VTuberグループ・ホロライブの二次創作ゲームブランド「holo Indie」が、5月1日より体制変更を行いました。これまで通年で受け付けていたゲーム企画の応募が、年3回のシーズン制へと移行しています。
今回インサイドでは、インディーゲームイベント「BitSummit PUNCH」に合わせてインタビューを実施。体制変更の目的や立ち上げから2年半経った「holo Indie」の現在について、カバー株式会社 共創基盤推進部 UGC推進チームの畠野貴之氏、嵯峨菊央氏のお二人にお話を伺いました。
◆「holo Indie」立ち上げからの約2年半を振り返って
――本日はよろしくお願いします。まずは、お二方の担当業務について教えてください。
嵯峨菊央氏(以下、嵯峨):私は内部の運営周りを担当しております。ゲームの審査やクリエイターの窓口のほか、ゲームのプロモーションの一部を行っています。
畠野貴之氏(以下、畠野):私は広報やメディア対応のほか、マーケティングやプロモーションを担当しています。その他ホロライブ全体の二次創作ガイドラインの運用なども担当しています。
――「holo Indie」の立ち上げから約2年半が経過しました。これまで、ホロライブプロダクションのタレントが登場するという共通点はあるものの、個人・法人開発問わずさまざまなジャンルのタイトルがリリースされてきました。この期間を振り返ってみていかがでしょうか? 立ち上げ初期の目標の達成度合いについてもお伺いできれば幸いです。
畠野:3つの観点からお話しできればと思います。「二次創作ゲームクリエイターのエコシステム構築」「ホロライブIPの新しい表現領域の開拓と多様なジャンルの創出」そして「グローバルなファンやクリエイターへの新たな体験の提供」という3つの軸です。目標の達成度合いという観点で言うと、大体8割くらいですね。
――8割ほど、その理由はなんでしょうか?
畠野:まず、「二次創作ゲームクリエイターのエコシステム構築」についてですが、「holo Indie」立ち上げは『ホロキュア』というゲームがきっかけでした。無償公開でありながら非常に完成度の高い作品が生まれたこともあり、クリエイターの皆さんにどう還元していくかというところから始まったのが、このプロジェクトです。
クリエイターの皆様が継続してゲーム開発できるように、二次創作ゲームの収益化をサポートし、還元するエコシステムを作るということが最初の目的でした。
そして、立ち上げからのこの2年半で、個人の開発者の方がフルタイムで開発に専念できる事例が生まれました。例えば『ホロパレード』のろぼくろさんは、最初は個人の開発者だったのですが、2作目はご自身でスタジオを構え、専業で取り組むといった事例も生まれました。
畠野:また、ビサイドさんのように、ファンでもある法人の開発会社にもご参加いただいています。これは当初私たちが想像していた以上に、熱量が高く持続可能なコミュニティが生まれてきたと考えています。
一方で、5月からの審査体制変更にもつながる部分ですが、応募数の増加に対して、体制の構築が追いついていない部分もありました。そこを踏まえて、目標達成度は8割ほどかなと思います。
――ありがとうございます。ホロライブIPの新しい開拓についてはいかがですか?
