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急成長を遂げるスマホ広告市場、ゲーム・アプリ広告をリードするCyberZ・山内社長に聞く

サイバーエージェントグループでスマートフォン広告事業を行うCyberZ。スマートフォン所持比率が高まる中、ゲームを含むスマートフォン広告市場は急成長を遂げています。

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急成長を遂げるスマホ広告市場、ゲーム・アプリ広告をリードするCyberZ・山内社長に聞く
  • 急成長を遂げるスマホ広告市場、ゲーム・アプリ広告をリードするCyberZ・山内社長に聞く
サイバーエージェントグループでスマートフォン広告事業を行うCyberZ。スマートフォン所持比率が高まる中、ゲームを含むスマートフォン広告市場は急成長を遂げています。弱冠29歳でサイバーエージェント取締役に就任し、CyberZ代表取締役社長も兼任する山内隆裕氏にお話を伺いました。

―――まず自己紹介をお願いできますでしょうか?

山内と申します。2006年にサイバーエージェントに新卒として入社し、「ブログクリック」というプロダクトの事業部立ち上げに参加しました。その後、マイクロアドという名前で会社化され、2年程アドネットワークの営業などに携わり、入社3年目にはCyberXの立ち上げに参加しました。当時、モバイルサイト制作事業やモバイル広告代理事業を展開していました。その後、 CyberZという今の会社を立ち上げ、当初はフィーチャーフォン専門の広告代理事業でしたが、2011年2月にスマートフォン専門に業態変更を行い、現在はサイバーエージェントのスマートフォン広告事業として国内トップシェアまで成長することができました。

―――最初はフィーチャーフォンをやられていたのですね

サイバーエージェントは今でこそ最先端のインターネットビジネスを展開しているイメージがあるかもしれませんが、当時はやや出遅れ組で、インターネット広告の分野でも後発に負けるような状況でした。広告代理事業において遅れをとるわけにはいかないということでCyberZという会社が生まれました。

―――でもスマートフォンに業態変更をした

やはり、最後発で勝つというのは非常に難しく、散々悔しい思いをした結果、スマートフォンへ業態変更することを決断しました。スマートフォンの普及台数が300万台を超えたくらいのタイミングでした。

―――当初はあまり広告主もいませんよね?

はい。スマートフォン広告におけるルールも整備されてないので、ゼロから立ち上げでしたが、何とか乗り越えられました。導入期、成長期、成熟期、衰退期というプロダクトサイクルがありますが、導入期で重要なのは絶対にこの市場で勝つという気概だと思います。その後立ち上げに成功した場合に市場競争に参加する権利を得て、その後は仕組みや組織づくりが求められてきます。
―――そういう意味ではテクノロジーにはかなり投資をされていますね

はい。競争が激しくなってくると、気概だけでは厳しい。武器を持たなくてはならない。そこで、会社の強みを考えると、顧客のニーズを汲み取って適した商品を創って提案するというサイクルの回転が早いということが挙げられます。顧客から何が期待されているのか徹底して考えました。

すると、「アプリのマーケティングがしたい」ということだったのです。ブラウザではなく。アプリはAppStoreを介して提供されるため、プロモーションをおこなっても、広告効果を追えないという課題がありました。つまり、適切な投資ができない。これを何とか解決する方法はないか、開発を強化して試行錯誤をした結果、スマートフォン広告において広告効果を測定できる仕組みを開発しました。「Force Operation X」という製品です。こちらに特化して投資を行っているので、成長期の今、CyberZの武器になっていると思います。

―――今のスマートフォン広告市場はどのくらいの規模なのでしょうか?

2013年で約800億円と予測しています。スマートフォン自体の普及台数は昨年末で3000~4000万台程度で、今後も右肩上がりで伸びていくと考えています。

―――伸び率としては?

130%くらいでしょうか。フィーチャーフォンで一番伸びた規模で約2000億円でしたので、3000万台で800億円というのはとても良い数字だと思います。

―――うち、ゲームはどの程度なんでしょうか?

25%くらいでしょうか。非常に割合は高いです。

―――他で多いのはどんな業種でしょうか?

メディア関連が多いです。PCからの流れでは不動産、人材、旅行、ECといった業種も多くの割合を占めています。


―――広告の使い方も変わりそうですね

スマートフォンの登場で大きく変わりますね。例えば、常に端末を持ち歩くことになるので位置連動広告のようなものが出てきますし、プラットフォームが集約されてボーダレス化が進むことによって海外への出稿意欲も高まっています。CyberZも米国法人を設立して海外プロモーションにも対応しています。他にも通信環境が整備されてくる事によって、動画広告やもっとリッチな広告が実現できないかという声も大きくなってきています。ゲームも通信の制約が減ることによって大きな容量のリッチなゲームが次々に登場しています。

―――今後の鍵は何でしょうか? やはりテクノロジーへの投資が鍵になるでしょうか?

