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ゲームのポイントをしっかり見据え、ポジティブなエネルギーでモノ作りを――任天堂・宮本茂氏の基調講演聴講レポート【CEDEC 2018】

8月22日~24日にかけて、神奈川・パシフィコ横浜 会議センターでCESAによる開発者向けの大規模カンファレンス「CEDEC 2018」が開催されています。任天堂株式会社の代表取締役 フェロー・宮本茂氏による基調講演の聴講レポートをお届けします。

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8月22日~24日にかけて、神奈川・パシフィコ横浜 会議センターでコンピュータエンターテインメント協会(CESA)による開発者向けの大規模カンファレンス「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2018 (CEDEC 2018)」が開催されています。本稿では、任天堂の代表取締役 フェロー・宮本茂氏による初日の基調講演「どこから作ればいいんだろう?から10年」の聴講レポートをお届けします。

◆この10年を振り返って


「CEDEC」での登壇は10年ぶりとなる宮本氏。10年前から今日にいたるまでを振り返って、氏が最初に挙げたのはハードウェアの大きな進歩でした。しかし、それは必ずしもいいことばかりではなく、高性能化にともない、スタッフの管理などのクリエイティブな創作以外のことにも大きくエネルギーがかかるようになった、と語ります。

また、ゲームの規模が大きくなるにつれ"開発中のゲームが形になった状態で(社内での)評価を受ける"のも難しくなりました。「全部できあがった状態まで持っていくのに2年はかかってしまう。それでおもしろくなかったら大変です。ディレクターは、そのゲームのポイントにフォーカスする力を持つのが大切です」。

一方、この10年間で、インディーズの市場も含めたくさんの新しいゲームが生まれ、それが徐々に進化をとげて大きなタイトルに育つ姿は興味深く見守っているとのこと。「手前味噌ですが…」と前置きしつつ、その一例として挙げたのは『Splatoon』でした。「海外の3Dシューターを日本でも広めたいと思って僕が作ったのが『リンクのボウガントレーニング』ですが、これでも広がりきらなかった。(それを見事に広めた)『Splatoon』は弊社の若手のスタッフが生み出してくれたので、安心して見ています」

そしてこの10年の一番大きな変化といえば、スマートフォンの普及。「スティーブ・ジョブズがiPhoneを初めて発表したときに「Touch Now」と言っているのを聞いてやはりニンテンドーDSは間違っていなかったなと。本当は、僕らの方が先に言っていたんですけどね(笑)」

スマートフォンの登場~普及を示す一例として、伏見稲荷神社に触れる宮本氏。SNSなどで誰もが気軽に情報発信できるようになり、5年連続で外国人が選ぶ日本の観光名所第1位に輝いています

宮本氏はその頃から"DSを、公共の場で活用できる世界で一番安い端末にしたい"という考えを持っていたそうで、その集大成がニンテンドー3DSのダウンロードソフト『ニンテンドー3DSガイド ルーヴル美術館』とのこと。ルーブル美術館側の反応もよく、今後も3DSが活用されるとのことです。

◆ゲームのゴールはどう決める?


アーケードゲームを作っていたころは、プレイが終わったときに「もう一枚コインを入れて遊ぼう」と思ってもらえるように作る必要がありましたが、やがてリリースしたファミコンは、本体とソフトを買えば好きなだけ遊べるようになりました。

宮本氏はそれを機に「これからは、ゴール(目標)は自分で決めてもらえばいいかな?」と思ったそうですが、ハードウェアのスペックという制約と戦いつつ自由度を高くしても、今度は"何をどう遊んだらいいか分からない"という声が出るようになってしまったと振り返ります。「ゴールを(ゲームの)目標にするのは、作る側の僕らとしても楽なんです。ゴールしたご褒美は次のコース……そういうところから、僕ら自身もなかなか離れられませんでした」。

ハードウェアのスペック向上もあり、プレイヤーがある程度遊ぶ方向性を決められるようにと制作したのがニンテンドー64の『スーパーマリオ64』でした。「当時は、スターを手に入れたらいったんステージクリアとするか、そのままそのステージでプレイを続行できるようにするかですごく議論しました。プレイのテンポがよくなるし、達成感も得られるしで『マリオ64』はあのような形にしましたが、今遊ぶなら(ステージの外まで)戻されたくないのでは、とニンテンドースイッチ『スーパーマリオ オデッセイ』はプレイが続行するようにしています」。

