衝撃を受けたゲーム音楽。ゲームからではなくアニメからの影響も
もぐ水:では、衝撃を受けたゲーム音楽やサウンドトラックについてですが、私は冒頭で述べた自己紹介と繋がるんですが、やっぱり『Hotline Miami』をプレイした時に衝撃を受けましたね。ゲームの内容自体も衝撃だったんですが、何回もリトライして遊ぶ作りなこともあって、音楽が耳に残るように作られてるんです。
そこで「こんなカッコいい曲があるんだ」と驚きまして。ジャンル的には「シンセウェーブ(Synthwave)」という80年代の映画音楽やビデオゲームに影響を受けたものがメインになっています。『Hotline Miami』は暴力がテーマになっているんですが、それと合わせたようなクセになる音楽や、激しい音楽も使われていて、自分はそういう音楽に当時あまりアクセスしてこなかったのもあって、本当に感銘を受けたんですよね。
タキトウ ハル:めちゃくちゃいいゲームですからね。「シンセウェーブ」や「ヴェイパーウェイヴ(Vaporwave)」【※】を取り扱ったインディーゲームって、有名なものだと『VA-11 Hall-A』とかがありますけど、元のジャンルにある資本主義下の退廃的な性質を上手く使っているなと思いますよね。
※ヴェイパーウェイヴ 2010年代初頭にインターネット上で生まれた音楽・視覚表現のジャンル。1980~90年代のポップスや商業音楽を加工・再構築し、懐古的で非現実的な雰囲気を生み出す。消費社会への風刺的な要素も持つ。
文章書く彦:『Hotline Miami』の1年前にあった「Drive」というニコラス・ウィンディング・レフン監督が撮った映画があるんですが、そこでKavinsky(カヴィンスキー)さんという方のめちゃくちゃ古臭いシンセウェーブが使われたんですよね。その映画もハードな暴力表現を扱っていて、ちょうど時代として2010年代ってシンセウェーブを復活させよう、盛り上げようっていう文脈があったんですよね。
もぐ水:実際、『Hotline Miami』は「Drive」の影響を強く受けてますもんね。私は1,2どちらも大好きなんですが、1は1つの曲を3つくらいのステージで使っていたのを2はステージごとに曲を変えていて、それがストーリーともマッチした音楽でいいんですよね。『Hotline Miami』のサントラって必ずしも全部がゲームのために書き下ろされた曲ではなく、元々あった曲も使用しているんですが、それにも「こんなに合った音楽を持ってこれるなんて凄いな」と感心しました。

特に1作目の「Miami Disco」という曲は他と比べてドラマチックな曲で印象に残りやすいんですよね。ディスコで戦うシチュエーションも合わさって、あまりの格好良さに痺れたというか……。これは自己紹介の時にあげた「Sexualizer (feat. Flash Arnold)」と同じPerturbatorというアーティストが作曲しています。
あとは2作目をプレイしたことがある方は100人中100人が好きであろう「Roller Mobster」という曲ですね。これはシンセウェーブの中にあるサブジャンル「ダークシンセ(Darksynth)」という重く暗めのものにあたるんですが、超攻撃的でノリノリな重いサウンドが格好良すぎる。こちらもCarpenter Brut(カーペンター・ブリュット)という有名なダークシンセアーティストの曲なんですが、『Furi』というアクションゲームにも曲を提供していて、どれも最高です。
好きなサウンドトラックというと沢山あるんですが、一番衝撃を受けたという点ではやっぱり『Hotline Miami』が大きいです。
タキトウ ハル:衝撃を受けたというと色んなベクトルがあると思うんですが、曲が単純にめちゃくちゃ好きだったのが『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』のサウンドトラックですね。90年代の終わりにゲームでこういうサントラが作られたんだ、という衝撃が私の中でありました。

タナカハルカ:あれはマジでカッコいいですよね。
