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関ヶ原で渦巻く人間模様を「采配」で描く、DS『采配のゆくえ』を開発スタッフが振り返った

任天堂 DS

采配のゆくえ
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「関ヶ原の戦い」で東軍ではなく、西軍を率いる石田三成となって戦うコーエーの新作タイトル『采配のゆくえ』。「無双」シリーズで知られるω-Forceが手がけたゲームでもあります。しかし、ジャンルはシミュレーションでもアクションでもなく「合戦アドベンチャー」。今までにない斬新な試みで、どのように作られたのか気になるところです。そこで開発スタッフの方々に、コンセプトや苦心談などについて、お話を聞いてきました。



■参加者


森中隆 ソフトウェア事業部 ソフトウェア1部 マネージャー
「真・三國無双」シリーズ「1〜5」すべての制作にかかわり、「5」ではプロデューサーを務める。本作ではディレクターを担当。

S・K ソフトウェア事業部 ソフトウェア1部
『真・三國無双3』『4』『ブレイドストーム』の制作にかかわる。本作はメイン企画とシナリオを担当。


■負けた側が主人公?


―――まずはじめに、企画のスタートから教えてください

関ヶ原の戦いとは
西暦1600年、岐阜県・関ケ原町で戦われた戦い。徳川家康が率いる東軍と石田三成が率いる西軍とに分かれて、豊臣秀吉死後の政権をかけて決戦が行われた。この戦いに勝利した家康は政権を掌握し、1603年に徳川幕府を開くことになる。「天下分け目の決戦」として有名。
森中:もともとコーエーは、他のハードに比べて、DSのヒットタイトルが少なかったんです。それでDSで、コーエーの得意な歴史モノで、かつ新ジャンルへの挑戦をして、ユーザー層を広げたいという狙いがありました。ω-Forceも今では「無双」シリーズで有名ですが、もともとは新分野を開拓するチームです。そこで今回プロデューサーから、チームの原点に戻って新規アドベンチャーゲームを制作するという指示がありました。構想自体は2年くらい前からあったようですが、実際に企画が動き出したのは、発売の1年前ですね。かなり急ピッチな進行でした。

―――DS・歴史・アドベンチャーが発端だったんですね。では舞台に関ヶ原の戦いを選ばれたのはなぜですか?

森中:もともと「合戦アドベンチャー」というイメージがありましたので、どの合戦にターゲットを絞るかからスタートしました。その中でも一番有名なものは、関ヶ原や川中島の戦いかなと思ったんです。さらに今回は「合戦ドラマ」を描きたいということで、人と人とのつながりや関係性、信頼や裏切りといった、その奥に潜むドラマ感を表現したいという思いがありました。そこで関ヶ原が適切だと決定したんです。さまざまな武将の思惑が渦巻く中で開かれた合戦でしたから。

―――その上で石田三成が主人公ですか?

S・K:そこは意外とすんなり決まりました。先ほども説明があったように、DSで歴史ゲームユーザー層を広げたいという狙いがありました。そうなると歴史に興味がなくても、名前くらいは知っている合戦というのが、まずは関ヶ原だったんですね。徳川家康を主人公にするというアイディアもあったんですが……。

―――負けた側が主人公になった。

S・K:これは個人的な感覚ですが、勝者よりも敗者の方に、よりドラマっぽい感じがあると思うんですね。むしろ敗者の視点から切り込んだ方がいいんじゃいかと。それに関ヶ原の戦いを題材にした小説や資料には、どれも三成について「固い信念の持ち主で、だけど周りから認めてもらえない」とあります。そこがすごく主人公っぽいし、うまく周囲をまとめていくことが、ゲームにつながりそうな気がしたんです。調べていくうちに、これは家康よりも三成の方がドラマにもなるし、ゲームにもなると思ったんですね。

