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「スパイク・チュンソフト スペシャルセミナー」をレポート―今、ゲーム業界が求める人材とは

6月30日発売予定の『超探偵事件簿 レインコード』の制作秘話も交えながら、ゲーム業界を目指す学生へのアドバイスや心構えが語られました。

ゲーム 特集
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写真左から株式会社スパイク・チュンソフトの榊原昌平氏と中井剛氏

2023年3月4日(土)、資格取得・就転職の総合校であるヒューマンアカデミーで、オンラインセミナー「スパイク・チュンソフト スペシャルセミナー」が開催されました。講演は株式会社スパイク・チュンソフトのゲームプロデューサー/ディレクターの榊原昌平氏と、同社人事総務グループ 採用担当の中井剛氏が登壇。「いま、ゲーム業界で求められる人材とは」をテーマに、ゲーム業界を志望する学生に向けた幅広いトークが行われました。本稿では、そのレポートをお届けします。

◆職種の境界は少しずつ曖昧になっている

3Dデザイナー、ディレクターを経て、2019年からスパイク・チュンソフトでプロデューサーを務めている榊原氏は、『Re:ゼロから始める異世界生活 偽りの王選候補』『メイドインアビス 闇を目指した連星』『ダンガンロンパ トリロジーパック』『侍道外伝 KATANAKAMI』などに加え、2023年6月30日(金)に発売予定のダークファンタジー推理アクション『超探偵事件簿 レインコード』でもプロデューサーを務めています。

まず、榊原氏はゲーム制作に必要となる大まかな役職を「プロデューサー」「ディレクター(監督)」「プランナー」「デザイナー」「プログラマー」「サウンドクリエーター」であると紹介しました。

プロデューサーは、開発体制そのものを支えるポジション。予算(開発費)の確保や管理、制作スケジュールの管理と維持、各種宣伝などを担います。ディレクターはいわば現場監督。プランナーからの企画を加味しながらそのゲームのすべての仕様を考え、決定します。

モデレーターはヒューマンアカデミー カレッジディレクターの岡田卓哉氏が担当(画像左)

しかし、同社では役職の境目が曖昧になってきているともいいます。その理由のひとつは、ゲームを作るのに必要となる「ゲームエンジン」の存在です。例えば『超探偵事件簿 レインコード』はUnreal Engineで制作されていますが、プログラマーだけではなくプランナーデザイナーもそれを使いこなせることが求められるからです。

ゲーム業界を目指す学生としては、「自分はどんな職種に適性があるのか」も気になるところでしょう。中井氏はそうした疑問に対し「ゲームをプレイして、どこが楽しかったのかをきっかけにしてもいい」と語りました。

「スパイク・チュンソフトでは、プランナーもスクリプトを書きます」と榊原氏

遊びの部分が好きならばそれを企画するプランナー。ゲームの仕組みが気になるならプログラマー。キャラクターなどのデザインに惹かれたならデザイナー…というわけです。「勉強を始めるきっかけはそれで十分だと思います。そこから勉強して、適性を見つけていけばいい。簡単な自作ゲームを手がけるのもいいでしょう。いろいろなことを学び、体験して適性を見つけてください」。

◆「一度しか訪れない場所」も贅沢に―『超探偵事件簿 レインコード』制作秘話

次に、『超探偵事件簿 レインコード(以下、レインコード)』がどのように企画され、制作されてきたかが紹介されました。同作品の企画が立ち上がったのは2017年のこと。『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』の制作が終わって間もなくの頃に、同シリーズを手がけてきた小高和剛氏が企画しました。

その後、小高氏と『ダンガンロンパ』シリーズのスタッフは2018年にスパイク・チュンソフトから独立してトゥーキョーゲームスを設立したため、同社との共同開発タイトルとなりました。

レインコード』のコンセプトのひとつは「ダンガンロンパのエッセンスを残しつつ、独立した完全新作タイトルに仕上げる」こと。その流れで、企画当初からフル3Dで制作されることが決まりました。

事件を解決する異世界となる「謎迷宮」をどのように表現し、どうゲームに落とし込むかは特に時間をかけたところで、トゥーキョーゲームスによる企画、それを表したイメージをスパイク・チュンソフトが3DCGに仕上げ、それをトゥーキョーゲームスがチェックするという体制で臨みました。

また、「ユーザーが思わずツッコミを入れたくなるくらい贅沢に作られたゲームにする」のもコンセプトのひとつで、「プレイ中、一度しか訪れない場所」のためだけの3Dキャラクター、3D世界のデータなども用意されているそうです。

