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【ファミコン生誕30周年企画】僕と祖母と『ドクターマリオ』

今、筆者の自宅には87歳になる祖母がいます。ファミコン生誕30周年企画の記事に悩んでいたところ、隣に座る祖母の顔を見て、昔の思い出を綴ることにしました。他のライターさんとは少し違う視点で筆者なりのファミコンの思い出を書いてみようと思います。

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【ファミコン生誕30周年企画】僕と祖母と『ドクターマリオ』
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今、筆者の自宅には87歳になる祖母がいます。ファミコン生誕30周年企画の記事に悩んでいたところ、隣に座る祖母の顔を見て、昔の思い出を綴ることにしました。他のライターさんとは少し違う視点で筆者なりのファミコンの思い出を書いてみようと思います。

なぜ、祖母が登場するのか・・・。それは後々明らかにするとして、まずは筆者の祖母について紹介しておきます。長崎生まれ長崎育ちで御年87歳。戦争も経験し、被爆者でもありながら、非常に元気で明るく、愉快な女性です。数年前に祖父が他界するまでは長崎県・諫早市に夫婦ふたりで暮らしていました。

筆者が小学生の頃、そんな祖父母の家に帰省するのが毎年夏休みの恒例イベントでした。市営プールに出かけて祖母の握った、母のそれとは違うおにぎりを食べたり、祖父の運転で長崎市内までちゃんぽんを食べに行ったり、東京での日常とは違う体験が新鮮で、とても楽しい時間だったことは今でも鮮明に覚えています。

そんな日々の中でも最も強烈に記憶に焼き付いているのは、仏壇の隣にあるブラウン管テレビでファミコン遊ぶ時間のこと。薄汚れたミカン箱には色鮮やかなカセットがびっしりと敷き詰められ、『グーニーズ』や『ドラゴンクエスト』『アイスクライマー』『スーパーマリオブラザーズ』といったタイトルを良く遊んだものです。

中でも祖母が一番お気に入りだったのが『ドクターマリオ』。なぜ、彼女をそこまで虜にしたのかは今となっては知る由もありませんが、筆者が他のゲームを遊んでいると、リビングからタバコを吸いに現れ、「ピコピコ(=ドクターマリオ)やってもよかね?」と長崎弁で話しかけて、よくよく一緒になって楽しく遊びました。

ちなみに祖母はとてつもない腕前で、小学生の筆者では到底歯が立たなかったことを覚えています。あまりにレベル差がありすぎるせいか、ハンデをつけても完敗。祖母はそのうち1人で遊び始め、僕は隣でずっとその様子を眺めていました。

普通の小学生なら取られたと怒りそうなものですが、余りに楽しそうに遊ぶ姿につられて、こちらも楽しくなり一緒になってレベル24をクリアするまでワイワイ騒ぎながら楽しんでいました。

小学生の頃は、毎年遊びに行っていた長崎にも中学生になる頃にはすっかり行かなくなり、久々に顔をあわせたのは祖父の葬式でのことでした。「すっかり変わってしまったよ」と親戚からは聞いていたものの、実際に顔をあわせると、その変わりように最初は言葉が出ませんでした。ちょうど祖父が亡くなる直前からアルツハイマー病を発症していたのです。

根が元気でしっかりとした人だった分、余計にその落差が衝撃でした。その後は年々病気が進行し、今ではもはや筆者を孫であるとも認識はしてくれません。4月から筆者の自宅で面倒をみることになりましたが、食事はいつ食べたか分からず、トイレの場所も分からず、鏡の自分に挨拶をする始末。本当に数分前の記憶すらも曖昧で、もちろん筆者と一緒に過ごした記憶もすっかりと忘れてしまっています。

『ドクターマリオ』のようにウイルスをやっつけるだけで治る病ならば良かったものの、残念ながらアルツハイマーに関しては進行速度を遅らせることしかできません。筆者が好きだった頃の祖母はもういないと言っても過言ではないのです。顔も、声も、仕草も全てが同じなのに、まるで別人のようだということが歯痒くなることもしばしばあります。

とはいえ、今でも祖母の隣でゲームをしていると楽しそうに画面を眺めています。テレビ番組を見ていてもほとんど無反応なのに、ゲームに反応するのは、かつて楽しんでいた記憶がどこかに残っているからなのかもしれません。

先日の七夕では通所している介護施設で、「わたしはわたし」と短冊に書いたそうです。元気だった頃の祖母に戻ることは二度とないでしょう。ただ、今いる祖母も紛れもない筆者の祖母であり、切に長生きしてほしいと願うばかりです。

今年の夏は、かつてのように一緒にゲームをする時間が作れればと考えています。残念ながらファミコン版のドクターマリオはバーチャルコンソールで配信されていませんが、できれば祖母が遊んでいた作品を一緒にやりたいと思います。昔の記憶はなくても、筆者を孫だと分からなくても、すぐに忘れてしまっても、それでも新しい記憶を作っていければそれはそれで素敵なことだと思うのです。
《宮崎 紘輔》

タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

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