1つはテクノロジーへの投資。もう1つは商品数だと思います。

―――数ですか?

はい。スマートフォン広告は種類が圧倒的に足りません。PCであればYahooのブランドパネルのような超高価な純広告から成約ベースのアフィリエイトまで多種多様な商品があります。でもスマートフォンは基本的にはCPC(※)のアドネットワークしかありません。より市場規模を大きくしていこうとすると、もっと色々な商品を開発していく必要があります。広告代理店は単に枠を売るだけではなく、広告商品やメディア自体の開発にも力を入れる必要があると思います。商品作りをする、その効果を可視化するということが鍵になるのではないでしょうか。

※CPC=Cost per Click 広告1クリック当たりの単価。またはクリック件数で成果が発生する広告商品のこと

―――ゲームのマーケティングで言えば、先ほどおっしゃられたCPCだけでなく、クリックしたユーザーの生涯価値(※)を測るような事が徐々に出てきていますね

仰る通りです。CPCやCPI(※)では広告費用が全く回収できなかったとしても、LTVを計測すると充分に回収できている、というようなケースも非常に多いです。ですから、きちんと広告効果を可視化する必要があります。

※生涯価値=Life Time Value(LTV) 広告で獲得したユーザーが、そのアプリに対して生涯でどれだけ売上をもたらすかを広告価格に反映しようとする考え方

※CPI=Cost per Install アプリの1インストールを獲得するために必要なコスト。またはそれを値付けに反映した広告商品


―――海外展開されたいメーカーさんはかなり多いと思いますが、CyberZさんとしてはどのように対応されているのでしょうか?

まずはクライアントにとってメリットの大きな地域をやろうということで、まずアメリカにオフィスを作りました。次は中国と韓国ですね。それから拠点づくりだけでなく、「F.O.X」というテクノロジーがあるので、海外におけるスマートフォンメディア企業との連携社数を拡充していくという方向も進めています。既に海外だけで50社、国内を合わせて100社と提携していて、より多くのネットワークに一括して配信が可能です。また、効果測定をする際にはタグをアプリに組み込む必要があるのですが、沢山の媒体社を使えば必要なタグの数もそれだけ増えます。「F.O.X」はそれを1つのタグだけで複数の媒体社を束ねることができますので、エンジニアの方の工数を軽減することができます。お陰様で1000近いアプリに採用されています。

―――いま、ゲームのクライアントさんはどんな事を考えてらっしゃるのでしょうか?

やはりマネタイズですね。その為にどうやってユーザーを獲得するか。広告であればCPIからCPCに変わりつつあるということですね。それからこれまでは iPhoneのAppStoreだけだったのが、AndroidのGoogle Playや海外進出など、市場を広く見る傾向が強くなっています。

それから次に当たるゲームジャンルは何かという事ですね。いわゆるカードバトルが飽和しつつあるということは理解されていて、それに代わるような、収益性の高いスタイルを開拓されていると思います。今はガチャではなくライフポイント課金のようなものが興隆しています。新しいジャンルが生まれることによって市場が大きくなるので、いまホットな話題でしょうか。

―――海外展開はどんな感じなんでしょうか?

厳しいですね。というのはマーケティングに必要なコストが日本とは桁違いで、でも収益性は同じくらいだという。費用をかけてトップに立ったあとに、いかにそれを回収する売上をたてるか、マーケティングが非常に重要です。

―――マーケティング的に改善できる部分もあるのでしょうか?

そうですね、まだ整備は必要でしょう。例えば、今はダウンロード数だけしかトラックできていないのをLTVも計測できるようにし、アドネットワークに内訳の媒体を開示するように促し、かつ新規媒体の開拓を進めていくといった事があります。深さと広さを両方やらなければなりません。

―――最後に今後の抱負を聞かせてください

スマートフォン市場に変革を起こしたいですね。僕自身はとにかく社会貢献をしたいと常日頃から思っていて、人々の行動が変わるような大きな市場はスマートフォンだと思うのです。その市場でお客さんのサービスを正しく世の中の人に伝えて、そのサービスがユーザーに利便性を与えて世の中が便利になっていく。その過程でお客さんのビジネスが大きくなり、当社の業績も上がり雇用を生んで・・・という良い循環を作って行きたいと思っています。それが経済の活性化に繋がり、やがて社会貢献に繋がっていくと信じていますので、この市場に変革を起こし続けていくことが僕のミッションです。

―――本社の役員としてのミッションも?

同じですね。完全にシンクロしています。

―――ありがとうございました


近日、CyberZによるスマートフォンにおけるゲームユーザーの実態を調査したレポートを連載開始いたします。お楽しみに。
《土本学》
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