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【TGS2007】コ・フェスタ フォーラム エンターテインメントグローバルミーティング「世界へ飛び出せ、日本のエンターテインメント・コンテンツ」

ゲームビジネス その他

パネラー諸氏。左からBill Kong(江志強)氏。一瀬隆重氏。平野隆氏。宮崎伸滋氏。和田洋一氏
  • パネラー諸氏。左からBill Kong(江志強)氏。一瀬隆重氏。平野隆氏。宮崎伸滋氏。和田洋一氏
日本はアメリカに次いで第二のエンターテイメント大国だと言われているそうです。しかし、その実態は圧倒的な輸入超過であり、逆にクリエイターは日本を離れ海外に活躍の場を求めています。空洞化が進む日本において、世界に通用するエンターテイメント作品を生み出すにはどうすべきでしょうか。「エンターテインメントグローバルミーティング」では、映画、音楽、ゲーム業界で活躍するキーパーソンが語り合いました。

ディスカッションに先立ち、作品映像と併せてパネリストの紹介が行われました。

パネラー諸氏。左からBill Kong(江志強)氏。一瀬隆重氏。平野隆氏。宮崎伸滋氏。和田洋一氏


映画業界からはBill Kong(江志強)氏。香港の独立系映画会社、Edko Filmsの代表です。1993年のデビュー作『青い凧』で東京国際映画祭、ハワイ国際映画祭のグランプリなどを受賞しました。その後、活躍の場を世界に広げ、2000年の『グリーン・デスティニー』は米国で興行収入1億4500万ドルの大ヒットを記録。外国語映画、美術、撮影、作曲の部門で米アカデミー賞を受賞しました。その後『英雄/HERO』、『LOVERS』とヒットを連発。現在は『ブラッド/ラストバンパイア』を製作中です。

日本映画界から米国へ活動拠点を移した一瀬隆重氏。『帝都物語』『リング』『呪怨』『犬神家の一族』『怪談』など50本以上の映画をプロデュースしました。海外作品では『THE JUON/呪怨』『呪怨 パンデミック』で2作連続全米興収1位を獲得。昨年は日本人プロデューサーとして初めてメジャースタジオの20世紀フォックスとファーストルック契約を締結しました。日本映画界を代表する独立系プロデューサーです。

平野隆氏はTBSテレビの社員。肩書きはコンテンツ事業局映像事業センター映画プロデューサーです。主なプロデュース作品は1997年の『虹をつかむ男 南国奮斗篇』、以降、『陰陽師』は大ヒット。異例のロング上映となった『黄泉がえり』、『ドラゴンヘッド』、『陰陽師II』、『ゼブラーマン』、『下妻物語』、『どろろ』とヒットを連発。最近作は『Life 天国で君に逢えたら』です。テレビ局の映画業界進出が勢いづいています。

音楽業界からは国内最大手のエイベックスから、 エイベックス台湾董事総経理、エイベックスチャイナ総裁特別顧問の宮崎伸滋氏。エイベックス台湾は台湾J-POP市場で半分以上のシェアを占めているそうです。台湾アーティストも積極的に発掘し、5566、ビビアン・スー、ショー・ルオ、シンディー、SHIN等のヒット曲は、中国大陸、香港、シンガポール等の中国語圏地域でも人気です。最近は台湾のトレンディドラマの主題歌に日本の菊地一仁氏を起用するなど、日本ポップスとアジアポップスのコラボレーションを積極的に展開しています。

ゲーム業界からはお馴染みの和田洋一氏です。CECA会長でスクウェア・エニックス代表取締役社長、昨年からは連結子会社のタイトーの社長も兼任されています。ゲームメーカーですが、スクウェアとしてはかつて映画興行も経験しており、映像メーカーも経験しています。

■日本のコンテンツは世界で通用するか

ディスカッションの司会は日経エンタテインメント! 編集委員の品田英雄氏です。進行は品田氏の問いに答えるという形でした。まず最初の問いは「日本のコンテンツは世界で通用するか、魅力的であるか」です。

Bill氏は「日本のコンテンツを気に入っているし、ディストリビューターとしても好きだ。私は日本のコンテンツのファンです」と応じました。リップサービスかな、とも思える発言ですが、彼の言葉は次の一瀬氏が後押ししました。「日本のコンテンツは魅力的で、世界のどこの映画会社でも日本の話題で持ちきりだ。しかし、日本映画をそのまま海外に持って行くのは難しい」と語りました。日本映画をハリウッドでリメイクした仕掛け人ならではの説得力のある言葉でした。「日本のエンターテイメントは元々強かった。いまでも強いはずです」と自信を見せたのは平野氏でした。「洋画も邦画も大ヒットの傾向が似ている。しかし、日本では海外に通用する作品は少ない」と実情を語りました。平野氏の作品は日本市場だけで成功したタイトルばかりです。海外を意識しなくても成立できるという自信があるとも言えそうです。

