ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、次世代ゲーム機「PlayStation 5」(以下、PS5)に関する更なる情報を、6月12日に公開しました。
PS5でプレイできる様々なタイトルが判明したほか、本体デザインも初披露。PS5に関する情報はこれまでも公開されてきましたが、その実態がより明らかとなる情報が飛び出し、注目を集めています。
そのひとつとして見逃せないのが、「デジタルエディション」の登場です。ディスクドライブを搭載した「スタンダードモデル」に加え、ドライブがない「デジタルエディション」も発表し、ゲームファンを驚かせました。
同社による、ディスクドライブを排除した“ディスクレス”なゲームハードと言えば、「PlayStation Portable go」(以下、PSP go)を連想する方も多いことでしょう。
2009年に発売された「PSP go」は、「PlayStation Portable」(以下、PSP)の派生機ですが、その方向性は独自の路線を切り開くものでした。この「PSP go」は、「PSP」に採用されていたユニバーサル・メディア・ディスクドライブを廃し、ダウンロードソフトのみプレイ可能。“PSP版ディスクレスモデル”という新たな提案を、「PSP go」がもたらします。
ディスクドライブを廃止したことで本体のサイズが更に小さくなり、軽量化にも成功。携帯ゲーム機という点を考えると、かなり大きなメリットと言えます。またダウンロードソフトのみなので、遊ぶゲームを変更する場合、ディスクの物理的な入れ替えは不要。これも、外出して遊ぶ機会が多い点を踏まえると、嬉しいポイントでしょう。
ですが、「PSP go」発売当時のダウンロード販売は、現在と比較するとそれほど活発ではありませんでした。加えて、その特性上オンライン接続が必須となるため、カジュアルなユーザーにとってはハードルが高め。かといってコアなゲームファンからすれば、既に所有しているパッケージ版のソフトが使えないため、不便さがネックとなります。
こういった複数の要因から、「PSP go」が提案したディスクレスなゲームライフは、残念ながら定着しませんでした。「PSP」の後継機「PlayStation Vita」では、ディスクドライブではありませんが、カードスロット形式を採用。ダウンロードソフトにも対応していますが、パッケージソフトも遊べる「両対応」という、従来の形に戻っています。
こうして、同社が描いた“ディスクレス”なゲームハードは、一度潰える形となりました。ですが、それが現実と結びつかない夢に過ぎないのかどうかは、一考の余地があります。
ゲームハードの歴史を遡れば、その黎明期には“ゲームが内蔵されたハード”が販売されていました。近年では、「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」や「メガドライブミニ」など、懐かしのゲーム機を復刻させ、当時のゲームを本体に収録したハードが人気を博しています。これらも“ディスクレス”なゲームハードと言えるでしょう。
現世代のゲーム事情にも、“ディスクレス”の動きを見ることができます。Xbox One新モデルとして、光学式ディスクドライブ非搭載の「Xbox One S 1 TB All Digital Edition」が、2019年にリリースされました。また、いわゆるクラウドゲーム機も、“ディスクレス”を提案する流れのひとつ。“ディスクレス”に挑む展開は、ゲーム業界の最前線にもしっかりと存在しています。
そして、“ディスクレス”への後押しは、ハード側だけに限った話ではありません。インターネット回線の向上やハードディスク容量の増大などを受け、ダウンロード販売自体が広く普及し、今や手軽な手段として多くの方に親しまれているのは明白です。
ダウンロード販売の好調ぶりについては、様々な方面で確認することができます。同社が公開した2020年3月期決算資料を見ると、「ゲームソフトウェアのダウンロード売上やPS Plus及びプレイステーション ナウ(PS Now)の会員数は大幅に増加しています」と記載。また、任天堂の2020年3月期決算説明会の質疑応答にて、『あつまれ どうぶつの森』購入者の約半数が、ダウンロード版を選択したと報告されており、「PSP go」発売当時とは状況が大きく異なることが窺えます。
「PSP go」から約11年の時を経て、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが改めて挑んだ“ディスクレス”の道。両対応の「スタンダードモデル」もあるとはいえ、「デジタルエディション」の存在からは、同社の挑戦的な意気込みが感じられます。「PSP go」で夢見た未来を「PS5」が紡げるのか。ユーザーが答えを出す日を、期待と共に見守りましょう。
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