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【ネタバレ要素あり】『超探偵事件簿 レインコード』はどんなゲームだったか―『ダンガンロンパ』との比較から考える

比較から見えてきた『レインコード』と『ダンガンロンパ』の違い、そして共通点とは?

ゲーム 特集
【ネタバレ要素あり】『超探偵事件簿 レインコード』はどんなゲームだったか―『ダンガンロンパ』との比較から考える
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2023年6月30日、6年間に渡る開発期間を経て、満を持してリリースされた超探偵事件簿 レインコード。本作はToo Kyo Games開発・スパイク・チュンソフト発売のダークファンタジー推理アドベンチャーです。

シナリオに小高和剛氏、キャラクターデザインに小松崎類氏、サウンドに高田雅史氏と、同社のメインスタッフが集結して製作された本作は、否が応でも『ダンガンロンパ』シリーズを意識せざるをえない布陣となっています。本作のPRツイートでも「#ダンガンロンパ」のタグがつけられるなど、プロモーション面でも『ダンガンロンパ』を意識していることが窺えます。

2010年に第一作がリリースされた『ダンガンロンパ』は閉鎖された学園内で「超高校級」の才能を持つ生徒たちがデスゲームを演じることになるという内容でした。はたして本作は『ダンガンロンパ』に類似したゲーム、あるいは後継的な作品なのでしょうか?

Nintendo Switch版『ダンガンロンパ トリロジーパック + ハッピーダンガンロンパS』

『ダンガンロンパ』シリーズのプレイ経験があった筆者にとって、先入観をまったく抱かずに本作をプレイすることは不可能でしたが、できる限り事前情報を調べずにプレイを開始しました。本稿では筆者が『レインコード』を最後までプレイしたうえで、いまあえて『ダンガンロンパ』と比較し、本作らしい特徴とは何かを探っていきます。なお、ネタバレを避けた記事内容を心がけましたが、作品の内容についてある程度触れるため、未プレイの方はその点をご留意ください。

舞台は隔絶都市、主人公は探偵(見習い)、相棒は死神

『レインコード』の舞台となるのは、雨の降り止まぬ都市「カナイ区」。外界との接触を断ち、巨大企業「アマテラス社」に牛耳られるこの街では、誰もがアマテラス社の保安部に逆らうことが出来ず、事件が闇に葬られています。超法規的組織「世界探偵機構」は、アマテラス社が世界規模の事件に関連していると睨み、特殊能力を持つ探偵「超探偵」のカナイ区への派遣を決定。この街に隠された謎の解明に乗り出します。カナイ区行きの列車に乗車する直前に過去の記憶を失った探偵見習いの主人公「ユーマ=ココヘッド」は、自身が記憶と引き換えに契約したという正体不明の霊体「死に神ちゃん」とともに、街にはびこる事件や謎、そして自身の失われた記憶を追い求めていきます。

いざ迷宮入り「謎迷宮」––怪人との戦いは議論の如く

主人公ユーマ=ココヘッドと相棒となる死に神ちゃん

記憶を失っているユーマは、自身がどんな能力を持っていたのか憶えていません。そんな彼が頼れるのは超探偵である仲間たちが持つ「探偵特殊能力」、そしてユーマに取り憑いた死に神ちゃんの「謎迷宮」を出現させる能力です。謎迷宮とは現実世界の謎をダンジョンとして具現化させたもの。謎迷宮の出現中は現実世界の時が止まり、死に神ちゃんは人魂の状態から人間体に変化、ユーマは謎への干渉能力を発揮できるようになります。簡単に言えば、事件の推理過程をRPGのダンジョン攻略に見立てたのがこの謎迷宮なのです。

死に神ちゃんは謎迷宮では人間体に変身する

謎迷宮の途上には、数々の罠や困難が待ち受けています。事件の疑問点に応じて分かれ道があったり、証拠の不確かな部分で道が崩落したりとその様相は様々です。
そのなかでもハイライトともいえるのが、事件の真相の隠蔽を図る「謎怪人」との「推理デスマッチ」です。推理デスマッチはユーマと謎怪人の論戦を闘技場でのバトルという形で表したもの。謎怪人の放つ発言は具現化されてユーマに迫り、接触するとダメージを受けてしまいます。

こうした発言を左右移動とジャンプ、しゃがみといったアクションを駆使して避け、事件に無関係な雑音を払いのけながら、相手の発言の矛盾に「解刀(かいとう)」という剣で斬りこんでいきます。矛盾を突き崩すためには、調査中に手に入れた手掛かりを具現化した「解鍵(かいかぎ)」を解刀にセットする必要があり、これらを正しく選択して斬りつけることで謎怪人にダメージを与えることができます。なお、登場する謎怪人は必ずしも全員が犯人というわけではありません。