親日な台湾の音楽業界で成功した宮崎氏は「私の体験はアジアに限定されるが、日本のコンテンツは間違いなく注目されている」と語りました。宮崎氏を紹介する映像には日本のJPOPのカバー曲も多数登場していました。それだけではなく、日本人アーチストの人気があることもワイドショーなどで報じられています。宮崎氏は「歌手だけではなく、作曲家もアジアに受け入れられている」と、台湾のテレビドラマの主題歌を日本の作曲家が手がけた例などを紹介しました。

スクウェア・エニックスの和田氏は「世界のゲーム市場は日本がリードしてきた」と自信を見せました。「世界のクリエイターが日本のクリエイターをリスペクトしている。こうなった背景には、日本に優れたゲームクリエイターを生み出す土壌があったからです」と分析しました。この土壌について和田氏は、1960年代に日本ではゲームセンターが流行し、70年代にインベーダーゲームが起こりました。そこでコンピュータゲームの洗礼を受けたクリエイターたちが、80年代のテレビゲーム機台頭の時代に参加しました。この時、日本の家電メーカーのほとんどがゲーム機に参入し、ソフトメーカーを支援して自社ゲーム機用のソフトを増やそうとしました。当時、家庭用ゲーム機のメーカーは日本にしかなく、この日本という狭いエリアにクリエイターが集合し、影響を与え合いました。この経験が日本の強みとなっていると和田氏はまとめました。

■優秀な人は海外に。若手は就職志向。世界市場を無視した作品。だから日本はダメなんだ

優秀な人材は海外に流出してしまう。その理由は何か。「アメリカでプール付きの家に住む一瀬さんはどう思いますか」と水を向けられると、一瀬氏は「あちらはプールが付いている家が当たり前で、贅沢しているわけじゃない」と苦笑いしたのち、「ハリウッドで仕事をする場合、アメリカに住んでいることを示さないと相手にしてもらえないんですよ」と本音を語りました。本気を示す手段として家がある、という考え方のようです。人材の流出については「アメリカでは映画は産業として確立している。しかし日本では娯楽というサブカテゴリだ。アメリカのほうが良い仲間に会えるし、所得も多い」と、アメリカのほうが良い環境であることを説明しました。

日本で頑張っているプロデューサーの代表として平野氏は「日本で映画を作ろうとする若い人が、映画会社に就職したらいいかというとそうではない。テレビ局のほうが制作に携われる確率が高い」と話しました。日本の映画会社はかつてのように制作から興業までを一貫して手がけることは少なく、現在は興業と広告宣伝に注力しているそうです。これを受けて一瀬氏が「何度も言うんだけど、就職しようとするから日本の若い奴はダメなんだ」と厳しい意見を述べました。「映画を作りたかったら作ればいい。独立心がなさ過ぎると思う。仕事をしようとしたときに、就職しか方法がないと考えることが問題だ」と、日本の若者に檄を飛ばしました。

香港出身のBill氏にとってハリウッドに進出した理由は明快でした。「香港の人口は600万人です。市場が小さすぎます。エンターテイメントビジネスで成功しようとするなら、海外に出るしかなかったのです。ジャッキー・チェンもそうだったでしょう」と説明しました。コンテンツ作りは常に世界を見ておく必要がある、という意見でした。「日本人はアジアのコンテンツがアメリカでヒットしないと思いこんでいます。しかしそれは違います。日本のゲームやクルマが世界で人気となっています。それは、世界の市場に向けて作っているからです」とまとめました。優しい言葉でしたが、要するにリサーチが足りないということです。たしかに、世界市場を研究しないでコンテンツを作り、世界で売れないと嘆くのは滑稽なことに思えます。

音楽の分野ではどうでしょうか。日本の音楽が世界でヒットしない理由を問われた宮崎氏は「アジアでは日本語のままでもヒットしているんですよ」と実例を挙げました。宇多田ヒカルは100万枚のヒット。安室奈美恵もコンスタントに10〜30万枚を売り上げているそうです。台湾が日本の人口の六分の一であることを考えれば、日本以上のヒットとも言えるわけです。では、欧米で売れない理由は何でしょうか。宮崎氏は「欧米では英語である必要がある。少なくとも音楽の分野では標準語が英語です。北米はもちろん、ヨーロッパでも実は英語です。日本のアーチストはネイティブな日本語が使えないので勝負にならない」とのことでした。「スキヤキ(上を向いて歩こう)も英語だから売れたんですよ」と、ちょっと古いですが確かな例を挙げました。

海外で成功した分野としてゲームがあります。和田氏は「ゲームの国際市場は3兆円の規模になりました」と日本のゲーム産業の健闘を説明した上で、「映画会社はコンテンツを作らず、配給に回りました。小説も出版社内部では作らず、ドラマもテレビ局では作らず制作会社が作っていますね。しかしゲームの場合は配給ではなく制作に注力しました。なぜならゲームの場合、ゲーム機のプラットフォームに乗れば配給してもらえるからです。ゲームメーカーはもともとゲームの完成まで自己完結できる。逆に、ダウンロードやクロスプラットフォームなど、配給システムが混沌としている状況では、ゲームに関しては分業ではなく、完成まで自己完結しないと立ち行かない構造になっています」と説明しました。