―――なるほど。

S・K:確かに社内からも「家康でなくていいの?」という反応はありました。でも、こういった理由を説明すると、「だよね」という回答ですんなりとまとまりました。


■デザイン画ですべてが決まった


―――ただ、そうはいっても三成には「エリート官僚」という既存イメージがあります。それが「バカ正直」がとりえのキャラクターへと、うまく昇華させましたね。

森中:まずディレクターとしては、アドベンチャーゲームの主人公ということで、極端に個性的にならないように注文を出しました。プレイヤーは主人公キャラに没入してプレイしていくわけですから、あまりにも引いてしまうような、極端に個性的な設定に流れないで欲しいと。その上で新しい三成像を造って欲しいと要望したんです。それ以外はS・Kの「采配」で決まりました。

―――ではゲームデザインとキャラクター設定の作業は?

S・K:世界観とゲームの原型は、ほぼ同時にできました。関ヶ原が舞台で、主人公が三成だったら、仲間を説得していくゲームシステムになるだろうと。ただ、実は最初の三成って、当社の「戦国無双」シリーズでもそうですが、嫌われる部分もあるけど、好かれる部分もあるような、もっと尖ったイメージを持っていたんです。でもディレクターから話があったように、もうちょっとフラットで、少なくとも遊んだ人から誰からも好かれるようなキャラクターでなければまずかろうと。それで、ものすごく悩みましたね。

―――解決の糸口は何でしたか?

S・K:それがキャラクターのデザイン画なんです。



―――CGディレクターの景由昌美さんをはじめとするCGデザイナーチームですね。

S・K:ええ。キャラクターデザイナーにデザイン画を何案か出してもらった時に、ああ、もっとベタでいいんだと。もっとストレートに、三成の好かれる部分だけを突出してみようと思ったんです。それで本当に、忠義だけをバカみたいにつらぬくようなキャラクターになっていきました。もっとも、これは三成だけではなくて、本当にデザイン画には助けられましたね。

―――景由さん以外にも、女性スタッフが多いのにも驚きました。クレジットによると、30名弱のチームで半数弱となっています。

森中:偶然が大きいのも確かですが、DSで幅広い層に受けいれられるソフトをめざしていましたので、女性スタッフが入ってくれた方が、プラスに働くとは感じていました。そこは少なからずあった狙いではありますね。

―――確かにこのゲームは、丸い感じがします。

森中:他の作品ですと、ここまで思い切って丸くはできなかったでしょうね(笑)。


■コンセプトは「合戦は説得だ」


―――アドベンチャーゲームに限らず、ストーリーゲームにはゲームシステムが先か、シナリオが先かという問題が良く発生します。これが中途半端なまま進行して、混乱してしまうこともある。本作ではどうでしたか?

森中:先ほどお話ししたように、このゲームのテーマは「合戦ドラマ」でした。それで最初に「合戦は説得だ」というゲームコンセプトを立てたんですよ。合戦というと普通は武力対武力で競り合って、強い方が勝つという世界なのに、そこを会話で表現していくことにおもしろみを持たせようというのが、今回のコンセプトだったんです。

合戦の背景
関ヶ原の戦いでは、両軍あわせて17万の軍勢が参戦したが、決戦自体は1日で終了した。もっとも関ヶ原以外でも、全国規模で関連する合戦や武将の動きがあった。徳川秀忠が率いる東軍の主力部隊を寡兵で釘付けにした信州・真田昌幸はその代表例。他にも奥羽の上杉景勝、東北の伊達政宗、九州の黒田如水などが、周囲の大名と互いに牽制しあったり、所領を広げるなどして、これらが決戦に大きな影響を与えた。また実際に関ヶ原で戦った武将の多くは旧豊臣家恩顧の者で、そこには複雑な人間関係が渦巻いていた。
―――ただ、関ヶ原が舞台ということで、いろいろなアイディアが考えられますよね。全国に視野を広げるとか、開戦までに戦前の交渉を行う交渉パートと戦闘のみに特化した合戦パートの二部構成にするとか、普通は考えがちです。そこを関ヶ原の約1日に絞り込んだ点が凄いと思いました。

S・K:それはプロデューサーから一番はじめに言われたことでした。関ヶ原の1日でゲームを納めろと。

―――小笠原賢一プロデューサーですね。でも、なぜ?

