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常的ホラーFPS!『F.3.A.R.』日本版プレイレポ

ゲームビジネス 開発
フィアー3(F.3.A.R.)
  • フィアー3(F.3.A.R.)
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2005年に発売され、ホラーFPSという新境地を開いた『F.E.A.R.』。シリーズ3作目の『F.E.A.R. 3』が、いよいよ7月21日に日本でもXbox360とPlayStation 3で発売されます。このたび、Xbox 360版を発売前にプレイする機会がありましたので、インプレッションをお届けします。

なお本インプレッションでは、キャンペーンモード序盤の3ステージと、幾つかのCo-opプレイを試した段階での内容となっています。

■ホラーとシューターの融合がコンセプト
欧米の大作FPSがリアル志向を強めつつある中で、『F.E.A.R.』シリーズはホラーとシューターの融合という、ユニークなコンセプトで知られています。

ホラーとしての方向性も、物陰からクリーチャーなどを登場させてビックリさせるといった「ショッカー」ものではなく、フラッシュバックやノイズ音、映画『リング』シリーズに登場した"山村貞子"を彷彿とさせる少女“アルマ”など、和製ホラーを思わせる心理的な演出が中心という点で異彩を放ちました。

AIのアルゴリズムが、当時としては群を抜いていた点も秀逸です。スクリプト制御で突撃を繰り返すのではなく、状況に応じて最適な行動を取るように感じられる敵キャラクターの動きは、目の肥えた海外シューターからも絶賛されました。ゲームAIの歴史を語る上で、本シリーズは欠かせない存在となっています。

ゲームの舞台は架空の都市フェアポートです。巨大企業アーマカム社の研究施設で、強力な超能力を持つ黒髪の少女アルマ・ウェイドを巡って、違法な人体実験が行われていた・・・というのが背景設定。プレイヤーは「F.E.A.R.」(超自然現象鎮圧部隊)の隊員として、さまざまな脅威に立ち向かっていきます。



■人体実験によって生み出された兄弟の物語
本作の主人公は『1』と同じく「F.E.A.R.」の隊員で、超人的な反射神経を持つコードネーム"ポイント・マン"です。さらにポイント・マンの弟で、『1』では事件の首謀者で作戦のターゲットであったパクストン・フェッテルが、本作では超能力を操る幽体として登場。プレイヤーキャラクターとして操作可能になっています。

簡単に過去のストーリーをおさらいすると、『1』でプレイヤーは「F.E.A.R.」の新人隊員となり、アーマカム社から逃走したフェッテルの暗殺ミッションに挑んでいきます。クローン兵士部隊をテレパシーで制御できるフェッテルに対して、ポイント・マンは謎の少女の幻覚などに襲われながらも、仲間と共に任務を遂行していきます。

実はフェッテルとポイント・マンは、ともにアルマから生まれた兄弟で、アーマカム社の非道な人体実験の犠牲者なんですね。このことがゲーム中盤で明らかになります。しかしポイント・マンは任務を続行し、多大な犠牲者を出しながらも、爆発と共にフェッテルの殺害に成功・・・。とまあ、ここまでが『1』のストーリーです。

そこから番外編的な『2』を挟んで、『3』では再びポイント・マンが主人公に復活します。『1』のラストから数ヶ月後、死してなお精神体となり、活動を続けるアルマの超能力で、街は多大な被害を受けていました。一方で事態のもみ消しを計るアーマカム社の治安部隊も徘徊しており、混乱の極みに達しています。

ポイント・マンもまたアーマカム社の仮設収容所で処刑されようとしていましたが、幽体として復活したフェッテルの手で救出されます。指揮系統が混乱し、孤立無援となったポイント・マンは、目的を明かさぬままにつきまとい、時に援護をしてくれるフェッテルと共に、独自の行動を開始する・・・というストーリーです。



■Co-opプレーが進化し、兄弟でコンビプレイが楽しめる
このように、満を持して登場した最新作『3』は、過去の伝統を踏まえた上で、シリーズに新たな風を送り込むことに注力したようです。具体的にはCo-opモードを前提としたゲームデザインと、ホラー映画の重鎮を招いた、恐怖演出の進化です。

前者では、前述の通りプレイヤーキャラクターがポイント・マンとフェッテルの二名となり、コンビプレイが楽しめること。後者では映画『ハロウィン』シリーズで著名なジョン・カーペンター氏と、映画『30デイズ・ナイト』を生み出したスティーブ・ナイルズ氏を製作に迎えて、よりホラー描写を洗練させようとしています。