さて、『ダンガンロンパ』をプレイした方ならお気づきかもしれませんが、推理デスマッチのシステムは『ダンガンロンパ』の「ノンストップ議論」を派生させたものといえる内容です。念のためノンストップ議論について解説すると、矛盾した発言に対してその反証となる「言弾(コトダマ)」をぶつけることで相手を論破する、というもので、雑音を「サイレンサー」で消去するという部分も推理デスマッチと共通しています。

『 ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』のノンストップ議論

このほかにもマンガのコマに事件の流れをあてはめる「超推理フィナーレ」、タルに入った死に神ちゃんに鍵を差してアナグラムを解く「死に神ちゃん危機一髪」といったものが謎迷宮の攻略に登場します。演出こそ変化していますが、これらに関しても「クライマックス推理」や「閃きアナグラム」といった『ダンガンロンパ』に登場した既存のシステムの派生形であることがわかります。

アナグラムと「黒〇げ危機一発」を合わせた「死に神ちゃん危機一髪」

筆者は初めて『レインコード』をプレイした際に、あまりにも『ダンガンロンパ』に近過ぎるのではないか、と思いました。これは前述したシステム面のみならず、序盤の物語展開にも『ダンガンロンパ』的な既視感があったからです。それに加え、特殊能力を持つ超探偵の設定や人物像、カナイ区の謎の調査がユーマ自身の記憶の追究に結びついているといった描写も『ダンガンロンパ』を想起させる要因でした。『ダンガンロンパ』は過去のゲームを引用することの多いゲームでしたが、本作では『ダンガンロンパ』自体も引用される対象になっています。『レインコード』は名実ともに『ダンガンロンパ』を意識した、似通ったゲームなのかもしれない––筆者はそう思いながら、本作のプレイを進めていきました。

手掛かりとなるコマを当てはめて事件の流れを整理する「超推理フィナーレ」

そして筆者は最終的に、両作は確実につながりはあるが似て非なる作品だ、という結論に辿り着きました。

「カナイ区」––「謎」そのものを象徴する街

ここからは、両作でなにが異なっているのかをひとつずつ挙げ、なぜ似て非なるものだと感じたのかを示していきます。まずはじめに、ゲームの舞台となるカナイ区が『レインコード』を象徴する存在として位置づけられ、ストーリーの中心に据えられているという点です。『ダンガンロンパ』の舞台設定は、閉鎖された学園に超高校級の学生たちだけの、単一のコミュニティしか存在しない、いわゆるクローズドサークルものの設定でした。

これに対し『レインコード』は不特定多数の人々によって構成される街がゲームの舞台となっています。カナイ区は外界との接触を断っているという設定ではありますが、ストーリーの進行に応じてユーマたちが関わるキャラクターの数は増えていき、それぞれの属するコミュニティも一様ではありません。住人からサイドクエストを頼まれるといった要素は、街を舞台とした本作ならではのもので、舞台設定の違いが大きく関わっています。

カナイ区はその外見も特徴的です。眩しいネオンサインと多言語が入り乱れた看板、雨の降りしきる低体温なカナイ区の風景は、映画『ブレードランナー』のような近未来・サイバーパンクものの定番でありながら、どこか懐かしさも感じさせる独特の雰囲気を併せ持っています。小高氏によれば『レインコード』は探偵モノとして、霧がかったロンドンのイメージがあったようですが、ゲーム中のカナイ区を実際に見てみると、東京のイメージも重ねられていることが窺えます。

入り組んだ街路奥にある何を販売しているのかわからない店舗や、傘をさして往来する住人達の姿など、カナイ区は『ダンガンロンパ』の舞台となっていた学園と比べると生活感が強く凝縮されており、仄暗い街の情景は本作のテーマである「謎」を象徴しています。

写実的なグラフィックと古典的なデザイン

次に、ビジュアル表現の違いが挙げられます。『ダンガンロンパ』シリーズでは「2.5Dモーショングラフィックス」と名付けられた、3D空間に2Dのキャラや物体を配置する手法を用いた独特のグラフィックが特徴でした。一方『レインコード』では小松崎類氏の手がけたキャラクターたちが3Dモデリングされるようになり、元となるイラストと比較しても違和感がないほど忠実に再現されています。こうしたマンガやアニメ的な映像表現をキャラクターに適用しつつも、背景や小道具といった物体は写実的で古めかしいデザインとなっており、キャラクターと物体の感触に差異を生じさせています。