(ステージクリアのような)ゴールがないゲームの一例として、話題はエディター系のゲームに。宮本氏の心に深く刻み込まれたのは『マインクラフト』の登場とその大ヒットでした。「ブロック3Dビルダーという発想は昔からありましたが、僕らが実験したときはおもしろくまとめられなかった。(『マインクラフト』リリース後に)"『マイクラ』でコンビニを作る"という動画を見て、ここまで理解して遊びつくそうとする人が出てくるシステムを作れていることに感服しました。そして悔しかった。日本のゲームではないのが、もうひとつ悔しかった。これが日本のゲームだったら「やった!」と思えたのに」。

『マインクラフト』の大ヒットは感服するとともに悔しかった、と宮本氏

その後、任天堂もWii Uで『スーパーマリオメーカー』をリリースします。「穴に落ちてしまいそうなところに、自分で自由に床を作れる。(これまでにいくつものコースを作ってきている)僕らは、それが(その瞬間において)楽しいのは分かっていました。あまりに制限がないと緊張感がなくなってしまいますが、他にもっと新しい魅力を提供できるなら、床なんて作らせてあげればいいんだと。こういった方向性はこれからもますます利用されていくと思う」。

◆従量課金より小額の定額課金――スマートデバイスでの挑戦


スーパーマリオメーカー』は横スクロールで遊ぶ"2Dマリオ"。それなら"3Dマリオ"は原点に返ってみようかというコンセプトで開発された『スーパーマリオ オデッセイ』。そしてスマートデバイスでの『スーパーマリオラン』は「走ってジャンプするだけのシンプルなもの」というコンセプトで制作されました。

宮本氏いわくマリオは「適当に遊んで失敗して、次こそはと本気で挑戦してまた失敗して…とラフに遊ぶゲーム」とのことで、従量課金ではなく定額の買い切りにするという考えは早くからあったとのこと。ワールド単位で販売したり、さらにそれをまとめ売りしたりするとシーケンスが煩雑になるからという理由で、すべて一括で購入できるようになりました。

煩雑さを避けるため『スーパーマリオラン』の決済画面は極めてシンプルに

そうした甲斐があって『スーパーマリオラン』はそれまでにマリオのゲームを遊んだことがない人にもプレイしてもらえましたが、宮本氏は「これなら易しいだろう」と思って作ったステージでもクリア率が低かったりと、それまでにはなかった感覚も味わったそうです。「おかげさまで3億ダウンロードを突破しました。採算は取れていますので、こういうスタイル(小額課金による買い切り)が定着するよう、がんばって続けていきたい」。

◆ポジティブなエネルギーで自分を追い込む――モノづくりへの哲学


一代で任天堂を世界的な企業に押し上げた故・山内溥氏は「(消費者は)ソフトを遊ぶために仕方なくハードを買うんだ」と語りました。この考えは今も深く任天堂に根づいており、欧州で「ハードにソフトを5本バンドルして販売したい」との申し出があったとき、断固として固辞したそうです。「"(ゲームを)3本買ってくれたらハードを差し上げますよ"ならいい。ソフトのためにお金を払うというスタイルは崩したくないですね」。

毎日のように昼食をともにするSRD代表取締役社長・中郷俊彦氏から「昔、宮本さんに渡されたもの」と見せられたというメモ書きも披露されました

「この年になると、たまに過去を振り返るんです」と宮本氏。上から無茶ぶりをされたり、モニターでさんざん批判を受けたりさまざまなことがありました。でも、それこそが完成させるために必要なものだったのではないか、と今は思うそうです。「メディアの方からインタビューを受けると、つい"酷評を跳ね返して"というような言い方をしてしまいますが、どちらかといったら感謝するべきなのかも。無茶ぶりや批判をどう受け止めるか。それを、どうポジティブなエネルギーに変えるか。そんなことを考えるようになりました」

この10年間、NHKの連続テレビ小説を録画して欠かさず見続けているという宮本氏がセッションを締めくくる言葉は、氏のモノ作りへの哲学が端的に込められたひと言でした。「今放送している『半分、青い』は、中学生が漫画家を目指すお話。これを見ていると「自分がゲームを作るときも、ここまで(自分を)追い込めているだろうか?」と思うことがあります。自分を追い込んでクリエイティブ(なモノ)を作る人が一人でも増えれば、日本は安泰です。これからも、ともにがんばりましょう」。

(C)2018 CESA All rights reserved
《蚩尤》

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