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「少年ジャンプ」元編集者と見る『イースX -Proud NORDICS-』―“王道”溢れる「少年少女の冒険譚」に息づく、漫画制作との共通点とは?

『イースX -Proud NORDICS-』における“王道”的構成は、メディアの異なる漫画制作者から見てどのようなものなのか。この本質に迫るべく、「週刊少年ジャンプ」元編集者の武田冬門さんが、PS5版『イースX -Proud NORDICS-』を紐解きます。

ゲーム 特集
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日本におけるコンピューターゲームの歴史は1980年代に大きな盛り上がりを見せ、その地盤をもとに長く発展してきました。この歩みの中で生まれた名作は、時代を代表するものもあれば、80年代から愛され続けて今にいたる長寿シリーズもあります。

2026年2月19日にPS5版『イースX -Proud NORDICS-』を展開する日本ファルコムの『イース』シリーズも、長年愛されてきた作品のひとつ。1987年にリリースされた第1作目を皮切りに、約38年もの歴史を積み上げ、ゲーム業界の最前線に立ち続けています。

『イースX -Proud NORDICS-』は、記念すべきシリーズ第10作目、2023年9月28日にリリースされた『イースX -NORDICS-』に多くの追加要素が加わったシリーズ最新作です。元はニンテンドースイッチ2向けに、2025年7月31日に発売しました。このたび、いよいよPS5にも“出航”です。

ナンバリングタイトルでありながら、わかりやすい没入感あるストーリー、爽快な操作感、ビジュアルの良いキャラクターと、むしろ本作こそがシリーズの入り口として相応しい要素が凝縮されています。

そこに溢れる少年少女が紡ぐ冒険譚の“王道感”は、40年近くシリーズを愛すファンだけでなく、これまで『イース』を知らなかった新規ユーザーをも虜にする魅力を持っているのです。

そんな本作における“王道感”は、『イース』というゲーム作品として作り上げられたもの。少年少女を主役に捉えストーリーを展開する『イースX -Proud NORDICS-』における“王道らしさ”とは、どのような要素から息づいているのでしょうか。

そこで今回、「週刊少年ジャンプ」の編集や「月刊少年ジャンプ」編集長といった実績を持ち、当時連載されていた「ドラゴンボール」の担当経験もある武田冬門さんを招き、『イースX -Proud NORDICS-』に初めて触れていただきました。

王道を数多く生み出してきた「少年ジャンプ」の漫画編集者としての視点から、『イースX -Proud NORDICS-』が持つ王道要素について語っていただきます。少し視点を変えることで、見慣れた王道にも新たな発見や気づきがあるかもしれません!

武田冬門さん
『イースX -Proud NORDICS-』公式サイトはコチラ!

『イースX -Proud NORDICS-』が名を連ねる『イース』シリーズとは

まず、本シリーズを長く保つ“『イース』シリーズらしさ”を見ていきましょう。シリーズの大きなポイントは、1作目から最新作までの40年近く、冒険家「アドル=クリスティン」が一貫して主人公を務めていること。同一の主人公が活躍し続ける長期シリーズのゲームという点だけでも、『イース』はかなり稀有な存在です。

なおアドルの年齢はタイトルによって様々で、ナンバリング順に年齢を重ねていくわけではありません。ナンバリング10作品の中で、時間軸的に最も古いのは数字通り『イースI』『イースII』で、その次に古い時代を描く作品が今回の『イースX』となっています。

これは、『イース』はアドルが綴った百余冊にも及ぶ冒険日誌の記述をもとに物語られているから。残された日誌そのものが時系列順ではないため、時代的に前後しながら作品が展開されています。『イースX』のアドルは17歳と、シリーズの中でも特に若い時期を描いており、本作で『イース』にハマって他タイトルで遊ぶと、もっと大人びたアドルを順に見ていくなんてこともできます。

歴代シリーズではローマがモチーフになった「ロムン帝国」、ヨーロッパのイメージを元にした「エウロペ」といった国や地域が登場。アドルはそれらを冒険してきました。次なる舞台は、北海を思わせるような大海原「オベリア湾」です。

そんな世界観設定を10作分も重ねてきたシリーズ最新作『イースX』の王道要素は、やはりそのストーリーに息づいているでしょう。まだ10代の少年が旅の道中、偶発的な形でとある少女と出会い、ハプニングを経て一蓮托生の関係に陥る。力を合わせて乗り越える戦いもあれば、信頼を積み上げて生まれていく絆もあり、『イースX』の展開はまさに少年漫画でもよく見られる王道らしい道筋を辿っていきます。