榊原氏はそうしたスタッフの熱意を汲みつつ、一方ではプロデューサーとしての仕事である予算管理に頭を悩ませていたそうです。

◆IPモノのゲーム制作は「ファンがその作品の世界で何をしたいのか」を重視

スパイク・チュンソフトは『Re:ゼロから始める異世界生活 偽りの王選候補』や 『メイドインアビス 闇を目指した連星』など、他社の作品を原作とする「IPモノ」のタイトルも数多く手がけています。

そうしたゲームを作る際、最初にやるべきことは「原作者と入念に話し合う」こと。ゲームにするならどのようなものがいいかという要望をヒアリングしつつ、実際に落とし込む場合の現実的なラインを探っていきます。

それと同じくらいに、原作ファンのことを考えるのも大切です。「ファンはその作品の世界で何をしたいのか」を理解できなければ、楽しんでもらえるゲームにはなりません。2022年9月1日に発売された『メイドインアビス』は、物語の根幹をなす巨大な縦穴"アビス"をプレイヤー自身が探索できるゲームにすることで、原作ファンから大きな支持を得ました。

また、IPモノはアニメ化など原作の大きな展開に合わせて動く場合があるため、自社タイトルのゲームに比べると制作期間がタイトになりがちなのだそうです。

こうした背景を受け、榊原氏は「IPモノのタイトル制作は、自社オリジナルのゲームと比べると断然難しいです。しかし、自分がその作品のファンであればやりがいもとても大きなものになります」と言及。中井氏は「スケジュールが切羽詰まってしまいそうな時は一部を外注することもあります」と補足しました。

さらに、「制作現場上がりのプロデューサー」という経歴を持つ榊原氏は「(制作現場を)できるかぎりお金やスケジュールで縛らずに済むよう心がけています。縛りすぎると、クリエイターたちが諦めたり妥協したりしてしまいます」と現場のモチベーションを重視する姿勢を語りました。

◆変化し学び続けられる人こそ、今ゲーム業界で求められる人材

制作現場での具体的な事例紹介を終えると、テーマは「ゲーム業界で求められる人材」に。ゲーム業界を志望するなら、学生時代にどのようなことを学び、備えておけばよいのでしょうか。

榊原氏は「自分を変えていけること」がそのひとつであるとしました。専門学校ではゲームエンジンであるUnreal EngineやUnityの使い方、デザインの基礎などを学べますが、それを学ぶだけでは不十分であると語ります。

「専門学校で学ぶ内容はきっかけでしかありません。ゲームを作るために必要なソフトや知識は日々進化しているので、入社後もずっと勉強し続ける必要があるからです。学校は、“これからもずっと勉強し続けられる自分”になるための場所であるともいえます」。

■指示を正しく理解できるコミュニケーション能力も必要

また、会社に所属してのゲーム開発は集団作業でもあります。榊原氏と中井氏は、対人能力も重要であると強調しました。

指示の内容を正確に理解し、望まれていることをやれる力。チームで他者としっかりコミュニケーションし、不和を起こさないこと。そうした能力が求められるのは、一般の会社もゲーム会社も同じです。

■たくさん失敗して、どうしたら上手くいくか考える機会を持とう

その上で、中井氏は「学生時代に失敗しておくことの大切さ」にも言及しました。

「おもしろくないゲームを作ってしまうなどの失敗をして、なぜ失敗したのか、どうすれば改善するのかを人と話し合い、答えを探れるようになってください。プロのクリエイターでも、売れないゲームを作ってしまうことがあります。プロゲーマーも、勝ちたい試合で負けてしまうことがあるでしょう。売れなかった(勝てなかった)のはなぜか? どうすれば次は売れる(勝てる)のか? プロたちも、日々考え続けています」。

「今は、自分たちが学生だった頃と比べて個人でもゲームを作りやすくなりました」と中井氏

■インプットは常日頃から意識

さらに、榊原氏は「常日頃からインプットをしておくこと」も大切であると説きます。デザインや演出の方向性をすり合わせる際に「あのアニメ(orマンガなど)のような感じ」という表現がお互いに通じれば、それが共通言語として作用するからです。アニメやマンガ、映画などの人気作品はできるかぎり多く押さえておくとよさそうです。

1979年生まれながら、自身が生まれた年に放送されたアニメ「機動戦士ガンダム」のファンでもあるという榊原氏は、新卒入社時に「ガンダム直撃世代」である先輩や上司の雑談に混ざることができ、かわいがってもらえたとのこと。過去の名作に触れておくと、そんな副産物もあるかもしれません。

次ページ:寄せられた質問に榊原氏、中井氏が回答
総合学園ヒューマンアカデミー ゲームカレッジ 公式サイト
《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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