畠野:「holo Indie」では、ホロライブのタレントが出てくるという共通点以外は、さまざまなジャンルがリリースされています。第1弾の『ホロパレード』のタワーディフェンスから始まり、アクション、RPG、シューティングなど、私たちが最初に想像していたよりも多彩なジャンルのタイトルが生まれました。
「ホロライブ」初の公式スマートフォン向けゲーム『hololive Dreams(ホロライブドリームス)』のリリースが控えていますが、そうした公式の大型タイトルとは異なる形で、インディーならではの作家性とホロライブIPがうまく融合し、ファンならではの目線でタレントの魅力を引き出していると考えています。
――作家性が出るのは特徴的な部分ですよね。
畠野:そうですね。カバーとしても、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を積極的に推進しており、二次創作ガイドラインを設けたりしてSNS上でのコミュニティで楽しんでいただきたいという部分があります。UGCと言うと一般的にはイラストや切り抜き動画がよく知られていますが、それがゲームという領域まで広がったという意味では、大きな意義があったと思っております。
あとはグローバルのファンへの部分ですね。ホロライブは世界中にファンがおり、ファンのインディー開発者もグローバルにいらっしゃいます。例えば『Chrono Gear: Warden of Time』は、海外タレントのファンであるクリエイターによる作品です。
畠野:日本のファンだけでなく、海外ファンにも自然に広がる形で展開できており、海外ファンが作ったものを日本の方が遊ぶ、逆に日本のファンが作ったものを海外の方が遊ぶといった流れができたのは、ゲームならではのメディア特性なのかなと思います。
◆審査がシーズン制に! 「クリエイターさん側にもメリットが大きい」
――新しく審査体制が変わり、シーズン制に移行すると発表されました。新体制となった理由や、これまでとの違いについてお聞かせください。
畠野:初期は、まずはできるだけ広く門戸を開き、さまざまなご相談や応募を受け付ける姿勢で進めていましたが、その結果かなりの数の応募をいただきました。その後も認知が進むにつれて応募が急増し、より安定して確認・サポートできる体制を整える必要が出てきました。
これまで、40以上のタイトルがリリースされ、有償・無償合わせて総ダウンロード数も300万を超えました。これもクリエイターさんとファンの皆様のおかげです。ただ、確認や調整に時間がかかり、クリエイターさんにご心配頂いたり「審査はいつ頃になるのか」といったお問い合わせをいただいたりすることもありました。
その中で、我々としても、一定の期間ごとに応募作品をまとめて確認し、横並びで見ていく形の方がよいだろうと考えました。そこで、シーズン制として期間を区切り、審査やその後の調整にメリハリをつける形にしています。クリエイターの皆さんにとっても「この時期に向けて企画書やビルドを準備しよう」と計画を立てやすくなると考えています。通年募集だと、どうしても提出のタイミングが曖昧になりやすい部分もありましたが、シーズン制にすることで、制作にも一定の目標が生まれ、モチベーションにつながるのかなと思います。
もちろん、締め切りを設けて急かしたいということではなく、クリエイターの皆さんが準備しやすく、我々としても一つひとつの作品をしっかり確認できる形にすることが目的です。
――確かに、予め審査期間が公開されていれば、そこを目指して制作しようということになりますね。
嵯峨:我々としても、PR計画やリリースまでのスケジュールを立てやすくなるので、クリエイターさん側にもメリットが大きいと思います。これまでは通年募集で、完成度やジャンルもさまざまな作品に随時対応していたため、事前プロモーションの設計が難しい部分がありました。
シーズン制にすることで、ある程度「このスケジュール感で進めよう」と見通しを立てられるため、ゲームタイトルをより多くの方に遊んでいただくためのプロモーション体制も作りやすくなっています。
――お互いに開発期間を決めて、そのあと宣伝をしていくというのを決められるようにするということですね。
嵯峨:そうですね。提出していただく際に完成目安などの記述もお願いしておりますので、スケジュールやゲームジャンルを横並びで確認・調整しやすくなり、宣伝までスムーズに進行できる見込みです。
――新たに発表された審査制度について、企画書とビルドの提出が必要とのことでした。具体的にどのようなものが必要になってくるのでしょうか。
