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『アスラズ ラース』スーパーアニメーターが創り出した15.5話誕生の秘密 ― 中澤監督、CC2松山社長に聞く(前編)

ゲームビジネス 開発

2012年2月23日、カプコンから発売されたPS3、Xbox 360用のゲームソフト『アスラズ ラース』が、ストーリー性の重視、独自の世界観で、注目を浴びている。ドラマ性を重視した作品は、制作を担当したサイバーコネクトツーならではの独創性が冴えわたる。

数々の才能が集結して創られた本作だが、3月末から配信が始まったDLC(ダウンロードコンテンツ)がゲームファンだけでなく、アニメファンからも話題を呼んでいる。



配信第1弾の11.5話「あの力はまずい」、第2弾15.5話「青二才が」をこれまでのゲームのリアルタイムCGでなく、手描きのアニメーターによる映像としたからだ。本編の中間エピソードの位置づけだが、そこにはこれまでのゲームと異なったアニメの魅力があふれている。

その秘密はアニメ制作を「マインド・ゲーム」や「鉄コン筋クリート」で世界的な評価を受けるSTUDIO4°Cが担当していることにある。そして、11.5話の監督には大平晋也さん、15.5話には中澤一登さんというスーパーアニメーターを起用している。

およそ10分間のなかに手描きのアニメーションの魅力が満載、驚愕の映像が仕上がった。その制作の指揮を執ったひとり15.5話の中澤一登監督とサイバーコネクトツーの松山洋社長に制作について伺った。




■日本人の作画アニメのクオリティで世界中を驚かせるダウンロードコンテンツ

まず松山社長に、今回のプロジェクトが生まれたきっかけを伺い、中澤監督がそのオーダーをどのように受け取ったかから話はスタートした。

―――まず、なぜ、追加コンテンツがあり、そこにSTUDIO4°Cさんというクオリティの高さに定評のあるアニメスタジオに打診をしたのか、さらに大平晋也さん、中澤一登さんといったスーパーアニメーターを監督に起用されたのか教えてください。

松山洋社長(以下敬称略):もともと『アスラズ ラース』は全18話の物語から成るゲームソフトとしてパッケージで発売しています。その制作を進める脚本の段階から10話と11話の間のエピソード11.5話、15話と16話の間のエピソード15.5話は考えていました。よくテレビアニメで、シリーズ終了後にOVAのようなかたちで話と話の間のエピソードが発売されます。『アスラズ ラース』はテレビアニメやテレビドラマのスタイルを意識していたので、同じようにふたつの話の間を補完するためのエピソードをイメージとして作って行こうという企画がありました。

『アスラズ ラース』全18話分の姿が見えてきた時に、11.5話、15.5話を普通にリアルタイムCGで作って配信する手も当然ありました。ただそれだと普通です。世界中が注目するタイトルになるはずだからもっと面白いことをやったほうがいいんじゃないかと、カプコンの土屋(和弘)プロデューサーと話をしました。

その時に、日本人の作画アニメのクオリティで世界中を驚かせるような作品がダウンロードコンテンツとして相応しいのでないかと考えました。その時に、STUDIO4°Cさんがいいのでないかと話をし、2011年1月に、STUDIO4°Cさんを訪問し「力を貸してください」と話しました。

―――その時に脚本や絵コンテもすでにあったのですか?

松山:それぞれのエピソードはこういう話です。ここに絵コンテもあります、脚本もあります。」と持っていきました。「ただ、これは目安だと思ってください。我々の目的はゲームとアニメの融合で、世界中のユーザーをびっくりさせることです。絵コンテがやりにくいとか、もっとぶっと飛んだことが出来るのであれば、変えていいただいてだいて構いません。」とお伝えしました。
「あとは自由にしてください。」とお伝えしました。


■普通の精度をどれだけ高められるかを追求している(中澤一登監督)

こうして渡された絵コンテ、脚本を、中澤監督はどのように受け取ったのだろうか。

―――そうして絵コンテと脚本を渡されたわけですが、実際に監督は、どう直すべきとまず考えられましたか?

