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オンラインゲーム広告と「ネット広告」の違いとは 〜アドバゲーミング横地氏インタビュー

日本オンラインゲーム協会のゲーム広告分科会が本格的に動き始めています。そこで、インサイドではこの分科会のキーパーソン3人にインタビューを行いました。

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オンラインゲーム広告と「ネット広告」の違いとは 〜アドバゲーミング横地氏インタビュー
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日本オンラインゲーム協会のゲーム広告分科会が本格的に動き始めています。そこで、インサイドではこの分科会のキーパーソン3人にインタビューを行いました。

まずトップバッターとして、ゲーム広告を専門に扱う「アドバゲーミング」代表取締役社長の横地潤氏に、ゲーム内広告の現状と将来、2006年8月のアドバゲーミングの立ち上げからこれまでを聞きました。



―――ゲームと広告ということでは、野球ゲームやレースゲームの「看板」に始まり、最近ではオンラインゲーム内での広告が注目されてきています。アドバゲーミングが対象としているのはどういったプラットフォーム・ジャンルになるのでしょうか?

基本的には全方位ですが、オンラインゲームの方がゲーム内広告に向いていると考えています。魅力のあるプラットフォームですね。

―――アドバゲーミングが設立されて1年になりますが、これまでを振り返って、予定どおりだったところ、違ってしまったところはどういった点になりますか?

うーん、予定どおりじゃない面は、スピード感ですね。ゲーム会社さんに広告を商品化してもらうスピードも、代理店・広告主に話をしてのスピード感も、どちらも遅かった。

―――その原因は?

(ゲーム広告そのものの)魅力がないわけではない。期待感は高いんです。でも、踏み込めなかった。

ゲーム会社さんとしては、通常のゲームの運営のなかで、収益はでていますし、何よりも優先すべきは対ユーザーサービスですので、広告は二次的な位置づけとなります。

広告代理店についても、無から有を生む段階であり、「どうなるのか」という実体、実例がない状態。だから「どこかでやってみせてよ」、という話が多く、一番手より2番手を望んでおられる面があります。

でも、日本オンラインゲーム協会ができて、ゲーム内広告分科会ができた。議論したいトピックについて分科会化しているので、創設直後にゲーム内広告の分科会が立ち上がったのはニーズの高さを示しています。

これまではゲーム会社と代理店、広告主がそれぞれ個別でつながってた。この点と点のつながりが、協会という場で面でつながるようになった。このことは、協会に入っていない会社にも波及していくと思います。

―――オンラインゲームは、最大のメイプルストーリーでも160万アカウントで、ゲームによっては数千〜数万アカウントというものも少なくありません。この数では、ゲーム内広告をマス媒体として立ち上げるのは難しいのではありませんか?

この分野は「ゲーム内広告」と一言でくくられていますが、3つにカテゴリを分けて考える必要があります。まず1つ目は「インゲームズアド」、ゲーム内に広告枠を設置して、アドサーバから配信するもので、これはウェブサイトでの広告に似た概念です。2つ目は「インゲームズプロモーション」。量も大事だけど、広告主とクライアントの距離を縮めるようなもので、MMORPGでいえば世界観を壊さないようにしつつ企業色のついたクエストを展開するといったバーチャルプロモーションです。3つ目は「アドゲーム」で、これは広告をゲーム化する手法です。広告のためのゲームを作るわけです。

多くのゲーム会社が当初イメージしていたのは、1つめのインゲームズアド的なものです。でも、日本の広告主は数の論理があればいいとは考えていません。そこに広告が出ている必然性を、(ゲームのプレイヤーだけでなく)広告主も見ています。

オンラインゲームで流行っているのは、ファンタジーや萌えなどに偏っていて幅はあまり広くない。広告必然性がそこにあるのか?うざいと思われるのではないか?アメリカ型のインゲームズアドが日本の広告市場にそぐうのか?という疑問はあります。

ゲーム内広告によって、ブランディングをしたり、消費者との距離感を縮めたいとなると、ナショナルクライアントがゲーム内広告の広告主になるでしょう。そこで、2番目のインゲームズプロモーションの方が注目されています。

そこで、まずはインゲームズプロモーションを確立して、数で押す「インゲームズアド」はその後の話だと考えています。

―――アドバゲーミングとして、分科会でどういったお話しをされるのでしょうか?