謎迷宮のデザインは、エジプトのピラミッドやメソポタミアのジッグラトといった古代遺跡を思わせ、そこにヨーロッパのバロック建築を混合させたようなものとなっています。また、ところどころに超現実主義的な意匠が取り入れられ、過剰に豪華かつ奇妙な空間が表現されています。現実世界と謎迷宮で見た目の派手さこそ異なりますが、全体を通して古典的な雰囲気で統一された『レインコード』は、ポップで現代的なデザインだった『ダンガンロンパ』とは見た目からして受ける印象が異なっています。

「超探偵」––仲間に頼れるというありがたさ

主人公に与する明確な仲間がいるという点も『ダンガンロンパ』との違いのひとつです。自身の能力を忘れてしまったユーマに現実世界で力を貸してくれるのは、仲間となる超探偵たちです。彼らの持つ「探偵特殊能力」は、『ダンガンロンパ』の登場人物たちが持っていた「超高校級」という肩書きを引き継いだものといえますが、その活かされ方は異なってます。『ダンガンロンパ』では常に誰が犯人となるか分からず、常に疑心暗鬼の状況が続きます。そのため、こうした得意分野の存在は頼りというよりむしろ脅威、凶器としてプレイヤーに写るものであり、彼らが主人公の味方かどうかは終盤に至るまで明確なものではありませんでした。

一方『レインコード』では、カナイ区を調査するという目的が探偵たちに共通しており、アマテラス社という悪役も存在するため、基本的に探偵たちはユーマにとって仲間と呼べる存在です。各章ごとに起こる事件では、それぞれのキャラクターが主軸となったストーリーが展開され、ユーマは彼らと交流し、その能力を借りることで事件の真相に近づいていきます。

『ダンガンロンパ』の登場人物にスポットが当たる瞬間は、犠牲者となる、あるいは犯人となって「オシオキ」されるかというものでした。『レインコード』はそれぞれの探偵たちにスポットが当たる場面が順当に用意されており、ゲームの流れは類似しつつもキャラクターの扱われ方や立ち位置に違いが見られます。

犠牲者・犯人であることと仲間であること、このふたつを切り離したことで『ダンガンロンパ』のセオリーとは異なるベクトルに向かったのが本作の特徴といえるでしょう。
なお、そんな超探偵たちを主人公としたダウンロードコンテンツが配信予定となっており、7月27日にはその第1弾としてデスヒコ編『カリスマ探偵VS怪盗九尾の猫』が配信されています。

死に神ちゃん––よき相棒であり裁きの代行者

現実世界でユーマを助けるのが超探偵ならば、謎迷宮でユーマを支えるのが相棒となる死に神ちゃんです。死に神ちゃんはユーマ以外にはその存在を知覚できない霊体で、文字通りユーマに憑いて回ります。愚直な性格のユーマとは対照的に、倫理観に欠けた振る舞いや非常識な言動をみせる死に神ちゃんは、トリックスターかつコメディリリーフ的な役回りとなっています。ゲーム中に何度も見ることになる死に神ちゃんとユーマの漫才のような掛け合いは、ゲーム全体のトーンを明るくしています。死に神ちゃんは未熟な探偵であるユーマ、そしてプレイヤーのためにゲーム上の解説をするガイドとしての役割も持っており、死に神ちゃんがいなければ本作は成立しないと言っても過言ではありません。

死に神ちゃんは、見方によっては『ダンガンロンパ』の「モノクマ」のような悪役としての役割を引き受けているとも言えます。というのも、殺人を犯した犯人を自ら裁き、その魂を狩って謎迷宮を崩壊させることこそ、死に神たる彼女の使命だからです。「犯人を裁く」というモノクマと同質の能力を主人公の側が持っているのが『レインコード』と『ダンガンロンパ』の異なる点であり、ユーマ自身も犯人の命を奪ってしまうことへのジレンマに悩まされます。しかし、最終的に犯人に手を下すのはあくまでも死に神ちゃんであり、ユーマは謎を解くという部分だけに関与しているともいえます。

殺人現場を見て興奮したり、人の死に頓着しないように見える死に神ちゃんは、一見すると単に倫理観に欠けたキャラクターのように思えます。その一方で、謎を暴いたことで生じる罰を代行し、自身はそれを気に病まない様子でいることでユーマやプレイヤーが感じる罪悪を肩代わりしているのです。メタフィクション寄りな見方になりますが、いわば死に神ちゃんは『レインコード』をゲームとして気分よく遊ばせるために、このような振る舞いをしているともいえます。