タキトウ ハル:やっぱりストリートで戦うというテーマにすごく沿っているなと思っていて。というのも、各キャラクターごとにストリートを背景にしたフィールドがあって、それに合わせた曲が流れるんですが、世界各地のフィールドがある中でそれぞれの地域性やそのキャラクターのエスニシティに合わせた楽曲のジャンルが割り当てられているんです。ただ、そこで通底しているのが「ダンスミュージック」なんですよね。
当時流行っていたジャングル【※】やドラムンベース【※】、そのほかにもレイヴ【※】っぽいサウンドやテクノ的なサウンドがいろいろある中で、その時ちゃんと現代的だったものが流れていて、「ちゃんと若者のゲームだ」と思って、それがすごく嬉しかった記憶があります。
※ジャングル 1990年代初頭にイギリスで生まれた音楽ジャンル。高速なブレイクビーツとレゲエ由来の低いベースが特徴。
※ドラムンベース ジャングルから発展し1990年代中頃に定着した、テクノやジャズなど幅広い音楽と融合したダンスミュージック。
※レイヴ 1980年代後半にイギリスで広まった、倉庫や野外などで夜通し行われるダンスパーティー、およびその文化や音楽。アシッド・ハウスやブレイクビーツ、テクノなど多様なジャンルが流れた。
あとは単純に音がすごくカッコいいですね。いぶきの「Ibuki Stage -TWILIGHT-」と豪鬼の「Gouki Stage -KILLING MOON-」がお気に入りです。
タナカハルカ:豪鬼ステージは僕もめっちゃ好きで、ジャングルに和物を組み合わせる格好良さが超素晴らしい。1つのジャンルをベースにして国ごとの音楽を取り込むっていうのは『ストII』から最新作まで一貫してて面白いですよね。一発でどこ出身か分かるっていう「分かりやすさ」を突き詰めてて。
タキトウ ハル:特に『3rd STRIKE』については紋切り型じゃないところが良いですね。例えば中国だったら春麗の「Chun-Li Stage -CHINA VOX-」で、スケールとか楽器の音色で中国っぽさをアピールしよう、って感じでなく自然にモダナイズされている。
あとはユン・ヤン兄弟という香港のキャラクターのステージ曲「Yun & Yang Stage -CROWDED STREET [Third Edit]-」では冒頭に「007」のテーマ曲がサンプリングされてるんです。香港ってイギリス文化や植民の影響が強いのもあると思うんですが、それをこうやって曲で表現するんだ、という格好良さが好きですね。

話が長くなってしまうんですがもう1つ、『サルゲッチュ』のサウンドトラックを寺田創一さんというダンスミュージックでかなり有名な方が作っているんですが、とにかくカッコいい。あんな可愛いゲームにこんな曲が流れるんだ、という嬉しさと衝撃を受けました。
Skollfang:衝撃を受けたというテーマですと、クラシックから見て3つほどありまして。1つは『ドラッグオンドラグーン』の1作目。2つ目は『無限回廊 光と影の箱』もう1つは最近の作品で、『ファイナルファンタジーVII リメイク(以下、FF7 リメイク)』と『FF7 リバース』の2つですね。
『ドラッグオンドラグーン』の1作目といえば、めちゃくちゃ鬱な内容の問題作と言われているんですが、その演出に欠かせないのがこのクラシックを切り刻んだ楽曲なんですね。録音したものを改めて切って再構築する、という形のものなんですが。
普通クラシックのアレンジというと、ビートを出したり音を足したりするんですが、これはあまりそのようなことはせず、クラシックの音だけで非常に身の毛もよだつような不快感をよく出せたなあと。元々「春の祭典」はものすごい曲ではあるんですが、それを更にまぜこぜにしたらこんな滅茶苦茶になるのかという衝撃がありましたね。
2つ目の『無限回廊 光と影の箱』はゲームのサントラとして変わっていまして、こちらはパズルゲームなので「パズルを解くのにちょうどいいBGM」ということで、第1作『無限回廊』ではドラマ性などはあまりないんですね。非常に淡々としたサウンドになっています。
2作目のこちらは1曲でCDを丸々いっぱい使っていて、「世界で一番長いゲーム用書下ろし楽曲」としてギネス記録にも認定されてるんですよね。1分を人生の1年として表現し、作曲家としては非常に自由なフィールドだったという点で、これはすごく特殊な曲だと思います。
最後に『FF7 リメイク』についてですが、これはクラシック音楽でいうところの「楽劇」にあたります。ワーグナーの「ニーベルングの指環」は、序夜と3日間に相当する全4部で構成され、上演時間は合計約15時間にも及ぶ大作ですね。
