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【BitSummit】ValveによるSteam基調講演、Steamと開発者の利益配分などリアルな質問も

京都で3月9日に開催されたインディー開発者向けイベントBitSummitでは、数々の著名人たちと共に海外からデジタル配信プラットフォームSteamで非常に有名なValveの社員たちも来場しました。

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【BitSummit】ValveによるSteam基調講演、Steamと開発者の利益配分などリアルな質問も
  • 【BitSummit】ValveによるSteam基調講演、Steamと開発者の利益配分などリアルな質問も
京都で3月9日に開催されたインディー開発者向けイベントBitSummitでは、数々の著名人たちと共に海外からデジタル配信プラットフォームSteamで非常に有名なValveの社員たちも来場しました。

ソフトウェアエンジニアのDan Berger氏、Al Farnsworth氏らが登壇し、国内のインディーズ開発者に向けSteamやGreenlightに関するシステムを解説。質問セクションではデベロッパーから「利益の配分は?」とのリアルな質問も飛び出しました。

■開発者を手助けしつつ販売面では束縛しない配信プラットフォームSteam
改めて説明する必要も無いかもしれませんが、Steamはゲーム販売やコミュニティとコンテンツ管理などを担う総合的なデジタルプラットフォームで、米国のソフトウェアデベロッパーValveがサービスを行なっています。Berger氏の説明によれば、Steamは世界中で5千万人ものユーザーが存在しており、日本語を含む世界の25ヶ国語に対応、現時点では円は使えないもののユーロやドル、ポンドが利用可能。様々なジャンルから開発規模まで幅広いゲームタイトルが取り扱われており、そのカタログの4分の1がインディーズゲームであるとBerger氏は語っています。

販売に伴う価格決定権は開発に専念することが多いインディーズ開発者にとって特に重要な部分ですが、Berger氏はデベロッパーはSteamでは開発タイトルのプライスを自身で設定することが出来るとコメント。さらにクローズドバンドル(他の開発者のタイトルとのセット販売)やクーポン、セールスといった様々なプロモーションがSteamに存在することをアピールしました。

また多数のユーザー数に支えられたSteamのコミュニティについても話は進み、日本のインディーズ会社に付いている既存のファンとSteamのコミュニティが相反したり吸収されることは無く、Steamにて販売することは新規顧客の獲得に繋がっていくとBerger氏。Steamで販売を開始しても縛られることなくそれ以外の場所でゲームを売ることは可能で、逆にCDキーを使うことで他所での購入者にもSteam版を配布することも可能だと説明。またユーザー自身がガイドを作り出すコミュニティガイドや、開発段階のゲームを公開するアーリーアクセスによってコミュニティからフィードバックが得られる点など、コミュニティ間との連携がSteamにてシステムやサービス的に支えられていることを強調しました。

Steamが有する実績(Achievement)やリーダーボード、クラウドセーブ、DLCやマイクロトランザクション、エラーレポート、ユーザー製コンテンツを共有あるいは販売できるWorkshop、Win/Mac/Linuxへの対応。Berger氏はSteamの利点を挙げSteamでの販売を勧めると述べましたが、Steamで販売を行うのは開発者の自由であり、またあくまでSteamが開発に専念する開発者を手助けしつつ、価格や販売権利などに関する束縛はしないプラットフォームであることを強調しました。

■ユーザーがSteamで発売して欲しいゲームを推薦するSteam Greenlight
続いて壇上にはAl Farnsworth氏が登場し、ここ数ヶ月で広く普及しつつあるSteam Greenlightについて説明。Steam Greenlightとは昨年8月からSteam上で開始されたもので、開発者が登録したゲームがリストアップされ、その中からユーザーがSteamで販売して欲しいゲームに投票するというサービス。ただしSteamでの販売実現へは、もちろん開発とValveの契約や販売できるゲーム内容かなど色々な壁も存在することが想定され、このユーザーによる投票数はあくまでValveが販売ゲームを選考する上ので目安の1つといったところになっています。実際、投票数に関係無く販売が決定されているゲームもあり、またSteam Greenlightにて登録するというステップが無くてもSteamで販売を行うことはもちろん可能です。

しかし昨年より数ヶ月に一度のペースでSteam GreenlightからSteam販売タイトルが選定されており、Valveによればその数は35個にのぼるとのこと。Steam Greenlightは言わばインディーズゲームのような知名度が低い、或いは気づかれていないゲームをValveにアピールすることが出来るチャンスの場であり、ファンに魅力を上手く伝えることが出来れば、巨大なプラットフォームSteamにて自社タイトルを販売できる可能性が高まるということなのです。

■Steamとデベロッパーでの利益配分は?
ここからはDan Berger氏、Al Farnsworth氏が共に壇上に登場し、Q&Aセッションを設けました。「Steamの取り分は?」など鋭い質問も飛び出したので、ここではその幾つかを取り上げます。

Q. Greenlightで人気が出ないゲームは発売できない?
A. Greenlightに載せなくても、Greenlightで人気がでなくても、Steamで発売されるゲームもあります。GreenlightはSteam側が、ユーザーが何をやりたいかわかるようなツールとして作られています。

Q. Greenlightのプロセスで発売する場合のコストは?
A. Greenlightにゲームを載せようと思ったら、100ドルのお支払いを頂くことになりますが、それは1回のみ。1回支払えば何個でもゲームを載せることはできますし、その100ドルの支払いは全て寄付しています。100ドルをなぜ貰っているかというと、真剣にゲームを出したい所に限るようにするためです。
※補足: 昨年Steam Greenlightが開始された際には誰でも自由に無料で登録できる形だっため、ユーザーによって『Minecraft』が複数登録されたりといった事態に陥った。後に100ドル支払い方式へ変更

Q. Steamで配信した際の具体的な利益の配分は?
A. 普段は多くの人の前で言わないようにしているんですけど、みなさん大体わかっていると思うので言います。普段は7:3で、開発者側が7で、Steamは3。Steamworksなど先ほど話した機能については使って頂いて結構ですし、その料金は開発者側が貰う70パーセントでは無く、Steamの方が貰う30パーセントから支払われます。1回Steamに登録すると、そのツールは全て無料で使うことができます。

Q. SteamworksのAPI(Steamの機能をゲームに組み込むことが出来るインターフェイス)は、Greenlightに登録した段階でダウンロード出来るのか?
A. それは出来ません。APIは別の契約になります。APIを出して貰えるのは、本当にGreenlightをパスしそうな時となっています。なぜかと言いますと、SteamのAPIに対してビルドするとSteamプラットフォームに縛られてしまい、他のプラットフォームで出せなくなってしまいます。だから我々はAPIを与えて、ゲームが発売しないとなるのは失礼ですので、しないようにしています。

Q. 1度Steam Greenlightに通過しAPIが手元にある状態で次の作品をGreenlightに登録して、そのAPIを2本目の開発に使うことは可能か?Greenlightを通るまで触ってはいけないのか?
A. APIはSteamサーバーと共有されるので、一度(ゲームが)Steamに載らないとSteamサーバーがどこと連絡を取ればいいのかわからなくなってしまうという感じなので、それはそのまま使うことは出来ません。
《石元修司》
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