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BitSummit MMXIIIで見た「日本人ゲーム作家たちの」想像力・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第27回

日本ゲーム業界におけるインディーシーンを盛り上げようと3月9日、京都Fanj Hallにて「Bit Summit MMXIII」が開催されました。今回初めての開催であるにも関わらず会場には、170名もの人たちが訪れ多いに盛り上がりました。

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日本ゲーム業界におけるインディーシーンを盛り上げようと3月9日、京都Fanj Hallにて「Bit Summit MMXIII」が開催されました。今回初めての開催であるにも関わらず会場には、170名もの人たちが訪れ多いに盛り上がりました。

もともと100名程度を想定して会場を選んでいたこともあり、場内はあまりの人で歩く事が困難な程。スポンサーとしても、Epic Games、Unity Technology、そしてValve等そうそうたるメンバーが名を連ねました。

主催したのは、Q GamesのJames Mielke氏。また、開催には、関西を盛り上げようと組織されたGIP-WESTの主要メンバーである、アクティブゲーミングメディの方々、総合司会としては、デジタルデベロップメントマネジメントのベン・ジャッド氏が、更に印刷物などは、DiGRA-Kの幹事でもあるKINSHAの皆さんが携わるなど、関西全域におけるゲーム関連コミュニティでアクティブに活動する多くの企業がひとつとなってイベントを推進していました。一つのイベントに関西のゲーム企業が一丸となるのは2011年に開催された
京都太秦ゲームフェスタ以来です。

本誌において、基調講演の模様など一通りリポートが進んでいますので、本稿では、数多く展示されていた作品群の中から、筆者が興味深いと感じたものについてフィーチャーしながら、日本におけるインディゲームシーンの展望を俯瞰してみていたいと思います。

■ゲームクリエイター飯田 和敏氏による最新作『モンケン』
『モンケン』は、『アクアノートの休日』、『巨人のドシン』、『ディシプリン帝国の誕生』などユニークな作風で知られる作品を排出した飯田和敏氏がブレインストームの中村隆之氏など複数のクリエイターと開発した社会派ゲーム。今回は飯田氏が同チームを代表して本作の説明をしてくれました。

構想はかなりの時間をかけつつも、他のプロジェクトに忙殺され、週末などの空いている時間にちょこちょこやっていたのが形になってきたという本プロジェクト。スマートフォン向けソフト『イージーダイバー』の開発がひと段落したということで、進めている本作は、単なるエンターテインメントに留まらない葛藤をプレイする側に感じさせます。「モンケンという重機を操り、建物を破壊しながら中のテロリストを追い出す」というのが本作のざっくりしたルール。ただ、全く目的を提示されることなく、ステージ上のビルや家を前述の重機を用いて破壊していく様はプレイヤーに複雑な感情の起伏を起こします。

このゲームを開発するにあたり、通常であればパブリッシャーに話を持ちかけて開発に着手するものの、もう時代が違うかな、ゲームもこれまで以上に作りやすい環境になっている中で、パブリッシャーにとらわれずに自分たちで作りたいモノをつくり、発表してみたくなった」と飯田氏。本作については、基本無料提供し、それからマネタイズについて考えていきたいとのこと。更にエディターなどもクリエイティブコモンズとして公開し、皆でゲームを開発したいとの展望を述べた。「ソースコード」も開示して、「教育用ソフト」としての開発を奨励していきたいとのこと。

Bit.Summitについては、「すごく熱気があると」と興奮を隠しきれない様子。事実、筆者がインタビューをする前まで、様々なブースに立ち寄ってゲームプレイに興じていたため自分のブースから離れて会場を巡回していた位だ。「考えて見てれば、ゲームで食っていくということそのものがイレギュラー」と自身のインディ的要素を分析する飯田氏。ただ、大手に頼らず自分でモノづくりをするというのが現在の潮流であることを考えると、現在フリーとして活躍している自身の選択は正しかったのだと自信を見せました。

■『洞窟物語』の天谷大輔氏がBitSummit披露した最新作
『Gero Blaster』は『洞窟物語』で知られるPIXELの天谷氏の最新作。今回のBitSummitでもプレイ動画が初めて披露され場内を沸かしていました。「すでに開発に2年半をかけており、2回作り直した。」と天谷氏。「最初は半年でつくっていくら儲けるということも考えてものの、やはり時間をかけないと、何がつくりたかったかすらもわからなくなって、最初の1年は苦労した。」とのこと。ただそれを吹っ切り自分が作りたいもの作るという思いで今に至りました。

あくまでも8bit時代のレトロ的な雰囲気にこだわる天谷氏。その点を指摘すると、「もうアートスタイルと思ってくれないかな!」と一言。確かに。ドット絵はすでにメディアアートに留まらず、ファッションや、ポストイットを活用したドット絵壁の模様など様々なところで応用されていますよね。

プレイヤーキャラクターも彼のこだわりから来たもの。『Gero Blaster』のメインキャラクターであるカエルのキャラは自身が描いていたマンガにも登場させていたとのこと。これは、自分にとってお気に入りのキャラクターを使えば開発のモチベーションを維持出来ると思ったから。

ストーリーは、オープイングシーケンスでも明らかになるようにUFOからのブラスターにより連れされてしまったお姫様をGEROが救うために世界を巡るというオーソドックスなアスレチックゲーム。ただ、「説明で聞くよりは、ゲームで体験してほしい」と天野氏。そんな解説も、往年のゲームクリエイターを彷彿とさせます。

