演でゲーム作りの理論について発表してきましたが、実は『LA-MULANA』のリリース後に気づいたことばっかりです。例えば、プレイヤーを喜ばせてからトラップしかけるのは、作っている当時は気づいていなかった。でも動画でみんなが悶絶しているところを見て、喜びで気を抜いているときにトラップを仕掛けられてショックを受けているのだと再確認したのです。ユーザーの話を聞けばそれだけ成長が速くなる。なので実況動画はぜひともやってほしい。発売日の次の日にクリア動画とか上げもらってもぜんぜん良いです。やれるもんならやってみろと。

小清水:
実況プレイとしてもネタになりやすいゲームだと思います。いろんな死に方があるので。

ならむら:
リアクションが面白い人にやってもらうと面白いですね。

◆海外へ発進する国内インディーゲーム



――先日、『アスタブリード』を開発したなるさんにインタビューしたのですが、その時、同人ゲームから見るとNIGOROの方々は「大人」に見えるということを言っていました。

ならむら:
僕らを見て大人と言うのは、もうちょっと社会を知った方がいい(笑)。僕ら自身、両親から早くしっかりしろと言われてきた。

サミエル:
こんなおかしい人たちを大人だというのはおかしい(笑)。

――あのときは同人の世界から見ると他のインディーゲームの人がどう見えるかという話でした。

ならむら:
僕らが「同人・オブ・ザ・同人」と言われる感覚はなんとなくわかります。ずっとやりたいことをやってきたわけですから。ただ僕がWiiウェアでリリースしようと思ったのは既に30歳を過ぎていた。20代で若気の至りって言ってられないし、勢いだけでなんとかなるわけではない。だから計算してやってきた部分はある。そういうところは大人なのかもしれない。

――あともうひとつはNIGOROの皆さんはKickstarterに挑戦したということもありますが、ユーザーとのコミニケーションが濃厚ですよね。実況動画とのやりとりもあります。でもなるさんもうちょっとプレイヤーと距離を置いています。

ならむら:
ユーザーとのコミュニケーションという意味では、僕は昔からホームページを立ち上げてめんどくさいやりとりも繰り返してきました(笑)。そういうのはかなり慣れています。でもNIGOROを始めた頃は顔をだすのも嫌だったし、KickstarterのPVで坂から転がるなんて思ってもいなかった。迫られてやっているんですよ。最初から体を貼るつもりではなかった。その都度その都度苦悩してやったきた(笑)。

サミエル:
という設定です(笑)。

――しかしながらNIGOROの魅力はゲーム自体だけではなく、クリエイターの皆さんが下らないことも含めて何かをやってくれるというところにもありますよね。

ならむら:
面白かったと言われると調子に乗ってくるタイプです。そういう意味では人の意見は聞きたがる。

――そこはなるさんと違うタイプのクリエイターのように感じますね。

ならむら:
でもなるさんとは今年、PAX Eastに一緒に行きました。そこで外人がプレイするのをまじまじと見て意識も変わったのではないかと。やはり経験を積んだら変わっていくかもしれない。

――そうですね。今後も日本のインディーとしてどんどん外に出て行ってほしいですね。

ならむら:
そういう挑戦を一緒にやってくれる仲間が増えるとうれしいです。
《今井晋》

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