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【インタビュー】悠木碧が語る役作り、西尾維新「クビキリサイクル」のアフレコはリズミカルで音楽的だった

OVA『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』第1巻が10月26日に発売される。玖渚役の悠木に、本作を演じるにあたって考えたことや西尾作品への想い、キャラクターに対する考えなどを訊いた。

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OVA『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』第1巻が10月26日に発売される。本作は、あらゆる分野の天才が集められた孤島「鴉の濡れ羽島」で起きた密室殺人事件を描いたミステリー。第23回メフィスト賞を受賞した西尾維新のデビュー作だ。
戯言遣いの《ぼく》を梶裕貴、青い髪と瞳を持つ情報工学と機械工学のスペシャリスト、玖渚友を悠木碧が演じ、総監督を新房昭之が務める。制作は〈物語〉シリーズを手がけてきたシャフト。

〈物語〉シリーズファンなど様々な方面からの反響があった映像化。一体どのようなアニメーションになっているのか期待が大きい作品だ。
玖渚役の悠木に、本作を演じるにあたって考えたことや西尾作品への想い、キャラクターに対する考えなどを訊いた。
[取材・構成:川俣綾加]

『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』
Blu-ray&DVD第一巻10月26日(水)発売
http://zaregoto-series.com/

■アフレコは「一言一句たりとも間違ってはいけない」

──原作を読んだのは玖渚役が決まってからですか? 率直に、どう感じましたか?

悠木碧さん(以下、悠木)
高校生の時に友達に「面白いから読んでみて」と貸してもらったのが『クビキリサイクル』でした。《ぼく》のモノローグがあまりに衝撃的で「今読むと人生に迷ってしまいそう!」と途中で友達に返しました(笑)。でも、その『クビキリサイクル』とこんな形で再会するなんて!(笑)

──高校生の頃からは予想できない再会ですね(笑)。「人生に迷いそう」と感じたのはなぜ?

悠木
《ぼく》は自分がいかに凡才で、いかに周囲の人間が天才かをモノローグで語るのですが、思春期や学生の時期ってこの部分にとてつもなく共感するんです。自分は何者で、社会の中でどれほどの存在価値なのか。自分が考えている自分の価値とどれほど違うものなのか。そこをジャストで突いてくる感じ。《ぼく》への共感が西尾さんの書くリズミカルな文章によってスルスルと入り込んできて「洗脳される!」と思っちゃって。玖渚を演じるため、あえて原作を読まずにいるので「このアフレコが全部終わったら原作を読むんだ」と楽しみにしています。

──共感のあまり遠ざけてしまうほど、《ぼく》の目線で読んでいた。

悠木
名前も玖渚が呼ぶ“いーちゃん”しかわからないし、どんな容姿かも不明であえて形をぼかすことで、主人公に投影しやすくなっていますよね。私のことをものすごくよくわかっている人が書いたんじゃ? それか、私が《ぼく》に寄りすぎたのではないかと錯覚してしまうことすらあって。


──原作を読んだ時は《ぼく》ですが今回の役は玖渚ですよね。見方が大きく変わりそうです。

悠木
モノローグが全く違って見えますね。

──玖渚はどんな子だと感じました?

悠木
これは色々なところでお話していることでもありますが、大人になってから『クビキリサイクル』に触れた結果、原作を発表した当時の西尾さんから見た女の子って超未知で意味のわからない生き物だったんじゃないかって思うんです。玖渚にはそれが詰め込まれている。

──言われてみれば。己のルールがハッキリしているところとか。

悠木
かわいい女の子が、自分とは釣り合わないのに「好き」なんて言ってくるし、こちらには理解できない自分のルールで生きていて、それに振り回されて、情動も掻き立てられて。未知の恐ろしい化け物のような存在でもある。それを誇張して表現したら玖渚になったのではないかと。ご本人から正解を聞いたわけではありませんが、私なりの解釈として。


(次ページ:役作りについて)

──役づくりについては、どう考えていきましたか?