ゲームの操作は、左スティックで移動、右スティックで照準、右トリガーで射撃という一般的なFPSを踏襲しています。装備できる武器は二種類で、状況に応じた取捨選択が重要です。FPSながらカバーアクションをとることもでき、遮蔽物から身を乗り出しての銃撃などが可能。敵キャラクターも同様の攻撃を行ってきます。

キャラクターの性格付けも対照的で、ポイント・マンは過去のシリーズと同じく、一定時間だけ周囲の時間がゆっくり進行する特殊能力「Slo-Mo」が使えます。これに対してフェッテルは、一定時間他のキャラクターに憑依して、その肉体を自由に操って戦うことができます。単独でもエネルギー弾を発射して攻撃することが可能です。

この憑依能力ですが、ちょっと離れた場所からも可能なんですね。扉を開けると中に大量の敵が待ち構えていて・・・というシチュエーションでも、敵部隊の一人に憑依すれば、一瞬で空間を移動して、内側から一斉掃射を浴びせられるのです。憑依能力を利用した空間移動は、アンカーなどを使って移動する感覚とよく似ています。

このように、フェッテルが憑依能力を用いて敵を内側から切り崩しながら、ポイント・マンがスローモを用いて正面から敵を掃討していく・・・といったように、両者のコンビネーションでゲームを進められるのが最大の特徴となっています。いわばポイント・マンが海兵隊員なら、フェッテルはエイリアンといった位置づけでしょうか。



■Co-opを意識したレベルデザイン
レベルデザインもCo-opプレイを意識した作りになっています。もともと『F.E.A.R.』は敵キャラクターのAIアルゴリズムを生かしたレベルデザインが特徴で、多くのステージで複数のルートが設定されていました。そのため物陰に隠れながら、目の前の敵を倒すのに集中していると、いつの間にか敵の分隊に背後から回り込まれて、挟み撃ちにあうなどの状況が見られました。

『3』ではこれに加えて、レベルデザインがより立体的になっています。仮収容所から脱走するミッション1では、1Fから3Fまで金網のフロアに仕切られ、互いに視認できるだけでなく、どのルートからでも進めていけるマップがあり、本作の特徴をよく示しています。お互いに協力しても良し、競争しても良しという、自由度の高い作りです。

ソロプレイの中心となるキャンペーンモードでは、プレイヤーはポイント・マンを操作して、ミッションを進めていきます。前述の通り、ミッション1は室内戦闘が続く監獄ステージ。ミッション2は前半こそ下水道ですが、後半では日中の屋外が舞台のスラムステージとなり、ホラーFPSらしからぬシチュエーション。メカ兵器にバズーカで立ち向かうなどの場面もあり、ミリタリーFPSの感覚でプレイできます。

ミッション3は、再び夜間の巨大量販店がステージとなります。敵キャラクターも頭に紋様の描かれた袋を被り、体に爆弾を仕掛けたTシャツ姿の市民が大量に押し寄せてくるなど、有名ホラー映画のオマージュといった印象です。このように、多彩なシチュエーションでプレイできる点も『3』の特徴となっています。

ステージは海外大作FPSらしく、基本的に一本道です。謎解きの要素も、ほとんどありません。ただし同じような部屋が続いたり、地味な場所に扉が設置されていたりと、ルートがわかりにくい点が何カ所か感じられました。「出口」は必ず存在するので、迷ったら到達できる範囲を、しらみつぶしに探してみるといいでしょう。



■ミニゲームやオンラインプレイも充実
一度クリアしたミッションは、プレイヤーキャラクターをフェッテルに変えて遊ぶことができ、スコアアタックやタイムアタックができます。実績やトロフィーも大量に入っており、リプレイバリューも高くなっています。前述のようにミッションをCo-opプレイで遊ぶこともでき、オンラインとオフラインの画面分割プレイに対応しています。

マルチプレイの全てのモードはオフラインでの画面分割および、オンラインで遊ぶ事ができます。

共にポイント・マンとなって、敵キャラクターの波状攻撃から身を守りつつ、どちらが多くスコアを稼ぐかを競う「胎動」。同じように、共にスペクターというキャラクターになって憑依攻撃を繰り返しつつ、一定時間内のスコアを競う「ソウルキング」。4人で敵を倒しながら逃走する「フ**キンラン!」。プレーヤーが次々にスペクターとなる中で生き残りを競う「ソウル・サバイバー」といった、多彩なプレイが楽しめます。

