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メンタルヘルス不調からの社会復帰にゲームが有効?『マインクラフト』を使ったグループワークがもたらした成果【CEDEC 2020】

ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2020」で、「ゲームを使用した社会復帰について」のセッションが実施。『マインクラフト』を使った新しいタイプの復職支援プログラムの効果が確認されたそうです。

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ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2020」にて(9月2日~4日まで開催)、心療内科クリニック「こころケアクリニック」の臨床心理士・公認心理師である大塚舞子氏が「ゲームを使用した社会復帰について」のセッションを実施。メンタルヘルス不調者の復職支援プログラムに、冒険から建築まで自由に遊べるゲーム『マインクラフト』を用いた結果、従来のプログラムよりも就労再開率が高い成果を得られたと発表しました。

労働者の多くがメンタルヘルス不調によって、離職または休職に追い込まれている


厚生労働省が定義するメンタルヘルス不調を大きく噛み砕くと、「労働者がストレスや強い悩みなどで心身の健康を崩し、社会生活や生活の質に良くない影響を与えてしまう精神や行動上の問題」です。うつ病、気分障害、適応障害、心身症、不安障害などが挙げられます。


現在日本では、多くの人がメンタルヘルス不調によって、離職または休職しています。労働安全衛生法によって年1回の「ストレスチェック制度」の実施が義務化されるなど、未然に防ぐことが重要視されています。厚生労働省公式サイトでは「5分でできる職場のストレスセルフチェック」があり、ストレス状態やストレス因子の有無を知ることができます。


メンタルヘルス不調の要因


労働者の多くがメンタルヘルス不調になりやすいのは何故でしょうか。外的要因には、職場の人間関係、ハラスメント、業務過多、長時間労働、低賃金、家庭の問題などが挙げられます。内的要因には、性格傾向やスキル不足などが挙げられます。

性格傾向としては、真面目、几帳面、仕事熱心、責任感が強い、完璧主義、過剰適応、他者への配慮を重視する「メランコリー親和型」が定型でした。

しかし、近年の若者には、自己中心性、自己愛、万能感、責任感が低い、逃避、規範への抵抗など新型・現代型・未熟型うつ「ディスチミア親和型」も見られるようになっています。

新型・現代型・未熟型うつ「ディスチミア親和型」の背景には、多様な価値観と個性を尊重し、型にはまらない事由が認められた社会で育ったこと、過保護な家庭環境や叱られた経験が少なく精神的成長の機会を逃してしまったことなどがあります。

一見、甘えに見えるようであったとしても、不調をきたしている者には適切な支援やサポートが必要です。「決して甘えではない!」と医師は判断します。

メンタルヘルス不調は治るのか?


治療法としては、静養・休養、薬物療法、精神療法(心理療法)などがあり、メンタルヘルス不調で休職したら治療と療養に専念する必要があります。しかし、医師が判断する職場復帰可能な症状の回復と、職場の上司が求める業務遂行能力の回復には乖離があります。その隔たりを埋めるために、復職支援プログラムがあります。一般的には、軽作業、通勤訓練、休職要因を振り返って自分自身の性格を理解してストレス対処法を取得するなどがあります。


しかし、従来のプログラムではメンタルヘルス再休職者が増えている状況、現代型のメンタルヘルス不調者に対応しきれません。また、業務遂行能力の回復も含めた支援が求められます。

経済産業省の資料ではこれまで、指示待ちにならず、一人称で物事捉えて自ら行動できる「前に踏み出す力」。自ら課題定義し、解決のためのシナリオを描く自律的な思考力「考え抜く力」。グループ内の協調性だけに留まらず、多様な人々との繋がりや協働を生み出す力「チームで働く力」。この3つが社会人の基礎力として必要だとされてきました。


さらに近年では「人生100年時代の社会人基礎力」と、能力を発揮するにあたって自己を振り返りながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが自らのキャリアを切り開いていくために必要と述べています。

しかし、従来のプログラムでは「人生100年時代の社会人基礎力」を満たすことが難しいです。そこで、心療内科クリニック「こころケアクリニック」では、ゲームを用いた復職支援プログラムを生み出しました。

