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【Gamefest Japan 2007レポート】鈴木悠司氏による統合型ゲーム開発環境「XNA Game Studio 2.0」の紹介

マイクロソフトは7日、ゲーム開発者向けの技術カンファレンス「Gamefest Japan 2007」で「XNA Game Studio 2.0の紹介」と題した講演を行い、年末にリリースが予定されている統合型ゲーム開発環境「XNA Game Studio 2.0」の概要と、テクニカルデモを行った。スピーカーは同社XNAグループ/XNAコミュニティの鈴木悠司氏。

マイクロソフト Xbox360
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マイクロソフトは7日、ゲーム開発者向けの技術カンファレンス「Gamefest Japan 2007」で「XNA Game Studio 2.0の紹介」と題した講演を行い、年末にリリースが予定されている統合型ゲーム開発環境「XNA Game Studio 2.0」の概要と、テクニカルデモを行った。スピーカーは同社XNAグループ/XNAコミュニティの鈴木悠司氏。



「XNA Game Studio 2.0」(GS 2.0)は既にリリースされている統合型ゲーム開発環境「XNA Game Studio Express」(GSE)に、ネットワーク関連のライブラリなどを加えた機能強化版だといえる。しかし「GS 2.0」であって「GSE 2.0」でない点に注意して欲しい。バージョンアップに伴い、ツール全体の位置づけが異なっているので、鈴木氏の講演内容を借りつつ、改めてこの点について解説しよう。

「GSE」は昨年12月にリリースされた、学生やアマチュアゲーム開発者向けの統合型ゲーム開発環境だ。Windows上で手軽にゲーム開発ができるだけでなく、作ったゲームはWindows上でもXbox360上でも起動させられる。アマチュアでもコンソールゲーム開発ができる、唯一の開発キットとして高い評価を受け、全世界で175校以上の大学で採用されており、70以上のコミュニティサイトと700本以上のビデオ投稿が行われているという。また「GSE」を用いたゲームコンテスト「Dream-Build-Play」では、100カ国以上から4500以上の登録があり、200以上のゲームソフトの提出が行われたと説明された。

この「GSE」だが、実際にゲーム開発を行うには、他に開発言語の「Visual C# 2005 Express」が必要になる。どちらもネット上で無償ダウンロードが可能だ。通常Xbox360のゲーム開発を行うには、マイクロソフトとライセンシー契約を結ぶなどして、XDKと呼ばれる開発キットを入手する必要があるが、「GSE」を使えばWindows XP SP2が動くPCとXbox360があれば、誰でも「XNA」上でゲーム開発ができる。「GSE」は少人数での開発に向くため、アマチュアだけでなく、プロの開発者がプレゼン用にデモを作ったり、プロトタイプ開発などにも利用もできる。

ただし「GSE」ではWindows向けにはマッチメイキングやセッション管理、サーバのホスティング機能などを用いて、オンライン対応のゲーム開発ができたが、Xbox360向けにはオンライン関連のライブラリがなかった。また開発言語も「C# Express」のみに対応しており、プロユースには使いにくかった。こうした理由もあって、「GSE」ファミリーには別途「XNA Game Studio Professional」のリリースが予定されていた。

これが「GS 2.0」では、ネットワーク関連のライブラリが強化され、Xbox360向けのオンラインゲームが開発できるようになるだけでなく、新たに「Visual Basic 2005」の全バージョンに対応した。こうしたことから従来の「Express」「Professional」という区分けがなくなり、「GS 2.0」に一元化されたというわけだ。

実際の使用には「GS 2.0」と、有償版の「Visual Basic 2005」または無償版の「Visual C# 2005 Express」が必要になる。アマチュアでもお金に余裕があれば、「XNA」上で開発する限り、プロと同じ開発環境が手に入るというわけだ。2007年末に英語版がリリースされ、それから数ヶ月後に日本語版が登場する。ドキュメント類もすべて日本語対応となる。3Dモデリングツールとしても、別途アビットテクノロジーから「SOFTIMAGE|XSI」をベースにした「XSI 6 Mod Tool」が用意されている。こちらも無料でダウンロードして使用でき、作成したデータは「GSE」や「GS 2.0」で読み込める。

鈴木氏は講演内で「GS 2.0」を用いて、簡単なオンライン対応ゲームのコードを記述しながら、テクニカルデモを実施。Xbox360とWindowsのクロスプラットフォームで遊べるアクションゲームを起動して、ゲームをプレイしてみせた。その前後において、「GS 2.0」の概要について説明を行なった。

