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【ゲームコミュニティサミット2013】『モンケン』にみる新しいゲーム開発のあり方

本イベントはゲーム開発者コミュニティによる合同イベントであり、黒川文雄氏は黒川塾の主催者として参加。現在、開発中の『モンケン』についての発表を、開発チームの飯田和敏氏、中村隆之氏、納口龍司氏と共に行いました。

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2013年6月22日、東洋美術学校で「ゲームコミュニティサミット2013」が開かれました。本イベントはゲーム開発者コミュニティによる合同イベントであり、黒川文雄氏は黒川塾の主催者として参加。現在、開発中の『モンケン』についての発表を、開発チームの飯田和敏氏、中村隆之氏、納口龍司氏と共に行いました。

改めて紹介する必要はないかもしれませんが、黒川文雄氏は、セガ、デジキューブ、ブシロードなででコンテンツ産業に携わりながら、去年NHN Japanを退職、現在はフリーランスのコンテンツ・プロデューサーです。毎月、エンターテイメント業界を考える「黒川塾」を精力的に開催しながら、インディーゲームとして『モンケン』の開発を行なっています。

■『モンケン』のスタートから現在まで
ベテランのクリエイターたちが開発するインディーゲームの『モンケン』。すでに様々なメディアで報道されてきましたが、黒川氏は今回改めてこのプロジェクトが始まったきっかけについて話しました。

2012年の初夏、NHN Japanに在籍していた黒川氏は、自分でもゲームを作れるのではないかと思いついたそうです。その理由としては、ゲームが多様化してチャレンジできる可能性が広がったこと、ツールやデバイスが浸透して開発が容易になったことなどが挙げられました。さらに黒川氏のまわりには、優秀なクリエイターが存在していたことも重要な点です。

そこで幼い時にテレビを通して見て印象的であったあさま山荘事件を思い出したそうです。この事件をテーマにしたゲームを作ろうと思い立ち、A4で4枚の企画書を作ったそうです。初期の企画書では『鉄球』と題されています。その企画書をまずは飯田和敏氏に見せたのが、『モンケン』の始まりでした。

その後、実際にゲームを開発するために、いろいろな会社に企画書を持っていたそうです。しかしながら、時はソーシャルゲームが大流行していた頃。「カードゲームじゃないの?」、「ガチャ要素はどれ?」といった「生暖かいご支援のお言葉」をいただいたそうです。結果、既存の会社ではなく、自分たちで資金調達することにしました。

時を同じくして海外では、Kickstarterなどのクラウドファンディングがゲーム開発の資金調達方法として注目を集めていました。しかしながら、Kickstarterはアメリカもしくはイギリスの国籍が必要。そのため、国内のクラウドファンディングサービスを利用することにしました。

日本にはクラウドファンディングサービスがいくつか存在しますが、検討を重ねた結果、Campfireを利用することにしました。目標金額は他のプロジェクトの事例を参考に200万に設定。初日に一気に20万円集まりましたが、中盤は支援額が中だるみを起こしました。それでも、6月5日に目標金額に到達、最終的に60日間の支援期間で、201名の出資者から249万円の資金が集められました。この資金調達の成功のポイントを黒川氏は「わかりやすさ」、「しつこさ」、「露出」という三点でまとめています。

しつこさと露出という点では、ニコニコ生放送で定期的に支援を訴える番組を放送、さらに様々なイベントに出席してプロモーションを行いました。「わかりやすさ」という点では、Tシャツがもらえるプランに多くの出資者が集まったことが指摘されました。『モンケン』というプロジェクト自体はそれほどわかりやすくなかったものの、物理的なものが貰えるプランはわかりやすかったのではないかと黒川氏は分析しています。また開発に参加できる限定10名の30000円プランは早期に完売。Campfireでは途中でリワードの内容を変更ができないため、このプランはもう少し多く準備しておくべきだったと述べています。

249万円という金額はCampfireにおけるゲームの事例では過去最高額であり、全体の中でも8位に当たるそうです。現在、Facebookに支援者のみの非公開ファンページを開設、他メディアとのタイアップなども行いつつ、今後もプロモーションを行なっていくそうです。

■ゲームと共にコミュニティを作る
次にサウンドクリエイターとしてゲーム業界で活躍してきた中村隆之氏から、開発中の『モンケン』のデモ動画が公開されました。Unityで開発している『モンケン』は、物理エンジンを利用してクレーンを動かすアクションパズルゲームです。「モンケン」と呼ばれるクレーンの先の重しを建物にぶつけて、テロリストから人質を救うというゲームの内容になっています。Campfireを通して支援をした「モンケンクラブ」の加入者は、すでにこの開発版で遊ぶことができるそうです。

