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暗い場所も味方になる! 高級ゲーミング液晶モニターEIZO「FORIS FS2333」レビュー

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暗い場所も味方になる! 高級ゲーミング液晶モニターEIZO「FORIS FS2333」レビュー
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株式会社ナナオが7月13日に発売した23型液晶モニター「EIZO FORIS FS2333」は、ゲームに強いとうたった製品です。今回はこの「FS2333」がどうゲームに強いのか、比較検証も含めて見ていきたいと思います。



本製品については、機能面よりも先に価格を言っておかねばなりません。ナナオの自社通販サイトでは39,800円で、他の通販サイトでは約3万円で販売している店もありました(9月5日現在)。最近は液晶モニターも安くなり、本製品と同じ23型でも1万円強で購入できるものもありますから、その3~4倍もの価格ということになります。

ナナオはPC用のモニターを販売する老舗メーカーですが、実はその製品は伝統的にかなり高価です。同じサイズの他社製品に比べて、2倍、3倍の価格で売られているのが常態です。にも関わらず、ブラウン管の時代から今に至るまで、多くのユーザーの支持を受け続けているのです。支持の理由は、製品の品質の高さです。質実剛健でありながら、先進的な機能も盛り込んでおり、他社にはないオンリーワンの製品を作り続けています。

「FS2333」もその伝統を受け継ぎ、高い基本性能に加え、ゲーム向けの意欲的な機能を盛り込んだ製品になっています。一般的なPC用モニターとの3倍の価格差がどこにあるのか、順番にご紹介したいと思います。


■ 高視野角のIPSパネルを採用

ナナオの液晶モニターにはいくつかのブランドラインナップがあります。一般的なPC用モニターとして用意されているのが、スタンダード仕様の「FlexScan」シリーズ。他には正確な色表現に対応したプロ仕様の「ColorEdge」シリーズなど、特定用途に向けたブランドを展開しています。「FS2333」は、ゲームなどのエンターテインメント向けにデザインされた「FORIS」シリーズの製品となります。

基本スペックは以下のようになっています。

・サイズ : 23型(可視域対角58.4cm)
・パネル解像度 : 1,920×1,080ドット
・パネルの種類 : IPS(ノングレア)
・視野角 : 水平・垂直とも178°
・表示色 : 約1677万色:8bit対応(約10億6433万色中/10bit-LUT)
・輝度(標準値) : 250cd/m2
・コントラスト比(標準値) : 1,000:1(コントラスト拡張有効時 5,000:1))
・応答速度 : 3.4ms(中間階調域)
・映像入力端子 : DVI-D 24ピン×1(HDCP対応)、D-Sub15ピン(ミニ)×1、HDMI×2
・音声入力端子 : ステレオミニジャック×1
・スピーカー : 500mW+500mW(ステレオ)

ゲームユースにおける注目点は、まずIPSパネルを採用している点です。液晶パネルは動作の仕組み(駆動方式)によって、いくつかの種類に分けられます。IPSパネルは、視野角が広く、側面や上下方向から見ても色が変化しにくいという特性があります。

PC用のモニターは、基本的に正面から1人で見るものですから、あまり視野角が重視される製品ではありません。しかし最近は画面が大型化し、画面中央は真正面でも、画面端はそれなりに角度がついた状態で見ることになるため、視野角が狭いと中央と端で色や明るさが違って見えるということもありえます。また家庭用ゲーム機などを接続して複数人で遊ぶことを想定するなら、視野角が広いほうがより快適なのは間違いありません。

それなら全ての液晶モニターがIPSパネルを使えばいい……と言いたいところですが、IPSパネルにも弱点があります。最大の弱点はパネルの価格です。多くのPC用の液晶モニターに使われているTNパネルは、IPSパネルに比べて安価です。TNパネルは視野角が狭く、ある方向から見た時の色変化が激しい(一般的なPC用モニターでは下から見上げる角度)という弱点があるのですが、視野角が問題視されにくいPC用モニターでは、安価で優位性が高いのです。

