澤：その点は開発会社によって違いますね。うちでいうと天道オンラインでは日本からほとんど何も言ってない。コンスタントに毎月アップデートあてて、ユーザー層もほとんど変わっていないんです。ところがブライトキングダムの場合は、こっちからいろいろ言い過ぎちゃうのもあるかもしれないけど、開発者とぶつかったり、向こうの言う通りやるとガクッとユニークユーザーが下がるんです。2,000人単位でいなくなっちゃったり。で、今度はウチの言うとおりにするとちょっと上がったり、元に戻ったり。
植田：開発会社によるっていうのは分かります。幸いうちは開発会社に恵まれてたのかな。例えばアップデート時の不具合でユーザーのモチベーションを一気に剥ぎ取っちゃうようなところもあるんで、本当に注意しないといけないと思いますね。
栢：うちは開発と運営を両方やっているので、サポートセンターに届いたお客様からのメールは、サポートスタッフだけじゃなくて私も開発スタッフも運営スタッフも全員見てるんですよ。最近のアップデートだと、ツモってくる時のポンという音が気持ち悪いっていう声を沢山頂いたんですよ。これはまずいって緊急アップデートをかけたんですけど。こういう対応を3か月とかではなく1週間でできるのは、開発と運営が合体していることの1つの強みかなと思いますね。開発と運営で会社が分かれている時でも、サポートにこういうのが届いていますっていうのを、どれぐらいのリアルタイムでコミュニケーションできるかっていうところでしょうね。
うちではゲームのデータとか売上データって全スタッフが毎日見ることができます。今日のアップデートは良かったのか、今日のイベント発表したのは良かったのか悪かったのか、広告打ったけど効いているのか効いていないのか、そういうのが全部見える。経営的な情報でもあるので、普通は見せないと思うんですけど、そういうところも全部見て、「開発はこれやんなきゃ」とか、「運営はこれやんなきゃ」っていうのを、自発的に言ってくる環境にしてる。
■「今は声出して届いているけど、規模が大きくなって声が届かなくなった時にどうしよう」
澤：一番大事にしなきゃと思うのは、ユーザーフィードバックを受けて、開発がすぐ考えて直せるスピード感。開発からスピード感のある対応があれば、それがユーザーさんへの信頼として伝わっていく。
久永：そうですね、うちもスピードとか開発と運営のチームの一体化が大事って分かってるつもりです。狭いオフィスで声が全員に聞こえるので、テストしてるときにモニターしてるやつが「サーバー落ちた」って叫ぶじゃないですか。すると横のやつが「すいません、再起動します」ってやって、サーバーのソース書いているやつが、「ちょっと一時対処するから、ユーザーをこっちのサーバに逃がしてくれ」、みたいにやっている。これをいかに仕組みにできるかが課題で、今は声出して届いているけど、仮にもうちょっと規模が大きくなったりして声が届かなくなった時にどうかっていうのは考えないといけない。
伊藤：逆に、声が届く範囲にチームを小さく保つ手もありますよね。
久永：それも1つの方法でしょうね。2本目以降のことを考えて、組織論的な話もたまに出るんですが、パッケージゲームを作る時のように、プロデューサーがいてディレクターがいる制作、開発チームがあって、別に販売やマーケティングのチームがある、という組織がいいのか。あるいは1プロジェクトにして、全部そこにいますというのがいいのか。サーバを見るシステム担当を1人ずつはり付けるのか、みたいなことは、結構議論しています。うちは今まだ1本しかないんで、あんまり問題になってないだけだと思うんですけど。
澤：パブリッシングやっていると、「これからサーバーメンテ入ります」というと、皆、誰がそう決めたわけでもないのに、「はーい」って声をそろえて返事するんですよ。告知上げる担当とか、エンジニアとか、かけ声で気を引き締め直すみたいな。もし開発ともセットだったら、もっとホットな状態になれるのかな。でも、今は開発が海外にあることに変わりはないので、そういったところの温度をどれだけ上げていくかがこれからの課題。
コミュニケーションで全部片付くっていうのも分かるんです。例えば韓国に3日出張したら、かなりの量片付くわけですよ。3か月片付かないことが1日で片付くとかざらにあって。でも僕がずっと常勤するわけにもいかないので、電話とかテレビ会議システムとか使うわけですけど、でもやっぱり顔を付き合わせて話して、というのに勝てるものがない。
■「ハンガリー、意外と物分かり良かったりするんですよ」
久永：その件で最近ちょっと疑問に思っていることがあるんですよ。私、外資を渡って来て、最後にカプコンに行って海外作品を担当してたんですが、海外の連中って国をまたいだ外注を平気で使うんですよね。欧州から「実はあの▲▲を作っているのはうちです」みたいに売り込みに来る。確かによくできてたりするんですね。
日本人の感覚だと、距離感が遠くなればなるほどクオリティ下がる感覚ってちょっとあるじゃないですか、でも海外はそういうの割と普通にやるんですよ。自分達で一部作って、外注で一部作らせて、組み上げてポンと出て来るみたいなやり方が意外に回ってる。ものによってはそれで世界的にヒットしているやつも少なくない。あいつらなんでそんなにうまくできるのかなってって思いますね。日本の感覚だと大抵トラブるじゃないですか。
澤：人を送り込んじゃいますね。
久永：でも、海外って国またいでメールで結構何とかしちゃってるんですよね。私も「ウォークラフト3」のローカライズでアイルランドに行っていたことがあるんですよ。ブリザードのタイトルのローカライズスタジオがあって、そこに世界中から集まっている。日本語版だけじゃなく韓国、台湾、ドイツ、フランス、そこら中から来てるんですよ。バグ管理もデータベースがネットに上がってて、それを北米にいるブリザードが見ながら直しているんです。そういうのが普通に成り立っているんですね。なんであいつらができて俺ができないんだろう、と。
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植田：うちで今、『LEVEL-R』っていうタイトルをハンガリーとやっているんですよ。やり取りは時差の関係とか苦労するんですけども、意外とやってみると物分かり良かったりするんですよ。
久永：物分かり！ その一言ってすごい大事な気がする。
植田：欧米人と日本人のセンスの違いっていうのはあるんですけど、東欧っていうのもあると思うんですよ。東欧ってやっぱりちょっと真面目なんですよ、国民性的に。あと、レースゲームってどこ行っても同じじゃないですか（笑）。意外とスムーズにいってますね。ただやっぱりカルチャーの違いがあって、夏休みとかクリスマスシーズンに入ると、2週間全く連絡取れないとか、そういうのはあります。
−−最終回もお楽しみに。