冒頭作りは漫画もゲームも「難しい」もの

こうした『イースX -Proud NORDICS-』における展開とそれにまつわる表現を、王道を育て、直接的に携わってきた漫画編集者という視点を持つ武田さんは、どのように受け止めたのでしょうか。

――本日はよろしくお願いいたします!まずは自己紹介をいただけますか。

武田さん:1983年に集英社へ入社し、週刊少年ジャンプをはじめ様々な部署で漫画編集やコンテンツに関わってきた武田冬門です。少年ジャンプ時代は、長期連載漫画の編集担当もしていました。

僕はゲーム記事の担当をしていたこともあるのですが、そのときに第1作目『イースI』を知りましたね。リリース当時以来、久し振りにシリーズに触れますが、ずいぶん変わったんですね! あれから長くシリーズが続いているというのは、素晴らしいことですね。

それでは武田さんと共に、『イースX』を見ていきましょう。

今回もアドルは冒険家らしく、新たな地への冒険に向かうべく乗船していました。しかし、付近の海域を取り仕切る海賊「バルタ水軍」から襲撃を受け、やむなく戦うことに……というのがゲーム開始直後の流れです。

ここはいわゆるチュートリアルにあたり、隊長格の女海賊で、後にヒロインとしてアドルと終始行動を共にする「カージャ・バルタ」とのバトルも体験できる、『イースX』の“入り口”を担っている冒頭です。

そして戦闘終了後、カージャが船に乗り込んできた原因である船長を問いつめ、船長がバルタ水軍の警告を無視し、船の運行を続けていたことが明かされます。その制裁として、カージャが船長に対し武器を振るって……という場面で画面は暗転。

どうやら船長はカージャの手により殺されてしまったようで、アドルは目的地には行けなくなり、冒険の予定が大きく変わります。

――物語の導入は、ゲームであれ漫画であれ、非常に重要な部分だと思います。この『イースX -Proud NORDICS-』における最序盤の展開はいかがでしょうか。

武田さん:僕の作ってきた漫画は冒頭の掴みがとにかく大事で、最初の数ページだけ読んだ読者が「つまらない」と思ってその漫画を読み飛ばしてしまわないような工夫をしてきました。でも、ゲームは漫画と異なり、お話と同時にシステムの説明もしなきゃいけないので、冒頭作りは難しいと思います。漫画とは違う別の見せ方で、作品世界に引きずり込んでいく。

僕は、ここで出てきた「女海賊」がまず気になりました。船長のこと、殺してますよね?

――はい。攻撃の直前に暗転しましたが、暗喩されていますね。

武田さん:女海賊はヒロインキャラクターのようですが、同時に海賊でもあるからこそその残忍さを表したかったシーンが「船長を殺す」ということかなと思いました。

武田さんも気になったという「ラサル船長」が実はどのような人物だったのかは、本編ではなく「サブクエスト」の中で語られます。サブクエストは寄り道要素なので、ゲームで遊べば遊ぶほど物語を深く知れる、漫画では使えないゲームならではの手法です。

――ご推察の通り女海賊は重要なキャラクターで、アドルと運命を共にするもうひとりの主人公であり、本作におけるヒロインでもあります。そんな作品への印象自体も決めるキャラクター作りについて、武田さんの考える“王道主人公像”とはどんなものでしょうか?

武田さん:主人公の性格って、僕の現役時代と現在では変わってきている部分はあるかもしれませんね。昔だったら、熱血少年で正義の魂だけを持っていて……というキャラクターが理想の主人公みたいな感じでした。

でも最近は鬱屈した主人公と言いますか、根っこは正義の人だけれど、それはあまり表に出なくて、なんとなく捻くれているような主人公がアリになったのは、表現の幅が広がったのかもしれませんね。

――確かにひと昔前の主人公は、熱血漢で正義の人、みたいな印象がありますね。

武田さん:だから昔の漫画って、意外と主人公は人気がなくて。主人公を補佐する役や周りにいるキャラクターの方が人気の上位を占めるんですよね。昔の漫画の主人公は物語を引っ張る上でとても重要な役割で、だからこそ制限というか、「こうあるべき」みたいな要素が強かったのかもしれません。

――昔の漫画の主人公は、こうなりたいという「憧れの存在」でした。でも最近の漫画の主人公は自分と同じような悩みを抱えていて、「身近な存在」という側面があるのかなと感じています。

武田さん:その一面は確かにあると思います。ゲームの主人公は無個性でも良いのかも。何らかの目的に向かって突っ走っていくだけの、それが個性みたいな主人公がいて、その周りに一癖も二癖もあるようなキャラクターを配置し、その中でプレイヤーが主人公を操作する。そういう楽しさは、ゲームならではかもしれません。