すぎやまこういちさんもドラゴンクエストの音楽について語る際にこの「楽劇」という概念に言及していましたが、これはキャラクターごとにテーマ曲、いわゆる「ライトモチーフ」を設定し、そのキャラクターが登場した場面でそのテーマを流したり、心情に応じて明るくしたり暗くしたりとアレンジを変えていったりする手法です。
『FF7 リメイク』は、この作品の全編にわたってライトモチーフの手法をやり切りました。これは今のゲームではなかなか実現できないことです。
そうした点を踏まえても、クラシック音楽の系譜から見てこれは非常に素晴らしい業績だったと言わせていただきます。なので、私は『FF7 リメイク』はすぎやまこういちさんの流れを汲んでいるのだと思います。

タナカハルカ:衝撃を受けたサウンドトラックが2つあってどちらを話そうか迷うので、一応両方紹介します。まず一つは、PlayStationの『Rez』。Oval【※】やケン・イシイ【※】などが楽曲を提供した超テクノ最高サウンドトラック。
※Oval ドイツの電子音楽プロジェクト。1991年に結成され、のちにマーカス・ポップのソロプロジェクトとなった。傷つけたCDの音飛びを素材にノイズや断片的な音を組み合わせる手法で「グリッチ」と呼ばれるジャンルの先駆者とされる。
※ケン・イシイ 日本のテクノミュージシャン、DJ。ベルギーのレーベルからデビューし、ヨーロッパを通じて世界的に評価された。2020年の『パックマン』40周年を記念して、2019年に公式テーマ楽曲「JOIN THE PAC」を手がけている。
ただ、これについては語り尽くしているので、今日話したいのはもう1つ、インディーゲームRPGの『Super Lesbian Animal RPG』です。RPGツクール系の作品で、3~4年前くらいの比較的最近のタイトルなんですが、この作品の「Star Power」という曲を聴いた時大感動して。
『Super Lesbian Animal RPG』は獣人をモチーフにした4人の主人公がいて、それぞれにテーマソングが作られているタイプのサウンドトラックなんですが、その中でも破れたジーンズを履いたパンクっぽいウサギのキャラクター「アリソン」のテーマソングが「Star Power」というポップパンクの曲で。これが本当にリフもメロディーもずっと良くて、もうあえて言うけど元気が出るんです。
今日は一貫して歌モノやバンドっぽい楽曲について話してきたんですが、その中でもこれは金字塔的作品と言えるくらい良くて。タイトルに「スーパーレズビアン」とあるように、この作品はレズビアンのキャラクターがテーマになっているんですが、それを考えるにあたって「スティーブン・ユニバース」以降の作品に位置付けられるんですね。「スティーブン・ユニバース」もパンクやエモの曲をとても効果的に使った作品なので。
あと、ゲームとパンクロックを考えるとAnamanaguchi(アナマナグチ)もいるじゃないですか。NESやゲームボーイを使ったチップチューンロックバンドとして有名なこの分野の先駆的なバンドで、今年の12月に来日するそうなんですが、その系譜の曲としても取れるという。歴史で言えば、もう10年、15年は続いている流れですね。
カートゥーンを通して個人的なテーマを描く中で、エモっぽいパンクを使うという手法は00年以降のカートゥーンの世界でずっと行われてきたことなんですよね。それをゲームの中でここまでクリティカルにやり切った曲はなかなかないと思います。
『Super Lesbian Animal RPG』自体は絵柄もスーパーファミコンのようなドット絵でかなりレトロ系の作品で、そこにシャキシャキとハキハキした生々しい音のパンクの曲が流れてくる。ちょっとした奇妙さもありつつ、爽やかさも感じさせるんです。

僕はもともとポップパンクが好きなんですが、ゲームの主題歌などでポップパンクが使われることはあってもBGMとして途中でサッと流れる楽曲にここまでクオリティの高い、まっすぐなポップパンクを使うというのはあまりなかったので、体験としてすごく面白かったです。だからこそ、僕はこの曲が好きです。
もぐ水:初めて知ったゲームと曲だったんですが、すごくいいですね。
