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ゲーム開発者はコミュニティを通して自分を磨くべき・・・IGDA日本理事・松原健二氏が学生向けに語った基調講演

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ゲーム開発者はコミュニティを通して自分を磨くべき・・・IGDA日本理事・松原健二氏が学生向けに語った基調講演
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NPO法人IGDA日本は2月2日、学生向け無料セミナー「ゲーム開発の潮流とコミュニティ活動」を開催しました。会場ではIGDA日本の理事や専門部会(SIG)世話人ら14名が登壇し、各分野における現状や動向を解説すると共に、学生向けのアドバイスなどを披露しました。セミナーにはゲーム業界志望の学生が約70名参加。正午から午後6時過ぎまでという長丁場だったにもかかわらず、ほとんどの学生が熱心にメモを取るなどして、真剣な面持ちで受講しました。

セミナーはIGDA日本理事で、コーエーテクモホールディングス代表取締役社長、ジンガジャパン代表取締役CEOなどを歴任し、現在は東京大学特任研究員をつとめる松原健二氏の基調講演「ゲーム開発者のコミュニティパワー」を皮切りにスタートしました。学生向けの内容にとどまらず、広くゲーム開発者に向けたメッセージを含むものでしたので、本稿でレポートしましょう。

大学卒業後に日立製作所に入社し、その後日本オラクルを経て旧コーエーに転職したという、異色の経歴を持つ松原氏。その松原氏が「コミュニティ」の存在を実感したのは、1992年に米シリコンバレーで参加した半導の体学会「Hot Chips」だったといいます。当時、松原氏はメインフレームやスーパーコンピュータのCPU開発を手がけており、その発表に赴いたのですが、そこで驚きの光景に出くわしました。

というのも会場では学会が始まる前から、参加者が大学や企業などの枠を越えて雑談したり、親子ほども年が離れたエンジニアが最新技術について議論するなどの光景が、そこかしこで見られたのです。いずれも日本の学会ではまったく見られないものでした。「熱く語り合う人が多い」「業界全体がつながっている」ことに衝撃を受けた松原氏は、これがコミュニティのパワーだと実感させられたと言います。

当時はインターネットや電子メールが一般化する前夜でした。にもかかわらずシリコンバレーでは、多くのエンジニアや学術研究者が学会やカンファレンスなどを通して交流し、知見を共有する文化があったのです。こうした知見にインターネットが触媒となり、いわゆるIT革命がブレイクしました。

ひるがえって日本ではバブル経済が崩壊したとはいえ、まだまだ大手企業を中心に、年功序列と終身雇用が常識だった時代です。そのためコミュニティは企業内に閉じ、知の伝達も上司から部下への一方方向に留まっていました。その後の成長力の違いは言うまでもないでしょう。GDCもまた、こうした文化を背景に誕生し、成長してきたと言えます。

続いて松原氏は現在のゲーム業界に話を移しました。ゲーム業界の特徴を経営者視点で見ると、「ヒット作が出るとすごいが、予測が立てにくく、変化が激しい」ことだといいます。例に挙げられたのがガンホー・オンライン・エンターテイメントとコロプラで、どちらも近年急成長しました。ともに『パズル&ドラゴンズ』『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』というヒットタイトルが業績に大きく貢献したのは、言うまでもありません。

しかし、現実問題としてヒットするタイトルは一握りです。自信を持って出したゲームが低迷する一方で、思いがけないヒット作が出ることも日常茶飯事。経営者側からすれば、こうした状況を織り込んで事業計画を組み立てるのが一般的です。しかし、プロデューサーや開発チームからすれば、自分たちのゲームをいかにヒットさせるかが、キャリアに大きく影響します。しかも、求められる技術は常に変化していきます。その結果、開発者の中には神経がすり減ったり、将来を不安視する者も少なくありません。

このように一見すると華やかですが、その反面で厳しい部分もある業界で、ゲーム開発者ができることは何か。松原氏は「結局は、自分を磨くことしかない。そのためには個々人が開発者コミュニティを活かしてほしい」と投げかけました。

■ゲーム開発者がコミュニティ活動で注意する点とは?