ゲームデザインとしてのこだわりは、タッチパネルコントローラ。スマホゲームにおけるアクションゲームに対する「やりにくさ」の通説を払拭できるぐらいのものにしたいとの思いで開発を続けたという。「ですが、完成がちかづいたところで、iPhone5が出て、それにコントロールパッドも調整し直した」とスマフォ向けゲームならではの苦労に頭を悩ませている。インスピレーションを受けたゲームは数知れずとのこと。「ゲームってもうアイデア出尽くしたっていうのは10年以上前から言われていることだけど、もちろん新しいアイデアも楽しんだけど、これまであるものを組み合わせても自分のものは表現できるんです」と天野氏は言いました。

「雑誌とか見ていていいなと思ってゲームを実際にプレイしてみて思っていたのと違うと思われるよりは、自分が思っていた通りのゲームを作って見せたかった。『洞窟物語』のときもまさにそうやってつくってきた」と期待通りのゲームプレイを体験させることに情熱を燃やしています。リリースは春頃になるとのこと。楽しみですね。

■『エルダッシュ』で一躍有名になったHAta小松正人氏も代表作を披露
実際のゲームがリリースされる前に同人ゲームが出ていたことで話題となっていた『エルシャダイ』ですが、その同人ゲームを開発したのが、HAtaの小松氏。まさに同人の鏡とも言える方ですが彼もBitSummitに参戦していました。

HAtaは、グラフィッカーの弟と2人によるゲーム開発チームですが、RPGなどについては、苺坊主というチームとともに開発するというアドホック組織的な体制。チームとして、200時間から300時間は遊べるタイトルをリリースしてきたとのことです。『El Shadashu』はダウンロードも含めると3000本は売れたとのこと。ただし、ダウンロード版の収益はすべて東日本大震災関連で寄付しました。

その後、『El Shadashu』で開発したダッシュシステムを活用し、サークル小松菜屋とコラボし同サークルのメロンちゃんを題材に1週間ほどで、『メロンダッシュ』を開発。販売
を開始しています。この他にも東方ブランドのRPG大作、『東方幻想魔録祭』なども出展していました。

■『機装猟兵ガンバウンドEX』~スマホでも往年の横スクローリングシューターを楽しむ
スマートフォン、タブレットデバイス向けゲームとしてはまだまだ少ない、本格的なシューティングアクションゲーム。『機装猟兵ガンバウンドEX』はもともとPC向けに開発されましたが、PSP向けに移植され、昨年12月から国内では、Grevが販売しています。本日出展したところ、海外企業からもアプローチが本日かなりあったとのこと。移植の工程にもそれほど時間がかからなかったとのことなので、マルチプラットフォームで多国化展開も難しく無いかもしれません。

海外からの参加したメディア関係者に来てみると、こういった、16ビット的横スクロールシューターを懐かしいと思っているゲーマーも多く、欧米では開発されていないだけにマーケットもあるとのこと。今後の展開が楽しみですね!

■自分が目指すゲームのために退路を絶って勝負をかける
巫女の末裔である少女がモノノ怪やロボットたちと大都会で戦うという『巫女剣神威控』。話はシンプルながら本格的なアクションゲームであるのに加え、大都会という世界観に、和のモチーフがふんだんい取り入れれている世界観に海外メディアも注目していました。

とあるパチスロコンテンツの開発会社にいた2人が、もともとサークルののりでゲーム開発をはじめ、ゲームを完成させたいという一心でで独立。会社に在籍時代に開発を続け、基本的なフレームワークを完成し、独立して6ヶ月で一気につくりこんだとのこと。独立前からあわせると開発は2年にも及んだとのことです。DirectXを活用し、3DモデルはMayaで制作したもののミドルウェアを一切使わずに開発したとのこと。本作品でこだわったのは、「動き」と氏。モーションもすべて手づけです。

ただ、これまで経験がなかったので、様々なゲームを参考に研究を重ねたとのこと。現在、デモの完成は完了し、昨年のコミケで無料配布しました。最終的な開発工程を経て、今夏のコミケでは販売したいとのこと。今後どのような作り込みがなされるか
期待ですね。

■京大出身のふたりで目指すゲームの世界~『Cavyhouse』~
『Cavyhouse』は 宮沢賢治の小説のような大正時代の世界に迷い込んだという設定の3Dアドベンチャーゲーム。。キャラクターを操りながらクリックでヒントを見つけるといったオーソドックスなつくりでしが、、これを制作しているのが京都大学出身のふたり。2年の年月をかけて開発したのだとのこと。

ゲーム開発は、全てy0s氏が1人でこなします。しかも、プログラムは、C++でプログラムをおこない、グラフィックデザインはメタセコイヤで制作というコスト効率の高さ。まさに「同人ゲーム」という表現が相応しいゲームですね。


このように筆者が巡り合うことが出来た作品もユニークなものがいっぱい。しかも、ベテランクリエイターから、ゲームサークルまでが渾然一体となってひとつのイベントを形成しているのが象徴的でした。ただ、一つの大きなビジョンを掲げていたように思います。それは「面白いゲームをつくりだい!」ということ。

今回は、一般参加はなかったのですが、たくさんのゲームファンに楽しんでもらえるイベントのような気がしました。BitSummitのこれからに期待です。最後の帰路でであったのは、主催者側として尽力していた、海外出身、関西在住のゲームクリエイターたち。国境は超えても思いは一緒。それぞれがコラボレーションすることでここまでのイベントを関西でも実施出来るのだということをしっかりと示してくれました。これからの活躍が楽しみでなりません。
《中村彰憲》
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