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【TGS2007】オンラインゲームセッション〜テクモ・ガンホー・マイクロソフト、各社の取り組みを語る

東京ゲームショウ基調講演に続く『オンラインゲームセッション』は、新たなフェーズに入ったオンラインゲームビジネスをテーマにリレートークとパネルディスカッションを行いました。リレートークにはオンラインゲームポータル『LieVo』を運営するテクモ、日本のオンラインMMORPGの老舗ガンホー・オンライン・エンターテイメント、Xboxでコンシューマ向けオンラインゲームに注力するマイクロソフトからスピーチが行われました。モデレータは日経ビジネスオンライン副編集長の渡辺和博氏です。

ゲームビジネス その他
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東京ゲームショウ基調講演に続く『オンラインゲームセッション』は、新たなフェーズに入ったオンラインゲームビジネスをテーマにリレートークとパネルディスカッションを行いました。リレートークにはオンラインゲームポータル『LieVo』を運営するテクモ、日本のオンラインMMORPGの老舗ガンホー・オンライン・エンターテイメント、Xboxでコンシューマ向けオンラインゲームに注力するマイクロソフトからスピーチが行われました。モデレータは日経ビジネスオンライン副編集長の渡辺和博氏です。

日経ビジネスオンライン副編集長の渡辺和博氏


■[テクモ]開発に力点を置き、事業提携で成功

テクモからはLieVo事業を統括する佐々木憲太郎氏が登壇しました。LieVoはテクモとSeedCの業務提携によって開設されたオンラインゲームポータルサイトです。佐々木氏はテクモ社のオンラインゲーム参入について「当初から運営事業会社と提携し、テクモは開発に力点を置くつもりだった」と当時を振り返りました。この提携戦略について佐々木氏は、「第一の理由はオンラインゲームの運営ノウハウをイチから学ぶようではタイムロスが発生する。第二に、テクモの良さである開発力を活かすため、会社として開発に力点を置きたい」と説明しました。また、会社経営的な視点では、オンラインゲーム開発の投資コストを分散し、短期間で世界的にタイトルを展開したかったことも理由に挙げました。こうして誕生するテクモ製オンラインゲームの第一弾が2006年に発表した『モンスターファーム オンライン』です。事業パートナーはゲームポッド社で、いよいよこの秋からサービスが開始されます。

テクモが次に手がけた事業がLieVoです。テクモ初のオンラインゲームポータルであり、既に日本でも強力なオンラインゲームポータルサイトが稼働している中での事業参入でした。LieVoでテクモが目指した方針は、ゲームポータルとゲームのグローバル化、そしてゲームポータルをオープン化し、様々なゲーム開発会社が参入できるポータルを作ることでした。グローバル化の手始めとして、2007年には韓国でLieVoサービスをスタートしました。また、LieVoにゲームを提供するパートナー会社は8社となっています。日韓累計の会員数は550万人にものぼり、安定的な運営により、日本でまだ親しまれていない新たなる分野を開拓する気運も産まれています。それが日本ではまだ普及できていないFPSの『WarRock』でした。

また、LieVo独自のコンテンツを開発するチーム「LieVo Studio」を設置。家庭用ゲーム開発者を中心としており、家庭用ゲームのオンラインゲーム参入を推進していきます。テクモは事業提携により、オンラインゲームのノウハウを急速に蓄えました。その結実として、いよいよ自社の代表的なタイトル「デッド・オア・アライブ」のオンライン化に着手。『DOA ONLINE』を投入します。DOA ONLINEの最初のサービス地域は中国になりました。運営事業提携会社は中国オンラインゲーム最大手の盛大です。「中国には日本製ゲームの熱烈なファンが多く、韓国と中国がオンラインゲーム最大のマーケットになる」と佐々木氏は説明しました。また「最高水準の3D格闘ゲームに新規要素を加え、ユーザによるゲーム大会も行えるようにする」とのことです。

後半はDOA ONLINE、モンスターファームオンライン、まもなく日本市場に登場する競馬ゲーム『ギャロップレーサー オンライン』の映像を紹介しました。ギャロップレーサーオンラインはサイアーライン(種牡馬の系図)をゲーム本体とは別のWebサーバに持たせて、世界のユーザーが繁殖に参加できる仕組みを作るなど新しい試みにチャレンジしています。佐々木氏は「インターネットの普及と共に社会情勢が変化しており、デジタルエンターテイメントの選択肢が広がっている。PC、家庭用ゲーム、モバイルなど各分野が緩やかに統合していくのではないか」という時代の流れを予測しています。

その中で現在のテクモは「家庭用タイトルの進化系、PCオンラインゲームの開発でタイトルを強化していき、さらなるステップアップを目指す」意気込みです。佐々木氏は「プロジェクトEDEN構想のもと、全世界にテクモという存在感を示したい」と結びました。

