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『アスラズ ラース』アニメとゲームの協業の鍵とは? ― 中澤監督&CC2松山社長に聞く(後編)

2012年2月23日、カプコンから発売されたPS3、Xbox 360用のゲームソフト『アスラズ ラース』が、ストーリー性の重視、独自の世界観で、注目を浴びている。ドラマ性を重視した作品は、制作を担当したサイバーコネクトツーならではの独創性が冴えわたる。

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2012年2月23日、カプコンから発売されたPS3、Xbox 360用のゲームソフト『アスラズ ラース』が、ストーリー性の重視、独自の世界観で、注目を浴びている。ドラマ性を重視した作品は、制作を担当したサイバーコネクトツーならではの独創性が冴えわたる。



前編に続き、『アスラズ ラース』インタビュー後編をお届けします。


■『アスラズ ラース』の中で求められたもの

―――『アスラズ ラース』の中で求められたものは何だったのでしょうか?

中澤一登監督(以下敬称略):それは手描きのアニメーションでしょう。今回は全て手描きです。ただ僕はエフェクトぐらいしか描いていないですね。レイアウトの時にアクションのラフとかは入れていますけれど。

―――10分の長さではあるのですが、表現的にはいろいろな試みがあったのでないかと思っています。例えば、前半の部分で、かなりずっと横から見たカットが続きます。こうしたアイディアは誰がだされたのですか。

中澤:それは僕ですね。横の長いカットはコンテにありました。正直、アニメ的にはありえないカットなんです。カットを割るのは簡単です。ただ、「これは絶対にありえないぞ」と思ったんですが、「やってみてもいいかな」と思ってやってみました。

―――作品を観た時に、とにかくモチベーションが高い、そうした意識をどうやって作りあげているのだろうと思いました。

中澤:大平さんはやはり大平さんパワーが大きいと思います。僕がデイレクションしたものに関しては、やはり『アスラズ ラース』の持つパワーだと思います。

―――これは実際に動画は何枚ぐらいかかっているんですか?

中澤:聞かないようにしています。(笑)

松山洋社長(以下敬称略):大平さんよりは少ないですね。(笑)

中澤:大平さんの話を聞くたびにびっくりしました。(笑)大平さんは、見てしまうと納得しますけれどね。

―――今回、演出だけということですが、これをきっかけに今後演出をさらにやっていくということはありますか?

中澤:それはないですね。

―――それはなぜですか?

中澤:絵が好きだからです。今回、(作画監督の)秋田君がスーパーアニメーターだったんで、僕は物足りないくらいだったんです。みんな秋田君が描いてくれるです。描いてないと心が落ち着かないんですよ。修正は煙ぐらいです。原画の時に、ふたりが対決する部分でそこに何枚か入れています。それ以外はないですね。


■アニメーションとゲームの協業の鍵はコミュニケーション

―――今回はサイバーコネクトツーさんとの協業になったわけですが、この仕事についてはどう感じましたか?

中澤:松山さんが絵を描く人にすごく敬意を払ってくれるんです。ゲームのかたとのコミュニケーショントラブルは起りがちなのですが、それがなかったですね。(松山社長の敬意の払い方は)絵描きに対してだけではないと思います。

松山:アニメのかたとゲームで仕事をする時にやはりトラブルは少なくありません。その多くはコミュニケーショントラブルで、お互いの思っていること、狙っていることが分からないからです。そのためいいと思っていても押さえつけて出さなかったりします。でも、役割分担をはっきりさせて「のびのびやってください」と話していると結果が全然違います。

今回でいえばアニメという最高の素材を活かす。どんなもの上がってきてもアニメーションとして優れているのであれば、そこはゲームとして我々が仕上げます。ただし、アニメーションの部分は思うままやって欲しいと思っていました。

―――でも、実際に任せてしまうことに怖さはないのですか?

松山:それは覚悟ですよ。そこを疑うのであればやらないほうがよいと思います。

中澤:僕もそう思いますね。僕は絵を描いているだけで、色を付けているわけでも、撮影もしてないわけです。そこを人に任せているわけですから。松山さんにお会いした時って軽いジェラシーを感じましたね。制作者として、売れる売れないを気にしていないはずはないと思うのですが、、根本では自分の楽しいものを作ろうとしているんですよ。それが一番大事なことだと思うんです。

松山:仕事って大変じゃないですか。どうせやるのであれば、自分が好きで楽しいと思っていることをやりたい。同時にそれをほかの人にも楽しいと思って欲しい。自分だけが面白いと思っているものを作ってもだめです。ただ、お客様の顔だけを見ているのはよくないと思います。

中澤:お客さんはそんなに馬鹿ではありませんから、そういうことやっていれば気づかれると僕は思っています。何かを作る時にそれをどれだけ丁寧に扱ったかは伝わります。最低限自分が持っている時間のなかでベストを尽くしたものを作りたいと思っています。それは伝わるんだなと思っています。

―――確かに『アスラズ ラース』の11.5話、15.5話には、圧倒的な迫力を感じます。そうした作り手の意識が反映された作品だとわかります。本日はありがとうございました。




『ASURA'S WRATH(アスラズ ラース)』
ジャンル:体験型連続活劇アクション
対応ハード:PlayStation3 / Xbox 360
発売日:好評発売中
価格:6,990円(税込)
プレイ人数:1人
CEROレーティング:C (15才以上対象)
発売元:株式会社カプコン / 開発元:株式会社サイバーコネクトツー
《アニメ!アニメ》
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