畠野:応募サイト上でも、形式について細かく指定しているわけではなく、パワーポイントでもPDFでも、内容が分かる形であれば問題ありません。
ただ最低限確認したいのは、ゲームの概要やジャンル、登場予定のホロライブタレントやキャラクター、ゲームシステムやスケジュール感です。あとは有償で配信するか、無償で配信するか、有償であればどれくらいの金額を想定しているかといった、タイトル概要の基本的な情報はいただきたいと思っています。
「holo Indie」の場合はファンのUGCをベースにしているので、単にゲームとして成立しているかという部分も大事ですが、ホロライブのタレントやキャラクター、マスコットキャラクターなどのキャラクター性をどう理解して、それをどうゲーム体験に落とし込むか。そしてファンとしての熱意がどこにあるのかは大切にしたいと思っています。
そのため、タレントの選定理由のほか、セリフや演出の方向性、ファンの間で親しまれているネタやミームなどが分かる範囲で記載いただけるとありがたいです。
嵯峨:また、企画書は、ビルドだけでは伝わりにくい作品の狙いや注力ポイントを共有いただくためにも必要だと考えています。そのビルドをプレイした私たちの体験と、クリエイターが求めている体験に齟齬が起きていることがあるなと感じていました。
「いいゲームだな」と思ってご返信して、「どういう体験をプレイヤーに求めていますか?」というやり取りをしている中で、クリエイターが注力していたポイントと、こちらが感じたポイントが全然違ったということが意外とありました。
そこでの認識を合わせるため、プレイした際に作品の意図に沿った評価や楽しみ方ができるように、ゲームの企画書はあった方がお互いにとってよいと考え、必須にさせてもらいました。
畠野: ファンゲームとしての熱意を評価しているので、開発者の方が特に見てほしいポイントをお伺いするためにも、企画書を提出いただきたいという考えです。
嵯峨:ビルドの完成度で言いますと、最低限、ゲーム体験のワンサイクルが分かる状態のビルドをいただきたいです。理想を言えば、内容を調整すれば体験版として公開できる程度の完成度があるとありがたいですが、そこまでを必須としているわけではありません。
畠野:コアとなるゲームの部分がどういうものなのか、どういう体験ができるのかというのは最低限分からないと、こちらとしても作品の方向性や核となる体験を判断しづらくなってしまいます。できれば体験版に近いものがあると助かるのですが、ファン活動としてやっている中で、そこまでを一律に求めるのはなかなか難しいかなとは思っています。
――個人でゲーム開発を完成まで持っていくにはハードルがありますもんね。
畠野:そうですね。なので我々も、商業タイトル的な品質を見ているわけではなく、ファン作品としての熱量や独自性、ホロライブプロダクションの二次創作ゲームとしてどういう楽しさがあるのかというところは大切にしたいと思っています。
――マーケティングとして外に出していく上でどういう広報をするかというところでもありますよね。
嵯峨:企画書やゲームビルドの中で作品の注力ポイントを事前に共有いただくことで、こちらも意図を踏まえてプレイし、評価できます。本当はもっと面白い部分があるのに、そこを見落としてしまうことは避けたいと考えています。
――審査期間外でも、イベントなどで募集する場合があるとのことですが、今後どのようなイベントに出展する予定でしょうか?
嵯峨:確定しているのは『東京ゲームダンジョン』さんです。そのほか、展示はいくつかあるのですが、直接対面でクリエイターさんとお話しできる距離感の近いイベントとなると数か限られており、現在も参加するイベントを探しています。
直近では、5月に開催された徳島の『マチ★アソビ』にも出展しました。このイベントでは、クリエイター窓口としての出展ではなく、ユーザーの皆さんに作品を届ける、知っていただくことを目的としており、新規クリエイターさんとの交流のほかにも、既存タイトルをたくさんの方に知っていただくためにも、イベント出展には比較的積極的に取り組んでいます。
――新シーズンになって5月から審査が始まっていますが、今大体どれくらい応募が届いていますか?
嵯峨:細かい数字は出せないのですが、数十件規模のご応募をいただいております。シーズン制にしたことの影響か、以前の応募体制よりも1タイトルのゲームサイクルをしっかりと体験できる状態で送っていただいている印象があります。
畠野:実際にシーズン制にしたことで、クリエイターさんも意図を受け取っていただいて、審査しやすい完成度で送っていただいていると感じます。非常にありがたいですね。
――応募されているのは国内の方でしょうか、海外の方でしょうか?