S・K:そこはあえて「なぜ」とは聞きませんでした。ただ「そうですか」と(笑)。

ただ調べていくうちに、実は関ヶ原のたった1日の戦いだけでも、ものすごく濃密なドラマが詰まっていることがわかってきて、十分に1本のゲームになると思ったんです。回想シーンや後日談なども必要にはなるだろうけど、1日で納めること自体は、それほど無茶じゃないと思った。もちろん歴史的な話をすれば、全国にわたった戦いですから、これを広げることもできました。ただ歴史の予備知識がほとんどない人に、いきなり長野や九州などの話をしても、それはまずかろうと。それこそ絵柄から入ってきた人でも、十分に楽しめるゲームにしたかったんです。

―――なるほど。

S・K:当初は合戦の外側で行われた権謀術数についても表現する意図がありましたが、それでは、ますます膨らんでしまって、一部の人にしか楽しめなくなる。より多くの人に遊んでもらいたくて、周りの要素を切ったというところはあるかと思います。

―――番の勝因はそこですね。小笠原プロデューサーには、最初から完成形のイメージがあったのでしょうか?

S・K:いや、ある程度完成した時に遊んでもらったら、自分が作ったら、こうはならなかったと言われたそうです。今回はけっこう現場に任せてもらえました。

采配のゆくえ・・・失敗するか成功するか


■キャラがストーリーを紡いでいった


―――ゲームシステムはオーソドックスなアドベンチャーゲームを踏襲されていますが、数多くある既存タイトルからの影響などはありましたか?

森中:もちろんいろいろなアドベンチャーゲームを参考にはさせていただきました。その中での差別化として「采配のゆくえ」は「合戦をいかに描くか」を重視して作りました。合戦の理由や緊張感の高まりなどに力を注ぎたかったのです。

S・K:ゲームシステム自体は、最初のイメージから、ほぼ崩れていません。むしろ画面レイアウトや配置などの、ユーザーインターフェースデザインに苦労しました。マップ上で部隊を動かす「天眼」システムも、企画当初からありましたよ。もっとも難易度やバランス調整には、かなり時間をかけましたが。

―――それはすごい。

森中:今回は一作目ということで、比較的易しめに作ったつもりです。だから物足りないと感じられる方がいるかもしれませんが、できるだけ最後まで投げ出さずにプレイしていただきたかったんです。そのため気をつけた点の一つが、細かい数値などを一切出さないようにする、ということです。やはり歴史は深いので、語れることは多いんですが、「いかに切るか」の部分で最も苦労しました。

―――シナリオ一つとっても、それは感じました。一般にアドベンチャーゲームはシナリオが冗長になりがちなのですが、本作では増やしても削ってもいけないという、うまい感じでストンと落とした感じがしました。かなり苦労されたのでは?

S・K:書き出しが一番大変で、数十回も直しました。なにしろ最初は三成のキャラも決まっていませんでしたし。私自身も何回も書き直しましたし、プロローグを書き出してからも、予備知識がなければ遊べないとか、複雑になりすぎるとか、調整が大変でした。でもキャラクターができあがるにつれて、どんどんスムーズに書き進められました。「キャラクターが紡いでいってくれた」という感じですね。デザイン画からキャラクターの台詞に反映させたりした点もあるんですよ。もっとも後半で、またつまづきましたが。

―――具体例などはありますか?

S・K:ヒロインの「たまき」の肩に「梅だいふく」という名前のネズミが乗っているんですが、あれは私は指定していないんです。いつのまにか、デザイナーがちょこちょこっと描き足していたんですよ。

森中:今回はかなり、そういうところがあるよね。

―――では、たまきの頭上で梅だいふくが傘を差すアニメパターンがありますが、それもそこから生まれたとか?