RPGにおける主人公の見せ方は、主人公が“喋らない場合”と、“喋る”場合に分かれていますよね。アドルのような無口系は、きっとプレイヤーが物語へ投影しやすいように造形されているのでしょうね。

『イース』シリーズの主人公「アドル」は、無口系の主人公です。冒険家として様々な冒険に邁進するという個性を持つ反面、プレイヤーの選択肢でセリフが添えられるのみで、作中で喋ることはほとんどありません。プレイヤーの操作が、そのままアドルの行動であり意志になります。

作品によっては女性から好意を寄せられることもあるものの、アドルは恋愛感情を返すといったこともありません。プレイヤーが、個人的にそのヒロインへの思い入れをするだけです。アドルは、見ている側が投影しやすい主人公として造形されています。

『イースX』を通して考える“少年少女のドキドキ”の表現

バルタ水軍の襲撃により船の目的地が変わり、急遽「カルナック」という島へ訪れることになったアドル。ここで先ほど武田さんも「気になった」という女海賊「カージャ」が再登場し、いよいよアドルと共に行動することになる顛末が描かれます。

まずアドルは偶然、旅先で「マナ」と呼ばれる不思議な力を身につけることに。これは『イースX』におけるプレイヤーの冒険・アクション性を広げる重要な力で、カージャも元からマナの力を使えます。

しかし、その「マナの鎖」によってアドルとカージャの腕が“物理的”に結びつき、一定距離以上お互いから離れられなくなってしまいます。これが、2人が常に行動を共にしている要因です。互いの人間性がほとんど分からない状態で(しかもカージャは海賊で初対面時は敵)、まだ若い男女が文字通り一心同体な状況に陥る、巻き込まれ型のボーイ・ミーツ・ガールが始まります。

海賊であるカージャは、男手ひとつで育てられたという背景もあり、血気盛んで男勝りなアドルと同じ17歳の女の子。強制的な状況に不満を感じながらアドルへ同行することにになりますが、物語が進むにつれて共通の目的を持ち、お互いを理解し、認め合っていく関係性が本作では繊細に描かれていきます。

武田さん:冒頭で海賊らしく人を殺していたので、ここでアドルの腕をカージャが切り落とさないのは意外でした! 僕だったら、腕を切り落とさせるかもしれない(笑)。

アドルに「殺す」と脅しつつも、決してそうはしないカージャ。

さて、いよいよ距離的に付かず離れずの関係になってしまったアドルとカージャ。プレイヤーとしても、最初は攻撃的なカージャがどのように丸くなりアドルの相棒へなっていくか、気になってくる頃でしょう。

マナの鎖で結ばれた2人は、これから朝も夜も一緒に行動しなければならず、それは就寝時も例外ではありません。この展開を聞いて、「もしかして一緒のベッドで寝なければいけないのか……!?」とドキドキしてしまった方も多いのではないでしょうか。

とはいえ、「アタシはな、寝入りをジャマさせるのが一番ハラ立つんだ!」と就寝を大事にしている男勝りなカージャはアドルを気にせず、別々の部屋で普段通り眠ろうとします。しかし、やはりマナに引っ張られ、一定距離以上離れられないため同じ部屋で寝るしかないという結論に。

この時、アドルは目立った反応をせず、カージャも「航海中はいつもみんな(男性陣)とザコ寝だ」と、あまり意に介さない様子を見せていました。思春期的なドキドキの展開はなく、むしろ互いのキャラクター性をより詳しく描写しているシーンです。

――年頃の男女の間に起きるハプニングは、漫画でも王道的な展開のひとつだと思います。武田さんは、この2人がどのようにして眠るのか気になりましたか? また、一通り就寝シーンを見てどう思われたかも教えてください。

武田さん:漫画では「当事者にとっては深刻、読者にとっては安全圏」という構図がよく使われるんです。たとえば、あと10分お手洗いを我慢しなきゃいけない状況で、 急にお腹が痛くなる。本人にとっては本気で深刻ですが、読者は安全な場所からそのキャラクターを面白がれますよね。

それと同じで、主人公がどれだけ真剣にドキドキしているかを見せることで、 男女が離れられない状況の面白さが伝わります。

アドルは純粋なタイプなんでしょうか?もしそうならカージャに対してドキドキさせても良いし、 逆に気にせず平然なタイプなら、女の子の方が必死にドキドキしているという描き方が落差があって良いですね。