テクモ 執行役員
LieVo事業統括 佐々木憲太郎氏


■[ガンホー・オンライン・エンターテイメント]アイテム課金で成功するオンラインゲームとは……

ガンホー・オンライン・エンターテイメントからは代表取締役社長の森下一喜氏が登壇しました。「毎年呼ばれていますが、今回は自社の宣伝ばかりではなく新しい趣向で」と照れながら、アイテム課金時代のオンラインゲームと、オンラインゲームのグローバル展開について発表しました。「オンラインゲームは基本無料、永久無料、ずーっと無料という言葉が目に付きますが、それでは会社はやっていけないわけで」と、アイテム課金のトレンドについて分析します。

2002年のオンラインゲームは「MMORPG」、「定額課金」、「大規模ユーザー&低顧客単価」が主流でした。低顧客単価と言いますが、料金は定額のため、実質的には定額な定額料金で運営されていることになります。月に何時間遊んでも定額ですから、たしかにゲームに時間を費やすプレーヤーほど低単価と言えそうです。

これに対して2007年は「オンラインカジュアルゲーム」、「アイテム課金」、「小規模で高顧客単価」という傾向にあります。アバターを表示するテーブルゲームが人気で、アバターの着せ替え服を販売し、アイテムを購入するほど幸せになれるという仕組みに変わってきました。この傾向はMMORPGにも伝播し、いまやアイテム課金が当たり前になっています。森下氏は、今年以降もアイテム課金の流れは進むだろうと予測しています。なぜなら、基本プレイ無料、アイテム課金のメリットは、熱心なユーザーの単価を引き上げるだけではなく、ゲーム全体の収益構造を改善するからです。

その仕組みについて、森下氏は簡単な計算式と図で説明しました。定額制の場合、仮に料金が1500円で、会員数が10万人だとすると毎月の売上は1億5000万円です。一方、アイテム課金で月あたり1万円ぶんを購入してくれる会員が1万人いた場合は月当たり1億円の売上になります。これでは5000万円も少なくなってしまいます。しかし、会員にかかるコストを比較してみましょう。10万人と1万人では、明らかに1万人のほうが低コストです。10万人に親しんでもらうゲームを作るより、1万人の熱心なユーザーに親しまれるゲームを作る方が利益率が高くなるわけです。

しかし、ここで忘れてはいけないのは、アイテム課金ゲームに参加する無料ユーザーの存在です。1万人の高単価ユーザーが居たとしても、20万人の無料ユーザーが存在した場合は利益率が下がってしまいます。したがって、アイテム課金型ゲームでは、無料ユーザーがアイテム課金ユーザーになるための仕掛けが必要になります。アイテム課金が成功するためには、ゲームの企画時点から徹底して緻密に設計されたアイテム課金システムが必要です。基本無料といっても、実はお金を払わなければ楽しめないという設計にしなくてはいけません。

次に森下氏はオンラインゲームのグローバル展開について触れました。オンラインゲームに限らず、ゲームのグローバル展開には"開発費の回収手段(リスクテイク)"、海外からのランニングロイヤリティによる収益モデルという意味が大きくなります。つまり、日本市場だけを見れば開発費は抑制しなくてはいけませんが、海外市場を見据えれば開発費増大のリスクを軽減でき、さらに国内市場よりも大きな利益を得られることになります。そこで海外市場に目を向けると、韓国や中国では来年までに飽和状態になると予測されますが、北米や東南アジアは成長期のホットな市場です。また、南米、ロシア、欧州では導入期であり、今後の成長が期待できます。

しかし、こうした海外市場で勝つためには様々な課題があります。例えば各国のパブリッシャーとの契約、ソースコードを自社で維持するためのローカライズスタッフ、現地対応スタッフの育成、障害対応、課金方式の変更対応、各国の文化、禁忌に対応するためのスタッフ、著作権問題などです。これらはコストにも跳ね返りますから、こうした問題を解決しても収益を得られるか、相手国のパブリッシャーと有利な条件ができるかにかかってきます。

続いて森下氏はガンホーの取り組みを紹介しましたが、今までの話を踏まえた上で聞くと、ガンホーの戦略が課金やグローバル展開の良い手本になることが解りました。ガンホーでは現在、"コンシューマゲームらしいオンラインゲーム"の開発に注力しています。これは同社のオンラインゲームの開発、運営ノウハウと、グループ会社のゲームアーツなどが持つコンシューマゲームの開発実績を元にした取り組みです。Wii、Xbox360、PS3ともに世界のユーザーの半数以上がインターネットに接続しているという調査結果は、市場の準備が整っていることを示しています。