しかしそれでも、より高い品質を求めたいという人はいます。PC用だけでなく、HDMIで家庭用ゲーム機も接続する場合、モニターを正面からずれた角度で見る状況もありえます。使用者の好みや環境によって、少々値が張ってもIPSパネルの液晶モニターが欲しい、という選択肢は十分にありえます。



■ IPSパネルの弱点である応答速度も改善

IPSパネルにはもう1つ、応答速度が遅いという弱点もあります。応答速度というのは、液晶パネルに映像信号が入力されてから、正しい絵が表示されるまでの時間です。液晶は1/1,000秒単位の世界では、色がじわじわと変化して次の絵を表示しています。とても視認できないスピードですが、実際には応答速度が遅いほど、目には残像感となって映ります。液晶テレビで文字のスクロールが見づらいというのは、これが大きな原因です。

またゲームユーザーにとっては、ほんの少しでも早く映像が表示されることは重要です。応答速度が遅くなれば、自分のゲーム操作に対して画面の表示が遅れてズレを感じるようになり、アクション性の高いゲームや音楽ゲームで違和感が生じます。また対戦型のオンラインゲームでは、一瞬の反応の遅れが勝敗を決めるものもあるだけに、できるだけ表示の遅れがないモニターを使いたいと思うのは当然です。

応答速度は一般的にIPSパネルよりもTNパネルの方が優れており、TNパネルでは1ms(0.001秒)という製品も出ています。しかし先述の視野角の問題から、TNパネルの製品は使いたくないという人もいます。そういう人の希望を可能な限り叶えるため、「FS2333」はIPSパネルでありながら3.4msという高速な応答速度を実現しました。TNパネルで最速クラスの製品には劣るとはいえ、視野角の広さと応答速度を高いレベルで両立できたことは、本製品の重要なポイントです。


■ 暗部を明確に浮かび上がらせる「Smart Insight」

「FS2333」には、ゲーム向けの機能として「Smart Insight」が搭載されています。「Smart Insight」は、夜間や屋内などの暗いシーンで、見えづらい暗部の様子をくっきりと浮かび上がらせる機能です。

この機能は、プロのe-Sportsチーム(プロゲーマー集団)であるFnaticが開発に協力しています。FPSなどの3Dアクションゲームでは、相手をいち早く見つけ、正確にコントロールすることが求められます。しかし敵が暗所で見えづらく、発見が遅れれば負けてしまいます。そこで「Smart Insight」があれば、暗所に潜む敵もはっきりと表示され、状況的な不利を打ち消せるというわけです。

対戦ゲームにおいては便利な機能ですが、1人用のアクションアドベンチャーなどでは、ゲーム中の暗闇は開発者が意図した演出であり、それをぶち壊しにする機能だ……という見方もあるでしょう。「Smart Insight」は随時ON/OFFが可能なので、対戦ゲームではON、1人用のゲームではOFF、と使い分けが可能です。また暗部を見やすくする効果は5段階に調整できるので、ゲームの雰囲気を壊さない程度に見やすくする、といったバランス調整も可能です。

「Smart Insight」の効果を見るため、実際のゲームでテストしてみました。ダークファンタジーのアクションRPG『Diablo III』より、暗いダンジョン内のワンシーンです。通常のモニターだと暗くて先が見えず、不用意に進むといきなり目の前にモンスターが出現したように感じることもあります。

ここで「Smart Insight」をONにしてみると、一番効果の弱い「RTS(LOW)」の設定でも、周囲がぐっと明るくなります。さらにどんどん設定を上げていき、最も効果の強い「FPS(HIGH)」にした時には、画面中に暗いと感じる部分などないくらいにくっきりと表示されました。あまりに効果絶大で、この状態でプレイすると難易度が一気に下がったように感じるほどです。

