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海外で日本製ゲームが売れなくなってきた・・・IGDA グローカリゼーション部会 第2回「海外市場向けリサーチの活用法」前編

IGDA日本 グローカリゼーション部会(SIG-Glocalization)は第2回研究会「海外市場向けリサーチの活用法」を12日、立教大学池袋キャンパスにて開催しました。

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海外で日本製ゲームが売れなくなってきた・・・IGDA グローカリゼーション部会 第2回「海外市場向けリサーチの活用法」
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IGDA日本 グローカリゼーション部会(SIG-Glocalization)は第2回研究会「海外市場向けリサーチの活用法」を12日、立教大学池袋キャンパスにて開催しました。第2回では初回のディスカッションでも議論となった、リサーチの活用法について、カナダに拠点を持ち、多くの実績のある株式会社Enzymeの池田英一氏が講演しました。

株式会社Enzymeの本社、エンザイム研究所(Enzyme Testing Labs)はカナダにあり、ゲームのQA(デバッグ)、ローカライズ、フォーカステストといった業務を行っていて、カナダではケベック州、モントリオールに拠点があり、海外では昨年8月に設立された日本法人とスペインのマドリードに拠点を持ちます。世界で数百人のテストスタッフが在籍し、日本には17名がいます。

ゲームにまつわるリサーチについて一般的には、ゲームにおいては市場調査を綿密に行うよりも、クリエイターの構想を具現化することに重点が置かれていて(マーケットインよりもプロダクトアウトが重視)、特に日本国内のメーカーでは開発前に大掛かりなリサーチを行うことは稀だとされています。第2回研究会でもこの認識の元に、リサーチはすべきか/否か、するとすればどのような手法が考えられるか、といった議論がなされました。

■海外のリサーチとは

まず池田氏が挙げた、海外のリサーチは以下の5つの項目の意味を持ちます(これは日本でも同様でしょう)。

・市場の動向を知る
・ユーザーの嗜好を知る
・作品の評価を知る
・そこで得た結果を開発に生かす
・そこで得た結果を売り上げに繋げる

池田氏は日本では欧米と一括りにされがちだが、北米と欧州各国ではかなり違いがあると指摘しました。文化や宗教の違いでユーザーの感覚は異なりますし、人気のあるジャンルも異なってきます。ハードの普及台数でもマイクロソフトが強い北米とソニーが強い欧州という違いがあります。

日本との違いという意味では、ゲームの遊び方が違い、まだ据え置き型ゲーム機が主流である点、日本よりも流通の力が大きく大手でなければ棚を確保できないといった点、Metacriticに代表されるレビューサイトなどネットの評価が日本以上に売上に影響し、相関関係を取るといった点が指摘されました。

■海外でゲームが売れない

これらを前提にした上で、池田氏は近年日本のゲームが海外で売れないという現象について次のように述べました。「面白いゲームは日本製という時代には少々違和感のあるゲームでも我慢して遊んでもらえました。しかし市場が発展し、現地発の良質なゲームが増え、ユーザーにとっては選択肢が増えた結果、違和感のある日本製のゲームはなかなか手にしてもらえなくなりました。まだまだ日本のゲームで育った層には日本贔屓がありますが、若いゲーマーはそうではなくなってきています」。その結果として日本人の感覚や知識だけでは海外市場を理解できなくなってきています。

ここでいう違和感は、後のディスカッションで挙げられたのは、サッカーゲームであればEAの『FIFA』とKONAMIの『ウイイレ』の実況の違い、というような僅かな部分です。どうしても言語を翻訳する際に入る違和感、文化的・社会的なバックグラウンドから出る違和感、そうした細かな違いが敬遠される元になっているということです。

そうであれば実際に触ってもらうのが一番です。それがフォーカスグループを用いたリサーチです。ゲームの想定顧客となる人を一定数集め、意見を聞いたり、実際にゲームをプレイしてもらい、それを観察して、反応を探るという手法です。その結果は、ゲームのプロトタイプ製作時に今後の方向性を決めるのに用いたり、完成時に想定顧客を探るのに使ったり、項目別に点数評価を行い、パブリッシャーとの交渉に使うというようなことができます。現場に立ち会って、直接に反応を見るのが重要で、エンザイムでは画面、手元、表情の3つのカメラで多角的に観察するシステムも構築中だということです。

フォーカステストは一般的なB2Cメーカーであれば当然に採用されていて、ゲームメーカーでも海外であれは一般的に利用されているものの、まだまだ日本メーカーでは実施例が限られるようです。もちろん、フォーカステストで得られた情報をどこまで開発にフィードバックしていくかは、クリエイターの創造性をどこまで実現するか、という部分と十分に吟味する必要がありますが、池田氏は前提条件として想定ユーザーをより知るというのは必要になってくるのではないかと話していました。
《土本学》
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