悠木
これまでのルールにとらわれないこと。これを基本に据えていきました。私は役者なので、セリフとセリフの間に表情がガラッと変わっていたら「この間に何があったのかな」と考えるんです。例えば、ムスッとしていた女の子が次のセリフでニコニコしていたら、その間に何が起きたのか。もし頭を撫でられてご機嫌になったのなら、頭をなでられたらこの子は笑顔になっちゃう子なんだと具体的な人物像を考えていくことができます。

──玖渚はそれとは違うということですね。

悠木
玖渚にはそれは必要なくて、私たちから見ると一連の流れになくとも彼女の中ではつながっているんです。ぶつ切りな感情表現は、すべてを表に出す子ではないから。思考レベルが高く尋常じゃないスピードで頭を回転させ、淡々としていて、全てに対して平等。唯一特別なのが“いーちゃん”。天才には天才のルールがあることを受け入れて、そのままを形にしてあげれば意外と玖渚という子は難しい子じゃないんです。

──実際に芝居として悠木さんが表に出す時はどう気をつけていきましたか。

悠木
西尾さんの作品で一番大切なのは文字のリズムです。この作品のアフレコでは守らないといけないルールがあって。それは「一言一句たりとも間違ってはいけない」こと。難しくもあるのですが、西尾さんの文章のリズムにのって進めれば一気に入っていけるんです。役者も西尾さんワールドに踊らされている状態で芝居をしているのだと思います(笑)。

── 一言一句を忠実に……。そういった現場は珍しいのでは。

悠木
そうですね。他の作品では口に出した時により気持ちいい言葉に変えてもいいか相談することもありますが、書き言葉がこの作品の意義だから今回はそのまま。特に《ぼく》を演じる梶さんは句読点まで可能な限り忠実にしゃべっています。《ぼく》がモノローグでトントントントンとリズムを刻んで、そこに色々な楽器(声)が加わっていく。とても音楽的なアフレコだと私は感じました。


───独特の掛け合いがあるんですね。

悠木
西尾さんの小説を声に出して読む方ってきっとなかなかいないですよね。でも声に出して読んでもらえれば、その素晴らしさ、すごさがすぐにわかるはず。アニメの力を感じられるポイントでもあります。

──シャフトと新房昭之さんといえば、悠木さんが主人公を演じた『魔法少女まどか☆マギカ』もありますよね。悠木さんから見てどんな印象の方でしょうか。

悠木
以前、『魔法少女まどか☆マギカ』の取材で対談させていただいた時に、なぜまどかが救世主になったのかについてお話したんです。そこにどんな理由があるのか自分なりに答えを出すのも役者の仕事なので、彼女が救世主たる理由を「家族にも友達にも、誰からも愛される子だからこそ全ての人を救える。平凡で誰も傷つけなかったからこそ彼女は救世主なのだと思う」とお話したんです。ところが新房さんは「ヒーローは生まれた時からヒーローなんだよ」とおっしゃって、それに衝撃を受けて。ただ、運命がそこにある。理由づけをするだけじゃないんだなってストンと落ちました。玖渚を演じる時、それがすごく役立ちました。

──《ぼく》と玖渚の関係をどう受け止めていますか?

悠木
一見すると謎めいているけど玖渚視点でいえば全然そうでもないですよ。天才の玖渚が唯一できないのは、《ぼく》のように悩み、あがくこと。玖渚からすると一生懸命に悩んでいる凡才の彼がとても愛おしくて興味深いんです。

──読者にメッセージをお願いします。

悠木
『クビキリサイクル』は2002年に小説が発表されて以来、長い間たくさんの方に愛されてきた歴史のある作品です。みなさんの頭の中にそれぞれの世界があると思います。今回のOVAは作り手から見た『クビキリサイクル』はこんな世界なのだという提示でもあります。私の中の玖渚はこんな子なのだと見てもらえればと思います。新房総監督をはじめ強力なスタッフが集結して作ったひとつの結果を、みなさんにどう召し上がっていただけるか楽しみです!

「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」玖渚友役 悠木碧インタビュー 「リズミカルで音楽的なアフレコでした」

《川俣綾加》

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