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ゲームは地方に活力を与える!『Tengami』の東江氏と『PixelJunk Eden』のBaiyon氏が語るインディーのこれから・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第31回

ゲームビジネス その他

東江亮氏(右)とBaiyon氏(左)
  • 東江亮氏(右)とBaiyon氏(左)
  • Tengami
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  • PixelJunk Eden
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地方が「ゲーム」で元気になる!そのような事はありえるのでしょうか?

その問いに対し、高らかに「Yes!」と答えるのが、先日、京都を訪れた東江亮氏と京都在住のBaiyon氏。東江氏は雅的モチーフを活用したアドベンチャーゲーム『Tengami』のデベロッパーです。


東江亮氏(右)とBaiyon氏(左)


東江氏は、現在沖縄在住ですが、デザイナーとして英国老舗のゲームスタジオRare社に入って以来、活動拠点を英国とし、現在は、Nyamyamのゲームクリエイターとして活躍しています。同社リリースの第一作目となる『Tengami』でも主にクリエイティブ・ディレクションを担当し、その独自な世界観を作り上げていきました。



一方、Baiyon氏も東江氏と同様に世界を相手に活躍するクリエイターです。クリエイターとしては、Baiyonとして名が知れているため、いかにも海外のクリエイターのように聞こえますが、れっきとした生粋(?)の日本人。同氏は、ゲームに限らず、様々なクリエイティブに携わってきましたが、ゲーム業界における代表作は『PixelJunk Eden』です。



今回、東江氏が沖縄から上洛した際、お会いする機会がありました。しかも、Baiyon氏と一緒に。そのとき、それぞれの視点からこれからのインディーゲームデベロッパーが世界に打って出るにはどうしたらいいのか語ってくれたのです。ここではそのときの模様をお伝えしましょう。

■英国において開発者としてキャリア積んで来たからこそ分かる、日本人クリエイターとしての強み

東江氏は当初、英国でゲーム開発に携わったばかりの頃は、日本人ならではの強みを意識することなかったと言います。
ただし、海外のクリエイターとともに仕事をする中で感じたのが、海外の人たちの日本的形式美へのリスペクトを改めて実感したとのこと。そして、このような外国人の日本への「あこがれ」をつきつめて生まれたのが『TENGAMI』だったのです。

日本人は自分達の事を「憧れる」事が出来ません。当然、東江氏も分からなかったそうです。しかし、仕事をしていく中で、英国人の目を通して見つめることができた、と東江氏。外国の企業で働きながら、スタッフに「日本の魅力」はどこにある?と聞いていったと言います。掘り起こしていくと、1000年の歴史を持っている伝統文化、和紙や友禅などに自然と惹かれる部分があるようです。「アニメも当然いいし、ゲームもいいけど、僕が愛している、憧れているのは、1000~2000年の歴史を持っている伝統的なモノにあるんだ」と答えた同僚の言葉が印象に残っているといいます。

『Tengami』のリリース後、イギリス、フランスなど欧米各国で高い評価を受けました。日本でも評価されましたが、日本からは「なぜ、これが日本から生まれなかったのか?」との声が思ったより多かったと東江氏。ただ、内心、「大丈夫。『Tengami』には日本人が関わっているから」と常々思っていたとのことです。

一方、Baiyon氏の場合、Q-gamesとコラボレーションして制作した『PixelJunk Eden』の売り上げ構成はアメリカ市場、ヨーロッパ市場がメインです。また、日本の売り上げがあまり高くないのは、日本が市場として「ガラパゴス化」している象徴だといいます。

これは、Baiyon氏が『PixelJunk Eden』でGDCにて講演を行った際、企業の大小、取り扱っている作品の知名度に関わらず、向こうから握手を求めてきたりした欧米デベロッパーの様を目の当たりにした際、更に感じたとのこと。クリエイターへのリスペクトを実感したBaiyon氏は、そのとき、「ああ生きてて良かった」と心底感動したと同時に、日本で同じような立場の人だったらなかなかこのようなコミュニケーションは生まれにくいだろうなと感じたとも。

ただ、コンテンツを開発するにあたって、通常、日本を意識してつくることはないとBaiyon氏。ただし、考えてみると、「京都の音」を録ってゲームに入れることはあったとのこと。『Eden』でも実際には京都の音を録音するなどしてきたものの、それにどのような価値があって、どう展開しうるのかという点での紐付けがされていなかったと当時を述懐します。

例えば、『PixelJunk Eden』の最後に収録されている楽曲「3 across 4」は、三条と四条の間で、車のクラクションが何度も鳴っていた様子に興味を覚え録音したことで出来たサウンドだったとBaiyon氏は明かしました。この他にも積極的に身の回りにある音を収録してきたそうです。また、『リトルビックプラネット2』では楽曲だけでなく、ユーザーがゲーム内で作曲に使用する事が出来るインストゥルメント(楽器)も開発。そのうちの一つ「Baiyon Kyoto」には、実際に京都で録音した様々な音を収録しているといいます。