インゲームズアドとインゲームズプロモーションを両方見ていきましょう、ということですね。

ではインゲームズプロモーションをどうやっていくのか。まず、おのおののゲームがどういうものを提供できるか、技術的に可能なのかを、会社毎・タイトル毎に話していく必要があります。簡単にできるところもあるでしょうし、コストがかかるものもあるでしょう。システマチックじゃないところも出てくるでしょうけど、踏ん張らないといけない。

数の論理でリーチだけを追い求めるのではなく、世界観とマッチしたプロモーショナルな広告手法、浸透度の高い広告手法だという位置付けにしなければいけない。「100万人ではなく30万人だけど、浸透度が垂れ流しメディアよりも高い」というのを目指すわけです。

ニッチメディアといえばニッチメディアですが、マス広告のテレビ依存からの脱却という動きが出てきています。たとえば最近、屋外広告、交通広告の重要性がいわれていますが、これは移動の時間の長さを狙ったものです。日本のエンターテインメントでは、ゲームの時間が長い。オンラインゲームは2〜3時間、コアなら5時間を超える人もいるでしょう。コンソールでも1〜3時間遊ぶとなると、テレビを1日に見ている時間よりもゲームやってる時間が長いという人もかなりいるはずです。ゲームプレイヤーの広告マーケットをきちんと見る必要があります。

―――オンラインゲームでは、フルスクリーンで動くものも多くありますし、そもそもゲームを遊んでいる最中にブラウザで何かするとは考えにくい。ネット広告に求められるコンバージェンスを、オンラインゲームはさせにくいのではありませんか?

ゲーム広告はネット広告だと思われがちですが、まったく質が異なるものです。効果測定などの考え方は取り入れていかないといけないとは考えていますが、CTRやクリック単価といったネット広告の指標ではない、別の指標作りをしなければいけない。ゲーム内で看板をクリックさせるというのは本末転倒で、もっとプロモーショナルなことをすべき。買ったことが指標ではないはずです。エンゲージメントという考え方が出てきていますが、分科会でもそういう提示をしていきたいですね。インゲームズアドだけではないという啓蒙がそれにつながってくる。

インゲームズアドだけを見ていると、ゲーム広告は単なる補完媒体になりかねない。インゲームズプロモーションは別の機能を持つはずです。

―――セカンドライフについてはどう見ていますか?日本では、一時の盛り上がりが落ち着いてきたというか、セカンドライフバブルがはじけそうな雰囲気もあります。

ゲーム広告のスピード感がないところに、セカンドライフが出てきて事例が非常に大きく取り上げられたというのはありますが、われわれにとってセカンドライフはワンオブゼムでしかありません。

セカンドライフは、将来性を別にしても、現状、数の論理はありません。ただし、クライアントはその世界を体感しています。今後ゲーム広告を展開するにあたって、セカンドライフをやった人、セカンドライフを検討した人が増えたことの効果は大きいですね。

セカンドライフの場合は北米企業の広告の実例があったので、日本企業もとびつけたのでしょう。セカンドライフだけじゃないことは、年明けぐらいから実感として目に見えるようにしたいですね。

―――なるほど。では逆に、ここまでの1年で目に見える実例がなかったのはなぜですか?

最初を、大型のタイトルでやりたいと言うことにつきますね。オンラインゲームというものの世間的な認知度を考えるとまだまだ低い。となると、代理店がアピールしても、乗ってくる広告主がなかなか出てこないわけです。出だしに関しては知名度が大事になるわけですが、大型タイトルほどゲーム会社としては大事で、そこの葛藤がありました。

一方で、オンラインゲーム会社もマスを使った訴求を始めています。ネクソンさんがプロモーションでTVCMを流しましたが、こうした中で、一般的な認知も進むでしょう。

また、コンソールとオンラインの接点も出てきます。ガンホーさんがラグナロクオンラインをDSで出しますが、これによる市場への影響は大きいと考えています。ラグナロクオンラインのすごさをDSで体感する人も出てくるでしょう。SCEのPLAYSTATION Homeも思っている以上に気合いが入っているようなので、その動向は見ていかなければいけません。

怖いのは、メタバースという言葉ですね。「メタバース的なものがおもしろいね」となってきたときに、「ゲーム内広告=メタバース」というイメージが付くのは避けたい。メタバースとゲームではバーチャルプロモーションの区切りが違います。メタバースには決められたルールもほとんどなく世界観の創造から可能ですが、インゲームズはゲームごとのルールと世界観があるゆえの独自の価値があります。
いずれにしても、広告のある必然性という軸をぶらさないことが重要ですね。

―――ありがとうございました。

第2回は電通 黒崎裕行氏のインタビューを掲載予定です。
《伊藤雅俊》
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