『Diablo III』で使ったワンシーンのスクリーンショット「Smart Insight」オフ
「Smart Insight」で一番効果が弱い「RTS(LOW)」「Smart Insight」で中程度の効果の「RTS(HIGH)/FPS(LOW)」
「Smart Insight」で一番効果が強い「FPS(HIGH)」「Smart Insight」の威力


また「FS2333」には、超解像技術「Smart Resolution」も搭載されています。超解像技術というのは、解像度の低い映像を機械処理して、高解像度でも滑らかな映像にリアルタイム修正する機能です。テキストアドベンチャーなど2Dベースのゲームで、「FS2333」のパネル解像度よりも低い解像度の場合、ゲーム側で映像を引き伸ばしてフルスクリーン表示することがあります。そうするとキャラクターや文字がぼやけたように見えてしまいますが、それを超解像技術が滑らかな映像に処理するわけです。

「Smart Resolution」は、その超解像技術をゲーム向けのバランスにチューニングしたものです。一般的な超解像技術では、全体的に輪郭が強調されたようなシャープな映像になりがちです。「Smart Resolution」では、人物の肌色を検出して自然な色合いにしたり、文字部分の周辺のにじみを軽減させる設定が設けられており、超解像による見え方の違和感を軽減できます。

こちらも効果を見るため、ビジュアルノベルゲーム『魔法使いの夜』でテストしてみました。こちらはゲーム解像度が1,280×720ドットですが、ソフトウェア側に拡大機能を持っており、「FS2333」のパネル解像度に合わせて引き伸ばし出力されています。まず「Smart Resolution」を入れると、全体に輪郭が強調されたシャープな絵になっていきます。超解像というと、拡大時のジャギー(ギザギザに見える部分)が軽減されるのを想像するのですが、「FS2333」では輪郭強調でジャギーも強調されてしまい、効果的な軽減は確認できませんでした。

次に人物の表現を調整する「肌補正」を入れてみます。輪郭が強調されたために必要以上にコントラストがついてしまった髪が、滑らかで自然な色合いに調整されています。

「Smart Resolution」オフ

「Smart Resolution」で一番効果の強い「5」「Smart Resolution」で一番効果の強い「5」に「肌補正」を追加


さらに文字を自然に見せる「文字補正」も試してみました。こちらは「Smart Resolution」でくっきりとしすぎた輪郭をいくぶん和らげ、とげとげしさがない程度に強調するようになっています。これら2つの補正のほかにも、「Smart Resolution」にも5段階の強度設定があるので、効果を好みのバランスに調整できます。

「Smart Resolution」オフ
 

「Smart Resolution」で一番効果の強い「5」「Smart Resolution」で一番効果の強い「5」に「文字補正」を追加



■ 「表示遅延0.05フレーム未満」の標榜に違わぬ性能

ゲーム向けの液晶モニターを探す際には、先述の応答速度が小さいものが適していると言われます。それは間違いないのですが、実際にはもう1つ見ておきたい部分として、表示遅延があります。

ここで言う表示遅延とは、応答速度とは別のものです。PCやゲーム機から出力された映像信号は、液晶モニターに届いてから、その内部で映像処理を施した上でパネルに表示されます。「FS2333」で言えば、「Smart Insight」や「Smart Resolution」といった機能や、パネル解像度よりも低い映像入力を全体に拡大表示するといった処理です。

映像処理には、機械処理するための時間が必要です。民生用のテレビでは、さまざまな高画質化処理を行なっているため、映像入力に対して0.1秒程度の遅れをもって表示されるものもあります。ただ見るだけのテレビ番組では何ら問題になりませんが、プレーヤーの操作に対する反応が欲しいゲームでは、先に応答速度のところで述べたような不利や不都合が発生します。

「FS2333」では、「Smart Insight」や「Smart Resolution」といった画像処理を行なっていますが、その表示遅延は0.05フレーム未満としています。1フレームは1/60秒(約16ms)なので、0.05フレームは1/1,200秒(約0.83ms)となります。

これに液晶パネルの応答速度である3.4msを足した約4.23ms、およそ0.25フレームが、「FS2333」の入力に対する遅延となります。スペック上では、これは非常に優秀な数値だと言えます。