僕は『イースX』の全体像をまだ把握できていない段階ではありますが、ここまで男女がドキドキするような展開は描かれていないわけですし、このシーンの描写は一貫性があってとても良いと思います。シリーズ全体でも恋愛描写がないのであれば、なおさらですね。

漫画で求められるのは、キャラクターの一貫性です。最初と最後で性格が変わっていっても、根本的なところは変わらない。それが「読み手にモヤモヤを残さない描き方」なのです。

―― カージャとアドルの関係性は、ここから何十時間というプレイの中で描かれていき、カージャにとってのアドルの認識も当然変化していきます。その関係性は、“プレイヤーがゲームを遊ぶ”という行為で辿り着くものなので、プレイ体験に直結して2人の少年少女が相棒になっていくさまを実感できるのが『イースX』です。

武田さん:全体を通して途中で変わっていくのであれば、アドルはドキドキしないキャラクターとして描きつつ、 どこかのタイミングでカージャの方がアドルを少し意識し始める……というのを、長いプレイの中で見せていくのでしょうか。

たとえば、最後に別れるタイミングで「自分は水軍を率いていく。これでおさらばだ」と言いつつも、実はアドルに対して少し思うところが生まれている、という描写があるとか。カージャの心境に変化はありつつも、出会いから一貫性のあるキャラクター性になる。アドルは一切そういう感情を見せない、という前提であればなおさらですね。

こういった配慮が、“キャラクターを1人の人間”にします。アドルが感情的に変化しないキャラクターであるなら、そこは動かさない。その代わり、絡んでくる女の子側の心情がどう変わっていくのかを描くことで、カージャが1人の人間としてプレイヤーに認識されるようになると思います。

物語の都合だけで感情を動かすと、そのキャラクターは血の通った存在にならないんですよね。「このストーリーだから、このシーンではこう動かそう」ではなく、「こういうキャラクターだから、この状況ではこう動く」という作り方を漫画では意識しています。

ストーリーが進むにつれてキャラクターの動きが初期と変わっていっても、「こういう積み重ねがあったから変わったんだ」と読み手が納得できる説得力をもたせることが大事です。実際に『イースX』でもカージャがどのように変わっていくか、この先が気になりますね。

『イースX -Proud NORDICS-』公式サイトはコチラ!

追加キャラ「カヌート」は“少年漫画の王道”存在・ライバル的立ち位置?

ここまで、主に物語を主軸で動かす主人公&ヒロインの描き方について武田さんと見てきました。しかし、少年漫画の王道要素として欠かせないものがまだあります。それは、主人公たちの成長を促すキャラクターの存在です。

オリジナル版には登場せず、アップグレードタイトル『イースX -Proud NORDICS-』の追加キャラクター「カヌート」は、ストーリー中盤以降に登場するキャラクター。前述したアドルとカージャの関係性が順調に深まりつつある中、2人の新たな壁として立ちはだかります。

カヌートはオベリア湾の敵地となる「ダンメルク」に属しており、作中ではその代表もしくは代理として、バルタ水軍の収めるオベリア湾に軍事介入すべきか否かを判断する立場です。そのため、打倒する敵というよりは実力を認めさせる相手であり、アドルとカージャが乗り越える壁のような存在でもあります。

また、カージャの従兄妹という血縁関係も持ち合わせています。アドルとカージャは、カヌートと「エーランド島」という島をどちらが先に踏破するか競争する、というのが『イースX -Proud NORDICS-』における追加ストーリーの流れです。

――『イース』シリーズでは、あまり明確にアドルのライバル的なポジションにあるキャラクターは出てきません。少年漫画においては、主人公を成長させる存在として切磋琢磨し合うライバルはよく登場しますが、やはりこういった存在は重要視されていますか?

武田さん:新しい漫画を始めるときは、最初からライバルを考えますね。主人公の対極にいる存在、あるいは価値観の違う存在は、元から用意しておくことが多いです。そして、主人公とライバルの関係性を通じて、「主人公の何を見せたいのか」ということを考えます。

主人公に感情移入できるかどうかは、ライバル、あるいは壁となる存在が明確に存在しているかが大きい。その存在を通して、主人公が成長していく姿を見せたり、主人公の考え方をはっきりさせたりできます。

カヌートの登場シーンを見ましたが、彼はライバルではなくアドルたちを“導く役”に当たるのでしょうか? 振る舞いも落ち着いているので、対等に立ち向かう少年漫画の王道ライバルとは異なるキャラクターかなと思います。

ただ、これから主人公たちがやろうとしていることをことごとく先回りしていたり、邪魔したりする描写が増えてれば、自然とライバルの立ち位置になっていくと思います。

――まさしく、このままゲームを進めていくと、アドルとカージャの目的地にカヌートが先回りしていた、という演出があります!