タナカハルカ:そうですね。やっぱりマイナーだからこそみんなに知ってほしいと思ってる作品です。日本語訳されていないので手を出しづらいと思うんですが……。ただ、僕はもう曲だけ聴いてもいいと思っている派なんですよね。この作品もサウンドトラックを先に聴いて「ヤバすぎる!」と思ってプレイしたので。そういう順番でゲームを楽しむこともできるし、そうやってプレイした中でも面白かったのが『Super Lesbian Animal RPG』です。
もぐ水:やっぱりゲーム音楽に注目すると、音楽から興味を持ってプレイするようにもなりますよね。
タキトウ ハル:そうですね。最近だと『UNBEATABLE』というガレージロック【※】のバンドをやるぞ、というゲームがあったんですが、それがめちゃくちゃ好きでした。楽曲を作っている方がシナリオライターもやられていて、生録でバンドを組んでいるので楽曲のクオリティも高い。
※ガレージロック 1960年代半ばにアメリカやカナダで広まった、荒々しく粗削りなロック。アマチュアの若者たちが自宅のガレージで練習していたことが名前の由来とされる。
先ほどカートゥーンの話がありましたが、「アドベンチャー・タイム」にも「マーセリン」というパンクっ子でレズビアンでベースプレイヤーのキャラクターがいましたよね。
タナカハルカ:カートゥーンの歴史においてパンクって、パーソナルな事を独白するキャラクターがパンクっ子になることが多いですよね。マーセリンもそうだし、「ティーン・タイタンズ」の「レイブン」も。そういうパンクの流れがインディーゲームにも来ているなと。
インディーゲームって特に個人的なものを描く作品が多い中で、今までのカートゥーン作品から影響を受けてパンクの使い方の可能性を広げているというのはすごく面白い流れだと思います。ゲームから影響を受けてゲームを作るのではなく、アニメから影響を受けてゲームを作っている人もいますからね。
文章書く彦:僕は何を選ぼうか迷っていたんですが、『還願 Devotion』というホラーゲームですかね。Steamでは配信停止になってしまったので、現状公式サイトでしか購入できないんですが。
主題歌を台湾のNo Party For Cao Dong(草東沒有派對)が書き下ろしていて、その「還願」という曲にすごくショックを受けました。
まず台湾でイケイケのバンドに曲を書き下ろさせるってすごいな、というのがあるんですが、そもそも僕がこのゲームに興味を持ったのがトレーラーでNo Party For Cao Dongの既存曲が使われていたからなんですよ。ゲーム内では使われてないんですが、それがあまりにも格好良すぎて。ちょっとこのゲームは買わねばならないと思って買ったら書き下ろしの曲がなんと付いてきたという。
ホラーゲームなんですけど、オルタナティヴ・ロック【※】と言いますか、エモ【※】と言いますか……。とにかくゲーム音楽然としていない音作りで、それにショックを受けましたね。当時はこのバンドのことは知らなかったんですが、他の曲や台湾のロックも聴いたりと自分の聴く音楽に影響を与えるくらい衝撃を受けたので、こちらを選ばせていただきました。

※オルタナティヴ・ロック 1980年代のアメリカやイギリスで生まれたロックのサブジャンル。主流のロックとは異なる反商業的な精神性を持った音楽なため、時代によって指すものが変化する。
※エモ 1980年代半ばにアメリカで生まれた、ハードコアパンクから派生したロック。感情を強く表出する歌唱や内省的な歌詞などが特徴。時代によって音楽性は大きく異なる。
タキトウ ハル:Red Candle Games最新作の『九日ナインソール』もかなり曲がよかった覚えがあります。
文章書く彦:Red Candle Gamesって内製の曲も格好良いんですが、映像の趣味も良くて。特に『返校』という1作目の作品が一番有名で、ホラーゲームなんですがエンディングがホラーゲームっぽくない「Sound of the Gunshot」というエモいロックで終わるんですよね。シリアスな話なので、それが重い余韻を残すゲーム全体のトーンと楽曲が合ってていいなと。だから『還願 Devotion』もその系譜を継いでるんです。