『マインクラフト』の世界で、3ヶ月で自由に街を作る


同院では2014年からPC版『マインクラフト』を用いた復職支援プログラムを実施。独自のサーバーを持つことができるので管理しやすいこと、同ゲームがすでにプログラミング教育・情報教育・協同学習などの教材として使われていることが選ばれた理由です。もちろん、ゲームを遊ばないために抵抗がある参加者もいますが、復職のためのプログラムだと説明して理解をしてもらっています。いざ始めてみると、楽しくなったという声も聞かれるそうです。

グループワーク中心に、3ヶ月以内に街を作ることがミッション。プログラム時間は10時~13時、13時30分~16時です。オープンワールドを散策して、建設する場所を決め、必要な資材も自ら確保しなければならない「サバイバル」モード実施されました。

グループワークの内容は、コンセプト相談、建設地の決定、建設計画立案、タスクの洗い出しとスケジューリング、タイムライン管理、資材管理、役割分担など。プログラム参加者は3ヶ月という期間限定のため、情報が不足しがちなファンタジー世界よりも、イタリアのブラーノ島やスペインのロンダなど現実に存在する街を再現することが多いです。

YouTubeチャンネルにて、作成した街は公開されている

YouTubeチャンネルにて、作成した街は公開されている

参加者は主治医がプログラムに参加することを許可した者に限り、参加頻度も本人に無理のないように決めます。また、グループ内でビギナー、アドバンス、マスターの3クラスに分けられ、アドバンスがビギナーにゲーム操作やグループワークのルールを説明する教育・指導を、スターはグループ全体のマネジメント、タスクとスケジューリングへの助言を担当します。

会社勤目と同じ体験


実際のプログラム参加者のある1日を見てみると、全員が毎日参加するわけではないため、前日まで作業進捗の引継ぎから始まって、進行役と議事録など役割分担をしてからコンセプトや建設計画を話しあい、最後に全体で作業の進捗を確認して良かった点・反省点・改善点を共有する流れです。

また、建物の設計図をデザイナー職の参加者が描き、消耗した資材を入手するために遠征するなど資材管理表を会計経理職の参加者が作成するなど、自分のスキルを活かせる役割分担も、自信を深めることに繋がります。

もちろん、期間中は様々な問題も発生します。例えば、苦手な人がグループ内にいるからやりづらいという参加者には、定期面談で職場でも同様の経験をするはずだからと一緒に対策を練ります。途中で離脱した参加者が多くなり、全体の作業負担が増えてしまう時は3ヶ月間で完成させるために、建物を一部簡略化するなど臨機応変に対応します。

このように、ゲームを楽しみながらも実際にやっているのは仕事に近く、これは実際の会社勤務と同様の課題を生むため、実際の復職をイメージしやすくなります。

ゲームを使った復職支援プログラムの効果は?


同院の2015年1月~2017年12月までの初診患者(参加者は男性113人、女性153人で、平均年齢は32歳)を対象に、『マインクラフト』を使った復職支援プログラムに参加した人と、薬物のみの復職支援プログラムに参加した人で効果を比較しました。

Fisherの正確検定の結果、就労再開率は『マインクラフト』利用者群が76%、非利用者群が37%でした。

また、117人(『マインクラフト』利用群48人、非利用群69人、フォローアップ期間407日)を就労継続調査したところ、『マインクラフト』利用群の継続率は6ヶ月後が89.5%、1年後が76.1%、2年後が60.8%で、非利用者郡の継続率は6ヶ月後が80.4%、1年後が54.8%、2年後が45.6%でした。

就労再開率、就労継続率共に、『マインクラフト』利用群が上回った結果が出ており、ゲームを用いた職場復帰支援プログラムの有効性が確認されました。

今後の課題としては、予後への影響の検証、復職成功者の行動特性を明らかにすること、キャラクターの行動分析(ログなど)が挙げられ、データ収集面においてはゲーム業界の方の知見を求めているとのことでした。
《乃木 章》

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