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【CEDEC 2008】開発者たちが語った「KORG DS-10の作り方」

任天堂 DS

【CEDEC 2008】開発者たちが語った「KORG DS-10の作り方」
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CEEDC2日目の13:00から、「KORG DS-10の作り方」と題して、キャビアの佐野信義氏をはじめ、「DS-10」の開発に携わった6名のスタッフから開発秘話が語られました。佐野氏の軽妙な司会ぶりにリードされたスタッフから、思わぬコメントも飛び出すなど、肩の凝らない展開ながら、奥深い内容のセッションとなりました。

DS-10はシンセサイザーやデジタルピアノなどの製造・販売で世界的に有名な老舗メーカー、コルグ社の完全協力で開発された、世界初のDS向け音楽ツールソフトです。往年の名機「MS-10」をモチーフとしており、アナログシンセサイザー2台、ドラムマシン1台、6トラック/16ステップのシーケンサー、3種類のサウンドエフェクトが内蔵され、初心者でも簡単にデジタルサウンドの制作が楽しめます。AQインタラクティブからAmazon専売で発売され、隠れたヒット作となりました。

DS-10の開発ディレクターで、本セッションで司会を担当した佐野氏は、旧ナムコで「リッジレーサー」「鉄拳」シリーズなどのサウンド制作を手がけたことで知られるクリエイターです。本作は佐野氏の所属するキャビア、コルグ、ゲーム向けのサウンド・ドライバ開発などで高い技術を誇るプロキオン・スタジオ、そしてパブリッシャーのAQインタラクティブという、4社の協力体制で開発が行われました。

■懸念材料はDSの性能

はじめに登壇したのは、コルグ開発部の井上和士氏です。発表者の中では、唯一ゲーム業界外のクリエイターで、担当パートは音源であるソフトウェア・シンセサイザー部分の開発となります。もともとコルグとしてもゲーム業界について情報収集を行っており、今回の話は渡りに船でした。ただし井上氏自身は、それまでUIやウェブ管理が中心で、本格的な音源開発は初めてだったとのこと。それでも「作り方はわかっていたので」と引き受けたと語り、佐野氏を驚かせていました。

苦労した点としては、シンセサイザー2台などの仕様がDSで実現できるか、事前に予測がつかなかったことで、やはり開発当初は動作が重かったとのことです。それでも「できるだけ直列にコードを走らせる工夫をしただけ」といたってクール。まずDS上で実行させて、その上でどういったアルゴリズムを採用するか決めたかったとコメント。独フランクフルトで発表した時、ネット上で反響を得たことが一番嬉しかったとのことでした。

井上氏の開発した音源をDSに実装、シーケンサー部分も開発したのがプロキオン・スタジオの鈴木秀典氏です。井上氏も「懸念材料はDSの性能だった」としながら、挑戦的なプロジェクトで、依頼後すぐに快諾したと語りました。井上氏によると、DSのスペックは15年前のPCと同じくらい、MacだとQuadraシリーズと同レベルで、当時ソフトウェアでアナログシンセサイザーを実現したソフトはなかったそうです。それでも、今ではDSでリアルタイムにストリーミング再生を複数トラックできる状態なので、ある程度の目処はあったとコメント。すぐにテストプログラムを開発し、佐野氏を驚かせました。

とはいえ作業を進めていくと、幾つかの問題が発生しました。最初に悩んだのはデータサイズで、当初は32ビットで作っていましたが、メモリの制限で16ビットとなりました。このため操作レイテンシーが2ミリセックと、かなりの軽快さを実現できましたが、通信プレイ時に完全な同期がとりにくい弊害も発生してしまいました。DS-10では1台の親機に対して7台の子機を無線接続してマルチプレイが可能ですが、こうした理由から佐野氏曰く「本当の同期(シンク)ではなく『合奏』」なのだそうです。

またドラムのレンダリング部分で、開発中に同期がずれる問題も発生しました。2基のオシレーター(発信回路)の位相状態で、スピーカーから聞こえる音が変わってしまうこともあったそうです。これについて佐野さんに「セッション中にすごい音が出ていたのに、ロードしたらクオリティが下がってしまうと、困りますよね?」と尋ねたところ、「アナログシンセだから良くね?」と返されて、絶句したというエピソードを披露。とはいえ放置するわけにもいかず、修正することになったそうです。

■サウンドが主役でグラフィックは脇役?