ベテランクリエイターである中村氏がこのプロジェクトに参加したのは、単なるゲーム制作ではなく、コミュニティを作っていくという意図があったそうです。現状のコンシューマゲームでは、すでに存在しているユーザーに合わせたゲームを開発しているため、どうしてもコアユーザーよりになっています。しかしながら、90年代までのゲーム業界は常に新しいユーザー層を開拓してきました。『モンケン』においてもそのような新しいゲームのコミュニティを作ることに挑戦していると、中村氏は述べています。

クラウドファンディングによって出資を行ったユーザーは、モンケンクラブと呼ばれるFacebook上のグループに参加しています。そこでは新しいゲームのアイデアが積極的に提出され、開発チームとユーザーのコラボレーションが行われています。また開発チームも会社ではないため、緩いつながりの中で活動しています。

しかしながら、誰がリーダーシップをとるのか、オンライン上での共同作業の模索、ルーズになりがちなスケジュールと、コミュニティでのゲーム開発には課題がまだまだあります。今後はクラウドファンディング以外のマネタイズやコミュニティの活性化に力を入れていくそうです。

■クラウドファンディングとクリエイティブ・コモンズという新たな選択肢
次にイラストレーターの納口龍司氏が『モンケン』のプロジェクトに参加した理由を、クラウドファンディングとクリエイティブ・コモンズという2つの側面から説明しました。

『チュウリップ』、『牧場物語』などを手がけたことで知られる納口氏もゲーム業界のベテランクリエイターですが、現在はフリーランスです。納口氏は、現在のゲーム業界内で生計を立てていく場合、もしも会社をクビになったら、ゲーム業界を諦めるか、他の会社に転職するか、個人でゲームを作るかの大きく3つの選択肢しかないと指摘します。転職するといっても前職よりも待遇が悪くなる可能性もあり、個人でゲームを制作するのはハイリスクです。

しかしながら、クラウドファンディングという手法を取り入れると、新たな選択肢が見えてきます。もちろん、日本ではまだまだ普及したとは言いがたいクラウドファンディングですが、何の資金調達の方法もないままに個人でゲームを作るよりかはマシであると、納口氏は指摘しています。そしてクラウドファンディングという選択肢があることだけでも、「幸せになれそうな気がする」と述べています。

また次にイラストレーターとして今の業界で生計を立てていくには、大きく2つの方向性があるといいます。一つは自分の書いたイラストやデザインの権利を守ってお金を稼ぐというやり方。もう一つは権利を放棄して、自由に使わせることで知名度を売るというやり方です。

現行の著作権制度ではこのような権利を守る/放棄するという極端な二択しかないと納口氏は指摘します。しかしながら、クリエイティブ・コモンズ(以下CC)というライセンスを使用することによって、ここにも新しい選択肢が生まれるといいます。

CCでは、著作者の名前を表示/非表示、営利目的に使用可能/不可、作品の改変可能/不可といった様々な条件を組み合わせることによって、現行の著作権制度にはない柔軟な使用を認めることができます。自分のイラストを積極的に使って欲しいけど、自分のクレジットは入れてほしいといった要望を実現することが可能であるため、納口氏はこれまた「幸せになれそうな気がする」と述べています。

『モンケン』のプロジェクトはこのようなクラウドファンディングとCCライセンスという今までのゲーム業界になかった手法を取り入れています。このような新しい試みを実践することで、クリエイターが今後、業界で活躍していく可能性の幅を広げる意図があるということが、納口氏の発表からは伝わって来ました。

■『モンケン』の冒険は始まったばかり
最後に講演時間に遅れてきたゲームクリエイターの飯田和敏氏は、「一言だけ」と登壇して、Campfireでの1ヶ月間の資金調達の感想を述べました。このゲームコミュニティサミットでの講演は、クラウドファンディングの結果が明らかになる前から決定していたものであったため、場合によっては、資金調達に失敗していたかもしれないと飯田氏は振り返っています。明日何が起こるかわからない世の中で、常に今何をすべきかを考えてきた結果、飯田氏は『モンケン』というプロジェクトに参加したそうです。クリエイターとしてはベテランながらも、既存のゲーム業界ではなく、インターネットという「ストリート」に出て新しい挑戦を行なっていきたいと抱負を述べました。

黒川氏が述べるとおり、クラウドファンディングでの資金調達の成功は、プロジェクトのスタート地点です。ゲーム業界のベテランたちがまさに体当たりで奮闘している本プロジェクトですが、ゲーム開発のあり方を問い直すものとして、今後も見守っていきたいと思います。
《今井晋》
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