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ゲーム業界をめざす学生は何を持ち帰ったか?学生向け業界研究セミナーレポート

ゲームビジネス その他

会場となったグリーのセミナーホール
  • 会場となったグリーのセミナーホール
  • 会場担当者を務めたグリーの佐島豊氏
  • 発起人で総合司会も務めた川村泰人氏
  • 『ダンガンロンパ』企画成立について語る小高和剛氏
  • 後藤誠氏はGDCの「suck」事件についても語った
  • 「全ては学び、全ては遊び」と講演する簗瀬洋平氏
  • ケネス・チャン氏は人間の精神について考察した
  • 40歳になって新天地に飛び込んだ今給黎隆氏
国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)とグリーは11月17日、「ゲーム業界をめざす君へ/学生向け業界研究セミナー」を共催しました。

会場となったグリーのセミナーホールには、約80名の学生が集まり、社会人講演者の講演に熱心に耳を傾けていました。セミナー修了後には約30名の社会人とソフトドリンクやピザを片手に交流しました。

はじめに登壇したのは、セミナーの発起人でもあるゲームデザイナー・シナリオライターの川村泰久氏です。小節、漫画などの表現媒体を経てカプコンに入社し、『バイオハザード3』などで企画・シナリオ・ムービー制作などを務めた川村氏は、「もともと何かを表現したいという思いはあったが、表現手段がわからなかった」と振り返り、最終的にゲームに落ち着いたと語りました。

その後、専門学校のHAL東京で講師も務めた川村氏は、次第に「創りたい物がないのに、技術だけ学んで満足していいのか?」という疑問を感じるようになったとコメント。仮にゲーム業界に進んでも、作りたいものがなければ「作業員」になってしまうが、世界中で競争が激しくなっている中、そうした姿勢では競争に敗れてしまうと警鐘を鳴らしました。そして本セミナーを自分自身を見つめ直す契機にして欲しいと語りました。

■業界の第一線で活躍するクリエイターが講演
以下、セミナーでは▽スパイク・チュンソフト小高和剛氏(『ダンガンロンパ』企画・シナリオライター)▽マッチロック後藤誠氏(『BISHAMON』エバンジェリスト)▽スクウェア・エニックス簗瀬洋平氏(ゲームデザインリサーチャー)▽キューエンタテインメント ケネス・チャン氏(ゲームデザイナー・プロデューサー)▽グリー今給黎隆氏(エンジニア)が講演を行いました。

小高氏は『ダンガンロンパ』の企画は業務時間外に数人のメンバーで練り上げ、世界観やイメージをわかりやすく伝えるためにイメージムービーも制作したが、会社側には2回リジェクトを出されたと紹介。それでも粘り強く説得した結果、本制作にこぎ着けたというエピソードを披露し、制限をかけられたら、それを踏み台にして成果物につなげる「クリエイティブ合気道」という考え方を示しました。「クリエイティブを楽しめないなら、ゲーム業界には向いていません」(小高氏)

後藤氏は中学時代にパソコン雑誌でプログラムを知り、数少ない情報をつなぎ合わせて壁を乗り越える作業を繰り返した経験が、今につながったとコメントしました。また家庭の事情で進学が危ぶまれたが、ハングリー精神で上京し、アルバイトでゲーム業界に潜り込んだと披露。マスターアップ前後は自分のバグで会社に大損害を与える夢に悩まされるほどプレッシャーを受けたが、発売後に届いたユーザーアンケートですべてが報われたとコメントしました。「ユーザーの声は最高のご褒美です」(後藤氏)

「質問しなければ、ここにいる意味はありません」と切り出した簗瀬氏は、冒頭から質疑応答で始めるという異色の講演を展開。仮説を立て、実行し、検証を繰り返すというサイクルを、日常生活のすべてで意識することが大事だと指摘しました。「ゲームとは問題解決を楽しむことだと思います。つまり、目の前の問題を細分化して、解決過程を楽しめればゲームになります」(簗瀬氏)。また不屈の精神があって良い物が作れるのではなく、行動することで最適な精神が生まれ、知識や技術が定着しやすくなると語りました。

■日本で学ぶ留学生もパネルに登壇
香港出身で、自身もまた留学生だったケネス氏は来日する際、本当にゲーム業界に進みたいのか、真剣に考えたと言います。その結果、人間が外界から内面に向けて「肉体・精神・霊体・霊魂」と分けられるように、ゲーム開発も「技術・資質・精神・哲学」というモデルに分類できると考察。情報や知識を貪欲に吸収し、自分の中で消化しながら、自分自身のモノづくりに対する哲学を研ぎ澄ましていくことが大切だと語りました。「自分を否定する勇気と、肯定する勇気を同時に持ってください」(ケネス氏)

最後に今給黎氏はコンソールゲーム制作からソーシャルゲーム業界に飛び込んだ経歴について語り、今いるポシジョンが本当に自分にとってベストなのか、常に先読みしながら行動を繰り返していくことが重要だとコメントしました。ハイエンドなグラフィックス技術開発から、サーバサイドに飛び込んだという今給黎氏。「一つだけのスキルに頼り切ると危険ですが、何かのスキルを掘り下げると、別の技術の深みもわかりやすいので、お勧めです」と指摘します。

またパネルディスカッションでは、伍・ハイカン・ピエール君(香港)、アダム・クラップサドル君(アメリカ)、ウィリアム・イマジ・フェッロ君(ブラジル)、マズ・ルドヴィック君(フランス)の4名の留学生が登壇。ケネス・チャン氏も加わり、留学生の視点から見た日本のゲーム業界や、日本でゲーム開発を学ぶ中で見えてきたものについて、意見を交わしました。母国語ではない「日本語」での議論と言うこともあり、うまく意見がかみ合わない部分もみられましたが、同じ学生同士ということで、会場の学生には興味深かったようです。

■Twitterで盛り上がった社会人のツイート
なおセミナーの裏側では、ゲストとして招待された社会人開発者が、Twitterで熱い書き込みを繰り広げ、もう一つの「セミナー」を形成していました。ゲーム業界が激変を続ける中で、どのように若手を育成するかというテーマは、社会人にとっても大きな問題に映ったようです。また参加した学生にとっては、目の前の講演で刺激を受ける一方で、Twitterの書き込みで別の刺激を受けるという、立体的な聴講体験となりました。

なお当日の書き込みはまとめサイト(http://togetter.com/li/409471)で閲覧できますので、あわせてご確認ください。

セミナー修了後には交流会が行われ、学生が持参したポートフォリオに対して社会人が丁寧にコメントするなど、さまざまな交流が見られました。大阪から夜行バスで駆けつけたという学生は、「就職活動に向けて、良い刺激になりました」と回答。また社会人参加者の中には学生だけでなく、若手の研修にも応用できるのではないか、とコメントしていました。
《小野憲史》

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