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記野直子の『最新北米市場分析』2015年5月号―『スプラトゥーン』は5位、amiiboも好調

こんにちは。昨日からE3のためにアメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルスに入っています。到着したら5月のNPD Groupの市場レポートが発表されましたので現地アメリカから報告しますね。

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記野直子の『最新北米市場分析』2015年5月号―『スプラトゥーン』は5位、amiiboも好調
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こんにちは。昨日からE3のためにアメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルスに入っています。到着したら5月のNPD Groupの市場レポートが発表されましたので現地アメリカから報告しますね。



市場全体動向: E3前の静かな市場!



市場として大きな勢いのない5月という月ということ、E3直前ということで公開データ自体があまり充実していません。市場全体としてPS4、Xbox Oneを中心としたハードおよびソフトが購買の中心であったとの報告ですが、5億760万ドル(約630億円)。前年同月比13%ダウンの全体市場規模です。

ハードウェア売上は前年比18%ダウンの1億5,360万ドル(約190億円)。これを見ると新ハード売上もそろそろストップ?と誤解を生むかもしれませんが、NPDによると、これはXbox 360、PS3など旧ハードの売上大幅ダウンに起因するもので、新ハードはほぼ横ばい、旧ハードは45%ダウンという売上結果のようです。

ソフトウェア売上に目を向けると前年比25%ダウンの2億470万ドル(約254億円)。もちろんこの数字にはデジタルダウンロードは含まないのですが、それにしても大幅な下降具合ですね。NPDの分析によると昨年の5月には『マリオカート8』や『Watch Dogs』などの大型タイトルの発売があったがこれに今年が及ばなかった、ということらしいです。

周辺機器の売上が前年比20%アップと5月度で一番の成長を遂げたようです。これはもちろん任天堂のamiiboフィギュアのおかげなのですが、このお話はまた後ほど。

ハード動向: 新ハードはVR勝負?New 3DSは好調!



先月の首位ハード、Xbox Oneが連続で頑張ったか?と思いきや、5月はPlayStation 4が首位だったようです。相変わらずしのぎを削っている両プラットフォームですが、ソニーからは「E3前に1位にしてくれてありがとー、ゲーマー諸君!」というアナウンスがありました。

また、マイクロソフトからは「Xbox Oneは前年比81%アップの売上です! 全世界のXbox Liveのアクティブユーザーは20%アップしました!E3で発表するラインアップを楽しみにしててね!」という発表が。比べている前年のXbox OneはまだKinectが標準でついていて値段が高かったパッケージですね?

競争が激化する中で、自前のヘッドマウントディスプレイ「Project Morpheus」をプッシュするソニーPS4に対して、2016年第1四半期発売予定の「Oculus Rift」にマイクロソフトXbox Oneの無線コントローラーが同梱されるとの発表がありました。

今年1月に発表した同社の「HoloLens」に加えてのヘッドマウントディスプレイ戦略、ソニーとは反対の「既存の技術に乗っかる」というのは悪いことじゃないしエコシステムに合致していて良いと考えますが皆さんはいかがでしょうか?E3での両社のカンファレンスが楽しみです。

任天堂からはWii Uに関する情報は出ていませんが、E3で値下げの発表をするのでは?との憶測が出ています。一方、3DSに関しては、米国のみで1,500万台を達成!と任天堂からの発表がありました。新型3DSは好調のようで、NPDの情報では5月のハードで「携帯ゲーム機」だけを見ると前年比41%アップの市場となっているそうです。PS Vitaが好調とは聞こえてこないので、これはほぼ新3DSの恩恵と言えましょう。

ソフト動向: Warner Bros. が強い!





2015年5月度のソフトウェアランキングです。

1. The Witcher 3: Wild Hunt (PS4/XBO/PC) - Warner Bros. Interactive
2. Mortal Kombat X (PS4/XBO) - Warner Bros. Interactive
3. Grand Theft Auto V (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Take 2/Rockstar
4. Minecraft (PS3/PS4/X360/X1) - Microsoft/ Sony Computer Entertainment
5. Splatoon (Wii U) - Nintendo
6. Call of Duty: Advanced Warfare (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Activision Blizzard
7. NBA 2K15 (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Take 2/2K Games
8. FIFA 15 (PS3/PS4/X360/X1/Wii/3DS/PSV) - Electronic Arts
9. MLB 15: The Show (PS3/PS4) - Sony Computer Entertainment
10. Super Smash Bros. (Wii U/3DS) - Nintendo