タナカハルカ:『返校』はウェイファン・チャン(張衞帆)というコンポーザーの方が作曲してますよね。この方のインタビューを読んだら最後の楽曲はNirvana(ニルヴァーナ)【※】に影響を受けてグランジ【※】を入れたと言っていて、ホラーゲームの最後にグランジを入れるというヤバさがいい。
※Nirvana 1987年にワシントン州で結成されたオルタナティヴ・ロックバンド。グランジの先駆者としても知られている。ローリングストーン誌が選出した「歴史上最も偉大な100組のアーティスト」第30位。代表曲は「Smells Like Teen Spirit」。
※グランジ 1980年代後半にアメリカのシアトルなどの北西部で生まれたロックのジャンル。70年代後半のパンクやヘヴィメタルなどにルーツを持ち、エフェクターをかけた歪んだギターが特徴。
Red Candle Gamesだけでなく台湾のインディーゲームの好きなところって、サウンドトラックに伝統的な楽器をかなり盛り込むところにあるんですよね。特色として白色テロとか歴史の話を描くこともあって。

文章書く彦:No Party For Cao Dongというバンド自体は音としてハイファイなエモなんですけど、ボーカルのメロディーが民謡調というか、独特な郷愁を誘うような感じがあって、その面白さも上手くゲームに利用できているので、描き下ろし主題歌では最高峰に好きな曲です。
みお:私はシューティングゲームが好きなのですが、シューティングってもろにYMOの影響が強いんですね。その中でも特にニュー・ウェイヴ【※】っぽさとプログレッシブな感じが混ざった『ダライアスII』のサントラがすごく好きで。プログレッシブでもありながらポップなシンセっぽくもあり、フュージョンっぽい曲もあったりして……という当時の音楽っぽさが詰まりつつ、シューティングゲームのサウンドトラックっていう観点では結構新しい。なかなかあんまりこういう曲って少ないんですよね。
※ニュー・ウェイヴ 1970年代後半から1980年代前半にかけて流行した、パンクロックをルーツとしたジャンル。シンセサイザーやテクノ、レゲエなど様々な要素が取り入れられている。
この頃のタイトーの音楽って凄くて。ZUNTATAっていう作曲チームが作ってるんですが、とても聴き応えのあるアルバムなんです。サントラをすごく聴くことはあんまり無かったんですけど、このゲームのサントラはめちゃくちゃ聴いてます。

ゲームから音楽のジャンルを知った、好きになったもの。任天堂や、楽団による違い
もぐ水:では次にゲームから音楽のジャンルを知った、好きになったものについてです。
私はさっき言ったことと同じになってしまうんですが『Hotline Miami』で「シンセウェーブ」を初めて知りましたね。多分、『Hotline Miami』をプレイして同じようにシンセウェーブが好きになった人ってけっこういるんじゃないかな。なんか私、今回ずっと『Hotline Miami』の話してますが……。

他に好きなシンセウェーブだと『Katana ZERO』のサントラがすごく好きですね。『Hotline Miami』が暴力で興奮して頭がハイになってしまう気持ち良さだとしたら、『Katana ZERO』はダウナーで、暴力に浸ってゆったり長く気持ち良くなる感じで、それがゲームの雰囲気にも合ってる。シンセウェーブといっても色々系統があるんですが、この2つが特に好きかなと。
タキトウ ハル:私は月並みになってしまうんですが、『どうぶつの森』シリーズの「とたけけ」かもしれないです。とても分かりやすくジャンル分けされて、かつ大量のジャンルがあるので「なるほど、こういうジャンルというものがあるのか」みたいな気づきはとたけけからもらったのかも。

とたけけの曲で言うと、ワールドミュージックだけじゃなくて、それこそディスコやハウスだったり、エレクトロニカだったり、電子音楽系のものも結構あるんですが……でもボサノバの「けけボッサ」が一番好きかもな。
とたけけの曲って、同時発音数が4つぐらいしかないのですごくミニマルな作りになってるんですよね。それでジャンルの最低要件を満たす曲になっているのが嬉しいなっていう。
もぐ水:確かに。子どもの時に『どうぶつの森』を遊んでいる時はまだ音楽のジャンルについてよく分かっていなかったと思うんですが、そこでなんとなく知ったものがあったなと言われて思いましたね。
