人生にゲームをプラスするメディア

『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】

一人称視点、「まぶた」システム…その風変わりなホラーゲームに迫る。

ゲーム 特集
『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】
  • 『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】
  • 『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】
  • 『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】
  • 『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】
  • 『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】
  • 『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】
  • 『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】
  • 『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】

1996年3月22日、初代『バイオハザード』が発売されました。固定カメラで切り取られた洋館を探索し、限られた弾薬や回復アイテムをやり繰りしながら怪物と対峙する─そのスタイルは、以降のサバイバルホラーに大きな影響を与えました。

そして1997年1月17日、PS1向けにサンソフトから発売されたのがホラーADV『公開されなかった手記』でした。

本作は、フリーのオカルト記者・新堂一哉が、相棒の神矢千里とともにヨーロッパの古びた洋館を訪れ、そこに隠された「手記」やアイテムを集めながら、数々のギミックや謎を解き明かして進むオーソドックスな3Dアドベンチャーゲームです。

洋館を探索し、怪物と戦い、謎を解いていくという骨格だけを見れば、どうしても同時代の『バイオ』と比較してしまいます。

しかし実際に触れてみると、その感触や方向性はかなり違います。本作は『バイオ』のように固定カメラではなく一人称視点を採用し、さらに「暗くて見えない」という状況を単なる演出で終わらせず、照明や視界そのものをゲームシステムへ落とし込んでいました。

本稿では、『バイオ』と同じ“洋館ホラー”の系譜にありながら、別の方法で恐怖を作ろうとした『公開されなかった手記』の異質な魅力を、その粗さも含めて振り返ります。



◆固定カメラではない、一人称視点の没入感

『公開されなかった手記』でまず印象に残るのは、3Dポリゴンで構成された洋館を一人称視点で進んでいく探索です。

上下で前後移動、左右で横方向へ移動する操作を基本に、視点を動かしながら部屋や廊下を調べていきます。イベントでは三人称視点も挟まれますが、通常の探索ではプレイヤーが主人公の視界そのものを担う形です。

これは1997年当時のサバイバルホラーとして、かなり癖の強い選択でした。

『バイオハザード』では固定カメラによって部屋の構図をある程度把握できる一方、本作で見えるのは自分が向いている方向だけ。背後や曲がり角の先に何があるのかは、実際に視線を向けなければ分かりません。

そのうえ、PS1らしい粗いポリゴンと低解像度の画面も相まって、遠くの物体は輪郭が曖昧です。廊下の奥に何かがいるのか、それとも単なる置物なのか。すぐには判断できない“不鮮明さ”が、結果として洋館を歩く不安につながっています。

一方で、操作性は全体的に良くありません。特に戦闘ではその癖が顕著で、館内で手に入る猟銃を使ってネズミやコウモリなどに対抗するものの、小型の敵には照準を合わせにくく、思ったように攻撃できない場面もあります。現在のFPSのような滑らかな操作を期待すると、かなり戸惑うでしょう。

ただ、素早く振り向けず、危険を察知してから対処するまでの隙が生まれてしまう。この洗練されていない一人称視点の弱点が、逆にプレイヤーに焦りと不安を与えることになっていました。

◆独特な操作コマンドで洋館を探索

本作で特徴的なのが、「開ける」「調べる」といった行動や猟銃、所持アイテムをL1・L2・R1・R2へ割り当てられるショートカットシステムです。

たとえば扉は近づくだけでは開かず、「開ける」コマンドを実行する必要があり、攻略資料では初期状態でR1に登録されていることが確認できます。頻繁に使う猟銃なども肩ボタンへ登録できるため、自分なりに操作を組み替えながら進めていきます。

さらに、怪しい家具や落ちている物を見つけたら「調べる」、施錠された扉の前では対応する鍵を使用するなど、プレイヤーが状況に応じて行動を選択する必要があります。暗い場所では、対象が画面上に見えていても十分に調べられない場合があり、カーテンを開けたりランタンへ火を灯したりして明るさを確保しなければなりません。

単にカーソルを合わせてボタンを押すのではなく、「見る」「近づく」「明るくする」「適切なコマンドを使う」という一連の動作を自分で行う。この少々面倒な手順こそが、洋館を実際に調査しているような本作独特の探索感を生み出しています。

◆「光と闇」がゲーム進行を左右する

本作の大きな特徴の一つが、探索エリアにおける「明るさ」です。

館内には暗い場所が多く、十分な明かりがなければ、目の前にある物を調べることすらできません。窓やカーテンを操作して外光を入れたり、ランタンに火を灯したり、暖炉を利用したりします。こうして周囲を明るくすることで、ようやくアイテムを拾ったり、仕掛けを調査したりできるようになるのです。

マッチ

つまり本作における照明は、ただ雰囲気を作るためだけの演出ではなく、「何を見ることができるのか」を左右する、れっきとしたゲームシステムの一部なわけです。

しかし、すべてを明るくすれば解決するわけでもありません。序盤の館には、カーテンを閉じ、ランプを消して部屋を暗くすることで絵画にヒントが現れる場面があります。明かりは探索を助ける一方で、暗闇そのものが謎解きの条件になることもあるのが厄介なところ。

ここに『公開されなかった手記』らしさがあります。『バイオ』における洋館探索が、鍵や紋章、さまざまな仕掛けを解いて閉ざされた場所を“開いていく”ものだとすれば、本作では部屋を「明るくする」「暗くする」という環境の操作まで探索に組み込まれています。

終始こんな感じなので、ゲームのテンポは本当に悪い。ランタンやマッチ、オイルといった物資を購入し、暗い場所ではまず明かりを用意しなければならないため、かなり面倒に感じる部分でしょう。