驚くべきなのは、Baiyon氏が、『リトルビックプラネット2』のようなビックタイトルに携わることになった経緯です。一般的に国内では、こういった大規模プロジェクトに参加する前にかなりの年数仕事を続けないと関われないだろうとBaiyon氏は分析します。それに対し、Baiyon氏は、共通の友人のホームパーティーに参加した際に『リトルビックプラネット2』の開発元、Media Moleculeのチームのトップと意気投合した流れで仕事を請け負うことになったというのです。このようなフランクなシーンはなかなか日本では考えにくいですね。

ただ、日本でインディーズを続けるのは本当に大変とも。これに対応するためにBaiyon氏は、ゲームに限らず、様々なクリエイティブに携わって来たとのこと。これまでも、前述のゲームや音楽にくわえ、アパレルやグラフィックのデザインにも携わり、次々と自分が表現できる場を見つけてきたとのこと。つまり、美術の出来るサラリーマンという意識ではなくあくまでも「インディー」としてのスピリットを持つということが重要であると実感出来ました。

■サポート体制の充実が、日本のインディーシーンを更に盛り上げる

では、如何にしたら、日本のインディーゲーム開発者は世界にアピール出来るのでしょうか?この点について、東江氏は「京都には宝が埋もれています。日本人として京都の文化とコラボレーションできるのは、意義が高いんです。」と言います。海外の人にむけて、数百年の歴史があるものをきちんと組み合わせ、きっちりとアピールしていく。これをきっかけに京都の文化はすばらしいと感じたり、実際にお土産を購入するというところまで持ってくることが出来ればと、その可能性に期待をよせます。また、行政側にはそういったインディーズの試みをサポートして欲しいとのこと。

一方、Baiyon氏はもっと積極的に世界の状況を見つめるべきと訴えます。Baiyon氏はベースは京都に置きながら、グローバルな活躍を続けています。渡航期間の最長も2週間程度だとか。一方で、ただこのような活動を自分だけで続けているのに限界を感じているとも言います。仲間を求めているとのことで、Baiyon氏のようにエッジのきいたクリエイターが多く集まることで、日本のインディーが更に強くなっていくはずです。ただ、残念なことに、現段階では、そこまでエッジのきいた若い人たちを見つけられておらず、自身が紡いできた海外とのネットワークを惜しみなく提供出来るような才気溢れる若い才能に出会いたいという想いを抱いているとBaiyon氏は述べました。

これについて、東江氏は、地方が成功するうえで重要なのは、「国内に存在する成功した人の全てつながりを大切にする」ということ。京都、沖縄、という個別ではなくそれぞれ成功した人たち同志をつなげていくことで、一気に世界にムーブメントをもたらすことが出来るのではないかと述べました。そのような意味で京都という場所は大きなメリットがあります。というのも、世界の人は、日本のことを考えると、まず京都をイメージするからです。またBaiyon氏をはじめ、個人でありながら世界で活躍している人をしっかりと探し出し、それらを迅速にバックアップしていく必要があるとも。

GDC2012における『Fez』クリエイターPhil Fish氏による「日本のゲームはクソだ」発言からおよそ2年が経過しましたが、ここ2年で、日本のインディーズ・ゲームシーンも大きく変化しました。しかも、そのシーンを大きく揺るがしているのは、沖縄在住の東江亮氏や、京都府在住のBaiyon氏や天谷大輔氏、同じく京都に拠点を置くQ-Games、そして岡山県在住の樽村匠氏など地方で活躍しているクリエイターたちです。

では、こういったインディーシーンを地方で盛り上げるには?京都はその点においても比較的先行しているようです。BitSummitのよな大規模なイベントは若干敷居が高いですが、6月27日には、IGDA関西とDiGRA-Kの共催で、『セカイで成功するためのゲーム・ローカリゼーション/カルチャリゼーション』をテーマとした勉強会が京都リサーチパークで開催されます。ここでは、『ケロ・ブラスター』や『LA-MULANA』のグローバル展開を支援したPlayismや、大手ゲームパブリッシャーにて、作品の海外展開を担当後、ローカリゼーション・スペシャリストとして独立し、株式会社イキオイがそれぞれの視点から、インディーゲームも含めた日本製ゲームの世界展開について講演が行われます。小規模ながらもインディーシーンの盛り上がるサポートのためのイベントが行われることも重要かもしれません。

このようなサポート体制をうまく活用しながらそれぞれが互いをリスペクトしつつ、同時にライバルとして意識する緊張感を保つことが出来れば、日本のインディーズゲームシーンも一気に開花していくことでしょう。

これからの皆さんの活躍を期待してやみません。
《中村彰憲》

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