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【東京ゲームショウ2013】起業して一番良かったことは、ゲーム開発以外のことを考えなくて済むようになったこと・・・ガンホー森下氏による基調講演

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【東京ゲームショウ2013】起業して一番良かったことは、ゲーム開発以外のことを考えなくて済むようになったこと・・・ガンホー森下氏による基調講演
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いまや1900万ダウンロードを突破し、国民的ゲームとなった『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』。9月19日に行われた東京ゲームショウ基調講演の第二部では、『パズドラ』を生み出したガンホー・オンライン・エンターテイメント社長の森下一喜氏が登壇。「ガンホー・オンライン・エンターテイメントがめざすゲーム像とは」と題し、日経BP社の品田英雄氏との対談形式で、開発に対する思いなどを語りました。

はじめに「大ヒットした理由」について尋ねられた森下氏は「良く聞かれるのですが・・・」と前置きしつつ「運が良かっただけ」と一刀両断。「成功した理由」を分析してもあまり意味がなく、むしろ失敗した理由の分析こそが大事と回答しました。また、このように言い聞かせることで「おごらないこと」の重要性を強調しました。

もっとも、企画のターニングポイントになった出来事はありました。2011年の9月ごろ、まだプロデューサーの山本大介氏と二人で企画会議を進めていたときのことです。当初は横画面だった画面レイアウトが、縦画面に変更されることになりました。この時に画面上にモンスターが表示され、画面下のドロップを親指で操作するという基本スタイルが完成。当初はダミーでつけられていたドロップの色にも、属性という要素が加わったといいます。洞窟探検という設定や、『パズル&ドラゴンズ』というタイトルも、この時に出てきたと言います。

ちなみに「横画面から縦画面に変わったのは、プレイスタイルがかわいく見えるように、女性が電車でつり革につかまって片手で遊べるゲームを意識したため」とも補足されました。

また、横画面が縦画面になった時点で、ニンテンドー3DS版『パズドラZ』のビジョンもあったといいます。実際にスマホ版でも主人公やストーリー要素などがありましたが、プログラム容量の問題などから断念。スマホ版がヒットしたから3DS版というわけではなく、満を持しての3DS版投入であることを強調しました。

企画だけでなく、開発においても森下氏がどんどん口出しをしていくのが、ガンホー流の開発スタイル。「直感的・革新的・魅力的・継続的・演出的」という社内のチェック項目にそって、『パズドラ』でも細かいだめ出しが頻繁に行われたといいます。一例がドロップの動きで、最初は上下左右にドロップを動かせるだけでした。これでは気持ちよくないと、周囲9マスにドロップを動かせるように変更。さらに一ひねりないかという時に、山本氏が冗談で「いっそのこと、どこまでもドロップを動かせるようにしますか?」と提案したと言います。

このアイディアについて、最初はゲームが簡単になりすぎるとして、即座に却下した森下氏ですが、後から「だったら、時間制限を設ければ良い」と考え直し、現在の操作につながりました。これによって運と技術のバランスが的確に取れるようになったといいます。これ以外にも細かいアニメーションやSEのタイミングなど、操作が気持ちよく感じられるための作り込みについて、かなり時間がかけられました。

また女性に受けるための秘策として、プロデューサーの山本氏はCEDEC2012で「嫁レビュー」を開発に組み込んだことを明かしました。一方で森下氏は小学6年生になる子どもにテストプレイをさせているそうです。「子どもは邪悪な天使で、つまらなければすぐに手放します」として、チュートリアルなどは、子どもにテストさせるべきだとコメント。一方で次第に反抗期になってきたと漏らし、品田氏に「ガンホー開発力低下の危機ですね」と突っ込まれていました。

■変化の早い時代では「破壊と創造」が一番重要

さて、大ヒットを記録したクリエイターの常として、何度も「ヒットの方程式」について尋ねられるという森下氏。とはいえ「ヒットの方程式は、やっぱりない」といいます。「方程式があったとしても、時代と共に変わっていきますし、ユーザーも移り変わっていきます。しかも時代の変化が早すぎます」(森下氏)。そのため常に革新的なゲームを作っていくことしかなく、過去の成功体験に縛られないことが大切だとしました。

「弊社は『ラグナロクオンライン(RO)』のヒットで上場しましたが、いまも『RO』を越えるMMORPGは作れていません。つい開発チームが『RO』と比較してしまうのです。そのためには『破壊と創造』が重要です。今は早く『パズドラ』を壊すようなゲームを作りたいですね」(森下氏)

実際、ガンホーそして森下氏の人生も「破壊と創造」の繰り返しでした。子どもの頃は必ず送迎車つきで寿司屋に行ったという森下家。しかし森下氏が高校生の頃、父親が事業で失敗し多額の借金を背負ってしまい、自宅を抵当にとられるなどしてしまいます。先生から「お前のような奴は漫才師か車のセールスマンくらいしかなれない」と言われた森下氏は、友達とコンビを組んで漫才師をめざしますが、やがて相方が親バレして解散することになります。