S・K:そうですね。さらに、いなくなった梅だいふくを探して陣地をうろつくなど、シナリオにも反映させたり。

―――開発チームの中で、かなりキャッチボールがあったんですね。

S・K:ええ。私は「真・三國無双3」からω-Forceに加わったのですが、「無双」チームはその頃からかなり大規模なチームになっていました。それが今回は「無双」に比べれば小規模で、そのためコミュニケーションが、必然的にかなり密にとれたのが良かったです。会話だけではなくて、デザインにあわせてシナリオを修正したり、それがさらにデザインやアニメパターンに反映されたり。そうしたキャッチボールが、ゲームやシナリオ、ひいてはキャラクターの魅力につながっていったと思います。非常に良い感じで仕事ができました。

―――僕が最初につかまれたのは、宇喜多秀家の「……わしは、案外、素直なのじゃ!」という台詞でした。それから"天狗の鼻"が上下に伸びるアニメーション。これらも、そうしたキャッチボールで生まれてきた結果という印象を受けます。

森中:そうですね。「無双」シリーズでは、キャラクターデザインや設定を最初にがっちり固めておいて、それをCGデザイナーに渡して描いてもらう流れでした。しかし、今回はコンパクトなチーム編成で、一カ所に集まって意見を交換しながら作っていたので、デザイナーの自由度が高かったこともあり、高いモチベーションで、いろんな意見を出してくれました。そういう中ですりあわせをしながら、お互いに良いゲームにしていこうという意識がありました。


■史実だけで十分、ドラマチック


―――ストーリーは基本的に1本道で、史実をなぞる展開ですが、マルチシナリオにするなどのアイディアはありませんでしたか? 

S・K:とりあえず最初からゲームでやる以上は、プレイヤーが勝たなければいけない、と思っていました。

―――実は、そこもどきどきしながら遊んでいました。なにしろ、史実では西軍が負けていますから。

S・K:ゲームデザイナーの立場として、プレイヤーが遊ぶからには、必ず勝たなきゃいけない。でも関ヶ原において、本当に勝者の美学だけで語っていいのかという疑問はありました。そこを、どう納得してもらえるような形で落とすか、結末は最後まで悩みました。その結果、ああいう形になったんですが……。これまでプレイしてきた方が、最終的に私が提示した遊びを終えて、どう感じたか、そこを大切にするような終わり方にしたかったんです。

―――余韻が残るような……。

S・K:そうですね。その一方で途中の展開は正直、史実をなぞるだけで十分にドラマチックなので、それを起承転結にのっとって配置していきました。ここをあえて変えてしまうと、逆にドラマではなくなる気がしたんです。事実は小説よりも奇なり、ではありませんが、実際の人間達がこういうドラマを残してくれた。だから、事実を変えるよりも、その事実を紡ぎ出した人たちが、何を考えていたのか、そこを掘り下げていくスタンスをとりました。各武将が持っている思惑を描くというコンセプトがあって、できるだけ理由を掘り下げていった感じはありますね。それによって、敵も味方も自分なりの存在意義ができて、それによってキャラの魅力を増していけたかな、と思います。

―――なるほど。

S・K:ただ、合戦半ばで最大のピンチに陥るところがあります。ここは冒頭に続いて、何度も書き直したところで、プレイヤーのモチベーションを下げつつも、下げすぎないで最後の逆転につなげていくか、非常に苦労したところです。

―――史実だと西軍が瓦解してしまうポイントですね。そこでプレイヤーに投げ出されないように、苦労したわけですね。

S・K:ええ。正直、自分も一ゲームプレイヤーとして、いろんなゲームを遊んできましたが、自分が遊んできた内容が、ゲームシステムの都合上瓦解させられるというのが、一番頭に来るところなんです。

―――すごくわかります。

S・K:それが本作で成功しているか否かは、プレイヤーの皆さんに判断していただくしかないと思います。私なりにがんばったつもりですが。


■行動は史実、理由は想像


―――もう少し掘り下げさせてください。キャラの抽出方法といいましょうか。史実を尊重しつつも、現代風にアレンジしていて、なおかつ魅力的になっている点が、すごい腕だなあと思いました。歴史がお好きなんですか?

