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9割がお蔵入りする個人制作ゲーム、完成させる秘訣は - IGDA日本SIG-Indie研究会レポート

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9割がお蔵入りする個人制作ゲーム、完成させる秘訣は - IGDA日本SIG-Indie研究会レポート
  • 9割がお蔵入りする個人制作ゲーム、完成させる秘訣は - IGDA日本SIG-Indie研究会レポート
5月2日、IGDA日本のSIG-Indie研究会が文京学院大学で開催されました。IGDA日本のSIG(部会)としてあらたにスタートしたSIG-Indieは、同人ゲームやインディーゲームを扱う部会です。今回のセミナーでは、ABA Gamesの長健太氏、kuni-softの渡辺訓章氏、フランスパンの藤崎豊氏、ステージななの片岡とも氏、全日本学生ゲーム開発サークル連合(全ゲ連)の澤田進平氏(筑波大学)、ぶらんくのーとのごぉ氏が登壇、同人ゲームやフリーゲームの開発の現状について講演やパネルディスカッションをおこないました。



講演とパネルディスカッションで、各登壇者から重点的に取り上げられていたのは、ゲームを完成させるまでのモチベーションの維持と、サークルとしての共同作業、フリーゲームや同人ゲームの情報サイトの少なさ、ゲームの規模感についての悩みなどでした。

■完成までのモチベーションの維持について

セミナー第一部で研究者の七邊信重氏が、「企画のうち完成するのは1割以下」と指摘。これについて長氏はゲームが完成にいたらない理由として「アイデアがない」「長く作っているうちに飽きた」「作ってみたらイマイチだった」の3ステップがあると指摘しています。アイデア対策については「世にある斬新なゲーム群を参考にしよう。レトロゲームやフリー、インディーゲームから変なものを探すのもいい」とし、飽きへの対策としては「飽きる前に作る!不得意なところは逃げてとにかく作ってしまおう」と述べています。さらに、作ってみたらイマイチだった場合については「『どうせ9割はクソゲー』と割り切ってたくさん作る。そのためには手早く作ってさっさと捨てるのがよい。捨てることを躊躇しないこと。大技としてクソゲーでも公開してしまうのもあり」というパワフルな対策を披露。

渡辺氏は、モチベーションに関して「機材や資料に投資して無理にでも刺激を作ることもできるが、チーム開発でメンバー間に熱意の差があるとツラくなるのでこれは止めた方がいい。少ない刺激でも開発を持続できるように、開発中に我慢をせず、今の楽しさを重視する。作ったゲームで遊ぶ楽しさと作ること自体の楽しさを区別しないようにしよう。最初は買い手を意識せず、挑戦的な仕様でいいから楽しく作ろう」と述べていました。

藤崎氏は「とにかく動くものを作る、スケジュール通りに行うように努力し、最初の1時間は絶対に手を休めないなど作業に集中する時間帯をもうける。作業は要素に分解し、『まず1面目を作ろう』ではなく『画面に絵を描く』『キー操作で絵を動かす』といった感じで作っていこう。チームで作っている場合は週1回は必ず集まって打ち合わせや作業をする。ネットを介してやるよりダイレクト。ディレクションをする人間が、プログラマが途方に暮れないよう巨大な仕様をいっぺんに出すのではなく、仕様を段階的に提示していくのも効果的」とチーム開発でのポイントを指摘。

片岡氏は「自分の意志でやってるので、シナリオ制作でモチベーションが落ちることはない。複数のメンバーでやっていると相手の意見も入れないといけなくなるので、モチベーションについては個人サークルの方がいいかもしれない。1人サークルでやっているが、忙しくて一人では絵まで描けなくなったのでプロとして活動している知り合いに依頼している。単価は商業作品と同じ」と語りました。

■サークルとしての共同作業について

同人サークルでは複数のメンバーが共同作業するケースが少なくありませんが、共同での開発についても取り上げられました。

渡辺氏は「熱意は冷めやすく上書きされやすい。いっしょにゲーム作ろうと盛り上がっても、それがずっと続くとは限らない。メンバーには、『○○さんのゲーム作りを手伝っている』ではなく『自分の作品だ』と思ってもらおう。絵や音についても作業の成果をすぐに実感してもらえるよう、コードへのデータの埋め込みを排除する。バージョン管理システムや共有サーバを用意する。集まって生の空気を見ながらテストプレイをしよう。途中連絡を短いスパンでおこなって、ゲームの出来を見たい、見せたい、という場を積極的に持とう」と語り、学校の部室のようないつも集まれる場所は非常に貴重だった、とも述べていました。