武田さん:そういう演出があるなら、この登場シーンはカヌートのポジションを表していて良いですね。逆に最初から「2人を導く存在」と見せてしまうとアドル&カージャとの競争の結末がプレイヤーに見透かされてしまうため、第一印象は「嫌なやつ」と思われるぐらいにしておくと、物語が気になって続きを遊びたくなると思います。

漫画だったら、読者に「コイツには絶対負けたくない」と思わせて、最後に「実はそういうことだったのか」と分かる構成にするでしょうね(笑)。

『イースX -Proud NORDICS-』は「入りやすいゲーム」である!

――今回は、主にアドル&カージャの関係性と、その周辺キャラクターの存在に触れていただきました。『イースX -Proud NORDICS-』の印象や、作品作りで漫画と共通する部分を改めてお聞かせください。

武田さん:『イースX』は「キャラクターを中心に描こうとしているんだな」というのがわかりました。そこは、自分たちの漫画の作り方と共通だなと思います。

「少年ジャンプ」では、僕はまずキャラクターを作り始めました。とにかくひたすら「どういうキャラクターなのか」という点から作り始める。一方で「どういうストーリーになるのか」は後で良いんです。今回、僕は限定的な範囲で触れましたが、本作はキャラクターをしっかりと描こうとしているゲームという印象です。

「こういうストーリーにしたい」から始まっているのではなく、主人公とその相棒になる女の子がどういうキャラなのかを描きたいというのが伝わってきます。そこがすごく良いなと思いました。

主人公を2人に絞っている点も、非常に好感を持ちました。キャラクターが気になるユーザーも手を出しやすいんじゃないかなと思います。

いきなりいろんなキャラクターが出てきて、誰がどうなっているのか分からない状態だと、ちょっと物語に入り込みにくいですよね。アドルとカージャに絞った形でストーリーが続いていくのは、これまで本作を知らない僕にとって入りやすいと感じました。

――『イース』はどれも1本完結型とはいえ、長く続いているナンバリングシリーズなので、やはり長期連載の漫画作品を彷彿とさせる点もありますか?

武田さん:「少年ジャンプ」には、長く続いているシリーズだけれど、読者がどこから入っても大丈夫な漫画もあります。たとえば、第○部とナンバリングしつつも、サブタイトルを変えたり、長く続いているからこそ付いてくれているファンの声が後押ししたりしている今なお続く長期連載漫画とかですね。『イース』はそう言った漫画に似ているのではないでしょうか。

古い作品だけれど、1巻から読まなきゃ、なんて誰も思わない。根強いファンの推す声が、長期作品新規ユーザーの“入りやすさ”を後押ししてくれています。

――『イース』シリーズは38年以上続いていることもあり、古くからのファンにも継続して愛されています。まさに、その根強いファンからの愛が作品を長く保つ秘訣というわけですね!

武田さん:あと、最後にひとつだけ言わせてください。僕が物語づくりで一番大事にしているのは漫画家の存在です。僕ら編集者の言う通りに漫画家がその漫画を作っても、当たるとは限りません。編集なんて、「こうした方が良いんじゃない?」ってアドバイスをしているだけに過ぎない。

『イース』シリーズはゲームなので、制作したいゲームシステムや描きたいキャラクターなど、プロットを物語に落とし込む作業が重要になるのではないでしょうか。ゲームに比べ小規模な体制で臨む漫画づくりでも大変なストーリーを見せる、キャラクターを生きさせる、ということを長く続けられているのは本当にすごいですね。

――「アドルが主人公」「アクションRPG」といった基本の姿勢を崩さない『イース』シリーズへ注がれる根強いファンの声と、それに応える日本ファルコムの姿勢が見事に噛み合って、長く続いているというわけですね。本日はありがとうございました!


作品を重ねるごとにアクションの手触りや爽快感が進化し続けた、『イース』シリーズ最新作『イースX -Proud NORDICS-』の一部を、武田さんと共にご覧いただきました。

2026年2月19日に発売するPS5版の価格は、パッケージ版・ダウンロード版ともに8,580円(税込)。またパッケージ版では初回特典として、「Proud NORDICS」で追加された全楽曲を収録した音楽CDも付属します。

PS5版は4Kグラフィック出力に対応しており、より美しい描写を楽しめます。オリジナル版のみのプレイや、まだ本作に触れていない方はもちろん、ニンテンドースイッチ2版を既に遊んだという方も、ぜひこの機会に武田さんの発言も意識しながら遊んでみてください。

『イースX -Proud NORDICS-』公式サイトはコチラ!
《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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