S・K:ホントにぶっちゃけると、コーエーに入るまでは、一般教養的な知識だけで、武将の名前がずらずら言えるだなんて、とんでもない。ホントに信長・秀吉・家康レベルだったんですよ。それがコーエーに入って、いろいろ勉強していくにつれて、歴史上に魅力的な人物がたくさんいることがわかりました。ただ、その魅力をわかりやすく伝えないといけない。やっぱり私もコーエーの外にいたときは、「歴史ゲーム」というだけで、ちょっと身構えていた部分はありましたから。

―――そうですね。

S・K:そういう「お堅い」イメージのある歴史を、エンタテイメントにつなげていく部分が、「無双」チームはものすごく上手いと感じていました。それがコーエーで制作に関わらせていただくようになって、次第に自分の中にノウハウが貯まってきた、というのが一つの大きな要因だったと思います。

―――とはいえ「無双」シリーズが少年漫画風なら、「采配」には青年漫画の趣がありますね。

S・K:それが先ほどの「理由」の掘り下げでしょうか。関ヶ原の戦いに参加した武将には、みんなそれぞれ過去があるわけで、本当の思いはわからないにしても、誰が誰のために戦ったとか、行動の部分は史実に残っています。その「理由」の部分は想像力でおぎなっていく。逆にそこまで史実に基づきすぎると、キャラクタライズしてお客さんに届けることはできなかろうと。むしろ、できるだけ現代の感覚に近い形で、私の中で補足していったところはありますね。史実を抽出して、それをつなぎ合わせたというか。

―――行動は史実、理由は想像、ですか。

S・K:ええ。それと繰り返しになりますが、デザイン画に非常に助けられました。最初にデザイナーに、史実に基づいて設定資料を作って、この人はこういう人です、と渡したんです。そこからラフデザインがあがってきて、修正を重ねていく過程で、「理由」の部分も掘り下げていきました。ここはもう少し広げて、ここは逆に縮めて……という感じです。だからゲームの中で語られていない部分もあるんですが、それは全部出してしまうと冗長になるだろうと。それで削ったところはあります。ホントに今回は、キャラの背景を作ることに、ものすごく時間を費やしました。


■イケメンぞろいにはしたくなかった


―――ちなみに、お気に入りのキャラは誰ですか?

S・K:いやー、私は「親」ですからね(笑)。

人気の高かった藤堂高虎
―――どれも良いキャラですが、藤堂高虎は良い味を出していますね。

S・K:藤堂高虎は最初のデザイン画がものすごく格好良かったんです。それで、もう少し活躍させてあげたいなと思って、どんどん味が出ていきました。

森中:ただ、イケメンぞろいにはしないように、気をつけてもらいました。それはそれで、楽しみにしてくれるお客さんもいるかと思いますが、今回のゲームにはあわないと思ったんです。いろんな個性のキャラクターがいるからこそ、ストーリーが面白くなる。その良い例が田中吉政です。

―――良い感じの、おじさんですよね。

森中:ええ。一見地味に見えますが、チーム内では人気が高かったんです。

―――まさにアクションではなく、アドベンチャーならではですね。

森中:そうです。だからNHKの大河ドラマみたいなイメージで作りました。いろんな個性的な俳優がいて、歴史的事象はあっても、その前後であったり、キャラクターの中身をどのように表現していくかに、おもしろみがあるという。

―――それは言い得て妙ですね。他にも「正義・正義」と繰り返してコケまくる井伊直政が、三成のパロディのように感じられましたが?

S・K:どうでしょう(笑)。まあ、最初に遭遇する敵武将の一人だから、インパクトのあるデザインを、というのはありました。史実でも家康と非常に仲の良かった間柄、という理由もありましたし。それで家康第一の部分を、極端にキャラクタナイズしたら……という感じで膨らませました。

―――島津義弘が猫を抱いているのは、梅だいふくとの関係ですか?

