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KPIを意識しないで作った『パズドラ』成功の要因とは? ガンホーNIGHT!!レポート(上)

ゲームビジネス その他

出演者 左から山本氏、飯田氏、森下氏、田中氏、黒川氏
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10月13日、東京都赤坂のサイバーエージェント・ベンチャーズ STARTUP Base Campにて、「ガンホー(突撃)NIGHT!!」と題された「黒川塾 (参)」が開催されました。レコード会社や映画配給会社を経てセガに入社、セガサターンの宣伝広報で活躍し、エンタテイメント業界を渡り歩いてきた現NHN Japan黒川文雄氏が企画運営する「黒川塾」。回数を重ねることで話題になり、第三回目の今回も会場には参加者が早い時間から集っていました。

第三回目のテーマは、「ラグナロクオンライン」や「エミルクロニクルオンライン」などをはじめPCオンラインゲームの提供を行ってきたガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社。当社は「ラグナロクオデッセイ」にてコンシューマゲーム市場に本格的に参入、今年リリースされたスマートフォン向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」(以下「パズドラ」)は大ヒットし、CEDEC AWARDS 2012の最優秀賞を受賞するなど、業界からも高く評価されています。

今回はガンホーからは代表取締役の森下一喜氏、今や時の人となった「パズドラ」のプロデューサーの山本大介氏、さらに当日までシークレット・ゲストであった田中弘道氏がゲストスピーカーとして参加。田中弘道氏は元スクウェア・エニックスの有名プロデューサーでスクウェア初のMMORPG『ファイナルファンタジーXI』を手がけ、現在はフリーランスとしてガンホーの顧問を務めています。

さらに黒川氏の親友であるゲームクリエイターの飯田和敏氏も参加。飯田氏は株式会社グラスホッパー・マニファクチュアで「アクアノートの休日」「太陽のしっぽ」「巨人のドシン」などの個性的なゲームを開発、現在はNHN Japanが提供するLINE向けのゲームとして「イージーダイバー」を準備しています。

トークはまず現在の快進撃に至るまでガンホーの歴史を、社長の森下一喜氏に聞くことから始まりました。森下氏は「ラグナロクオンライン」の成功でガンホーは一気に株式上場を果たし、会社の規模が急激に広がったことを振り返りました。当初は現場の仕事や人事を監督していた森下氏も、徐々に開発や面接を直接行なうことが減り、上場企業の社長として経営に専念することになっていったと言います。

そんな状況について、社内ではある種の「デススパイラル」が発生し、予算や期日の制限が厳しくなり、ゲームのクオリティがどんどん下がっていったといいます。当時を振り返り、森下氏は正直に「駄作が目立つようになってきた」と告白し、ゲームにクリエイターの魂がこもっておらず、プレゼンをされても面白いと感じることがなくなってきたと述べています。個人的にも社長を勤めながらも、仕事が「めちゃくちゃつまらない」ものになり、一時は「辞めてやろうとさえ思った」といいます。

そのように会社経営とゲーム開発の間でくすぶっていた森下氏は、「このままではいけない、ワガママに作りたいものを作ろう」と思い、開発を直轄で監修する体制に変更しました。そこで昨年、森下氏の一存で山本氏を採用、「絶対にヒットさせる」という強い意志のもと開発したのが「パズドラ」だったといいます。

山本大介氏は、ブレインドックやハドソンでゲーム開発を経験し、トレーディングカード形式の「エレメンタルモンスター」シリーズを手がけたクリエイター。山本氏の経験から、ガンホーの森下氏はスマートフォン向けのカードゲームの開発を指示しました。

「パズドラ」の開発過程を振り返り、ソーシャルゲーム全盛期の中でKPIなどの数字にこだわらずゲームが作れたことが良かったと山本氏は述べています。ソーシャルゲームは現在の日本のゲーム産業ではまだまだ成長を続けていますが、山本氏は正直なところKPIなどの指標は「ゲーム開発にとっては邪魔でしかない」と主張しました。最初からマネタイズの仕組みを前提にゲームを作ると同じようなゲームしかできないため、「パズドラ」ではマネタイズは二の次で、とにかく最初は面白いものを作ろうと開発を進めたといいます。

セガでのアーケードゲームの経験から、黒川氏は「パズドラ」の「コンティニュー課金」の部分に強く共感したと述べました。実際に、山本氏はもともとアーケードゲームの開発に憧れていたと述べています。その点からも、昔からあるアーケードゲームにおけるコンティニュー課金というシステムは、「パズドラ」の中にも生きていると振り返りました。

森下氏も特定のプラットフォームに合わせたゲーム開発ではなく、面白いものなら何でも挑戦するべきであると、山本氏のゲーム開発の姿勢を強く支持しています。スマートフォンのソーシャルゲームは日本人のライフスタイルに適しているために、人気が高いという議論がありますが、森下氏は「本当に面白いものなら、ユーザーの生活スタイルも変えてしまう」とゲームの面白さへのこだわりを見せました。

