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【CEDEC 2011】山あり谷ありのソーシャルゲーム開発 ― 『100万人の信長の野望』誕生秘話

ゲームビジネス 開発

『100万人の信長の野望』はコーエーテクモゲームスの看板歴史シミュレーションゲーム『信長の野望』ブランドの最新タイトルにして同社初のソーシャルゲーム。現在Mobageにて提供されており170万人以上ものユーザーが毎日プレイしています。しかしその開発には多くの苦労があったとか。コーエーテクモゲームス ネットワーク事業部 副事業部長の藤重和博氏がその誕生秘話を語りました。

『100万人の信長の野望』は2010年8月26日よりMobageにてサービスを開始した歴史シミュレーション・ソーシャルゲーム。ユーザーは戦国大名に仕え、自分の領地を開発してアイテムを生産したり、合戦に参加して勢力を拡大させたりしながら天下統一を目指します。

サービス開始から約2ヶ月後にタイトルどおり100万ユーザーを獲得し、2011年1月にはPC向けプラットフォームのYahoo!モバゲーでもサービスを開始。そして先月からはスマートフォン対応も開始し携帯・PC・スマートフォンと全てのプラットフォームで遊べるようになりました。

そもそも同タイトルの開発プロジェクトが発足したのは、リリース日より約1年さかのぼる2009年の秋。当時は同社の携帯向けコンテンツが伸び悩んでいおり、その状況を打開するため、当時1400万ユーザーを有していた「モバゲータウン(現Mobage)」にてモバイルにおけるMMOシミュレーションゲームという新ジャンルに挑戦しよういう企画が立ち上がったとのこと。

ちなみに『信長の野望』のMMO版である『信長の野望Online』のユーザー比率は女性1割で男性9割。パッケージ版の『信長の野望・天道』に至ってはほとんどが男性。またユーザーの年齢分布では10代の若年層はほとんどおらずメインは20代・30代の大人。そこでらソーシャルゲームでも大人の男性をターゲットに設定したそうです。


なお、企画の初期構想では「100万人規模のユーザーの”煽り合い”・集団での協力戦」でソーシャル性を出し、「天下統一という目標を1サイクルとして繰り返す」ことで継続性を生み出し、「魅力的な武将で訴求」し課金によるマネタイズを実現する予定で、藤重氏によれば「”100万人の”信長の野望というタイトルは初めから考えていた。信長の野望のユーザーは歴史・戦国好き。また自分の地元の武将を応援するような地域への帰属意識がある。それをキーに多数のプレイヤーが”勢力”ごとにぶつかり合うことをイメージしていた」とのこと。しかし実際に社内テストを行ったところ散々な評価を受けたそうです。

まず”100万人で遊べる”といっても、社内テスト環境ではテストする人数が100人程度と限られているため多人数コミュニティを実現することが不可能。そのため煽り合いや集団戦の面白さを実証することができず評価はボロボロ。さらに最初から数ヵ月で天下統一し完結するサイクルでシステムを作っていたため、短期間のテストではその面白さを伝えることができなかったとのこと。

そこで藤重氏らは数ヵ月をかけてプランを修正。まず分かりやすい交流要素を導入し、友達のところに行くと「兵」や「お金」が増えたり、「一門」(サークル)に入るとゲームが有利になったりという「友人間交流による特典」を新たに加えました。藤重氏は「今なら絶対落としてはいけないポイントだが、当時は『怪盗ロワイヤル』すら出ていない頃だったので分からなかった。これらを思い付くのに本当にに苦労した」と”ソーシャル性”をシステムに加える難しさを語りました。

さらに継続性についてもで天下統一の目標とは別に短期で達成できる小~中目標を設定。ゲームが続くにつれて新しい建築物が登場する「箱庭を築く楽しさ」を取り入れ、稼いだ仮想通貨で視覚的にも楽しめる要素を追加。実際パッケージ版の「信長の野望」も一時期伸び悩んだ時期がありましたが「箱庭」要素を加えたところ新しいステージに上がることができたそうです。

さらにボス攻略戦や段階的な武将収集などユーザーのモチベーションを高められるシステムも実装。氏曰く「無料ユーザーは5分でゲームをやめる。パッケージ版でも”最初の15分が大事だ”と言われているがソーシャルゲームはもっと短い。だから画面の遷移数を減らしたりテキストを少なくするなど短時間でゲームの面白さを体験できるようにすることが重要」とのこと。実際開発中はテキスト量をいつも現状の半分にするよう心がけていたとのこと。

そして計3回もの社内検討会を経て、ようやくリリースへと漕ぎつけたところ・・・

当初ターゲットに設定していた30代男性のユーザーの比率が減り、女性ユーザーが増えて10代のユーザーもオンラインゲームの倍近く獲得できたそうです。またマネタイズの部分では、武将獲得のコレクション要素と武将所有枠を連鎖させるシステムが功を奏し「新しい武将を加えるたびに枠が売れた」ほど大成功。当初社内ではこれがなかなか理解されず「タイトルを50万人にした方がいいんじゃないか」とまで揶揄されたそうですが、マネタイズが成功してからは「100万人の信長の野望」を巡る空気は一変したとのこと。

しかし藤重氏によればそれでもまだ課題は多いとのことで、「最初から武将の合成システムを実装しておけばよかった。またプレイサイクルの構想が不完全だったため回復アイテムなどの消耗品の売れ行きがいまひとつ」と反省点を挙げました。

また最初から様々な要素を入れ過ぎてしまったためソーシャルゲームとしてシステムが複雑化。ユーザーにとっては敷居の高いタイトルになってしまい、運営側も分析が難しくなったそうです。藤重氏「複雑なゲームシステムは運営が難しい。定額制のオンラインゲームなら最初に面白いものを作れば基本的に”売れる”。しかしソーシャルゲームはそうはいかない。日々運営・分析し改善していなかければならない。現在も変化をつけるためのイベントの量産が追いついていない」と、これまでのオンラインゲームとは違うソーシャルゲームの運営の難しさを語りました。

なお、こうしてソーシャルゲームに取り組んだこともありコーエーテクモゲームスは社内の組織も大幅に変更したとのこと。もともとコーエーとテクモが合併したことによりスタッフ数だけでなく部の数も急増していましたが、動きの早いソーシャルゲームに取り組むには組織をスリム化して社内のスピード感を向上させることが必須です。そこで同社では2010年10月に部の数を減らして組織編成を変更。藤重氏は何度も「ソーシャルゲームはとにかくスピードが要求される。これからは会社そのものも迅速な対応を可能とする組織作りをしなければならない」と語り講演を締めくくりました。
《籠谷千穂》

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