タナカハルカ:僕も任天堂の話しようと思ってたんですが、僕がボサノバを好きになったのは完全に任天堂のおかげなんですよね。怒られるかもしれないんですけど、ボサノバってエレベーター・ミュージック、いわゆるカフェとかで流れる聴く必要のない音楽だと思ってた。
それを『Wiiショッピングチャンネル』のメインテーマとか『どうぶつの森』の夕方過ぎのBGMとか、とたけけが歌う曲とかがすごく面白くボサノバをアレンジしてて。そこで「ボサノバってちゃんと聴くものなんだ」って思ったんですよね。

あと僕『メイプルストーリー』をずっとやっていて、そこに「ヘネシス」という町があるんですよ。そこで流れる「Floral Life」という曲がボサノバエッセンスを取り込んだいい曲で。そもそもエレベーター・ミュージック的なものってゲームBGMにピッタリなところはあると思うんですけど、その中でどう工夫をするのかって点で任天堂と『メイプルストーリー』はボサノバを広げた存在だなと思うんですよね。特にWiiのショップ。
タキトウ ハル:近藤浩治【※】さんと戸高一生【※】さんが特に好きなので、Wiiのシステムミュージック全体はずっと好きです。
※近藤浩治 日本の作曲家。『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』、またそのシリーズの楽曲を多く手がけている。
※戸高一生 日本の作曲家。ヨッシーの声優や、とたけけのモデルとしても知られる。おもに「どうぶつの森」シリーズのサウンドディレクターを担当。
タナカハルカ:システムミュージックからボサノバという選択は1つとして合ったと思うんですが、ここまですごい曲を作るとみんな真似するよなと思います。Bandcamp【※】で曲を販売しているインディーの方とか、Wiiっぽいボサノバとかよく目につきますからね。
※Bandcamp 音楽配信・販売プラットフォーム。インディーズのアーティストやレーベルが主に使用し、自身の音楽やグッズを直接販売し、ファンもサポートできる特徴をもつ。
Skollfang:ゲーム音楽から意識し始めたというと少し変わるんですが、レコーディングの楽団とスタジオを初めて意識したゲームはPS3の『AFRIKA』のサウンドトラックですね。ハリウッドで録音したので、評判は高かった。ゲームを知らなくても多分聞いたことはあると思います。テレビ番組で今でも使われているというレアな経歴を持っているので。
今、日本でオーケストラを使っているタイトルというと、主に『ドラゴンクエスト』とか『モンスターハンター』がありますが、そちらは東京都交響楽団と東京フィルハーモニー交響楽団という楽団が演奏しているんですね。しかしハリウッドで録ると、やはり向こうの音というか、非常にクリアでパキッとした華やかな音になるんだなと。
タキトウ ハル:映画音楽然としてますね。
Skollfang:まさに映画音楽の音そのものですね。すぎやまさんは東京都交響楽団で、まろやかな気品のある音をずっと作り上げてきたじゃないですか。
それを他の楽団や『モンハン』の東京フィルハーモニーで録ったとしたら、若干雰囲気が変わるんですよね。今ゲーム音楽を色々演奏している東京フィルハーモニーは勢いのある、バンと出す音が非常に強い。そのあたりの違いが改めて分かったのは、この曲がきっかけでしたね。
文章書く彦:自分は割と音楽を聴く方なのもあって、大人になってからゲームで音楽のジャンルを知ることはほとんどなかったんですが、最初の頃の方の体験になるとやっぱり『beatmania』ですかね。
今では当たり前に使われているトランス【※】とかユーロビート【※】はこれで初めて見た。ジャンル名がたくさん表に出てくるので、ジャンルのマナーみたいなものを学んだかなと。特別そのトランスやユーロビートを好きになったわけではないので、ちょっとズレるんですが。
※トランス ハウスから派生し、1990年代初頭にドイツのフランクフルトを中心に発展した、メロディ重視のダンスミュージック。高揚感のある旋律が特徴。
※ユーロビート 1980年代のヨーロッパで生まれ、日本で独自の人気を得たダンスミュージック。華やかなシンセが特徴で、「頭文字D」の楽曲などで知られる。
