ValveはFPS(一人称シューティング)『Left 4 Dead』の続編である『Left 4 Dead2』を発表しました。通常、続編はファンにとって喜ばしいものですが、これを拒否する不買運動が参加者を伸ばしています。
『Left 4 Dead』はオンライン配信システムSteam上でプレイヤー同士のマッチングやアップデートの配信が行われているのですが、そこで「L4D2 Boycott」というコミュニティが設立されました。
『Left 4 Dead2』の発表を受けて6月1日に作られた「L4D2 Boycott」は12日で28242人が参加。『Left 4 Dead2』を単体の新作ソフトではなく『Left 4 Dead』の無料バージョンアップもしくは拡張版としてリリースすることを要求しています。
1日平均、約2000人が参加していることになる「L4D2 Boycott」には、『Left 4 Dead』のウリとなる部分が深く関わっています。『Left 4 Dead』は最大4人のプレイヤーが協力してゾンビの群れから脱出する、協力系FPS。新作が発売されることでプレイヤーが分断され、協力者が見つけづらくなるとするのが「L4D2 Boycott」の懸念です。
ValveのプレジデントであるGabe Newell氏は、新作が出ても前作へのサポートは続けていくとコメントしています。
普通のゲームであれば新作が出ても旧作を遊ぶのに支障はありません。しかしオンラインゲームではそうではありません。今回の不買運動はオンラインゲームの文脈で捉えられなければならないでしょう。「L4D2 Boycott」とValve、どちらの言い分ももっともです。『Left 4 Dead2』は前作から1年で発表されますが、これを「短い」とするのが「L4D2 Boycott」であり、「そうでない」と考えるのがValveです。では、メーカーはいつまで旧作をサポートすればよいでしょうか。ゲームの勢いは基本的に時間と共に衰えていき、売上も減っていきます。『Left 4 Dead』の多人数プレイは無料です。時間が経てば経つほどプレイヤーの対費用効果は上がり続け、メーカーのそれは下がっていきます。二つのグラフが交わらなくなったところ、それが旧作サポートを終了する現実的な線でしょう。しかし、万人が納得するサポート終了はまずあり得ないでしょう。悲観的な見方をすれば、オンラインゲームにおいて、あらゆる続編は望まれていない、のかも知れません。
「L4D2 Boycott」は安定したコミュニティと多人数プレイの存続を望み、Valveは新作による拡張効果を望みます。平行線を辿りかねないテーマですが、プレイヤーコミュニティの形成に努めその支持を受けてきたValveですから、とことんまで議論を続けなければならないでしょう。希望はValveが「L4D2 Boycott」を閉鎖していないことにあります。自分のお膝元で起こっている不買運動ですから快くはないでしょうし、何らかの理由をつけて閉鎖させることは可能でしょう。しかし、Valveはそれをしていないのです。
これは日本メーカーにとっても対岸の火事ではありません。続編や拡張パック、ファンディスク、アニメ版や映画版への不買運動が起こらないとも限りません。ユーザーの声のどこまで答えて、どこから答えないのか。この不買運動から学ぶべき所は大きいのではないでしょうか。
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