その後、しばらく内装業を続けていましたが、同世代のスーツ姿に憧れてソフトウェアの開発会社に就職。仕事を続けながら「やっぱりゲームが作りたい」と思った森下氏は、同僚二人を誘って起業しました。「未経験だったし、既存のゲーム会社に転職するのは無理だと思った」からだというのが、その理由です。

当初は家庭用ゲーム機向けSDKの受託開発からはじめたという森下氏。その後、資金面やアドバイスなど、さまざまな形で多くの人にお世話になり、やがて『ラグナロクオンライン』という大ヒットコンテンツと巡り会いました。もっともオンラインゲームの運営ノウハウなど皆無だったため、常に手探りで「ユーザーに叱られながら」自分たちも成長してきました。その過程で社内に開発リソースがないことの限界を悟った森下氏は、ゲームアーツ、アクワイア、グラスホッパー・マニファクチュアと開発スタジオを傘下に収めるなどして拡大。そうした中で『パズドラ』の大ヒットへとつながっていきます。

■人間の成長に早い・遅いは関係なく、意識の問題が大きい

そうしたガンホーの社風を森下氏は「やんちゃなところ」と語りました。社内はパーティションなどがなく、風通しのいい開発環境で、上下関係もあまりないとのこと。社員からも「社長」ではなく「森下さん」と呼ばれているそうです。ゲーム会社でありながらメールをしないのも森下流で、報告はメールで受け取るものの、必要に応じて携帯電話で呼び出し、ガラス張りの社長室でミーティングをするのだと言います。

ゲーム開発で社長自ら陣頭指揮をとるのもガンホー流。『パズドラ』の企画も山本プロデューサーと二人で練り上げました。開発の細かい部分までタッチしているため、必要な資金や納期などは頭に入っており、企画承認も独断と偏見で決めるため、経営会議などもなし。CFOには常々「開発にコストを潤沢にかけるため、それ以外の要素はできるだけ切り詰めて欲しい」と言っているそうです。

「帰れま10」という新作ゲームの開発会議も頻繁に行っているとのこと。その名の通り仕様が固まらなければ帰れないルールで、午後10時には切り上げようと決めて臨むのですが、守れたためしがなく、午後11時を回ってしまうのが常とのこと。その後に居酒屋に繰り出して打ち上げをし、帰宅するのだといいます。

持ち家や高級車などにも興味がなく、とにかくゲームを開発するのが好きだという森下氏。一方でハードコアゲーマーで、年間かなりの本数をプレイしているとも語られました。会食で新作ゲームをプレゼントされた時、すぐに帰宅してプレイしようとして、部下から叱られたこともあるそうです。自宅でも家族が寝静まった夜中に一人でゲームを黙々とプレイしているのだとか。

そんな森下氏は「個人的に好きなのは家庭用ゲームだが、スマホゲームが非ゲーマー層を開拓したのは大きかった」とコメント。ソーシャルゲームがテレビドラマなら、コンシューマは映画で、これからはユーザーのライフサイクルにおける、スマホとコンソールゲームの連動を考えていきたいと語りました。

また海外展開について聞かれた森下氏は「PCオンラインゲームは60カ国に展開しており、国ごとのカルチャーや特色が違うことは良くわかっている」と前置きしたうえで、 おもしろいゲームを作るという根本的な部分は同じだとコメント。海外市場か日本市場かといったことには、あまりこだわらない姿勢を示しました。

最後に森下氏は開発者の姿勢について語りました。ガンホー社内でも多くの開発チームがありますが、それぞれに一長一短があるとのこと。それこそ技術力などは、開発チームの意識次第で大きく変化するといいます。「自分の可能性を自分で決めてしまわないことが大事です」と語った森下氏は、「なぜ自分が社長かといえば、自分が一番社内で意識が高いから」だと補足。高卒の自分でも上場会社の社長がつとまっていると語り、人間の成長に早い・遅いは関係ないという考えを示しました。

なお、これまで品田氏の質問に答える形でトークを続けてきた森下氏でしたが、本トピックについては身を乗り出すように発言をリード。森下氏自身がたたき上げで成長してきただけに、思い入れも強かったようです。

「ガンホーを創業して一番良かったことは、ゲーム開発以外のことを考えなくて済むようになったこと」だと語る森下氏。ゲームを開発するには「愛情」と「お金」が必要で、そのための環境を整えることも自分の仕事の一つだと言います。また、自分自身も多くの人に支えてもらったことから、少しでも業界の発展に寄与したいし、自分たちに続くような新しい会社が創業できるように、貢献していきたいとして締めくくられました。
《小野憲史》

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