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【グリーカンファレンス2012】大手メーカーに聞く「ソーシャルゲーム海外展開虎の巻」とは?

ゲームビジネス 開発

いくらデジタル配信網が整ったとはいえ、いまだ敷居の高いモバイル・ソーシャルゲームの海外配信。ことにベンチャー企業にとってはなおさらです。一方で昨年後半から今年にかけて、大手ゲーム会社が続々とソーシャルゲームのサービスインを開始しました。コンソールゲームのノウハウを生かして、海外配信を行う例もみられます。

そんな「悩める小規模ディベロッパー」に福音となったのが、「グリープラットフォームカンファレンス2012」のトリを務めたパネルディスカッション「 開発者の視点から見るグローバルプラットフォー ム」です。

モデレーターを務めたのは「おみせやさん」で一躍ヒットを記録した芸者東京エンターテインメントの田中泰生氏。対するパネリストはスクウェア・エニックスの安藤武博氏、セガの椎野真光氏、カプコンの杉浦一徳氏、そしてグリーの吉田大成氏と、蒼々たるメンバーです。田中氏は「自分の聞きたいことを次々に聞いていく」という独特のスタイルで議論を主導し、各パネリストから次々に解答を引き出していきました。

芸者東京エンターテインメント 田中泰生氏


■外国人スタッフの言うことは聞かなくていい?
まず上がったのが「海外展開を狙う上で外国市場をどの程度意識すべきか」。仮に日本でヒットしたタイトルといえども、適切なマーケティングやローカライズなくしては、ヒットはおぼつかないというのが定説です。一方で現地のニーズを意識しすぎたために失敗した、という声もよく聞かれます。

この古くて新しい問に対して、スクエニ安藤氏は「『ケイオスリング』は15カ国でランキング1位を取りましたが、まったくひよらずに作りました」とコメントしました。同作はJRPG風の世界観やキャラクターが特徴のiOSアプリ。大前提として海外マーケティングの言うことを聞いていては、ああいった企画にはならなかったと言います。

もっとも「従う必要はないが、リスペクトは必要」だと安藤氏は補足しました。具体的には人種や宗教などのリスク要因となる部分です。『ケイオスリング』は男女のペアが互いに殺し合うという、映画『バトルロワイヤル』を彷彿とさせる内容で、当初主人公の男女ペアは共に白人風の外見でした。しかし、これが海外テストプレイヤーの間で違和感を生み出すことになり、主人公の肌の色が褐色に変更になったそうです。

スクウェア・エニックス 安藤武博氏セガ 椎野真光氏


セガ椎野氏は、自身が携わったスマホタイトル『キングダムコンクエスト』を例に取り上げました。同作は企画当初から明確に海外市場狙いだったので、UIやタイトル決めなどでマーケティング重視の作り方をしたそうです。しかし、結果として見事に外してしまったと語りました。「実は聞かない方が良かったのかもしれない」(椎野氏)。

もっとも海外市場を狙う上で、海外法人のマーケティングを完全に無視すると、ヒットはおぼつかないとフォロー。いかに「海外スタッフを巻き込んで作るか」は、やはり重要だとコメントしました。また初速は悪かったものの徐々に回復し、今では国内外の売上が逆転したとのこと。タイトルやUIではなく、ゲームの内容がきちんと伝えられなかったのが初期の敗因だったかもしれない、と分析しました。

二者に対して「最初から現地市場で売れるIPを見極めて投入していく」と解答したのが、カプコン杉浦氏です。『モンスターハンター』はタイトルからして欧米圏では異なる意味で捉えられる可能性があるとのこと。PCブラウザゲーム『鬼武者SOUL』も発表後、一番アクセスが多かったのが台湾でした。これなどは有力IPを多く抱え、そこから移植展開されることの多い同社ならではの戦略でしょう。

またグリー吉田氏は「全世界を狙うタイトルと、特定の地域に絞って投入するタイトルでは、作り方も違ってくる」と、議論を切り分ける必要性があると指摘しました。ちなみにアメリカスタジオで開発され、米App Storeで4位にランクインした『Zombie Jombie』は、開発中でグラフィックテイストがどんどん変わっていったとか。当初は日本スタッフだけで作っていたのが、アメリカ人のスタッフが加わっていく中で、テイストがアメリカナイズされていったそうです。

カプコン 杉浦一徳氏グリー 吉田大成氏


■カードゲームは全世界で通用するか?
続いての質問は『探検ドリランド』をはじめとしたカードゲームシステムは、海外のソーシャルゲーム市場で通用するか? というもの。実際Zyngaのゲームをはじめ、海外で人気のタイトルは、国内のゲームシステムとかなり違いがあります。いわゆる「ガチャ」システムの有効性について賛否両論があるのも事実。あまりのARPUの高さから「日本は異質な国」とされることも多々あるといいます。

これに対してグリー吉田氏は『Zombie Jombie』がアメリカでヒットしたことが、なによりの証明だと語りました。ARPUも日本ほどではないものの、おしなべて高めだそうです。「ヒットを受けて、アメリカでも解析が進んでいるはず。今後カードゲームは1ジャンルとして定着するのでは」という見通しを語りました。

カプコン杉浦氏は「ゾンビが題材の『Zombie Jombie』がヒットしたので、上司の目が痛い」と場内を笑わせつつ、「カードゲーム自体も、元をたどればアメリカ発祥のゲームシステム」だと指摘。カードゲームはジャンルの一つとして定着するという見方を示しました。

