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ソニー、自社ビル「ソニーシティー大崎」を譲渡益約410億円で売却 ― 体質改善はPS4への布石か?

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ソニー、自社ビル「ソニーシティー大崎」を譲渡益約410億円で売却 ― 体質改善はPS4への布石か?
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すでに複数のメディアで報じられているとおり、ソニーが東京・JR大崎駅前の自社所有オフィスビル「ソニーシティー大崎」を売却します。譲渡後も別途締結された賃貸借契約に基づき、同ビルはソニーのオフィスビルとして使用される予定です。なお、厳密には所有権の譲渡ではなく信託受益権(該当する資産にかかる利益を受け取る権利)の売却です。

「ソニーシティ大崎」は地上25階建てで、2011年3月に完成したばかり。テレビ事業部やオーディオ事業部が入居しており、ソニーグループ従業員約5,000人が働いています。ただし、上記賃貸借契約があるため現状の業務に突然の影響はないものと思われます。

譲渡理由は、「企業体質強化にむけた事業ポートフォリオの再編や資産の見直しを進めており、その一環」。本年2月頭の連結業績見通し発表の時点で公表されていた事業ポートフォリオ再編や資産の見直しの1つにあたります。他には、ニューヨーク米国法人本社ビルの売却や、医療系ウェブサービスを提供するエムスリー社の株式売却などが検討されています。朝日新聞の報道によると、これらの一連の資産売却額は2,200億円を超えるとのこと。

本取引の譲渡価額は総額1,111億円。諸費用控除後の1,100億円を現金で受領しています。これにかかる譲渡益約410億円は営業利益として計上する見込み。売却先は日本ビルファンド投資法人及び国内機関投資家1社(譲渡先の意向により非開示)の2ヶ所。信託受益権の準共有割合はそれぞれ60%/40%。譲渡スケジュールは、2月28日にCEOによる契約承認、同日2月28日に契約締結、同じく2月28日に譲渡完了となっており、すでに取引は完了しているようです。

さて、まずありがちな誤解「不調なソニーがとうとう自分のビルまで身売りに出した!」から。本当に全部引き払ってもっとコンパクトな雑居ビルに入居した、といった事態ならともかく今回は単に賃貸に切り替えたにだけにすぎません。全く別のビルに一斉に5千人もの社員が移動するならそのコストや生産性低下があるかもしれませんが、今回はそうしたケースではなく、業務は通常通りでしょう。

ある程度の規模の企業でもあえて自社ビルを所有せず、諸雑務にかかるコスト回避やフットワークの軽さを重視して賃貸契約でオフィスを管理する場合も沢山あります。今回のソニーの事案では、あくまでも「ソニーが拠点の一つを売却した」というイメージによるブランド毀損が存在するにすぎず、実質的なデメリットは数字からは読み取れません。また、譲渡益は営業利益として約410億、2013年3月期の当期連結予想における当期純利益が200億円であったことを考えると悪くない臨時ボーナスのようなものともとらえられます(ただし前記の連結実績は4,567億円の損失)。確かに、信託受益権を手放したことにより将来の利益を手放した可能性も否めませんが、不利益を回避した可能性も同様にあるので、一概には良し悪しを判断することはできません。

それでは何故こうした整理を行うのか。確かに年度別の連結決算を眺めると、当期純利益は4年連続の赤字。偶発的な事象を除いた数値として営業利益を見るとしても、赤字と黒字を行ったり来たりしています。また売上高は2008年をピークに毎年右肩下がりです(2013年度は持ち直す見込み)。従って公告にあった通り、企業体質を改善するため、よくいうところの選択と集中を実践することにしただけだと素直に解釈するのが筋でしょう。

さて憶測を語るとして、避けて通れないのが今年の年末商戦への投入を目されるPlayStation 4の存在です。ソニーの2012年度セグメント別売上構成では、全体の11.5%ほどをゲームが占めています。他の領域、たとえばテレビやホームオーディオなどの分野にも影響を与え、モバイル系分野と融合する未来もありうることを考慮すると、「売上の1割とちょっとだけの事業」で済ませるわけにはいきません。平井一夫CEOも、コア事業の一つとしてゲームを度々挙げてきました。

では何故ゲームと現金を結びつけて妄想するのか、というとゲーム機自体のビジネスモデルの問題があります。ゲーム機ビジネスは、とくにローンチ段階から黎明期には市場浸透(貫通)戦略の色合いが濃く、そのために多大なコストがかかります。いわゆる逆ざや状態でもハード販売を身を削りながら優先するのはこのためです。売れば売るほど赤字になる!と指摘されたゲームハードは枚挙に暇がありません。

また、サードパーティーも含めたソフト開発環境の整備もただではありません。超のつくビッグタイトルがハードの運命を(一時的にでも)決定した事例もまた古今に事例があります。ストレートに表現すれば、「サードパーティーにゲームを創っていただく」ことも重要な位置づけの戦略だということです。

他にも一般的なマーケティング費用が瞬間最大風速的にかかる等、諸要素がありますが、まとめると「ゲームハードの移行期にはカネがかかる」ということです。果たして数百~数千億円でそれが賄えるのかどうか、またその時期として今が適切なのか否か、それは不明です。しかし、企業体が少々重くなってきたから社運のいくらかかかった商品をプッシュするために資産の流動化を進めておく、という判断自体に不思議な部分はあまりありません。

なお、「他のライバルはそんなことしていない」については、任天堂の財務体質(特にに借方の比率)がゲームメーカーとしてのみならず製造業の括りで見ても特殊で、主に現金をはじめとする流動資産の割合が高くなっています。これは様々な側面を持っており、投資家から批判を受けることもあります。が、いずれにせよ任天堂の体質として、余裕があるとかないとかとはあまり関係なく、資産の流動性が高いという事情から先程挙げたようなロジックは動機となりえないことになります。

一方のMicrosoftは、丁度売上高ベースで6兆円半ばとソニーと同規模(1ドル90円で計算)ながらも、ここ5年ほど安定して黒字経営です。組織基盤の再編は目下の課題とはなりづらいでしょう(本来ならば余裕のあるときにこそ断行すべきですが)。

長々と書き連ねてしまいましたが、一言で要約すれば「ソニー、調子悪いからシェイプアップしつつPS4売ろうとしてる模様」に過ぎません。電器屋のイメージとは裏腹に金融、映画・音楽などなどと意外に手広く稼いできたソニーが、ここにきて非効率を正そうとしてる姿をわざわざネガティブに認識する必然性はそれほど高くないでしょう。そもそも、本社ビルは当然健在です。
《Gokubuto.S》

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