ドンキとかでサイバートランスが流れ出して一般的な言葉になったんですが、僕の世代が最初に聴いたトランスは『beatmania』だと思います。ユーロビートも自動車とかから流れてくるようになったんだけど、それよりもちょっと早かった。『beatmania』っていろんなものに対して早かったと思うんですよね。当時あのコンセプトでゲームを作ろうとしたのは凄いですよ。
みお:私は普段日本語の音楽しか聴かないので、あまり音楽ジャンルには詳しくないんですが『Neon White』という一人称視点のプラットフォーマーがあって、そのサントラでドラムンベースとはなんたるや、を知りましたね。
普段ダンスミュージックも聴かないのでコンポーザーのMachine Girl(マシン・ガール)【※】も知らなかったんですが、ここで「あ、かっこいいな」と純粋に思いました。
※Machine Girl Matt Stephenson(マット・スティーブンソン)を中心とした、ニューヨーク州ロングアイランド出身のエレクトロニック・ミュージック・プロジェクト。ブレイクコアやドラムンベースを軸とした激しいサウンドが特徴。
もぐ水:『Neon White』のサントラは私もお気に入りです。ゲーム自体にスピードラン要素を含んでいて、速度を出すプレイを要求されるので合っているというか。何回もやり直すこともあるので聴く時間自体も長くなって、単純に耳に残るところもありますよね。

みお:ゲーム体験と合っている曲はやっぱりいいな、と思います。
もぐ水:あと、これはサウンドトラックに含めていい話題なのかちょっと微妙なんですが、ゲームをプレイして初めて音楽のジャンルなどを知ったという点に「カーラジオ」があるかなと。
私はこの手のゲームだと『ウォッチドッグス』が最初の体験で、車に乗る時や歩いている時に現実と同じように音楽を聴ける、という要素に驚いたんですね。しかも実際のアーティストがいっぱい並んでる。日本のゲームにはあまり無いものでしたし、やっぱり海外のアーティストになると知らない曲も多かったので、そこから色々知るきっかけになったかなと。
文章書く彦:『ウォッチドッグス2』でHudson Mohawke(ハドソン・モホーク)【※】がサントラ書き下ろしてたりもしましたね。
※Hudson Mohawke スコットランド出身の音楽プロデューサー、DJ。ヒップホップを基調に、エレクトロニックやトラップなどを取り入れた、実験的で色彩豊かなサウンドが特徴。
タナカハルカ:ラジオはやっぱ面白いですよね。
タキトウ ハル:『グランド・セフト・オート(以下、GTA)』からずっとそうですけど、最近だと『GTA5』にArca(アルカ)【※】がラジオ局を持つようになったことも面白かったです。いわゆる『GTAサンアンドレアス』以降のGTAって、ヒップホップのプロパーな人たちを呼ぶことが多かったと思うんですね。ただ、その後になってArcaのような、しっかりクラブの異色な人も連れて来るようになってて個人的にアツかった。
※Arca ベネズエラ出身で、スペイン・バルセロナを拠点に活動するミュージシャン、DJ、音楽プロデューサー。実験的で刺激の強い電子音にアンビエントやポップなどを織り交ぜたサウンドで知られる。
文章書く彦:『GTA5』にはFlying Lotus(フライング・ロータス)【※】が「FlyLo FM」というラジオ局を持ってますからね。西海岸だから場所も近いですし。

※フライング・ロータス アメリカ・ロサンゼルス出身のプロデューサー、DJ。ヒップホップやジャズ、エレクトロニック・ミュージックを融合した実験的なサウンドが特徴。
タキトウ ハル:『サイバーパンク2077』でもRun the Jewels(ラン・ザ・ジュエルズ)【※】や「リズィー・ウィズィー」にGrimes(グライムス)【※】が起用されていましたし、日本からだとナマコプリの「PonPon Shit」ですね。
※Run the Jewels 2013年に結成したEl-P(エル・ピー)とKiller Mike(キラー・マイク)からなるヒップホップ・デュオ。硬質でノイジーなビートに、社会風刺や政治的なテーマを扱うリリックも特徴。
※Grimes カナダ出身のミュージシャン。エレクトロポップやドリームポップを軸にした、近未来的な世界観などが特徴。2022年に『ロケットリーグ』とのコラボイベントも実施された。