一方でスクエニ安藤氏は「カードゲームはジャンルとして定着すると思うが、そればかりではないはず。『スペースインベーダー』『スーパーマリオ』『ドラゴンクエスト』とトレンドが変わっていったように、ソーシャルゲームでもユーザーニーズは変わっていくのでは? 自分としても新しいことに挑戦していきたい」と語りました。

安藤氏が例に上げたのが、ニンテンドー3DSで発売されたばかりの『新・光神話 パルテナの鏡』です。いま一番熱中しているゲームだという安藤氏は「もし本作が基本プレイ無料のゲームになったら、僕は喜んで課金すると思う」とコメントし、アイディアの宝庫だと指摘。これ以外にもソーシャルゲームには、まだまだいろんな可能性が眠っているはずだと補足しました。

巧みなトークで答えを引き出す田中氏


■全世界で一緒にプレイできるソーシャルゲームは登場するか?
議論はさらに「全世界で一緒にプレイできるソーシャルゲームはあり得るか?」というテーマに進みました。田中氏は「世界中の国の人と協力して遊べる世界版『ドリランド』のようなゲームがこの先出てくるのか、アジアなどの地域ごとに運営されるのか。どちらが主流になっていくと思いますか?」という問いを提示。これに対して、セガ椎野氏は「国によって遊び方が全く違うので、悩みどころですね」と回答しました。

「『キングダムコンクエスト』でも、中国のプレイヤーは日本以上にシステムの隙をつくような遊び方を好む傾向にあります。社内でも全世界統一サーバがいいか、ローカルごとのサーバがいいか、議論が分かれるんですよ。ローカルごとに分けた方が個々の満足度が高まるという意見もあるし、あの熱さが課金につながるという意見もある。やってみないとわからないですね」(椎野氏)

またプレイスタイルについても、アジア圏よりも欧米圏の方が、個人プレイが好まれる傾向にあると語りました。日本だと対人戦から同盟戦に拡大し、今では協力プレイが主流になっていますが、欧米圏では協力プレイよりも対戦プレイの方が好まれるといいます。ローカルごとに好まれるプレイスタイルを、どの程度割り切ってゲームデザインしていけるかが鍵になると指摘されました。

グリー吉田氏も「できれば挑戦してみたい」ともらしつつ、この点についてもタイトルごとに切り分けていく必要があると語ります。もっとも、その上で課題となるのがローカルごとの物価の違いです。アイテムの価格を全世界統一にすべきか、変えるべきか。それがもたらす善し悪しもあわせて考えていく必要があると言います。

カプコン杉浦氏もPCオンラインゲームでの事例をあげつつ、全世界統一サーバの難しさについて語りました。「国内で人気のあったタイトルでも、海外にサーバを解放した瞬間に過疎化したこともある。世界中の人たちと遊ばせたいというのは、作り手の『エゴ』なんじゃないか」。またバーチャルワールドは一つでも、現実世界では国や地域で法律が異なるので、注意が必要だと指摘しました。

■ゲームタイトルの付け方は?
最後の質問となったのが「ゲームタイトルの付け方」です。グローバル展開を考慮した時、全世界で統一の名前の方が良いのか。それとも海外向けに変更するとして、どのような点に考慮すべきか。スクエニ安藤氏は「まずはネイティブの外国人に見せて、感想を聞くべき」と返答しました。

「日本人にも外国人にも耳障りの良いタイトルができれば、それにこしたことはないですね」(安藤氏)。もっとも、『拡散性ミリオンアーサー』『星葬ドラグニル』などのように、日本市場狙いのタイトルについては、意識してラノベ風・アニメ風のネーミングにすることもあるそうです。

そもそも論として、全世界で通用するネーミングには、シンプルでわかりやすいことが重要です。「もっともシンプルなタイトルは、すでに商標が取られている可能性が多い」とセガ椎野氏は注意を促します。カプコン杉浦氏は「ネイティブチェックが必須で、その時には開発陣の思い入れやコンセプトなどを伝えている」と話しました。もっとも同社では前述の通り、有力IPの移植版として開発されることが多く、ネーミング作業もサブタイトルに関するものが多いそうです。

グリー吉田氏は、二語または三語の組み合わせで、ゲームのモチーフと遊び方的なキーワードが融合することが多いと明かしました。『釣り★スタ』(釣り+スタジアム)などは、その好例というわけです。また社内にはプロファイル専門のチームがあり、各国ごとにタイトルが問題ないかチェックされるとのこと。他にカードゲーム類については、モチーフとキーワードを足したタイトルで統一していく予定だとされました。もっとも「エゴかもしれませんが」と前置きしつつ、『ドリランド』だけは、そのままのタイトルで出したいと語られました。

最後に田中氏は「僕の視点から見る『グローバルプラットフォーム』になってしまいましたが、僕にとっては有益なセッションでした」とまとめました。もっとも聴衆にとっても同じ思いだったのではないでしょうか。作って出すだけなら簡単でも、ビジネスにつなげるためには、さまざまな落とし穴があるのが海外展開。そこにはコンソールゲームやPCオンラインゲームの知見が、多いに参考になりそうです。まだまだ議論の続きを聞いていたい、そんな風に思わせるセッションでした。
《小野憲史》

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