S・K:いえ、それは梅だいふくよりも先でした。史実の中で、猫を連れて戦に出向いたという話もありますので。そこは史実に基づいたデザインですね。

―――個人的には実家が山口県なので、毛利秀元がたいへん良かったです。

森中:CGデザイナーの出身地もそちらの地方だったので、毛利には思い入れがあったようです。最初にこのデザインがあがってきたときは、頭を抱えていましたが(笑)

主人公・石田三成島津義弘


■さまざまな三成像に触れて欲しい


―――ちなみに、今回影響を受けた小説や漫画などはありますか?

S・K:一番影響を受けたのは、やはり司馬遼太郎の「関ヶ原」ですね。

―――ゲームとは全然違う三成です。

S・K:そこは歴史小説ですから、良いところも悪いところも客観的ですよね。でもゲームですから、快適にプレイしていただくためには、やっぱり良いところを中心に描いていくことになります。理由もなく主人公が周囲から悪く言われたら、遊んでいる側もやっぱり嫌な気分になりますし。逆に敵はできるだけ、第一印象は「このやろう!」と思えるようにしなくちゃいけない。ただ、敵にも敵なりの背景が描きたかった、というのは先に説明したとおりです。

―――その象徴が家臣・島左近の「殿は正真正銘のバカなんですから」という台詞ですね。これでプレイヤーと同じレベルまで三成の視線を下げることに成功していますし、比較的ニュートラルな立場で、周囲にツッコミを入れていける。非常にゲーム的な設定で、かつキャラが立っていて、上手いですね。

森中:今作に限らず、コーエーの歴史ゲームとして一番ポイントになるのが、ゲームをきっかけにして、歴史に興味を持ってもらうという点なんです。だから先ほどの「関ヶ原」ではありませんが、「采配のゆくえ」を遊んでもらって、次は小説だったり、ウェブだったり、実際の関ヶ原の戦いについて調べてみるような、きっかけ作りになればと。その意味ではコーエーの歴史ゲームは、これまでも大きな役割を担ってきたと思います。

―――そうですね。

森中:その中でも、次第に複雑になりすぎて、初心者に手をだしにくい状況になってきたという指摘も受けてきました。だからこそDSというハードで作るにあたり、まったく知識がない人でも、ゲームを遊んでもらって、実際の関ヶ原の戦いに興味を持ってもらう、きっかけづくりにしたかった、という思いはありました。

―――僕も久々に「関ヶ原」を読み直しました。その上で、いろんな元ネタが見つかったりと、新鮮でした。

森中:ええ。このゲームを契機に、いろんな作品に触れてもらって、新たな石田三成を発見してもらえると嬉しいですね。ゲームでも当社で出している「戦国無双」シリーズでも、また違った三成像になっていますし。

―――今後の展開などはありませんか? 続編であったり、他機種への展開であったり。漫画や小説などのメディア展開も考えられますね。

森中:そうですね。これだけで終わらせたくない、という気持ちは、やはりありますので、今後はその辺もふくめて、展開を考えていくつもりです。

―――最後にまだプレイしていない読者に向けて、一言ずつメッセージをお願いします。

S・K:歴史の予備知識がまったくなくても、入り込める作品に仕上げたつもりです。漫画や小説を読む感覚で遊べるゲームにもなっていると思います。歴史に興味を持っている方には、元ネタ探しなどの遊び方もできますし、プレイした方でも、いちど史実を調べてから再度プレイされると、また新鮮な発見があったり、いろんな遊び方ができると思います。できるだけいろんな方に、歴史物だからと先入観を持つのではなく、遊んでいただければと思います。

森中:私もほとんど同意見です。とにかく手にとって、プレイしてみて欲しいなと。それが率直なコメントです。困ったな、先に全部言われてしまった。

―――そんな時は「次回作を期待してください」って、根拠なく言うんです。ちなみに個人的には幕末モノでよろしくお願いします。

森中:はい、「次回作を期待してください」ですね(笑)。

―――言わせた感がアリアリですね(笑)。ありがとうございました
《小野憲史》

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