タナカハルカ:ナマコプリはマジでビビりましたよ。ナマコプリって2015年くらいの地下アイドルシーンにいたアングラアイドルというか、芸術家がやっているちょっと変わったアイドルで曲もすごく変だったんです。高校生の時からずっと好きだったんですが、『サイバーパンク2077』発売前の時期って全然活動してなかったんですよ。
当時のライブの規模感とかは本当に10人、20人とかのグループだったので、そういう人たちが急に『サイバーパンク2077』でアイドルグループとして曲を出すという発掘の仕方が面白かったですね。納得感がかなりあったし。
タキトウ ハル:DLCの『仮初めの自由』ではコンペで春ねむり【※】さんが選ばれてたりもしましたよね。
※春ねむり 横浜出身のシンガーソングライター、ポエトリーラッパー。全楽曲の作詞・作曲・編曲を自身で手がけている。ロックとエレクトロニックを取り入れたサウンドに、フェミニズムなどのテーマも扱っている。
文章書く彦:自分の認識では、洋楽がそのまま使われてるのって最初期だと『FIFA』シリーズとかEAのゲームからじゃないかな、と思ってます。『SSX』というスノボのゲームの3作目でRöyksopp(ロイクソップ)【※】とかが使われて、「あ、知ってるアーティストの曲流れてる」と思ったのはそこからかなと。PS2の時代にはもうやってるような気がしますね。
※Röyksopp Svein Berge(スヴェイン・ベルゲ)とTorbjørn Brundtland(トルビョルン・ブルンダルン)によるノルウェー・トロムソ出身のエレクトロニック・デュオ。『リトルビッグプラネット2』や『FIFA 06』『FIFA 10』などでも楽曲が使用されている。
タナカハルカ:『Quake』はNine Inch Nails(ナイン・インチ・ネイルズ)【※】がやってませんでしたっけ。
※Nine Inch Nails Trent Reznor(トレント・レズナー)を中心とした、アメリカ・オハイオ州クリーブランド発のインダストリアル・ロック・プロジェクト。『コール オブ デューティ ブラックオプス II』のメインテーマの作曲や、『Hi-Fi RUSH』で「1,000,000」が使用されるなどゲームへの提供も多数。
文章書く彦:そうですね、あとEAの『Skate』とか。あれはPS3とか360世代だけど、EAは洋楽をかなり使うイメージがありました。
もぐ水:前から起用していたのは沢山あったんですね。このようなラジオって昔の曲から発売時の最新の曲まで年代がバラバラなので、自分の知らない曲との出会いをくれる場だなと思います。
文章書く彦:昔のゲームを今プレイしてラジオとか聴くと、なんか思い出されるものがありますよね。洋楽の引用を言っていいのであれば、『ライフ イズ ストレンジ』が自分の中ではとても重要な作品です。あれはドラマの文脈って感じですが……。

一般的にあまり取り上げられてこなかった人たち、例えばSparklehorse(スパークルホース)とかFoals(フォールズ)、Mogwai(モグワイ)、ちょっとオルタナティブなLocal Natives(ローカルネイティヴス)とか。初代『ライフ イズ ストレンジ』にはけっこうショックを受けましたね。
もぐ水:私も『ライフ イズ ストレンジ』で知って、ドラマがあるから聞く入口になりやすかったですね。ただあまりにもドラマと結びつきすぎて、泣いてしまうので逆に聞けない曲とかもあるんですが……。
日本のゲームで楽曲を引用することは少なく感じるので、海外のゲームをプレイすると特徴的だなと思いますよね。
文章書く彦:この間『龍が如く8』が椎名林檎の「ありあまる富」を引用してましたね。カッコいい使い方で。
Skollfang:あれは素晴らしかったですね。
タナカハルカ:日本のゲームはあまり引用無いですけど、ニトロプラスのノベルゲーム『スマガ』とかって……。
文章書く彦:NARASAKIと大槻ケンヂね。
タキトウ ハル:誰かエロゲの話するだろうと思ってたから何も用意してなかった。
文章書く彦:I've(アイブ)【※】とか……。まあ、大変なことになっちゃうからやめましょう(笑)。
※I've 北海道札幌市を拠点とする日本の音楽制作プロダクション。『Kanon』の「Last regrets」や『AIR』の「鳥の詩」などで有名。様々なPCゲームやアニメに楽曲を提供している。