■映画の海外進出には権利や契約の問題もある

日本映画を海外に送り出す。その難しさは何でしょうか。日本でヒット作を連発しつつ、海外には進出していないという平野氏は「リメイク交渉の考え方が違います」と理由を挙げました。第一の問題は権利の考え方が異なることだそうです。「アメリカでは著作物の交渉に当たる場合、すべての権利をプロデューサーが持っています。しかし日本では作品内部の権利者がバラバラで意思統一がしにくい。交渉のテーブルについて、これはどうか、あれはどうか、と具体的な問題を詰めるたびに、日本ではその部分の権利者に許諾を求めなくてはいけない。だから3年経っても成立しない」とのことです。3年経って色よい返事がなければ、たいていの交渉相手は諦めるだろうな、と思います。

これを受けて一瀬氏は「日本人は著作権に付いてアレルギー的なこだわりを持っている」と、問題が日本側の考え方であると指摘しました。アメリカでは良い意味で著作権にアバウトで、交渉ごとがスムーズに進むそうです。また、日本映画のリメイクについては、アメリカに全権利を渡せるようではないと難しいとも語りました。さらに、「日本にはエンターテイメント分野に明るい弁護士が居ないことも問題だ」と言います。弁護士不足はエンターテイメント分野だけではなく、日本の法曹界そのものの問題となっています。司法試験改革などが進んでいますが、その成果が現れるまでまだ時間がかかりそうです。「日本では、リメイク決定などというニュースが流れますが、実はそれはオプション権の契約が完了しただけという場合が多い。オプション権とは半年から1年間の交渉優先権に過ぎません。リメイクの決定ではなく、交渉の始まり」だそうです。それを早とちりして報道するために、「日本のリメイクは進まない」という誤解を受けています。

■映画「ファイナルファンタジー」失敗の理由は?

ゲームの海外展開が成功した理由について和田氏は「アメリカでも日本と同じ機能をすべて持ったこと。関連製品ビジネスで成功するためには、クリエイターの望みを大切にすることです」と語りました。「最近、ゲームの映画化で成功例が多いようですが」という司会者の問いかけには「小説やマンガと同じで、優れた作品でファンが多ければ成功すると言うことです」とゲームだけが特別ではないと強調しました。しかし、次に「ファイナルファンタジーの映画では失敗されましたが……」と続けられると和田氏は苦笑いしました。ちょっと誘導尋問のようで気の毒でしたが、和田氏は「その後スクウェアではファイナルファンタジー7のDVD『アドベントチルドレン』で成功している。お客様のターゲッティングを間違えた。ファイナルファンタジーのようにCGのクォリティで評価を得る映画は、映画館よりもDVDというメディアが適していた」と返しました。

続く質問はコンテンツの制作資金についてです。映画とゲームではまったく考え方が異なるようです。一瀬氏は「アメリカの映画界は良い企画があれば出資するエンジェル(投資家)がいる。これに対して日本は安く作ることがテーマ。安く作って利益を確保する。それが説明できないと投資が行われない」と日本の状況を嘆きます。これに対し平野氏は「テレビ局は資金調達に困らない」と豪語。まるでテレビ局にお金を出したいブームが起きているようだと続けました。メディアを持っている企業の強みとして宣伝力があるほか、会社自体に資金力があること、コンテンツ制作の実績があることが投資家にとって安心感を与えているようです。仕上がった作品を放送するか興行するかの違い。映画はその両方が狙えることも評価に繋がっています。

これに対してゲームは完全にメーカーの自己負担です。和田氏も「ゲームの資金市場はない」と断言しました。これはゲームメーカーの自己資本比率が高いことの証左ともなっています。

■それでも日本にこだわるか?

締めくくりとして「みなさんは今後も日本にこだわりますか」という質問が投げられました。海外で成功した一瀬氏は「こだわらない」と視点が世界レベルにあることを示しました。平野氏は「(日本向けの市場で勝負してきたので)こだわりたい。こだわらなくちゃいけないと思う」と考えを示す一方で「その上で世界に通用する作品を作りたい」と意欲を見せました。Bill氏は「アジア人というこだわりはいつも持っている。これは実は大切なことで、世界の中でアジア人であることはニッチではなく、個性だ」と断言しました。

宮崎氏は「日本人らしさは必要不可欠」と言います。「アジアはいつも日本市場を見ています」と応えた上で、日本人作曲家を中国や台湾で生活させて、日本の感性とアジアの感性の融合を目指す考えを示しました。最後に和田氏は「日本人らしさも大切だが、メーカーらしさを打ち出していきたい」と語りました。この言葉には、ゲーム制作において海外のクリエイターとのコラボレーション事例が増えているということへの配慮も見え隠れします。"日本人"であることよりも、ゲームから様々な恩恵を受けた"日本のメーカー"であることにこだわりたい。それがゲームメーカーの強みでもあると言えるでしょう。

映画、音楽、ゲーム。ひとくくりにコンテンツとまとめても、実情はさまざまです。日本が世界に通用するための方法もひとつではありません。しかし、互いのビジネス手法の良さを取り入れることで、さらに躍進する方法を導ける。それを予感させるディスカッションでした。
《杉山淳一》

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