嵯峨:おおよそ半分ぐらいが海外のクリエイターさんからの応募です。既にリリースしているタイトルも海外のタイトルが多いのですが、冒頭でお話ししたグローバル展開の部分にも、着実につながっているのかなという印象を受けています。
――シーズン制にしたことで、開発者さんからの反響や反応はありましたか?
嵯峨:審査体制が変わること自体への反響よりも、「期間がいつからいつまでだ」というところが反応として大きく、「いつ出せばいいですか? もう作品準備進めていますよ、それまでに作ります」みたいなお話もありました。「挑戦してみようかな」といった声もちらほら見かけて、体制が変わったことよりも改めてholo Indieの活動が認知されたくさんの方にご興味をお持ちいただいた印象です。
畠野:シーズン制にしたことで「またholo Indieの募集が始まりました」と打ち出しやすくなるので、クリエイターさんも「今このタイミングで受け付けているんだな」と認識しやすくなったかなとは思います。
――応募されてから2、3ヶ月間があって、リリースタイミングとしては近いところにあるのでしょうか。それともタイトル次第でしょうか?
嵯峨:作品のクオリティや完成度でリリースのタイミングはまちまちになってくるのでタイトル次第になるかなと思います。
例えば「今期はこのタイトルが合格しました、リリース未定」みたいな感じで、一度まとめて発表するような新しい取り組みもできるのではないかと考えています。
――今後の中長期的な目標などがあればお聞かせください。
畠野:「holo Indie」は、ホロライブプロダクションの二次創作の可能性を広げる取り組みとして、2年半にわたり運営してきましたが、次の段階に進むタイミングが来たと考えています。
その次の段階に向けて参加しやすい環境づくりを整えているのですが、その一環としてシーズン制にしたり、作品の特性などに応じて、Steam以外のプラットフォームにも展開を広げていきたいと思っています。
ゲームを制作するには、多くの時間や技術への投資が必要です。そうしたクリエイターの情熱をきちんと受け止め、継続的な創作活動につながる形にしていくためにも、このブランドを続けていきたいと考えています。
また、「holo Indie」は公式が一方的に作品を管理する場ではないと思っています。ファンの思いにどう応えていくかというところを意識しながら、必要なサポートを行っていき、クリエイターが安心して作品を届けられ、ファンの皆さんも安心して楽しめる場にしていければと考えています。
カバーならではの取り組みだとは思うので、ホロライブのUGCエコシステムの中にきちんと「holo Indie」の立ち位置を作っていければと思っています。
――まさにファンと公式の間というところですね。持続可能な形に変えていくというお話がありましたが、これは何か施策として用意されているのでしょうか?
嵯峨:これは、holo Indie全体の基本的なテーマです。何か特別にこれをやっていこうというよりも、長期的に挑戦しながら持続可能な形を目指していくものだと考えております。元々収益化の仕組みによって、クリエイターが継続的に制作に取り組みやすくするというところが、持続可能性を高める取り組みの一つです。
さらにリリース後の話として、「holo Indie」クリエイターとして2作目、3作目を作っていくというところも視野に入れて取り組んでいきたいと思います。プロジェクトの認知を広げていき、「holo Indieで作りたい」と思うクリエイターを増やしていく、というところが目標になります。
――最後に、シーズン制になったというところで改めてメッセージをいただけますでしょうか。
嵯峨:審査ではゲームのクオリティももちろん見ていますが、それ以上に、ホロライブIPをどれだけ理解し、好きでいてくださるか、それが作品にどう反映されているかを大切にしています。クリエイターの皆さんには、ぜひメリハリを持って制作に取り組んでいただき、熱量のある作品をご応募いただければと思います。
畠野:そうですね、やはりインディーらしい作品ですね。個人的には、ワンアイデアで強く伝わるようなものでもいいと思っています。企業ではなかなか作れないような、面白い発想のゲームや、ファンの方が喜ぶようなゲームを、ぜひ形にしていただければ嬉しいです。
――本日はありがとうございました!