続いてユーザーインターフェースを含む、グラフィック全般を担当したのが、紅一点で現在はトイロジック社所属のデザイナー・對馬聡子さんと、キャビアのプログラマー・古林雅俊氏です。對馬さんが描いた絵を古林さんが組み込むという分担でしたが、どちらも当初のもくろみから大きくそれて、作業が大きく増えてしまったとのことでした。

對馬さんが最初に依頼を受けた時は「ゲームではないし、画面数も3枚くらいかな?」と感じたそうですが、実際に描いたのは20枚以上にもなりました。しかもメインの色数がほとんど黒・白・赤の3色だったのに、実際には256色でもギリギリになってしまったそうです。一例として鍵盤を押したときの影が5段階でアニメーションしている様をあげ、シンプルなデザインだけに色数が増えたとコメントしました。

また通常のゲームと違い、DS-10ではシンセサイザーのアルゴリズムとサウンドプログラムが主役で、グラフィックが脇役だったのも新鮮だったそうです。「末席に加えていただいて、主役を邪魔しないように、綺麗にパッケージングする」という意識で臨んだ對馬さん。MS-10を佐野さんに見せられた時も、「まさか、これがそのままDSに入るイメージだとは、思いもよらなかった」そうです。もっとも、完成型が当初からハッキリイメージされていたので、逆に作業はやりやすかったとのことでした。

小林さんも「最初は2画面くらいの簡単なツールで、DSのプログラムは初めてだったけど、週末を利用して半年もあれば余裕かな」との皮算用でしたが、大きく当てが外れてしまいました。当初は16色で予想していた色数が、256色でデータ作成されたことも、予想外だったそうです。また通常のゲーム開発ではサウンドは最後に来るが、今回はまず音が鳴っている必要があった点も大きく違ったそうで、開発途中、画面切り替え時にノイズが発生した時は、解消するのに相当苦労したそうです。しかも並列して他のゲームプログラムも進めており、「こんなに苦労するとは思わなかった」と苦笑していました。

■Amazon専売がもたらした影響

最後に登壇したのが、販売を担当したAQインタラクティブの岡宮道生氏です。佐野氏曰く「偉い人に判子をつかせた人」とのことで、開発とは違った苦労があったことを忍ばせました。もっとも佐野氏が「企画を提案しながら、実は僕は売れないと思っていた。音屋がDSでシンセサイザーなんて・・・」と述べたのに対して、岡宮氏は「僕は最初から売れると思っていた」とコメント。プロデューサーとしての鋭い嗅覚を示しました。

ちなみに本作はAMAZON予約ランキング1位を達成し、ニコニコ市場で1500本を販売、解説本が書籍ランキングで3位を記録するなど、隠れたヒット作となっています。この「専売」については、通常の流通ルートでは埋もれてしまうし、楽器店などではDSを扱っていないが、Amazon経由なら販売できるため、思い切って専売にしたとコメント。ビジネス的にも成功を収めました。またYoutubeやニコニコ動画で関連動画が1400本以上と、ネットの口コミ効果が大きく後押し、Amazon専売効果が大きく現れたタイトルになりました。
 
最後に佐野氏は新書のTips調でDS-10の事後検証をまとめました。「?積極的に先送り」(目先の問題に囚われすぎず、目をつぶって先に進むことで、意外と問題自体も解決することがある)。「?前向きな受け流し」(プロジェクトが進むにつれ、偉い人を中心に様々な要求が出てくるが、「そうですよネー」とだけ応えてスルーする。本当に必要な要求なら、しつこく何度も言ってくる)。「?迷ったら削る「捨てる技術」」(開発者にとって必要な仕様でも、ユーザーが望んでいるとは限らない)。特にこれらは、まったく新しいゲームを作るときに、特に必要だと語られました。

「ゲームではなくツール」をコンセプトに開発されたものの、発売後は動画投稿サイトに良質な作品が数多く投稿され、それを見たユーザーが一生懸命サウンド制作のテクニックを磨くなど、ネットを介した広い意味での「ゲーム」が生まれたことに驚いたという佐野氏。メディアの取材で延々と「ここが良かった」と誉められ続けることもあったそうです。「いろんな人から誉められることが、こんなに凄い快感だったとは、知らなかった」(佐野氏)。ゲーム業界は楽器業界に比べて制作者とユーザーの距離が遠いところがあるが、ぜひ皆さんもユーザーの喜ぶ顔を想像しながらゲームを作って、この快感を体験して欲しいと述べ、セッションが終了となりました。

《小野憲史》

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