ふたつの作品に共通するもの

さて、ここまで『レインコード』と『ダンガンロンパ』の違いについて述べてきましたが、ここで両作がアプローチを違えながらもその根底で共通している点を挙げてみたいと思います。
閉鎖された学園の中で、学生たちが外の世界に答えを求めるのが『ダンガンロンパ』だったとするならば、外からやってきた探偵がカナイ区という内側の世界に入り込み、その謎を追究するのが『レインコード』という作品だといえます。両作はこうした点では対照的に見えます。

『 ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』

ゲームのルールではなくあくまで設定上の話ですが、『ダンガンロンパ』の学生たちはモノクマの決めた校則に縛られているため、起こってしまった事件に関わらないということはできません。事件が起こる理由の多くは、記憶を失くし、閉じ込められたがゆえに生じる外の世界への渇望であり、モノクマがその情報を小出しに仄めかすことが犯行の動機となります。

一方でユーマは自分から事件に首を突っ込まなければ、関わりを持たず黙っていることもできます。作中でも、カナイ区に入った後のユーマは、アマテラス社保安部や周囲の探偵から事件や謎に関わらないように忠告されています。それでも彼が事件に関わろうとするのは、自身が探偵であったらしいという不確かな証拠に基づき、探偵として街の謎を解くことで、自身の記憶の手掛かりを手に入れられると考えているからです。

アプローチの仕方こそ内側と外側で反転していますが、その結果がどんなに不確かで残酷なものであれ、一度知ってしまった以上は世界と自分の真相を突き止めたい、そんな願望を抱いてしまう人間たちを描写している点は『ダンガンロンパ』と『レインコード』に共通しています。

『ダンガンロンパ』は変化球、『レインコード』は直球

『ダンガンロンパ』はシリーズを重ねるごとに洗練されたゲームとなっていきましたが、本作はまだゲームとして荒削りだと感じる部分があります。わかりやすいところでは全体的にロード時間が長く、特に推理デスマッチに突入する際に顕著なのでテンポが削がれてしまう部分です。同じく推理デスマッチの操作感や効果音といった演出面もこなれているとは言い難く、『ダンガンロンパ』のノンストップ議論と比べても爽快感やカタルシスに欠けるきらいがあります。本作で導入されたQTEも、現状ではまだシーンとシンクロした効果を生み出せているとは言いがたいと筆者は感じました。

その一方で、謎迷宮の大詰めとして、巨大化した死に神ちゃんが進撃して犯人の牙城を崩す「大進撃 死に神ちゃん」というミニゲームは、相手を追及する暴力性と爽快感がうまくかみ合っていると感じられるものでした。先述の「死に神ちゃん危機一髪」も単なるアナグラムではあるものの、見た目上の馬鹿馬鹿しさや破廉恥さですべてを押し通そうとする姿勢が見え、いっそ清々しく感じます。

本作におけるミニゲームや演出はある種の様式美と化しており、『ダンガンロンパ』の学級裁判やオシオキが同じパターンの繰り返しのなかで変化をつけていたこととは対照的です。どちらの手法を良いと感じるかはプレイヤーによって意見が分かれると思いますが、つねに変化球を投げ続けた『ダンガンロンパ』シリーズに対するカウンターとして、『レインコード』は直球勝負を仕掛けたのかもしれません。今後『レインコード』がシリーズ化するかはわかりませんが、もし本作の内容を引き継いだものが出るのであれば、荒削りな部分をブラッシュアップし、特長を更に伸ばしたものを期待したいところです。

『レインコード』は過去と向き合うことで己を確立する

本作が様々な面で意図的に『ダンガンロンパ』を意識したのは、必然的にプレイヤーから比較されざるを得ないという点に自覚的だったということだけでなく、シリーズの「当たり前」に慣れてしまったプレイヤーへの挑戦だったのではないかと筆者は推察します。そしてそれは、『レインコード』という新たなタイトルが、過去のシリーズを正面から乗り越えるために必然の策だったのだとゲームを終えてみて確信しました。だからこそ両作は対等に渡り合え、こうして比較することができたのです。完全新作として、新規に遊ぶプレイヤーはもちろん、『ダンガンロンパ』を過去にプレイしてきた人にとって、本作はことさらプレイし甲斐のあるタイトルといえるでしょう。


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