それでも本作が興味深いのは、「光と闇」そのものがゲームの進行を左右する点にあり、それが『バイオ』では体験できない独自性につながっています。

◆傷つくほど“見えなくなる”、異色の「まぶたシステム」

そしてもうひとつ、本作を忘れがたいものにしているのが、体力と視界を結びつけた通称「まぶたシステム」です。

本作は一般的なゲームのように、画面上に体力ゲージは表示されません。代わりに画面の上下に「まぶた(視界)」が表示され、ダメージを受けたり、恐怖を感じたり、疲弊したりするなど、状態の悪化に伴ってまぶたが徐々に閉じていき、視界が狭くなります。完全に閉じるとゲームオーバー(死亡)です。

一見、かなりクセの強いシステムに感じますが、実は一人称視点と非常に相性の良い仕掛けです。

というのも、もともと薄暗い洋館での探索は敵を見失いやすくなり、周囲を確認することも難しくなります。

ゆえに、「体力が残り少ない」という情報を数字で理解するのではなく、実際に「見える範囲」を奪うことで身体的な危機をプレイヤーに知らせる、というのはとても直感的で分かりやすいのです。

褒めたものの、『バイオハザード』の完成度の高いUIや洗練されたシステムに比べると、どうしても粗削りな印象は拭えません。

しかし、本作なりに「主人公が見ているもの」と「プレイヤーが見ているもの」を一致させようとする試みは、ホラーゲームの恐怖表現として悪くないのかなと思います。

◆町に戻って「ショップ」でアイテムを購入し、再び洋館へ

探索エリアと町を往復する構成も、本作の独特なシステムです。

危険な洋館から町へ戻れば、物資の売買や休息、セーブが可能です。弾薬や回復アイテムを購入して冒険に備え、再びその先のエリアへ向かいます。

『バイオ』のように消費アイテムを拾えるわけではなく、安全な拠点を足場にして危険地帯へ“遠征”する感覚に近いゲーム設計です。

そのため、プレイ感覚としてはどこかRPG的なものがあります。拠点と危険地帯を明確に分けた構造は、本作の探索に独特の冒険感を加えています。

◆『バイオ』では味わえない、一風変わった「洋館アドベンチャー」

『公開されなかった手記』を振り返ってみて面白いのは、同時代の『バイオハザード』と似た舞台を選びながら、その成功例をそのままなぞらなかったことです。

暗い洋館を一人称視点で歩き、光を確保しなければ十分に探索できず、ダメージの蓄積が視界=まぶたそのものに反映されていく。そこでは敵を倒すこと以上に、「見えない場所をどう確かめるか」が重要になっています。

もちろん、独特な操作や照準の合わせづらさ、光源管理の煩雑さなど、現在では遊びにくく感じる部分も少なくありません。ただ、その不便さまで含めて、プレイヤーの視界と主人公の置かれた状況を直結させようとした発想には、PS1黎明期ならではの試行錯誤が感じられます。

『バイオ』が固定カメラと演出によって恐怖を“見せた”作品だとすれば、本作はプレイヤー自身を暗闇の中へ立たせ、何があるのかを自分の目で確かめさせようとしました。

同じ「洋館ホラー」から出発しながら、まったく異なる遊びを模索したこと。それこそが『公開されなかった手記』の魅力であり、約30年を経た今なお振り返る意味のある一本なのです。

《DOOMKID》

編集部おすすめの記事

ゲーム アクセスランキング

  1. 『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】

    『バイオ』とは違う道を選んだ、“もうひとつの洋館ホラー”─PS1『公開されなかった手記』の異質な魅力【特集】

  2. クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』&『炭の町のシロ』がスイッチ2に登場!マウスや60fps対応など追加要素が実装

    クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』&『炭の町のシロ』がスイッチ2に登場!マウスや60fps対応など追加要素が実装

  3. 『グラブル』公式、サーバーに過剰アクセスを行う“外部サイト”に注意喚起…「古戦場」含む運営に“重大な支障”のおそれ、サイトと作成者には「適切な対応を進めてまいります」

    『グラブル』公式、サーバーに過剰アクセスを行う“外部サイト”に注意喚起…「古戦場」含む運営に“重大な支障”のおそれ、サイトと作成者には「適切な対応を進めてまいります」

  4. 人気“お絵描きかくれんぼ”ゲームで野田クリスタル軍団が阿鼻叫喚! 擬態センスが問われる本作で、誰が一番センスがあったのか?【TGS2026】

  5. 発売から23年後に判明!ゲームキューブ『F-ZERO GX』アーケード連動コンテンツを解放できる隠しコマンドが見つかる

  6. 『ポケカ』Yahoo!フリマ、ヤフオクでの規制強化!カートン単位や空箱・空パックなどを出品禁止へ

  7. ジニと出会い、育てて、広大な世界を冒険!―『Roco Kingdom(ロコキングダム)』先行試遊&発表レポート KENNさんと相羽あいなさんの生アフレコも

  8. 「げまげま」メンバー全員集合、「ChroNoiR」叶&葛葉やアーティスト・春茶も参戦、にじさんじ・酒寄颯馬は1人で奮起―フィナーレを飾る「LTK」の見どころを紹介

  9. ポケモン公式、話題になった「うすチュウ」の開発資料を公開ー「尻尾を引きずって歩く」「すべてのパーツの色が薄い」など、見れば見るほど儚くて可愛い

  10. 新ワザ取得の「メガライボルト」&初登場「アノクサ」に注目!「秋の遠足:相棒といっしょ」重要ポイントまとめ【ポケモンGO 秋田局】

アクセスランキングをもっと見る