前月トップの『Mortal Kombat X』は相変わらず好調なのですが、当月発売の『The Witcher 3: Wild Hunt』が首位につけました。いずれもWarner Bros.のパブリッシングタイトルです。この『The Witcher 3: Wild Hunt』は、開発会社CD Projekt REDより、5月19日の発売から2週間でデジタルダウンロード版含むワールドワイドの売上が400万本と発表されています。

『The Witcher 3: Wild Hunt』の初月売上高は、現世代機向けRPGジャンルタイトルとしては過去最高との結果とのこと、期待も高かったのですが実際プレイしたユーザーからも好評価で、今後の売上推移も楽しみなタイトルです。

さて、1位2位を独占したWarner Bros.ですが、今年度(1月~5月)北米で一番売り上げているパブリッシャーとなったとのこと、前年比140%アップの売上とのこと、EAやActivision、Take-Twoなどのお株をかっさらう結果となりました。AAAタイトルに注力し、クオリティにこだわった結果がユーザーに評価されたというべきでしょう。

首位のRPGタイトル『The Witcher 3: Wild Hunt』も好調ですが、日本発RPGタイトルも好調です!ランキングがSKU別であればスクウェアエニックスのPS4向け『Final Fantasy X/X-2 HD Remaster』もトップ10入りしていた、とNPDは語っています。

PC版が発売され再ブレイクしている『Grand Theft Auto V』。引き続きランクインしています。こちらも『Call of Duty』シリーズとともにゆるぎないAAAタイトルとしての信頼をユーザーから得ています。

ご立派なのは5位にランクインされている『スプラトゥーン』。新規IPというハードルを越え、シングルプラットフォーム向け、かつ5月末の発売にも関わらず5位にランクインするところはさすが任天堂というところです。

amiiboのメイン市場は北米!



本年5月の任天堂が発表した内容によると、5月初旬現在でamiibo(アミーボ)は全世界に1,050万個出荷されたとのこと。日本ではそれほど実感としてのブレイク感がないですが、それもそのはずメインの市場は「北米」なのです。任天堂によると全市場の 66%は北米で、20%が欧州、11%が日本、3%が豪州とのことです。

既にActivisionにより『Skylanders』で成立していたゲーム連動フィギュア市場。子供より親のコレクション欲を湧き立てると言われていたのですが、ココに任天堂キャラクターが入って来てくれればまさに子供のみならず親の世代にピッタリのコンテンツでしょう。



『Skylanders』の手法で感心したのですが、マス向けの通常フィギュアに加えて小売店ごとの独占、または期間限定フィギュアなどで「レア感」をあおり、コレクション性をくすぐるこの展開はアメリカ市場に旋風を巻いています。
amiiboが北米で既に成功している『Skylanders』、『Disney Infinity』などとさらに差別化して受け入れられているところは、amiiboはほぼすべての任天堂Wii U/3DSコンテンツで使えるところでしょう。限定的な使用しかできないフィギュアに比べれば、追加コンテンツなど、購入したソフトの展開の幅を広げることができるamiiboは画期的なモノなのです。

集めることによって、これから発売される任天堂ゲームに使えて、新しい遊び方が提供されるのはユーザーにとってはとても嬉しいことでしょう。『大乱闘スマッシュブラザーズ』なども長い間ブレイクしているのは、amiiboが起因しているのかもしれません。

言わずもがなですが、任天堂キャラクターのファンは子供から大人までたくさんいるんですね。ゲームをパッケージで持つことに執着しない北米のユーザーが、フィギュアのコレクションには日本人より執着する、というのがちょっと面白いなと思ったりしました。

さて、皆様がこれを読まれているころにはE3(Electronic Entertainment Expo)2015も開幕も近づいていることでしょう。会場がオープンになる前にプラットフォーマーおよび大手メーカーのプレスカンファレンスが多数行われますが、ネットでも生で見られる時代になりましたのでぜひご覧くださいませ。

E3を盛り上げるために各社が先行していろいろと情報をリークし始めていますが、Bethesdaから『Fallout』の続編のアナウンスがありました。こういった大型タイトルのサプライズもE3の見どころですね。

E3のレポートは別途帰国してから書こうと思っています。それではまた来月!

    ■著者紹介
    記野直子
    カイオス株式会社 代表取締役
    青山学院大学文学部卒業。日産自動車株式会社を経て、ゲーム好きが高じゲーム業界へ転身。コナミ株式会社、株式会社バンダイ、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントにてゲームソフトの海外展開、ゲームソフト発キャラクター展開などに従事。2007年よりカイオス株式会社代表。
《記野直子》
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