では実際にどのくらいの実力があるのか、実機で見ていきたいと思います。表示遅延については残念ながら直接的に調べる方法がないので、ここでは一般的なPC用液晶モニターと比較することで、「FS2333」の実力を相対的に測っていきます。

比較に使うのは、筆者が個人的に愛用しているナナオの液晶モニター「FlexScan SX2462W」です。特にゲーム用をうたう製品ではなく、一般用途に向けた製品です。液晶パネルにIPSパネルを使っている点は共通していますが、応答速度は5msとされており、「FS2333」より若干劣ります。ただ「FS2333」の「Smart Insight」や「Smart Resolution」といった画像処理機能は持たないので、その分だけ表示遅延が起こる要素が少ないとも言えます。ゲームプレイにも使っていますが、特に遅延を感じたことはなく、その点では一般的な液晶モニターとして見ていただいていいと思います。

この「SX2462W」と「FS2333」に、同じ映像を表示させて、表示される映像のズレがないかを見ていきます。テストでは2台の液晶モニターを同じPCに接続し、新坂秀敏氏が作成したプログラム「LCD Delay Checker」が動作する様子をハイスピードカメラで撮影しました。なお「SX2462W」はパネル解像度が1,920×1,200ですが、表示解像度を「FS2333」と同等になる1,920×1,080に合わせてテストしています。

まずは最も負荷が低くなるであろう設定として、「Smart Insight」と「Smart Resolution」をオフにして比較しました。タイミングによって誤差は見られますが、「FS2333」の方がおよそ0.5~1フレーム早く表示されていました。


「Smart Insight」と「Smart Resolution」をオフ状態での比較。左が「FS2333」、右が「SX2462W」

続いて、最も負荷が高いであろうと思われる、「Smart Insight」と「Smart Resolution」の両方を最高の設定にした状態で比較しました。今度は先ほどよりやや差が縮まり、ほぼ同じか0.5フレームほど「FS2333」の方が早いという結果でした。


「Smart Insight」と「Smart Resolution」をオン(最高設定)状態での比較。左が「FS2333」、右が「SX2462W」

また映像では、パネルの応答速度の差も見えます。コマ送りにして見てみると、黒い部分が白く光るまで、また白い光が黒に戻るまでのグレーににじむような挙動が、「SX2462W」よりも「FS2333」のほうが早く終わり、キビキビと色が変化するのがわかります。


■ 1フレーム未満の差はゲーマーにとって大きいか?

今回使ったハイスピードカメラは240fpsの撮影で、1コマの単位が0.25フレームとなります。それより短い差は判断が付きませんが、それでも「FS2333」の方が確実に早いということが確認できました。0.5~1フレームの差とすると、時間にして約0.01秒ほどです。これを大きいと見るか小さいと見るかで、「FS2333」の評価が大きく変わります。

これを考える指針として、人間の反応速度があります。人間が何かに反応して体を動かすには、約0.2秒かかると言われています(反射を除く)。画面に光が表示された瞬間にマウスをクリックする、といったテストプログラムを試したことがある方もいらっしゃるでしょう。

筆者はこのテストプログラムで、20歳の頃には平均で0.18秒は出せていました。しかしそれから15年経った今では、0.2秒を何とか下回れる程度です。これはもう人として仕方がないことですが、この15年間で衰えた約0.02秒のうちの半分を、「FS2333」を使うことで補えるのです。もちろん20歳当時の私が使えば、反応速度を0.17秒に高めたのと同等の効果が得られます。そう思うと、なかなかバカにできない数字に思えてきます。

ゲーマーにとって、自分の技術以外のところで勝ち負けが決まるのはストレスが溜まるものです。少ない表示遅延と、暗所にいる敵を素早く発見できることで、相手とのデバイスの差を気にせず勝負に集中できる……それが「FS2333」を手に入れたゲーマーの一番のメリットと言えるでしょう。
《石田 賀津男》

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