最後に大幅なリテイクが行われた新作『北斗の拳オンライン』と、『グランディア・ゼロ』の映像を紹介し、森下氏の講演は終わりました。どちらも今日の発表内容を反映したタイトルであることは間違いなく、今後の展開に注目が集まります。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント
代表取締役社長 森下一喜氏


■[マイクロソフト]PCとの連携、ユーザーコンテンツの取引で先進

マイクロソフトからはXboxマーケティング本部長の坂口城治氏が登壇しました。「日本ではいまひとつ」というイメージがつきまとうXboxですが、実態は世界展開の伸長に呼応して日本でも根強いファンを増やしているようです。「5年目を迎えるXbox Liveの世界会員数は700万人、来年夏までには1000万人を超える。今年6月からはWindows VISTAのGames for Windows - Liveとの連携も始まった」と好材料を披露し、世界でのコンシューマオンライン会員一位という実績と日本市場の巻き返しに自信を見せました。

Xbox Liveのサービスはゲームに留まりません。オンラインプレイ、コミュニケーション、マーケットプレイス、PCとの連携の4つの柱があります。ちなみにオンラインプレイの累計プレイ時間は29億時間にもなります。そこまで成長した背景について、坂口氏は「ユーザーの希望する相手とマッチメイクする機能や協力プレイによる体験の共有、そして、当初は予期していなかった"リプレイ観戦"という新しい楽しみ方を提供できたこと」と説明しました。オンラインゲームはプレイするだけではなく、上手なプレイヤーの戦い方を見るという意味で映像コンテンツにもなることを証明したことになります。

コミュニケーションという柱においては、チャットが馴染まないコンシューマ機について、ヘッドセットによるボイスチャット、ライブカメラによるビデオチャットを提供したことが強みとなっています。もちろんXboxコントローラ付きのキーボードも提供し、PCオンラインゲームユーザーのテキストチャット文化も取り入れています。オンラインゲームの楽しさは他のプレイヤーとのコミュニケーションであり、ゲームの対戦以外でもオンラインで友達と交流する仕組みを作りました。それが700万人を惹き付けるチカラになりました。

マーケットプレイスの先進性は、ユーザーが作成したデータを流通させるという意味で、現在のセカンドライフなどバーチャルワールドブームに通じるものがあります。マーケットプレイスではゲームのデモ(体験版)、Xboxコンソールのデスクトップテーマやアイコン、ゲームの映像、ダウンロードコンテンツを利用できます。

ゲームのデモ(体験版)の例として、坂口氏はふたつのタイトルを挙げました。カプコンの『デッドライジング』の体験版のダウンロードは1ヵ月で63万件を記録。製品版は発売から4ヵ月で100万本を達成しました。同じくカプコンの『ロストプラネット』は体験版が100万ダウンロードを記録したため、初回出荷数を100万本に設定し、品切れによる機会損失を回避しました。デモにはプロモーション効果があり、ダウンロード回数を正確にカウントすることでリサーチも可能です。

ダウンロードコンテンツの成功例はバンダイナムコゲームズの『アイドルマスター』です。アイドルの衣装をダウンロード販売したところ、日本国内専用のタイトルにもかかわらず、コンテンツダウンロード数で世界第三位となりました。日本のXbox360ユーザーに活気があることと、新しいビジネスモデルの予感を印象付けます。また、エンターテイメントコンテンツとしてゲーム新作発表会の映像配信、北米で始まったビデオマーケットの例を挙げました。米国のテレビ局や映画配給会社からの映像を販売するもので、総売上は1億2500万ドル、日本円に換算して143億円にものぼります。

このダウンロードコンテンツの先進性を見据えたゲームが2007年5月に発売された『フォルツァ モータースポーツ2』です。ペイント機能を使ってクルマの外観をペイントし、写真を撮ってブログに貼るなど、ゲームプレイの外側の楽しみがあります。また、カスタマイズしたクルマをゲーム内通貨でバイバイするオークション機能もあります。つまり、ゲームで優勝を重ねたり、美しいペイントの"価値あるクルマ"を他のユーザーがコレクションできる、というわけです。

このゲームのオークションハウスではゲームに収録された310車種をベースに何万種類ものカスタマイズカーが誕生し、700万件以上がオークションに出品されています。プレイヤーの三分の一がオークションの経験を持ち、取引されたゲーム内通貨は2兆を超えました。そこにはペイントの題材の源著作権、コピーなど新たな問題もありますが、新たなビジネスチャンスを予見させるものでした。

オンラインゲームの現状分析から現在の動向、そして将来の可能性まで、幅広い示唆を与えるセッションでした。

マイクロソフト
ホーム&エンターテイメント事業本部
Xboxマーケティング本部長
坂口城治氏
《杉山淳一》
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