―――中澤一登監督(以下敬称略):いやなかったですね。僕らは当然、ゲームの世界を理解してない状態で制作に入ります。与えられたものを、一番クリアなかたちで作る方法を考えると、絵コンテのとおりが正しいと考えました。ただ、ゲームとアニメの決定的な差はあります。ゲームは60フレームで動かしていますが、アニメは24フレームで動かしているうえに、1秒で使う枚数が8枚だったりします。短いなかへの情報量はアニメがゲームより少なくなります。そのためゲームのコンテはクイックに切られている箇所が何か所かありました。この尺(長さ)でアニメをやると原画が2枚か3枚しか入らないとか、そうした部分は尺を伸ばしたりしました。

もう一方を大平さんがやられることは分かっていましたし、大平さんが相当カロリーの高いことをやると思っていたので、同じことをやると現場が混乱するだろうというのもありました。

―――中澤監督のやりかたはどういったものになるのでしょうか?

中澤:今回のような仕事の仕方は初めてでした。今回はコンテも描いていないし、作画監督も別のかたでした。演出だけの仕事は二十何年やっていて初めてです。そうした時に与えられた材料のなかで一番よい調理をするのは、まず、普通に作ることです。今回のコンテはわりとオールドスタイルで、僕は正直それがいいと思いました。古い東映アニメーションさんの作品の感じです。変ないいかたをすれば暑苦しい。それが全然嫌でない。とても好感を持ちました。そのコンテが要求しているものを普通に、普通の精度をどれだけ高められるかということでした。

―――普通というのは具体的にはどういったことを指すのでしょうか?

中澤:『アスラズ ラース』という世界観も、ゲームも見た時に面白いと思いました。それに自分の何かを加えるのは当然求められていると思いました。
一方で、普通の精度を極限まで上げたい。求められているものを徹底的に追及したいとここ数年間追い求めていました。アクションでもそうです。極限までギリギリの普通をやりたい。

そのカットが要求しているものがあって、それ以上のものを作りたくないんです。それ以下は当然問題外ですが、そのギリギリの部分をやりたい。そうなった時に初めて、『アスラズ ラース』のストーリーが安心して観られるのかなと思いました。

―――普通というのは、自分を殺すことになりませんか?

中澤:自分を殺すとか、活かすという発想自体がなくて、観ている人が楽しければいいんです。絵だけに目にはいって話がよく入って来ないというのはやって欲しくない。終わった時に苦労のしがいがあったという仕事がしたいですね。

―――今回はやりがいがあった仕事と考えていいのですか?

中澤:続いたということではそうですね。作監(作画監督)をやってくれた秋田君という新しい才能とも知り合えましたし、後悔はないですね。大変だなというのはありましたけれど。

―――大変だったのはどういったことですか?

中澤:スケジュールが大変だったかな。(笑)間に合うかなって。(笑)あとは媒体がゲームなので、なんとかそこは外さないように考えました。


後編に続く!


■中澤一登 (なかざわ・かずと)
作画・演出の両面でセンスの良さを発揮する「才人」。洗練されたシャープな作風で、美形キャラのデザインからアーティスティックな短編まで幅広くこなし、完成度の高い快作を次々に放っている。渡辺信一郎監督のTVシリーズ「サムライチャンプルー」では、キャラクターデザイン・総作画監督を担当し、各話の絵コンテ・演出などでも作品を支えた。「キル・ビル Vol.1」でアニメパート監督を務め、LINKIN PARKのPVを監督するなど、その才能は海外からも熱い注目を集めている。 1969年生まれ、新潟県出身。東京アニメーター学院卒業後、マジックバスを経てフリーに。90年代後半に印象的なOP・EDなどを多く生み出し、鮮烈な映像感覚が注目を集めた。また、キャラデザイナーとして「課長王子」「明日のナージャ」などを手掛け、イラストレーターとしても活躍。01年、STUDIO4°C制作の短編シリーズ「スウェットパンチ」の1編「COMEDY」で監督デビュー。劇場オムニバス「Genius Party Beyond」では「MOON DRIVE」を監督を務めた。
《アニメ!アニメ》

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