次に話題は「パズドラ」以降のガンホーのスマートフォンゲーム「クレイジータワー」に移りました。「クレイジータワー」は9月にリリースしたガンホーのタワー育成ゲーム。ガンホーの森下氏は、もともとRPGの要素を取り入れたタワー育成ゲームを作りたかったそうです。タワーの一室一室が宿屋や武器屋になっており、RPGの世界観を気軽に楽しめるものを想定しつつ、開発にお題を出したところ、思っていたものとは全然違うものが出来てしまったそうです。森下氏は、最初はその違いに「イラッときた」そうですが、「まあこういう世界観のものもアリかな」と思い結果として採用したそうです。

このようにガンホーの開発では森下氏がテーマを与えることがあっても、基本的には開発の現場から上がってくるアイデアを採用し、それをブラッシュアップすることで制作しているといいます。結局のところ、現場のスタッフが作りたいものを作らないと魂がこもったものにならないため、ボトムアップの開発を行いつつ、その中に自分の好きなゲームの要素を取り入れていくと、森下氏は振り返っています。

山本氏もそのようなガンホーの開発方針に賛同しつつ、「森下さんから無理やり作れと言われたら、そもそもガンホーで働いていない」と述べました。黒川氏はクリエイター主導のガンホーのゲーム開発に感心しつつ、同じクリエイターである飯田氏に話を振りました。

現在はフリーのゲームクリエイターとして、LINE Game向けタイトル「イージーダイバー」を開発している飯田和敏氏。飯田氏は、以上のガンホーのゲーム開発の姿勢に対して、「面白いことをやるには、あまり理屈はない」と賛同を示しました。自身がPlayStationで「アクアノートの休日」を開発していたころを振り返り、そういう情熱がゲームの制作にとっては決定的に重要であることを、飯田氏は強調しました。その一方で、そのような情熱をどうやったら維持できるのかについて、飯田氏はガンホーの森下氏や山本氏に質問を投げかけました。

森下氏は「正直分からない」と応えつつ、実は昔は漫才師を目指していた頃もあり、自身が人を楽しませることが本質的に大好きであることを語りました。そのため、面白さに対するこだわりは人一倍強く、最後まで妥協せず作り続ける重要性を強調し、他方、売れるか売れないかに関しては結果的には運の問題だと応えました。

山本氏も「パズドラ」の開発と運営において、いわゆるマーケティングのような方法論に頼らず、純粋に面白さを追求したことを強調しました。プロモーションにおいても、2月のリリース時ではほとんど行なわず、たまたま面白いと評価してくれたメディアの協力が大きいと振り返っています。また運営に関しては、東京ゲームショウで提案した有料ユーザーと無料ユーザーを区別しない「ポカポカ運営」を意識したと言います(参考:http://www.inside-games.jp/article/2012/09/25/60045.html)。

そもそもガンホーは10年以上に渡って「ラグナロクオンライン」を運営している実績があるため、ユーザーサポートに関しては相当の自身があると言います。それらオンラインゲームで培われたユーザーサポートのノウハウがスマートフォン時代のゲームの運営にも生きているといいます。

一方、コンシューマゲームの開発経験は長い飯田和敏氏からは、オンラインゲームにおけるユーザーとクリエイターの関係の親密さに新しさと共に不安を感じているという意見が述べられました。実際にオンラインゲームはユーザーと運営側が協力して作っていくという側面が強いため、「誰がゲームを作っているのか」について非常に曖昧な部分が出てくると考えられます。

それに対してガンホーの森下氏は、「ラグナロクオンライン」の経験から、オンラインゲームの運営の厳しさと楽しさの両面が語られました。ガンホーでは、ユーザー側とオフラインのミィーティングを重ねることで運営とユーザーの溝を埋めることに力を入れてきたといいます。さらに、「ラグナロクオンライン」では全国各地のユーザーとコミュニケーションを行なうための全国行脚も行ったといいます。そのような手厚いサポートをしながらも、100%の運営をすることの難しさを述べ、他方で全国行脚は社員旅行と呼ばれるほど楽しいものであったことを振り返っています。

そのような手厚いサポートを行なう中で、ガンホーとしては「お客さんがゲームを作っており、ゲームの世界を維持している」という立場になっていきたと森下氏は述べました。ただし、このような関係はゲームの一つのあり方であって、唯一無二の正解ではないことも強調されました。

ガンホーのこのような姿勢に感銘を受け、飯田氏はコンシューマゲーム開発では、どうしても「クリエイターでございます」という意識が根付いてしまうことを指摘しました。飯田氏は個人的な性格においても、お客さんが求めるものだけを作ることに対する抵抗感もあり、オンラインゲーム独自のクリエイター意識の必要性を確認したといいます。

(つづく)
《今井晋》

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