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【E3 2012】SOWN入賞作『The Unfinished Swan』、PSN専用ソフトとしてE3に上陸

見た瞬間に世界がまったく変わってしまうような体験を引き起こす、斬新なゲームのデモやアイディアを募集するコンテスト、センスオブワンダーナイト。2008年、来場者の度肝を抜いたゲームがありました。それが『The Unfinished Swan』です。

ゲームビジネス その他
見た瞬間に世界がまったく変わってしまうような体験を引き起こす、斬新なゲームのデモやアイディアを募集するコンテスト、センスオブワンダーナイト(SOWN)。東京ゲームショウの併設イベントです。この2008年度版で来場者の度肝を抜いたゲームがありました。それが『The Unfinished Swan』です。

内容は白一色の3D空間の中で、黒い液体のボールを投げつけながら部屋の輪郭を浮き上がらせていき、ゴールをめざすというもの。内容のシンプルさ、発想の奇抜さもさることながら、どこか誌的な感覚すら覚えるというゲーム体験に、多くの人に鮮烈なメッセージを残しました。

その『The Unfinished Swan』が商用開発され、E3のSCEブースでプレイアブル出展をはたしました。ゲームデザイナー兼ディレクターでは、SOWNでプレゼンテーションを行ったのと同じベン・エスポシット氏。同じようにインディーゲームで高い評価を得た『Flower』と同じ、SCEAサンタモニカスタジオの投資を得て開発が行われました。

なんとSOWNの直後にSCEAからコンタクトがあり、開発費用などの援助を得ながら、3年間かけて創り上げたそうです。 開発メンバーも当初は1人だけだったのが、最終的には12人まで膨らみました。

ゲーム内容はSOWN版と同じく、一人称視点で3D空間内を動き回りながら、液体のボールを投げつけていくというもの。最初のステージはSOWN版がベースで、どこまでも続く白い世界に液体ボールを投げつけながら、ゴールに向かって進んでいきます。

もっとも、これはあくまで導入部。次のステージでは白亜の城に舞台が移りました。目の前におかれた望遠鏡を覗いて倍率を上げると、塔の上になにやら白鳥らしき影が見えます。ここに到達しろってわけですね。了解しました!

城の中を歩き回りながら液体ボールを発射していくと(今度は水色のボールです)、中庭の床をはっていた蔦がニョキニョキと伸び始めました。おもしろくなって、どんどん蔦を伸ばしていくと、壁をつたって上に伸びていくじゃないですか。なるほど、これを伝って上っていけば良いわけですね。ゴールに着くと白鳥が飛び立って行き・・・。いや、思わず引き込まれてしまいました。

これ以外にも液体のボールを当ててスイッチを動かし、壁の扉を開けるなど、さまざまな仕掛けが組み込まれているよう。ベンさんによると、15分くらいで終わるステージが4-5個集まって1つの世界を創り上げていて、それらがさらに複数個あるそうです。この世界では蔦を伸ばすことがゲームの目的でしたが、それぞれの世界でそれぞれのゲームメカニクスが存在するとのこと。このアイディア出しに一番時間がかかったんだとか。そりゃ、先を見てみたくなりますよね!

ちなみにゲームエンジンにはGame Bryoが使用されました。「なんで? 今だとUnityとか、いろいろあるよね」と聞くと、「5年前はUnityはほとんど知られてなかったし、他に選択肢がなかったんだ」とのことです。思えばこの5年間は、全世界でインディーズゲームが急速に拡大した時期だったかも。その渦中にあったゲームだといえそうです。

またSOWNの時は、「つかみはいいけど、遊んでいる内に飽きてしまう。かといって、いわゆる『ゲーム』にはしたくない」と自ら語っていたベン氏。解決策は見つかったのかと聞くと、そこは実際にゲームを遊んでみて欲しいと返されました。冒頭に導入部となるストーリーもついて、どこかしら絵本の中の世界というイメージですが・・・。ぜひ配信後はプレイしてみたいですね。ゲーム本編には一切テキストが登場しないので、ローカライズの手間も最小限ですみそうです。

実際、こういうローカライズ不要のゲーム、言うのは簡単ですが、作るのは非常に難しいんですよ。どうしてもテキストに頼っちゃいますからね。いや、大したモンです。素直にすごいです。一番コストがかからない差別化要因、すなわちゲームデザインの重要性を改めて感じさせられます。

それにしても『Flower』といい、『The Unfinished Swan』といい、サンタモニカスタジオはインディーズに対して良い仕事をしていますね。日本のゲーム企業の皆様におかれても、アンテナの感度を高めていただきたいところです、はい。
《小野憲史》
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