実際、あらゆる企業がオープンコミュニティと共存を図ろうとしています。ゲーム業界でもCEDECやIGDA日本をはじめ、さまざまなコミュニティが存在し、毎週のように勉強会が開催されています。ただし松原氏は、ゲーム開発者がこれらの活動に参加する上で、注意点もあると釘を刺しました。

第一に、コミュニティに対する温度差が企業によって異なることです。大手の中には「新卒は社内で教育するため、会社外の動向は知らなくても良い」とする企業もあります。そうした企業はえてして、人材育成のシステムが充実している場合が少なくありません。一方で中小やベンチャー企業の中には社内に余裕がなく、社員一人ひとりがコミュニティに参加して、自分で勉強しなければ成長が望めない場合もあります。どちらが良いというわけではなく、企業にあった立ち振る舞いが求められるのです。

また「常に仕事を最優先に考えて、あまった時間でコミュニティ活動に参加する」ことも重要だと指摘されました。これらを忘れると、業務で失敗したときの理由に社外活動が使われてしまうこともあると言います。前述したとおり、プロジェクトがヒットするか否かは、多分に偶然の要素も絡んでいます。しかし本業に集中していない(ように周囲から見える)と、「そんな暇があったら、目の前の仕事に集中してくださいよ」などと、嫌みの一つも言われてしまうというわけです。

ポイントは「本業があり、社外活動を通して刺激を受け、本業に活かす」サイクルを生み出すことこと。そのためには勉強会などに参加したら、必ず他の参加者と交流して、情報を交換することが重要だと指摘しました。セッションの感想でも、自分が抱えている業務上の課題でも(もちろん守秘義務契約に抵触しない範囲で)何でもいいので情報を発信することで、それ以上の対価が得られます。このようにコミュニティへの参加を通して「出会い」「共有」「気づき」を重ねながら、自分を磨いてほしいと言います。

そのうえで、自らもゲーム開発者コミュニティの一員として「ゲームを作ってきて良かった」「もっと楽しいゲームを作りたい」と思えるような環境作りに、より邁進していきたいと抱負を語りました。

なお、学生向けセミナーという性質上、就職活動について次のようなアドバイスも補足されました。曰く「他業種に比べると、まだまだ狭い門であること」「新卒に期待するのは可能性なので、しっかりと基礎学力を身につけて欲しいこと」「ゲームの知識や経験はあって当然、そのうえでゲーム以外の幅広い知識と経験が求められること」「進路希望について必ず両親に相談すること」の4点です。

特に「両親と相談すること」については冗談で済まされないそうです。昨今では状況も変わってきましたが、まだまだ「終身雇用・年功序列」という価値観や、それによる恩恵に属している年配者もいます。格安の独身寮・家賃補助・財形貯蓄・住宅ローン補助・子会社出向・企業年金などを享受していくと、ゲーム業界のような浮き沈みの激しい業界が、不安に思えるのも道理でしょう。松原氏は今と昔では時代が違うと切り捨てるのではなく、きちんと両親と向き合って、話し合うことが大切だとまとめました。

このように講演では、ゲーム開発者が社内コミュニティだけに安住するリスクについて述べられましたが、学生が所属するコミュニティは、社会人よりもさらに狭い傾向にあります。学校とは年齢も経験も同程度の、均質化された集団が集められる場だからです。それだけに就職して、所属コミュニティが学校から企業に移るだけで、コミュニティが拡大するように感じがちです。松原氏の講演はそうした、今まさに社会に居場所を作ろうとしている学生に対して、より幅広い視野を持つことの重要性を諭すものでした。ひるがえって社会人にもまた、有益な内容だったと言えるのではないでしょうか。
《小野憲史》

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