「GS 2.0」では、ネットワーク機能についてセッションの作成やロビー機能から、それらの終了までを完全にサポートする。マッチメイキング、セッション管理、レイテンシやパケットロスのシミュレーションなども可能だ。ボイスチャットもサポートしており、簡単に利用できる。Xbox Live、またはシステムリンクに対応しており、ゲーマープロフィールや、Xboxの標準UIである「ガイド」機能も利用できる。多様なデバイスにも対応し、キーボードとマウスに加えて、チャットパッド(日本未発売)やギター、ドラム、フライトスティックなどのデバイスのサポートも追加する。

ただし「GS 2.0」で全ての機能が実装されるわけではない。将来的にサポートされるのは、ゲームへの招待機能やランキング機能、プレゼンス詳細機能だ。しかしランクを利用したマッチングや、実績機能、RAWソケット、Xbox Liveサーバープラットフォーム(XLSP)を利用したサービスは、実装する予定はないとした。

このように「GS 2.0」で開発できるタイトルについては自ずと限界があり、ざっくりと言ってLIVEアーケードで配信できるレベルが見込まれている。もっとも、これだけでもアマチュアにとっては「大作」だろう。また「開発できる」と「配布できる」は別の問題で、現在「GSE」で作成したXbox360向けのゲームを友人に遊んでもらうのは、不可能ではないが少々厄介だ。またWindows向けのタイトルについても配布や販売は自由だが、ゲームの起動に必要なランタイムの再配布は不可となっている。

一方でプロユースにおいても「GS 2.0」はユニークな存在になりそうだ。XNAグループ/XNAコミュニティ リードプログラムマネージャの徳留和人氏は、「XNA Game Studioによる商用タイトル」と題した講演で、「GS 2.0」を用いてLIVEアーケード向けのタイトルを開発するメリットについて解説した。

徳留氏によると、「GSE」をリリースした後で寄せられたフィードバックのうち、特にプロのゲーム開発者から、「C# Expressを使用する価値はあるか?」という質問が多かったという。商用版には使えないプログラムを、わざわざC#を修得してまで作るのは、ほとんどメリットがないからだ。これに対して「GS 2.0」ではVisual Basic 2005の全バージョンに対応したが、マイクロソフトとしては今後C#に注力していくとした。

これまでゲーム開発言語のトレンドは、アセンブラからC、C++、C#へと変化してきており、現在はメインとなる部分をCやC++で記述し、ボトルネックとなる部分のみをアセンブラで記述する形式が主流となっている。これが将来的には、同様に主要となるコードがC#で記述され、C/C++が主流から外れていく、という観測からだ。そのためC#での開発環境の研究は、開発スタジオにとっても先行投資になるという考えを示した。

また「GSE」上で開発され、LIVEアーケードで配信が決定しているタイトルとして、米TORPEX GAMES開発のカジュアルゲーム「schizoid」の事例を紹介した。もちろん「GS 2.0」でもLIVEアーケード向けのタイトル開発は技術的に可能だという。現在はマスター承認(サーティフィケーション)のプロセスが準備中で、2008年春から正式サポートが開始される。特に「GS 2.0」は小規模プロジェクトでの開発に向いており、LIVEアーケード向きの開発環境だとした。

ただし、実際にLIVEアーケード向けのゲームを開発するには、パッケージタイトルと同様に、マイクロソフトによる一連の承認が必要になる。しかもLIVEアーケードでの配信は米国で高い注目を集めている一方で、毎週1〜2本しか配信されない、「狭き門」となっている。とはいえ、ぜひ日本の開発スタジオから、世界に向けて配信できるタイトルを送り出していきたいとアピールした。また、その場合も企画書より、「GSE」や「GS 2.0」を用いて開発した、遊べるプロトタイプの有無が大きなポイントになると述べた。

ビジネス面での活用もさることながら、「GSE」や「GS 2.0」の恩恵を大きく受けるのは、やはりアマチュアのゲーム開発者だ。しかし現在はXbox360向けのゲームを自作しても、不特定多数のユーザーに遊んでもらう手段がない点が、ツールの普及を妨げている。この点については同社でも理解しており、コミュニティサイト「XNAクリエイターズクラブ」の立ち上げと、その中での配信といった企画が進行中だという。

徳留氏も「我々の目的は、『GSE』『GS 2.0』といった開発環境の提示を通して、ゲームクリエイターの層を厚くし、開発力の底上げを行っていくこと。今回はツールの発表に留まったが、近い将来にコミュニティ関連についても発表できると思う」と述べた。すぐにでも考えられるのが、ゲーム専門学校向けのコンテストだろう。最優秀賞の副賞はLIVEアーケードでの配信サポートが最適だと思うが、どうだろうか。
《小野憲史》
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