『2』で登場したパワードスーツは『3』でも健在で、乗り込んで戦えます。キャンペーンモードでは特定のステージでなければ使えませんが、「胎動」では最初から乗り込めるステージも用意されています。週末に短時間で、手軽に友達とゲームを楽しみたいなら、こちらのステージを選ぶのが良いでしょう。

オンラインのマルチプレイも充実しており、最大4人まで協力・対戦プレイができます。今回のインプレッションでは体験できませんでしたが、「フ**キンラン!」では4人で敵を倒しながら逃走するという遊びが体験できます。また「ソウル・サバイバー」では一人だけフェッテルとなって他の3人と対決したりと、多彩なプレイが楽しめるようです。

もっとも、AIキャラクターのアルゴリズムがどの程度進化したかは、判断がつきませんでした。プレイヤーを目視するように部隊が連携して動いたり、遮蔽物の陰から手を伸ばして攻撃してきたりと、敵キャラクターのリアルな動作は健在です。もっとも本作ならではの進化という点では、もう少し遊びこむ必要がありそうです。



■ホラーゲームとしての完成度は未知数
このようにゲーム体験の充実ぶりが目立つ『3』ですが、「ホラー」部分はどうなったのかというと・・・。正直、本インプレッションの段階では、過去のシリーズと比べて、それほど目立った変化は感じられませんでした。

もちろん、ゲーム冒頭でガラス越しにアルマの姿が映し出されたり、視界にブラーがかかったり、量販店の棚につまれた商品がラップ現象で動いたりといった、ジャパニーズホラー的な演出は健在です。まずは導入部で、しっかりFPSとしてのおもしろさを体験してもらい、後半でホラーテイストが加速していく・・・という作りであることを期待したいところです。

また、現世代機ならではの実績やトロフィーシステムが、ホラーゲームと相性が悪い点もあります。ドキドキしながらゲームを進めていると、いきなり画面に実績獲得のメッセージが表示されて興ざめしてしまう、などが少なからず発生するのです。ゲーム中に実績やトロフィーが表示されないように、設定で変更できれば良いのですが・・・。今後のシステムアップデートなどで、プラットフォームホルダーに対応を求めたいところです。

もう一つ。本作は3作目なので『1』『2』をプレイしていなければ、充分に楽しめないかも・・・と思われる方がいるかもしれません。事実、冒頭で示したとおり、本作は『1』の数ヶ月後のストーリーで、直接の続編となっています。

しかし幸か不幸か、本作はFPSですので、背景情報やゲーム中のストーリーなどが、国産ゲームのRPGなどと比べて、かなり簡略化されています。ゲームはゲームシーンとイベントシーンのサンドイッチ構造で、とりあえず敵をなぎ倒して進めば進行します。実際『1』『2』を遊んでいなくても、プレイに支障は全くないでしょう。

ただ自分が誰で(ポイント・マン)、敵が何で(アーマカム社)、何のために戦っているのか・・・といった基本設定が、今ひとつわかりにくいように感じられました。個人的にはFPSといえども、もう少し世界観やストーリーの見せ方に配慮があっても良いかと思うのですが、どうでしょうか。



■友達と接待プレイをするには最適
結論として、過去二作に比べてゲームプレイの充実度は眼をみはる物があります。友達と二人で週末にCo-opプレイを楽しんだり、ネットワークでマルチプレイを楽しむには最適でしょう。シングルプレイもポイント・マンとフェッテルの最低二周は楽しめ、お得感があります。シリーズを通して、FPSとしての完成度も折り紙つき。難易度も三段階から選べ、FPS初心者でも楽しめるでしょう。

中でも死語になりつつありますが、友達が遊びに来た時の「接待プレイ」に効果を発揮しそうです。クリア済みのインターバルを選択し、友達にポイント・マンを選ばせて、自分はフェッテルで援護するなどが定番でしょう。キャンペーンモードに飽きても、豊富なミニゲームで遊ぶことができます。ホラーという点で人を選ぶ部分もありますが、今夏の良質なFPSとして、コレクションに加えておいても損はないと思います。



【製品情報】『F.3.A.R.』
対応機種:PlayStation 3/Xbox 360
発売日:2011年7月21日
価格:7,980円(税込)
ジャンル:アクションホラーFPS
開発元:Day 1 Studios

『F.3.A.R.』特集ページもチェック!
《小野憲史》
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