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【CEDEC 2010】ゲーム開発を民主化する「Unity」日本市場にも注目

いま世界で熱い注目を集めているゲームエンジンが「Unity」です。Unity TechnologyのCEOであるDavid Helgason氏はCEDECに合わせて初来日し、「Unity ― 一度プログラムを書けばどこででも展開可能」と題するセッションで「Unity」を日本の開発者に向けて紹介しました。

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いま世界で熱い注目を集めているゲームエンジンが「Unity」です。Unity TechnologyのCEOであるDavid Helgason氏はCEDECに合わせて初来日し、「Unity ― 一度プログラムを書けばどこででも展開可能」と題するセッションで「Unity」を日本の開発者に向けて紹介しました。

Unity Technology CEO David Helgason氏


「Unity」の特徴は「民主的」なゲームエンジンであるということです。一般にゲームエンジンといえば最先端の技術を盛り込んだゲームを容易に作るためのものですが、「Unity」が目指すのは、ゲーム作りを全ての人に解放し、誰もが簡単に、いわばブログを書くようにゲームを作るようになることです。

そのため、ライセンスは非常に簡素化されていて、学生や趣味のゲーム開発者やスタートアップ企業向けには無償で、大企業でも1500ドルという非常に安価で提供されています。機密という考え方はなく「NDAを結ぶ必要もない」とか。さらに全てがウェブサイトからダウンロードできますので、誰もが気軽に始める事が出来ます。

Unityの開発環境採用実績利用者の割合


一方で「Unity」の統合環境は非常に深いところまでカスタマイズが可能で、追求すればどこまでも深堀が出来る形になっているそうです。基本的なゲームエンジンとして必要な描画エンジンなどは当然搭載されているほか、PHYSX(物理計算)、fmod(サウンド再生)、Umbra(レンダリング高速化技術)などサードパーティ製のミドルウェアが追加費用なしに標準搭載されているそうです。

プラットフォームも豊富で、ウェブ向け(プラグインをインストールし利用)からPCやMac、iPhone/Androidといったスマートフォン、家庭用ゲーム機もWiiとXbox360、現在開発中ですがPS3にも対応予定です。

■Unityの成功

Unity Technologyは5年前の設立ですが、ゲームエンジンという性質上、なかなか採用は増えなかったものの、実績が出てくるにつれ加速し、現在では25万人以上の開発者が利用し、Unityを利用した1000タイトル以上が世に出回っているということです。ゲーム以外にも広告やシミュレーション、医療、調査など幅広く利用されているとのことです。

Unityの勝因


David Helgason氏はローエンドのゲームエンジンがここまで成功した理由について、「テクノロジーの収益性の歴史を見れば必然」と語ります。例として「専門特化したSGIとマスマーケットのNvidia」や「メインフレームとPC」を挙げ(=マスを対象とし成功した場合の収益の大きさ)、ゲームエンジンの分野でもCryEngineやUnreal EngineではなくUnityが成功するのは必然だと言います。

ここからは国内で実際にUnityを使った例が挙げられました。

■ゼペット宮川氏

一人でiPhoneゲームを作るガレージカンパニー、ゼペットの宮川義之氏は「Unityは本当にオススメ。今すぐダウンロードすべき」と語ります。採用するきっかけはパンカクの『Lite Bike 2』を作る事になった際、一人の会社で手早く3Dゲームを作る方法を「ググった」ことだそうです。

ゼペット宮川氏Lite Bike 2求められたもの


『Lite Bike』は世界で200万ダウンロードを記録した大ヒットのレースゲームです。その続編としてはグラフィックの向上や変わらないスムーズさが求められました。Unityを使えばリアルタイムに調整しながら遊ぶ事ができ、カメラ位置など美しく見える方法を試しながら実装が可能です。また、スムーズさという点では、Unityのユーザーコミュニティは非常に発達していて、あらゆる疑問点がコミュニティで解決できるという他のエンジンでは敵わない環境ができています。「正しいやり方をすればEAだろうが個人だろうが同じパフォーマンスがでます。しかもその方法は聞けば大体返ってきます」(宮川氏)

「日本ではゲームエンジンを使う例は多くありませんが、ゼペットでは有効に使う事で色々なタイトルを作れています」と宮川氏。実際にゼペットでは設立から2年未満で『PocketVegas』『LightBike2』『iYamato』『iNinja』をリリース、『iCarShoot』を現在開発中です。「Unityを使う事で一人の会社でも色々な事を実現できるのでは」ということでした。

■KH2O 大前氏

KH2Oの大前広樹氏は以前はフロムソフトウェアに在籍。現在は独立しiPhone向けゲームを開発中です。UnityのセッションではUnityの標準エディターを拡張するワークフローについて説明。Unityが柔軟性を持ったゲームエンジンであることを実証しました。

KH2O大前氏Numbersを使ったワークフロー文字列表現の拡張


今回の例は、多くのパラメータを持つゲームにおいて、UnityのInspectorでいちいち値を設定するのではなく、外部のファイルに値を持たせるというものです。WindowsであればExcelの出番ですが、iPhoneはMacなのでNumbersを利用。AppleScript経由でNumbersを呼び出しテキストに出力、それをパースしてデータを読み込むという方法です。

また、Unityの弱点として文字列表現が苦手ということが挙げられます。そこで大前氏はCocoa-touchの標準関数であるCoreGraphicsを使って文字列を描画しているそうですが、これはUnityの開発環境では動作しません。そこでiPhoneの実機とUnity環境で切り分けをして、Unityの場合はMacに入れているUnixバイナリ(CoreGraphicsを代用する機能を盛り込んだ自家製アプリ)を叩いて同様の処理ができるようにしているそうです。これで環境を問わず開発ができるようになります。

「フレキシブルにエディタが拡張できるのでプロの用途にも耐えられるのでは」(大前氏)ということでした。

■ワークスゼブラ 小林氏

最後に登壇したのはワークスゼブラの小林宗氏。同社ではクルマのカラーやアクセサリなどの外装/内装を自由にカスタマイズできるというカーコンフィグレーターというシステムを開発しています。これまでは別の環境を使って制作していましたが、グラフィック表現やUIで難点があり、Unityに乗り換える事にしたそうです。

ワークスゼブラ小林氏カーコンフィグレーターワークフローが変わる


Unityでプロトタイプを作ったところ、わずか3日間でクルマが作れ、色やパーツも変更可能なものができてしまったそうです。さらにUnityではデザイナーが直接アウトプットできるようになり、効率の面でも向上があったそうです。さらにはZEANYエンジンと呼ばれる自社のリアルタイム3Dエンジンシェーダーも1~2週間で組み込みが完了したそうです。

Unityで制作されたカーコンフィグレーターは近日中に公開されるということです。会場ではプロトタイプが紹介されましたが、クルマの細部まで磨きあげられ非常にクオリティの高いものに仕上がっていました。


このようにUnityの用途は幅広く、柔軟性の高いゲームエンジンになっています。ドキュメントも充実し、有志による日本語化も行われています。

同社の担当者によれば、今後近いうちに日本の担当者を起用し日本市場の開拓を本格的に進めていく事になるということです。日本語化も力を入れていくということでした。無償で利用できますので、ぜひ触ってみてはいかがでしょうか。
《土本学》
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