藤崎氏は「友人同士とはいえ、開発に当たっては絶対権限を持った製作責任者を決めておく必要がある。決断したり尻をたたいたりしないといけないから。長期的なスケジュールは同人イベントにあわせるが、間に合わなさそうだから次のイベントに順送りにするといったことはしない。同人サークルはお金のことで喧嘩になりがちなので、ソフトが売れたときのお金の分け方も先に決めておきましょう」とアドバイスしました。

■フリーゲーム、同人ゲームの情報サイトについて

パネルディスカッションで藤崎氏が「認知度の高い同人ゲーム情報サイトが、更新頻度が低下したり停止したりしている状態。いちユーザーとしても世の中に出回っているゲームがわからなくなり、ゲームをやらなくなった」と提題、これについてごぉ氏は「ゲームの数が増えたから仕方ないかも。サークルに広報をやれというのも違う。イベント会場で歩いて探そう。作り手側も、反応がなくても作るしかない」と述べています。渡辺氏は「(遊んだゲームについて)感想を書く場所もない。スクリーンショットの掲載について推奨するかどうかといったあたりを書いてくれると助かる」と述べています。

インディゲームの情報サイトについて、IGDA日本の新清士氏は「個人の行うMMORPG情報サイトでは、しばらくすると運営者のモチベーションが尽きて更新が止まってしまう傾向がある。これと同じような構造かもしれない。海外にはIndiegames.comがあるが、サイト自体は赤字でGDCで回収するというモデルがあるため成立している」としてインディゲームの情報を集約するためのコストをどうまかなっていくかを考えないと個人の熱意だけで情報を継続的にまとめ続けるのは難しいと指摘。インディゲームのポータルで感想やレコメンドがうまく機能している例としてiPhoneのAppStoreを挙げていました。

情報交換に関して、澤田氏は全ゲ連の活動を紹介。3D時代になってゲーム開発の敷居があがっていることに対し、開発環境や言語、ライブラリがバラバラで教えあいにくいという課題はあるものの、情報共有や新入生向け教育資料等の共有など学校サークルの横のつながりによって対応していきたいと述べています。

■ゲームの規模感について

ごぉ氏が「ひまわり」を制作した際のエピソードとして「パッケージに想定プレイ時間を20時間と書いたらイベント会場で手に取った人から長いといわれた」ことを紹介。同人ゲームの適切なプレイ時間はあるのかと提題した。これについて藤崎氏は、「アドベンチャーゲームでは区切り区切りを作るしかないかも」とし、片岡氏は「ノベルゲームでも短ければ短いほどいいと思う。3時間で満足100と、10時間で満足100なら、3時間の方が偉い。短くて満足してもらえるのが理想」と回答。長氏は「アクションゲームは短ければ短いほどいいと思っている。繰り返し遊ぶ楽しさをいかに作れるかが重要」と述べました。

片岡氏はさらに、「ノベルゲームのプレイ時間について、3時間以上でも短いという人がいる。ストーリーをメインに楽しんでくれている人は短いといわないが、画面のヒロインとの疑似会話としてゲームを見ている人は10時間だろうが20時間だろうが足らないというと思う」とプレイスタイルでの感覚の違いがあるのではと指摘。さらに「ゲームのプレイ時間の進化はおかしい。情報の価値が下がっている状況に、プレイ時間を延ばす方向で対抗している。質で対抗してほしい」とも述べています。


同人ゲームやフリーゲームから商業作品への展開事例も増えてきた中、こうした参入自由なゲーム開発の分野でも、全体的な敷居もあがってきている感がありますが、作りたいという気持ちを形にしていくためのポイントが伝わってくる研究会でした。

SIG-Indieでは、今後、年4回程度の研究会を予定しているとのことです。

《伊藤雅俊》

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